2018年9月 Archives

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「ベテラン社員は少し背中を押せばイキイキ動き出すようになる」。啓発的だった。

「ベテラン社員」がイキイキ動き出すマネジメント.jpg     マイ・インターン dcd.jpg マイ・インターン01.jpg
なんとかしたい! 「ベテラン社員」がイキイキ動き出すマネジメント』['16年]「マイ・インターン [DVD]」['15年]ロバート・デ・ニーロ/アン・ハサウェイ
「月刊 人事マネジメント」2018年6月号
「月刊 人事マネジメント」2018年6月号.JPG「ベテラン社員」がイキイキ動き出すマネジメント .jpg 人事マネジメント系の雑誌でも、「シニア社員 [戦力化] ノート」といった特集が組まれたりする昨今ですが、本書によれば、多くの企業で50歳代の非管理職層が年々増加していくなか、そうしたベテラン社員についての「モチベーションが低く職場の問題児になっている」「新たなスキル開発が進んでおらず、やれる仕事が限られている」「年下上司の言うことを聞かずに困っている」といった(これまでもあった)定番的な問題が、これまでは成果を出すのは難しいとして放置されてきてきたのが、もはや放置しておけない状況になってきているとのことです。本書はそうしたベテラン社員(40代後半から65歳で、部下と責任部署を持つ管理職でない人を想定)をどう活性化していくか、或いはまた、50歳目前から、60歳以降も働き続ける人が元気に職場で活躍する状態を、どうやって作りだしていくかをテーマとしたものです。

 まず序章において、そうした問題の背景や原因を分析し、ベテラン社員がイキイキと働くために必要なものとして以下の3つを挙げています。
  ①やりがいのある仕事
 ②信頼できる上司
 ③職場の人間関係

 そしてこれらを実現するための、ベテラン社を活性化させる5つのマネジメント・ステップとして次の5つのステップを掲げ、以 下第1章から第5章で、5つのステップのポイントを解説しています。
 [ステップ1]土台をつくる...向き合い、気づき、知り合う 
  [ステップ2]目標を設定する...「与える」から、「考えさせる」へ
 [ステップ3]心に火をつける...プライドをシフトする
 [ステップ4]達成に向け支援する...仲間として支援する
  [ステップ5]フィードバックする...感謝と期待を伝える

 第1章(ステップ1:土台をつくる)では、ベテラン社員一人ひとりが個性的な人生を歩んできたのであり、そうした相手を知るために「仕事年表」を作成してもらい、それを共有することで、相手の思いや真実を引き出すことを勧めています。

 第2章(ステップ2:目標を設定する)では、いきなり課題を与えるとベテラン社員は逃げていくとし、目標設定の前に会議を通して組織の未来を考えてもらい、その上で目標を個別に考えてもらうことを推奨しています。また、自身のマネジメントについてベテラン社員がどう思っているか、自身がフィードバックを受けることができれば、まさに本物であるとしています。

 第3章(ステップ3:心に火をつける)では、ベテラン社員の持つ自分へのプライドを、自分の仕事を守るためのネガティブなプライドから、志を達成するためのものへとシフトさせることが肝要であり、自問自答を通してそのための気づきを促す「自己探求シート」というものを用いた面談を提唱しています。

 第4章(ステップ4:達成に向け支援する)では、メンバーの能力を120%引き出すためには、メンバーに敬意を持ち、メンバーを「部下」という上下の関係ではなく、お互いの成長を支援できる「仲間」に進化させていくことで一体感をつくることが大切であるとしています。

 第5章(ステップ5:フィードバックする)では、ベテラン社員は褒められたいと思っているのではなく、期待されたりと感謝されたりすることがその行動を変えるとして、対象者への感謝や期待を本人にフィードバックするための「フィードバックシート」というものを例示しています。

 また、巻末には、ベテラン社員の活性化に取り組み、成果を出している企業例として、トヨタファイナンス、NTTコミュニケーションズ、テルモ、サトーホールディングスの4社について、その取り組みが紹介されています。

 マネジャーや人事担当者とベテラン社員との間に仕事や働き方に対する共通の理解を育むことで、ベテラン社員は少し背中を押すだけでイキイキ動き出すようになるというのは、たいへん啓発的であるように思いました。もやっとした話になりがちなところを、「仕事年表」「自己探求シート」などのツールが紹介されていて、やるべきことが「見える化」されているのは良かったように思います。ただし、あくまでもそれらはツールであって、マネジャーや人事担当者が本書に書かれていることを実践するに際しては、個々人に相応のヒューマンスキルが必要になってくるようにも思いました。「ベテラン社員」問題が先送りされているような企業の人事担当者は、読んでおくのもいいのではにでしょうか。
        
マイ・インターン s.jpg ナンシー・マイヤーズが監督・脚本・製作を担当し、ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイが主演を務めた「マイ・インターン」('15年/米)という映画がありました。ニューヨークでファッション通販サイトを運営している女社長のジュールズ(アン・ハサウェイ)が、短期間で会社を拡大させることに成功し、そんな彼女の会社に、社会貢献の一環としてのマイ・インターン2.jpgシニア・インターン制度で採用された70歳の老人ベン(ロバート・デ・ニーロ)がやってきて、ジュールズは最初から本気でベンに仕事を任せる気はなく、ベンも最初は若者ばかりの職場で浮いた存在だったが、いつしか彼はその誠実で穏やかな人柄によって社内の人気者になっていき、さらには公私にわたって困難の壁に直面したジュールを支える大きな柱になっていくという話でした。

