【2668】 ○ 大湾 秀雄 『日本の人事を科学する―因果推論に基づくデータ活用』 (2017/06 日本経済新聞出版社) ★★★★

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人事データ活用の重要性とそのための統計的センスとは何かをテーマごとに説く。

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日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用』(2017/06 日本経済新聞出版社)

 著者によれば本書は、人事・人事企画に携わる人や、経営戦略に関わる経営コンサルタント、人事制度の設計・改善に関心のある実務家・学習者などに向けて書かれた、科学的なフレームワークで人事データを分析し、その結果を解釈するための方法と実例を紹介した本であるとのことです。

 まず第1章で、人事部が抱える問題として、人事データが十分に活用されていないため、PDCAサイクルがうまく回っていないことを指摘しています。著者は、人事データを活用するためにすべきこととして、
1.人事データをすべてデジタル情報として保存する
2.人事データを1つのシステムの中で一元管理する
3.統計リテラシーの高い人間を1人くらい人事に配置する
4.統計ソフトを1つ購入する
の4つを挙げていますが、そもそも、人事データで課題を解決するには、問題意識がなければならず、勝負の分かれ目は、問題意識をもち、問題点に気づけるかどうかにあるとしています。

 第2章では、統計的センスを身につけるためのポイントとして、視覚的に捉えることの重要性を説くとともに、データの相関と因果を探る上で、回帰分析がデータ活用の基本となるとしています。因果関係を正しく見出すためには、回帰分析などを正しく使い、外的な環境や影響を与える他の要素をある程度コントロールしていく必要があり、また、グラフを描く技術や統計ツールを身につけ、気づきをエビデンスに変えていく力こそが統計的センスであり、今後データの利用が各方面で高まるにつれ、こうした統計的センスはさらに必要な能力となるとしています。

 第3章から第8章では、女性活躍推進の効果をどう測るか、働き方改革の効果をどう測るか、採用施策をどう評価するか、優秀な社員の定着率を上げるためには何が必要か、中間管理職の貢献をどう測定するか、高齢化に対応した長期施策をどう考えるか、という6つのテーマを取り上げ、実際にデータ分析の手法を用いて諸データを解析し、何が課題であり、その課題の解決に向けてどういった施策が考えられるかを示唆しています。

 そして第9章では、人事におけるデータ活用の今後の展開として、人事機能の分権化やサクセッション・プランの導入などによってその重要性は増し、さらには、メール交信や社内SNSなど社員間のネットワーク情報の活用が進むことも考えられるとしています。一方で、雇い主である企業が、雇用関係を通じて知り得た従業員の個人情報をどこまで自由に利用してよいのかという倫理的な問題もあるとしています。

 データ分析に関する解説で、数学的要素については、必要な箇所に、2ページのテクニカルノートを含めることで、統計学、計量経済学の手法に軽く触れています。また、さらに学びたい読者のために、第2章から第8章の各章末で関連する参考図書を紹介し内容を簡単に説明するとともに、第3章と第5章では「特別コラム」として、佐藤博樹・武石恵美子著『職場のワーク・ライフ・バランス』と服部康宏著『採用学』を取り上げ、その内容を詳しく解説しています。

 これからの人事においては統計データの活用がますます重要になり、統計データを活用するには統計センスが求められるということ、その統計センスとはいかなるものであるかを示した本であるように思いました。個人的には、第6章の採用と第8章の高齢者雇用のところが分かり易くて腑に落ちましたが、これは、説明上、賃金カーブが出て来る点や、概要説明が、以前読んだエドワード・P・ラジアーの『人事と組織の経済学』('98年/日本経済新聞社)と重なるためだったろうと思います(第6章の参考図書として、『人事と組織の経済学・実践編』('17年/日本経済新聞出版社)が挙げられている)。

 人事データ活用の重要性とそのための統計的センスとは何かを説いた本ですが、データ分析は「習うより慣れろ」で、まずは興味を持ってこうしたデータに触れることが第一であるとも言っています。その意味では、第3章から第8章のテーマごとの"実践編"については、読者の関心が強いものから順に読んでいってもよいように思います。



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和田泰明

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