【2662】 △ 秋本 暢哉 『人事コンサルタントが教える ローパフォーマー対応 (2016/03 日本経済新聞出版社) ★★★

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ローパフォーマー対応がなされず、放置しっ放しの企業にとっては、啓発される要素を含んだ本。

人事コンサルタントが教える ローパフォーマー対応.jpg人事コンサルタントが教える ローパフォーマー対応』(2016/03 日本経済新聞出版社)

人事コンサルタントが教えるローパフォーマー対応1.jpg 本書で扱っているローパフォーマーとは、当人の「低業績」に加えて、「低評価」となっている社員のことであり、いわゆる問題社員やモンスター社員などは含まれていません。本書では、低業績・低評価のローパフォーマーは、しかるべき対応と本人の自覚・努力があれば充分に再生可能であり、また、再生の道を考えていかねばならないとしています。著者は、「今や、誰でもローパフォーマーになる時代である」とし、レッテルの貼りっ放し、放置しっ放しにするのではなく、ローパフォーマーを支援し、戦力化していくことが必要だとしています。

 まず、第1章では、ローパフォーマーを、「年齢(ベテラン・若手)」と「力を出せない・力を出さない」という2軸の掛け合わせの中で、①採用ミス・放置型、②基本能力不足型、③言われたことだけ・やる気なし型、④センス・スキル陳腐化型、⑤青い鳥探し型、⑥人間関係悪化型、⑦部署・仕事・事業消滅型の7つのタイプに分類し、それらに共通する特徴として、「組織の期待に応えない」「人間関係が悪い」「柔軟性がない」の3点を挙げています。

 また、第2章では、ローパフォーマーの存在は、本人だけの問題でなく、ハイパフォーマーが流出したり管理職の活躍の場が奪われたりするなどの弊害も生み、そうしたローパフォーマー化は、学ばない・変わらない本人のせいだけでなく、放置する上司や会社の曖昧な戦略にも原因があるとしています。

 そのうえで、第3章では、上司が部下の可能性を信じて変わらなければ、部下も変わらないとして、問題解決へのアプローチとして、現場レベルでできること、上司がやるべきこと、会社としてやるべきことを整理しています。たとえば会社としてやるべきこととしては、①ローパフォーマーの定義を明確化し、②該当者のリストを作成して、③再生に向けてのコミットメントを打ち出し、④再生に向けた仕組み作りをすることであるとしています。具体的な支援プログラムの概要として、①上司研修、②対象者本人研修、③上司のOJT指導面談+外部カウンセラー面談、④判定会議という流れを解説しています。さらに、先に挙げた7つのタイプ別の対応方法を示しています。

 さらに、第4章では、5人のローパフォーマーの再生例を示し、その成功要因はどこにあったのか、再生できる人とできない人の違いを分析しています。第5章では、70歳定年時代の到来に向けて、自分を劣化させないためにはどうすればよいかを説いています。

 最終第6章では、自社でローパフォーマーを生まないための処方箋として、主体的なキャリア設計の重要性を説き、自律的人材を生み出す施策として、CDP制度などを紹介しています。また、活躍場所とのマッチング(戦略的再配置)が企業力を強化するとし、これからはキャリアコンサルティングの体制を国レベルでも整備していくことが必要であるとしています。

 冒頭のローパフォーマーのタイプ分けは興味深かったです。全体としては、ローパフォーマーを抱える企業の人事パーソンのみならず、上司や同僚、さらには働く個人に向けても書かれている本であり、啓発的要素の比重が高い内容となっています。ローパフォーマーを支援し、戦力化していくことの必要性を説き、小手先の対応ではなく、キャリア開発という大きな視野で捉えているのはよいと思いますが、「キャリア開発研修」だけでローパフォーマー対応が可能か、もう少し現場のマネジメントに踏み込んだ対応も必要ではないかという気もしました(著者は、株式会社日本マンパワーのキャリア開発研修のスペシャリストなので、こうした本の中身になるのだろう)。

 ローパフォーマーの存在を認識しながらも、具体的な対応がなされず、そうしたレッテルの貼りっ放し、放置しっ放しになりがちな企業にとっては、啓発される要素を含んだ本であると思います。

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This page contains a single entry by wada published on 2018年9月23日 22:35.

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