マイ・インターン ド.jpg 何と言ってもコメディ映画であるし、ロバート・デ・ニーロ演じるベンは70歳ながら「背中を押す」どころか何も指示されなくても社内を変えていく"スーパー老人"的存在ですが、最初からシニアは使えないと思い込まないこと、また、当のシニア自身も人が与えてくれるのを待つのではなく自分から努力しなければならないということを示唆しているという意味では教訓的だったかもしれません(身だしなみに気を使っていたなあ)。

 基本的には予定調和のストーリーは予測の範囲内なので、ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイという世代の異なる二人の演技派俳優の演技を楽しむ映画として観ましたが、ロバート・デ・ニーロは、同じコメディ映画であるデヴィッド・O・ラッセル監督の「世界にひとつのプレイブック」('12年/米)でジェニファー・ローレンスと共演し(ジェニファー・ローレンスはこの作品でアカデミー主演女優賞を受賞、ロバート・デ・ニーロも助演男優賞にノミネートされた)、この「マイ・インターン」では、ジェニファー・ローレンスと同時に「レ・ミゼラブル」('12年/英)でアカデミー女演女優賞を受賞したアン・ハサウェイと共演と、積極的に演技派女優と共演しているのがスゴイなあと思います。相手もロバート・デ・ニーロとの共演を名誉なこととして望むのでしょう。アン・ハサウェイはロバート・デ・ニーロとの対談で「あなたは伝説です」と述べているし、また、撮影所でもロバート・デ・ニーロは謙虚で、全然偉ぶってなかったと言っています。ロバート・デ・ニーロ自身がまさに理想のシニアといったところでしょうか。

マイ・インターン(字幕版)
マイ・インターン 3.jpgマイ・インターン dcd.jpg「マイ・インターン」●原題:THE INTERN●制作年:2015年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ナンシー・マイヤーズ●製作:ナンシー・ママイ・インターン  s.jpgイヤーズ/スザンヌ・ファーウェル●撮影:スティーヴン・ゴールドブラット●音楽:セオドア・シャピロ●時間:121分●出演:ロバート・デ・ニーロ/アン・ハマイ・インターン .jpgサウェイ/レネ・ルッソ/アンダーズ・ホーム/ジョジョ・クシュナー/アンドリュー・ラネルズ/アダム・ディヴァイン/ザック・パールマン/ジェイソン・オーリー/クリスティーナ・シェラー●日本公開:2015/10●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★☆)

会社専属マッサージ師フィオナ=レネ・ルッソ(「アウトブレイク」('95年))/ロバート・デ・ニーロ

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今後の人事の潮流を(コンセプチャルに)俯瞰するうえでお薦め。

個性を活かす人材マネジメント.jpg   谷内 篤博.jpg 谷内 篤博・実践女子大学教授
個性を活かす人材マネジメント: 近未来型人事革新のシナリオ』(2016/09 勁草書房)

 グローバル化した企業・社会で必要な人材マネジメントとはどのようなものか。本書は、企業の人事部、コンサルティング会社を経て、現在大学で教鞭を執る著者が、従来の人事管理論を超えて、今後求められるキャリア形成や新たなマネジメントシステムを解説したものであり、全体的な流れとしては集団主義から個性尊重主義へのパラダイムシフトを提言しています。

 まず序章では、企業を取り巻く環境の変化を概観するとともに、これまでのわが国の人材マネジメントの特徴を踏まえ、その変革の方向を大きく
①組織的管理(コントロール)から自律的管理(ディベロップメント)へ
②集団主義から個人尊重主義へ
③会社主導のキャリア形成から個人の自律性を重視したキャリア形成へ
④中央集権的な人事部から戦略的・分権的な人事部へ

の4つに集約し、本書の論理展開に結びつけています。

 第1章では、環境の変化を大きく2つに分け、1つは市場や消費者の変化と経営のグローバル化、もう1つは働く人々の社会観・組織観や仕事観の変化を取り上げ、こうした変化に応えていくために、人事パラダイムを集団主義から個人主義へと転換していく必要があるとしています。

 第2章では、わが国の戦後の人事制度の歴史的変遷を概観し、人事制度の発展段階を4段階に分け、その特徴を明らかにしています。
 (1)第1段階:戦後復興期(1945~1959年)――年功主義人事
 (2)第2段階:高度経済成長期(1960~1969年)――職務主義人事
 (3)第3段階:経済変動期(1970~1990年)――能力主義人事
 (4)第4段階:バブル経済崩壊後(1991~2010年)――成果主義人事

また、コンピテンシーモデルの人事制度としての妥当性、信頼性についても言及するとともに、第5段階としての新たな人事制度を提言しています。それが、個性尊重主義であるということです。

 第3章では、これまでの組織的管理を中心とする人材マネジメントから、個人の自律的管理を重視した人材マネジメントに転換していくことを強調するとともに、自律的管理の人材マネジメントの大きな枠組みを提示し、また、自律的管理に求められるキャリア・アドバイザーとしてのミドル像についても解説しています。

