【2652】 ○ 太田 肇 『がんばると迷惑な人 (2014/12 新潮新書) ★★★☆

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努力の「量」ではなく「質」が求められる時代に。あとはどう実践するかか?

がんばると迷惑な人.jpgがんばると迷惑な人 (新潮新書)』['14年]

 かつては企業内でがんばっていさえすれば報われたものが、今日においては成果を出さなければ報われないというのは、『雇用の未来』の著者ピーター・キャペリが「ニューディール」と呼んだ、社員が企業に貢献できる限りは雇用するが、そうでなくなれば雇用は保証しないという欧米の雇用スタイルが、日本にも徐々に浸透しつつあることを示しているとも言えるし、また、まだ日本企業はそこまではいっておらず、報われないながらにも雇用の保証は相対的にみて欧米企業などよりは保たれているとも言えるのかもしれません。しかし何れにせよ、努力量よりも結果が求められる時代になりつつあることは間違いないかと思います。

がんばると迷惑な人06.JPG 本書は、はりきるほどズレる、意欲はあるのにスベる、やる気ばかりでツカえない、そんな人っていませんか(カバー折り返し)と読者に問いかけることから始まり、"がんばり"が価値を生む時代から、がんばることが価値を生まないばかりか、逆に価値を損ないかねない時代になり、努力の「量」ではなく「質」が求められる時代へのドラスティックな変化が起きたにも関わらず(著者はその変化の起きた時期を、1990年代を境にそうなったとしている)、実際にはがんばりの量に価値を見出す"がんばり病"からまだ抜け出せないでいる人がいて、この"がんばり病"が組織に蔓延すると、がんばることが自己目的化して、「手抜き」ならぬ「頭抜き」状態に陥ると警告しています。

 第1章では90年代に起きた変化と、なぜわが国がそこで選択を誤ったかを解説し、第2章では実際に組織や会社の中でどれだけ"がんばり病"が蔓延し、害を与えているかを解説しています。第3章では具体的な研究成果や事例などを紹介しながら、"がんばり病"を撃退し、良質なモチベーションを引き出すための方法を紹介しています。第4章では、同じ視点から機能しなくなったチームワークにメスを入れ、機能するチームワークづくりのポイントについて説明しています。

 第2章では、「時代遅れのモットーを部下に押しつける課長」などといった身近にいそうな"がんばり病"の弊害例を挙げ、"がんばり主義"が暴走し、周囲が多大な迷惑をこうむっている構図を浮き彫りにするとともに、日本人の場合、評価に情が入り易いことに加えて、法律などの制度が努力の量で評価することを陰で後押ししているとしています。

 第3章では、ムダながんばりをどう防ぐかについて書かれていて、過剰な管理をやめ、オフィスのレイアウトを、壁や窓の方に向いて座る方式、更には、隣人が気にならないような六角形や八角形に変えてみることなどを提案しています。また、思い切って時間外労働の割増率を引き上げた方がコスト意識から残業は減るだろうし、残存有給休暇を買い取れるようにした方が、会社に恩を売るような意識を捨てさせ有給休暇の取得促進につながるだろうとしているのは興味深いです。

 更にこの章では、質の高い努力をどう引き出すかについても書かれていますが、まず仕事が楽しい、面白いと感じられることが大事であり(内発的動機づけ)、その楽しさ、面白さの背後には、夢や目標があるはずだとしています。夢や目標は達成されてしまえばそれでモチベーションは終わるため、それを維持させるには夢や目標が青天井であることが必要であって、「野心」が努力の質を高めるとしています。では、「野心」の中心には何があるか―それは、承認欲求の一種である名誉欲であるとし、"がんばり"ではなく、実績を讃える表彰制度などを推奨しています。

 第4章では、"がんばり病"がチームまで冒す例を挙げています。またここでは、チームワークには「同質性を軸に成り立つチームワーク」と「異質性を軸に成り立つチームワーク」の2種類があり、日本人が今まで得意としてきたのは「同質性を軸にしたチームワーク」だが、これからは「異質性を軸に成り立つチームワーク」が求められるとしています。そして、ヒロイズムを肯定的に捉え、健全なヒロイズムはチームを強くするとしています。

 著者によれば、本書で述べていることは、最近説く人が多い「スローライフ」や「がんばらない生き方」といったものとはある意味で真逆であるとのことですが、確かに「がんばらないで」と言っているわけではなく、「がんばる」時間とエネルギーを「考える」ことに振り向けろと、「量」より「質」だと言っているわけです。

 全体を通して平易に書かれていて読み易かったし、ユニークな視点の提示によって啓発される要素も多々ありました。帯に「画期的仕事論」とありますが、あとは、こうした考えをどのように日々の仕事において実践していくか、そのためには常に「考える」ことが必要なのでしょうが、これがなかなかたいへんかも。但し、そうしたことを考える際の一定の視座は提供している本ではあると思います。



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和田泰明

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