 第4章では、前章の提言に基づき、自律的管理の人材マネジメントを展開するための具体的なインフラ整備として、個人と組織の新たな関係づくりと人事部に求められる新たな役割・機能について解説するとともに、キャリア・オプションの多様化や個人の自律性を重視した新たなワークシステム(複線型人事制度、職種別採用とドラフト会議、社内公募制とFA制度等)について解説しています。

 第5章では、キャリア自律に基づく具体的なキャリア形成のあり方を、最新の理論や考え方を踏まえ解説しています。同時に、自立した個の組織外への流出を阻止する人事施策(A&R施策)についても先進事例を踏まえ、経済的インセンティブ、心理的インセンティブの両面から解説しています。

 第6章では、組織イノベーションの創出に向けた個人尊重主義人事の展開に求められる組織マネジメントとリーダーシップについて解説しています。まず、組織イノベーションを生み出すためにはミドルが戦略ミドルに脱皮するとともに、組織形態もネットワーク型オーケストラ組織に転換する必要性を述べています。また、戦略ミドルに求められるリーダーシップスタイルも創造的リーダーシップに転換していくべきことを、先行研究から著者なりの結論として導き出しています。

 終章では、本書で提唱した人事革新の今後の展望と残された課題について解説しています。

 コンセプチャル度の高い本ですが、企業経営者や人事担当者、経営コンサルタントや研究者、学生などターゲットは広く想定して書かれているとのこと。著者も述べているように、第5章・第6章が本書で提示されている人事革新の核心部分であり(この部分をもっと膨らませて欲しかった気もする)、第5章ではキャリア形成のあり方とA&R施策について、第6章では組織マネジメントとリーダーシップについて書かれています。

 集団主義から個性尊重主義への転換という大きな流れに沿ってかっちりと纏まった内容であり、やや堅めの内容ですが、人事パーソンであれば、今後の人事の潮流を(コンセプチャルに)俯瞰するうえで、こうした本を読んでみるのもいいのではないでしょうか。本書に書かれている変革の方向性は的確な指摘であり、現役の人事パーソンであれば、「近未来型」と言うより、もう既に起きていることとして捉えられるのではないでしょうか。個性尊重主義の人事は2000年代から言われ続けていることであり、先進事例なども紹介されていますが、そうした事例を参照しつつ、自社の中ではどうやって人事革新を進めていくべきかを具体的に検討し、実施して行く時期に来ているように思います。

《読書MEMO》
●戦略ミドルに求られる新たな役割・機能(第6章・216p)
①ビジョン策定機能
 内外の経営環境、自社の競争力の分析の中から戦略課題を抽出し、その達成に向けたビジョン(ロードマップ)を策定する
②コンダクター(旗振り役)機能
 策定されたビジョンや目標の達成に向け、組織メンバーを組織化するとともに、自ら先頭に立ってメンバーを引っぱっていく
③チャネラー機能
 組織内外の情報ネットワークを駆使し、コミュニケーションセンターとしての情報の中枢機能を果たす
④バッファー機能
 ビジョンや目標達成のプロセスで発生する組織間のコンフリクトや、上司と部下の期待する役割のズレなどの調整を行い、組織全体の協働へと導いていく。
⑤カタライザー(触媒)機能
 ナレッジの創出に向け個人の自律性を促すとともに、集団や個人の間に化学反応を引き起こし、組織の創造力を高める。

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ポスト成果主義・人材多様性に対応する「第三の報酬」=社会的報酬(キャリア的&時間的報酬)。

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「人事管理論」再考――多様な人材が求める社会的報酬とは』(2016/09 生産性出版)

 本書は、これからのポスト成果主義と人材多様性に対応できる人事管理の姿とはどのようなものかを考察したものです。著者によれば、人事管理に関する研究は、組織論、もしくは組織行動論および人的資源管理論において活発であり、成果主義の破綻やダイバーシティ・マネジメントの内容を取り扱うものも少なくないが、ポスト成果主義のあるべき人事管理の姿とダイバーシティ・マネジメントによって引き起こされる人事管理の具体的な変容とを接合する研究は少ないとのことです。

 著者は、もはや人々は「賃金」と「やりがい」といった従来の二大報酬のみによって動機づけられる存在ではなくなっているとし、生活の充実を求める人々にとって不可欠な「時間的余裕」と短期的なやりがいや刹那的な充実感とは異なる「成長の実感」が第三の報酬として求められており、このことを可能にするワーク・ライフ・バランス施策、公正な評価・処遇制度、中長期的なキャリア支援策によって、これまでの報酬体系を再構築することが必要であるとしています。本書は、これらの報酬を新たな「社会的報酬」と名づけ、今後の本格的な研究の起点となることを意図して書かれたものであるとのことです。

 前半にあたる第1章から第4章は、主に欧米と日本の人事管理の系譜を辿りながら、今日の人的資源管理および成果主義の抱える課題を抽出して仮説を構築し、その検証と補強をしています。「第1章 人事管理が抱える限界」では、20世紀初頭の科学的管理法を契機とした欧米における人事管理の発生から人事労務管理の特徴を概観し、1980年以降に登場した人的資源管理(HRM)の概要を詳らかにし、更に現在の人事管理が抱える限界である、①人事管理における社会的視点おの欠落、②金銭面と心理面のみによる報酬制度の限界、②フルタイム労働者と男性正社員を基軸とした管理構造を指摘、ポスト成果主義と人材多様性に対応できる新たな報酬管理の必要性を提起しています。

 「第2章 社会的視点の欠落」では、第1章で指摘した「社会的視点の欠落」について検討しています。社会における企業の役割の変化を企業の社会的責任(CSR)の概念から吟味し、従業員の両面性を踏まえた人事管理を設計する意義を指摘しています。「第3章 金銭的報酬と心理的報酬の偏重」では、従来の報酬制度の限界につて検証しています。従来の年功制、職能資格制度、成果主義の特徴を報酬管理の視点から明らかにし、従来の報酬体系の分解・再編から帰結する社会的報酬の概念を提起しています。「第4章 男性正社員に基軸を置いた管理構造」では、「従業員の同質性を前提とした人事管理」について検証しています。ダイバーシティ・マネジメントの概念を概観した上で、個人の内なる多様性としてのワーク・ライフ・バランスの重要性と多様な人材への対応が企業業績の面からも急務であることを指摘しています。

 ここまでの検証により、ポスト成果主義と人材多様性に必要とされる新たな報酬がキャリア的報酬と時間的報酬からなる社会的報酬であることが明らかになり、「第5章 ケーススタディ―A社における人事改革」では、著者が実際に企業内で実務責任者として携わった人事改革事例を取り上げ、社会的報酬に基づく人事管理の方向を導いています。『第6章 第1の報酬:「キャリア的報酬」』においては、従来の日本企業が行ってきた人事管理を"長期的な将来価値に基づく見なし型人事管理"とし、プロフェッショナルに対応する人材価値型人事管理によってキャリア的報酬を提供すべきことを指摘しています。さらに『第7章 第2の報酬:「時間的報酬」』では、働き方の変化を企業や政府のワーク・ライフ・バランス(WLB)施策の動向から吟味し、働くすべての人々が何らかの制約を抱えていることを明らかにし、多様な制約社員に対応するWLBマネジメントによって時間的報酬を提供すべきことを指摘しています。

 以上の検証とモデル化を踏まえた本書の結論として、「終章 社会的報酬に基づく人事管理の展開」では、①企業の社会的合理性と従業員の両面性を重視する新たな報酬体系、②プロフェショナルを公正に評価・処遇。育成する人材価値管理に基づくキャリア的報酬、③多様な働き方を許容するWLBマネジメントによる時間的報酬の必要性を主張しています。

 これからの人事管理の在り方を大きなスケールで新たなパラダイムで捉えており、それでいて、明確な方向性を示している本だと思いました。ポスト成果主義と人材多様性に必要とされる新たな報酬が、キャリア的報酬と時間的報酬からなる社会的報酬であるとの指摘は、本書で示された数々の検証によって理解されやすいものとなって、また、示唆に富むものでもあるように思いました。著者が述べているように、こうしたコンセプトが学界で今後の研究の起点となることは歓迎されることだと思われますし、また、実務家の間でも強く意識し、更には、次に何をすべきかを考える起点としていくべきだとの印象を抱きました。

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「グローバル人材のHRMを初めて体系化」したテキスト。

国際人的資源管理 (ベーシック+) .JPG国際人的資源管理 (ベーシック+).jpg
国際人的資源管理 (【ベーシック+】)』(2016/07 中央経済社)

 本書のまえがきによれば、これまでに国際人的資源管理について書かれた本の多くは、学究的な研究をベースにした学術書か、実務家をターゲットにした実務書のどちらかであり、例えば大学の授業などで、国際人的資源管理についての基本的概念や理論的枠組みを平易なかたちで解説するテキストがなかったとのことです。

 本書は、国際人的資源管理の基礎を身につけたい学生をターゲットとした入門テキストであるとともに、企業などで国際人的資源管理に取り組む実務家が、さまざまな実務の背景にある基本的な考え方や枠組みを押さえておく上で役立つテキストであることも狙いとしているとのことです。

 第Ⅰ部「基本フレームワーク」では、国際人的資源管理を全体的に俯瞰し、多国籍企業による国際人的資源管理の在り方についての重要な知識やフレームワークを概観しています。具体的には、国際経営の知識、人的資源管理一般に関する知識の獲得を踏まえ、国際人的資源管理特有の理論的枠組みが示され、また、世界の各地域での人的資源管理がどのような特徴を持っているのか国際比較しています。

 第Ⅱ部「国際的資源管理のサブシステム」では、第Ⅰ部における国際人的資源管理の全体的な俯瞰を踏まえた上で、国際人的資源管理を構成する各サブシステムについて解説されています。国際的な人材配置、人材育成、報酬、人事評価、労使関係の在り方について解説され、最後に、国境を越えて移動する海外派遣者のマネジメントについて書かれています。

 第Ⅲ部「スペシャル・トピックス」では、国際人的資源管理を経営戦略の視点から捉える理論的枠組みを紹介した後、近年の国際人的資源管理に特有なトピックスについて扱っています。具体的には、多国籍企業における使用言語・コミュニケーションの問題、国際的M&Aにおける人的資源管理、新興国発多国籍企業による人的資源管理の特徴を挙げ、最後に、日本企業の国際人的資源管理の状況を説明しています。

 テキストであるため、体系的に構成されている上に(帯には「グローバル人材のHRMを初めて体系化」とある)、各章の冒頭に学習ポイントやキーワードが整理されているとともに、章末には、さらに理解を深めるためにどのようなことを調べ、どのような議論したらよいか、さらに、どのような本に読み進めばよいかが挙げられており、参考文献も数多く列記されています。

 内容的には、例えば第Ⅰ部で言えば、、先に示したように、国際人的資源管理のフレームワークを示す前に人的資源管理のフレームワークを解説するなど、一般的な「人的資源管理」論と重なる部分もあり、学生はともかく、人事パーソンが本書を読む場合は、復習的な側面もあるかもしれません。一方で、本文やコラムの中で実際の企業事例も多く紹介しており、近年の国際人的資源管理のトレンドが網羅的に把握できるなど、人事パーソンが読んでも新たな知見が得られる本ではないかと思われます。

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ローパフォーマー対応がなされず、放置しっ放しの企業にとっては、啓発される要素を含んだ本。

人事コンサルタントが教える ローパフォーマー対応.jpg人事コンサルタントが教える ローパフォーマー対応』(2016/03 日本経済新聞出版社)

人事コンサルタントが教えるローパフォーマー対応1.jpg 本書で扱っているローパフォーマーとは、当人の「低業績」に加えて、「低評価」となっている社員のことであり、いわゆる問題社員やモンスター社員などは含まれていません。本書では、低業績・低評価のローパフォーマーは、しかるべき対応と本人の自覚・努力があれば充分に再生可能であり、また、再生の道を考えていかねばならないとしています。著者は、「今や、誰でもローパフォーマーになる時代である」とし、レッテルの貼りっ放し、放置しっ放しにするのではなく、ローパフォーマーを支援し、戦力化していくことが必要だとしています。

 まず、第1章では、ローパフォーマーを、「年齢(ベテラン・若手)」と「力を出せない・力を出さない」という2軸の掛け合わせの中で、①採用ミス・放置型、②基本能力不足型、③言われたことだけ・やる気なし型、④センス・スキル陳腐化型、⑤青い鳥探し型、⑥人間関係悪化型、⑦部署・仕事・事業消滅型の7つのタイプに分類し、それらに共通する特徴として、「組織の期待に応えない」「人間関係が悪い」「柔軟性がない」の3点を挙げています。

 また、第2章では、ローパフォーマーの存在は、本人だけの問題でなく、ハイパフォーマーが流出したり管理職の活躍の場が奪われたりするなどの弊害も生み、そうしたローパフォーマー化は、学ばない・変わらない本人のせいだけでなく、放置する上司や会社の曖昧な戦略にも原因があるとしています。

 そのうえで、第3章では、上司が部下の可能性を信じて変わらなければ、部下も変わらないとして、問題解決へのアプローチとして、現場レベルでできること、上司がやるべきこと、会社としてやるべきことを整理しています。たとえば会社としてやるべきこととしては、①ローパフォーマーの定義を明確化し、②該当者のリストを作成して、③再生に向けてのコミットメントを打ち出し、④再生に向けた仕組み作りをすることであるとしています。具体的な支援プログラムの概要として、①上司研修、②対象者本人研修、③上司のOJT指導面談+外部カウンセラー面談、④判定会議という流れを解説しています。さらに、先に挙げた7つのタイプ別の対応方法を示しています。

 さらに、第4章では、5人のローパフォーマーの再生例を示し、その成功要因はどこにあったのか、再生できる人とできない人の違いを分析しています。第5章では、70歳定年時代の到来に向けて、自分を劣化させないためにはどうすればよいかを説いています。

 最終第6章では、自社でローパフォーマーを生まないための処方箋として、主体的なキャリア設計の重要性を説き、自律的人材を生み出す施策として、CDP制度などを紹介しています。また、活躍場所とのマッチング(戦略的再配置)が企業力を強化するとし、これからはキャリアコンサルティングの体制を国レベルでも整備していくことが必要であるとしています。

 冒頭のローパフォーマーのタイプ分けは興味深かったです。全体としては、ローパフォーマーを抱える企業の人事パーソンのみならず、上司や同僚、さらには働く個人に向けても書かれている本であり、啓発的要素の比重が高い内容となっています。ローパフォーマーを支援し、戦力化していくことの必要性を説き、小手先の対応ではなく、キャリア開発という大きな視野で捉えているのはよいと思いますが、「キャリア開発研修」だけでローパフォーマー対応が可能か、もう少し現場のマネジメントに踏み込んだ対応も必要ではないかという気もしました(著者は、株式会社日本マンパワーのキャリア開発研修のスペシャリストなので、こうした本の中身になるのだろう)。

 ローパフォーマーの存在を認識しながらも、具体的な対応がなされず、そうしたレッテルの貼りっ放し、放置しっ放しになりがちな企業にとっては、啓発される要素を含んだ本であると思います。

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「左遷」を通して日本企業の組織風土的な特質を分析。附落ちする分、既知感もあり。

左遷論73.JPG左遷論.jpg     楠木 新.jpg 楠木 新 氏
左遷論 - 組織の論理、個人の心理 (中公新書)』['16年]

 著者は、これまで『人事部は見ている』('11年/日経プレミアシリーズ)、『働かないオジサンの給料はなぜ高いか』('14年/新潮新書)、『知らないと危ない、会社の裏ルール』('15年/日経プレミアシリーズ)などで、日本的人事の仕組みを分かりやすく解説してきましが、本書では「左遷」という視点から"日本的人事"なるものを分かりやすく解説するとともに、そのベースにある日本企業の組織風土的な特質を分析しています。

 菅原道真の大宰府転任や森鷗外の「小倉左遷」からはじまって、企業小説に見られる左遷や、著者が取材したビジネスパーソンの経験した生々しい左遷の体験談などを数多く取り上げていて、(テーマがテーマだけに?)読み物を読むように読み進むことができます。

 著者は、当人にとって不本意で、理不尽と思える人事も、組織の論理からすれば筋が通っている場合は少なくないとし、そうした意識が生じる背景に、人は誰しも自分を高めに評価し、客観視は難しいという側面があることを指摘しています。

 また、定期異動日には大騒ぎになる日本企業と、左遷という概念そのものが無い欧米企業―という対比から、左遷を生み出す仕組みを企業組織の中で考えていくと、終身雇用(長期安定雇用)、年次別一括管理、年功制賃金といった日本独自の雇用慣行が浮かび上がってくるとしています。

 但し、左遷は世代によっても異なり、同質的な構成員の中での競争を基礎とした旧来型の左遷(代表例として江坂彰氏の企業小説『冬の火花』(1983年)が何度も出てくる)と、経営の効率化によって生まれる新型の左遷があって、ただ、旧来型の左遷が一気に消滅するわけではなく、新型の左遷も企業によってその進み方は大いに異なるようだとしています。

 終盤では、NHKを辞めてフリーのジャーナリストとして活躍中の池上彰氏など、"左遷"をチャンスに変えた人の例を取り上げています。「お任せする」「空気を読む」といった組織の均衡を保つための態度が暗黙の了解となっていて、また、40歳以降になると自力での敗者復活が難しい日本の伝統的な企業において、自ら「会社を降りる」ことも難しいとしながらも、一方で、組織の枠組みを外し、あるいは会社や上司との関係を見直すことで、左遷をチャンスに変えた人も多くいて、そうした人々に通底するのは、自己への執着や他者への関心であったとしています(病気をしたことが転機になった人も含む)。

 また、終章においては、「道草休暇」という、育児休業、介護休業のような目的のある休暇ではなく、理由のいらない休暇を提唱しています。人事異動や配置転換、出向などは会社の業務命令で、正当な理由なく拒むことが出来ないとはどこの企業の就業規則にも書かれていることで、実質的に強制力を持っているわけですが、とは言え、企業の立場から、今後の人事制度や人事評価は、一律対応から個別対応に向かい、「選択と個別交渉」がキーワードになるとしています。

 日本の組織において、先に述べた「お任せする」「空気を読む」といった態度が生じやすいのは、誰かがそうした雰囲気を作っているのではなく、自然と出来上がっているものなので、自分で払拭するのは難しく、ならば働く個人の立場からは、、そこから離れてもう一人の自分が個性を発揮する場所を探すべきであるとし、また、その「もう一人の自分」の形は多様であって、もう一人の自分が社外でイキイキできれば、社内の自分もイキイキできるとしています。著者は昨年('15年)36年間勤めた生保会社を定年退職したとのこと。会社勤めと著述業の二足の草鞋(わらじ)を履いた著者らしい言葉とも言えるかと思います。

 全体としては、人事パーソンにとっては腑に落ちる内容と言うか、本書にもありますが、人事上オフィシャルには左遷というものは無いことになっており、本人がそう思っているだけで、会社は本人の将来を考えて幅広い能力を身につけさせようとして配置転換させたのが、専門性を高めるために今のキャリアを継続したいと思っていた社員にはそう映りがちであるというのが大概のところではないでしょうか。

 附落ちする分、既知感があり、それだけインパクトは弱かったかもしれません。但し、左遷されたと思っている社員への対応として、感情的なケアが一番効果的であるというのは、確かにその通りだと改めて思った次第です。

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「●上司学・リーダーシップ」の インデックッスへ

どこの企業でも考える人事施策を1つ1つ積み上げてきた。結局、やるかやらないかの違いだろう。

ワーク・ルールズ! .jpgワーク・ルールズ!  .jpg Laszlo Bock.jpg Laszlo Bock
ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える』['15年]

グーグル logo.jpg 本書は、1972年、共産主義政権下のルーマニアに生まれ、マッキンゼーやGE勤務を経て2006年にグーグルに入社、9年間に従業員が6千人から6万人に増えていく過程で、グーグルの人事システムを設計し進化させてきた、同社の人事担当上級副社長によるものです。グーグルにおける採用・業績評価・人材育成・福利厚生の仕組みや考え方を通して、人材を活かし、組織を有効に機能させるうえで効果的であると考えられるワーク・ルールの数々を示しています。

 第1章・第2章では、グーグルの創業エピソードなどを紹介しながら、社員が創業者のように行動すること、自分の仕事は重要なミッションを持つ天職だと考えること等をルールとして掲げています。第3章から第5章にかけては、採用について書かれており、時間をかけて最高の人材だけを雇うこと、何らかの点で自分より優れた人材だけ雇うこと、マネジャーに自チームのメンバーの採用を任せないこととし、卓越した採用候補者を見つけるにはどうしたらよいか、最高の採用テクニックを発揮するにはどうすればよいかを説いています。

 第6章では、マネジャーから権力を取り上げ、社員を信頼して運営を任せるにはどうすればよいかを説き、第7章では、評価や報酬でなく、個人の成長に焦点を合わせることで業績を改善せよとして、そのための業績評価のポイントを示しています。第8章では、最大のチャンスは最低(ボトムテール)の社員と最高(トップテール)の社員にあるとし、この2本のテールを管理することの重要さを説いています。第9章では、最良の教師は社内にいるとして、学習する組織を築くにはどうすればよいかを説いています。

 第10章・第11章では、報酬には大きな差があってよく、一方、社員がいちばん必要としている時には社員に寄り添う必要であるとしています(グーグルの社員が亡くなった場合、遺族に社員の死後10年間、給与の50%が支給されるという制度が紹介されている)。第12章・第13章では、社員を健康と富と幸福に導くにはどのような選択肢を設ければよいか、失敗に直面したときはどうすればよいかを説いています。第14章では、これまで述べてきたことを総括し、チームと職場を変えるための10のステップとしてまとめています。

 本書を読む前は、グーグルという極めてイノベーティブな文化を持つ企業のワーク・ルールが、普通の企業にとっては果たして参考になるのかという思いがありましたが、読んでみたら、確かにグーグルならではの話もなかった訳ではないですが、むしろ大部分は、どこの企業でも考えるであろう人事施策であり、それらを試行錯誤や失敗を繰り返しながら1つ1つの積み上げていた先に、官僚主義に陥らず、ベンチャースピリットを保ち続ける、今日のグーグルがあることが理解できました(著者も「グーグルのプログラムの大半は誰でも真似できる」としている。結局、やるかやらないかの違いだろう)。

 個人的には、第3章から第5章にかけて「採用」について3章を割き。なぜ採用は組織における唯一にして最重要の人事活動なのか、いかにして最高の人材を採用するか、その難しさについて説いているのが印象的でした(グーグルは、世界で入社するのが最も困難な会社の1つであり、本書でも、「まずは100万人から300万人の求職者からの応募を受け付け(中略)約0.25%しか雇わない」、「ハーバード大学は志願者の6.1%に入学許可を出した(中略)(ハーバードはグーグルの)25倍も簡単なのである」としている)。

 550ページを超す大著ですが、これからの企業の人事マネジメント(本書では「ピープル・オペレーションズ」という言葉を使っている)やそこで働く人々の働き方の在り方について考えるうえで様々な刺激と示唆を与えてくれる本であり、人事パーソンにお薦めしたい1冊です。

《読書MEMO》
●社員への権限委譲のために(第6章/241p)
□ステータスシンボルを廃止する
□マネジャーの意見ではなく、データにもとづいて意思決定を行う。
□社員が自分の仕事や会社の指針を定める方法を見つける。
□期待は大きく。
●業務評価のために(第7章/286p)
□目標を正しく設定する。
□同僚のフィードバックを進める。
□キャリブレーションを活用して評価を完了させる。
□報酬についての話し合いと人材育成についての話し合いを分ける。
●プロジェクト・オキシジェンの8つの属性(第8章/312p)
1 良いコーチであること。
2 チームに権限を委譲し、マイクロマネジメントしないこと。
3 チームのメンバーの成功や満足度に関心や気遣いを示すこと。
4 生産性/成果思考であること
5 コミュニケーションは円滑に。話を聞き、情報は共有すること
6 チームのメンバーのキャリア開発を支援すること
7 チームに対して明確な構想/戦略を持つこと。
8 チームに助言できるだけの重要な技術スキルを持っていること。
●2本のテールを管理するために(第8章/324p)
□困っている人に手を差し伸べる
□最高の社員をじっくり観察する
□調査やチェックリストを使って真実をあぶり出し、改善するように社員をせっつく
□自分のフィードバックを公表し、至らなかった点について改善するよう努力して範を垂れる。
●チームや職場を変える10のステップ(第14章/521p)
①仕事に意味をもたせる
②人を信用する
③自分より優秀な人だけを採用する
④発展的な対話とパフォーマンスのマネジメントを混同しない
⑤「2本のテール」に注目する
⑥カネを使うべきときは惜しみなく使う
⑦報酬は不公平に払う
⑧ナッジーきっかけづくり
⑨高まる期待をマネジメントする
⑩楽しもう!(そして、①に戻って繰り返し)

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「LGBT」について知ることからはじめ、対応施策を分かりやす説いたハンドブック。

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職場のLGBT読本:「ありのままの自分」で働ける環境を目指して』(2015/07 実務教育出版)

村木 真紀氏(朝日新聞2016年6月11日付「フロントランナー」)
職場のLGBT読本 著者.jpg 「LGBT」とは、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)をはじめとする性的マイノリティの総称であり、調査(電通総研)によると全人口のおよそ5%~7%強存在するといわれています。その意味で、1人でも多くの人がLGBTであることを隠さず、ストレスなく働けるという、性的マイノリティと共に気持ちよく働く職場づくりというのは、最先端の経営課題であると言え、本書は、そのあとがきによれば、おそらく日本で初めて「ビジネス書・人事」の棚に置かれるLGBTの本であるとのことです。

 第1章「LGBTについて理解を深めよう」と第2章「LGBT当事者アンケートで見る職場環境の現状」では、LGBTに関する一般的な情報が提供されています。第1章では、LGBTとは何か、その直面しがちな困難や苦悩は何か、LGBT人口はどのくらいいるのか、人はなぜ同性愛者に生まれるのか、LGBTはなぜ差別されるのか、国際的な基準はどうなっているのか、同性愛者やトランスジェンダーの社会的課題は何か、といったことを解説し、更には、LGBTの世界史、日本史を概観することで、LGBTに関する基礎知識を網羅しています。

 第2章「LGBT当事者アンケートで見る職場環境の現状」では、具体的にLGBTを取り巻く職場環境の現状がアンケート調査により明らかにされており、求職時から実際の勤務までLGBTが直面する様々な問題と、それに対してどのような施策が求められ、また、実際そうした施策がLGBTの勤労意欲にどう関係しているかを示すとともに、LGBT施策は当事者に限らず、ほかの人の職場環境にもプラスの効果があるとしています。

 第3章「LGBTが職場で抱える10の課題」では、LGBTが働く上で抱えている具体的な問題を当事者の声を交えて紹介し、LGBTのそれぞれの悩みに対して相談窓口、福利厚生、社会保障の各面からどのような対応が可能か、また、LGBTのキャリア設計や取引先・顧客との関係の在り方などについても解説しています。

 第4章「先進的な企業の取り組み事例10選」では、LGBTの存在を認め、支援し、積極的に取り込もうとする、そうしたダイバーシティ&インクルージョン施策を実施している企業の取り組み事例を紹介しています。

 第5章「職場環境整備における10のポイント」では、2014年7月から男女雇用機会均等法のセクハラ指針が改正され、LGBTへの差別もセクハラの対象であるされていることを前提に、企業としてLGBT差別をどう認知し、どのような対策をとっていくべきか、実務的なフレームワークが紹介されています。

 第6章「当事者やアライが語る自分らしく働ける社会」では、LGBT当事者や、その人たちと共に働く人たちへのインタビュー集になっており、理解がある職場に恵まれ、すでに自分らしくいきいきと働くことができているLGBT当事者や、その上司や同僚などアライ(LGBTを応援するストレート)の人たちの話も収められています。

 本書によれば、LGBTがストレートと共に互いに気持ちよく働ける職場をつくるということは、最先端の経営課題であるとともに、そのことをCSRの1テーマであると見なす動きが日本でも出てきたとのことです。一方で、LGBT対策にまったく手つかずで、どこから手をつけていいのかわからないという企業も多くあるように思われますが、本書は、そうした企業の人事担当者のみならず、マネジャーや一般ワーカーにも分かり易いハンドブックとなっています。

 まずLGBTについて知ることからはじめ、人事におけるLGBT施策をどのような流れで進めていけばよいか、LBGTフレンドリー化(アライ化)への流れなどについても解説されていますが、アライになるには、理解(LGBTをよく知ること)と共感(LGBTと実際に触れ合うこと)が必要であるとの視点に立っています。知識的側面及び啓発的側面、個人の行動的側面及び企業としての施策的側面をカバーした、バランスのとれた入門書であるように思いました。

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老年学の観点からシニア人材マネジメントに言及した初の本。

シニア人材マネジメントの教科書.jpgシニア人材マネジメントの教科書 ―老年学による新アプローチ』(2015/05 日本経済新聞出版社)

 本書では、これまで企業で行われてきたシニア人材に向けた施策だけでは、シニア人材を活かし組織パフォーマンスを上げることは難しいとしています。なぜならば、そこにはシニア人材そのものを理解するという根本的な部分、すなわち「世代」という観点が抜け落ちているからであるとのことです。

 シニアには心理、身体、キャリアスタイルなど、若年層とは全く異なる特徴があり、OJTのやり方一つにしても若年層とはやり方を変える必要があるが、そうした「世代によって、学習方法、学習の成果の活かし方は違う」といった観点が、企業研修に携わる人の間ですら抜け落ちていたりするとのことです。

 そこで本書では、「老年学」(ジェンロントロジー)における近年の成果が、シニア人材を理解する上で有益であるとしています。老年学とは、人は加齢とともにどのように変化するかを、心理、教育、経済、労働、医学など各分野から学際的に研究する学問であり、本書は、老年学の観点からシニア人材マネジメントに言及した初の本であるとのことです。

 第1章、第2章で、シニア社員はなぜお荷物扱いされるのかを考察するとともに、シニア社員は若い社員とどう違うのかを解説しています。第3章、第4章では、ジェロントロジーの観点からシニアという存在を改めて捉え直すとともに、「シニア社員に対するジェロントロジー的対応術」を解説しています。第5章では、シニアマネジメントで成功している会社を事例で紹介し、最終第6章では、シニア人材を活かすためには管理者に対するジェロントロジー教育が必要であると訴えています。

 特に第4章の「シニア社員に対するジェロントロジー的対応術」は、シニアに対してはOff-JTよりOJTの方が効果的であるとか、「分かり合おう」という気持ちは持たない方が逆にうまくいくとか、相手のことをじっくり傾聴してしまうと自分がすり切れてしまう恐れがあるとか、これまで良かれと思ってやっていたことが、意外とそうではなかったりする場合もあることを教えてくれます。

 また、10.5ポイントの活字で作成された資料はシニアには読みたくない気持ちを抱かせるとか、研修中のトイレ休憩は長めにとるとか、シニアに集中して話を聞いてもらえるようにするために、すぐにでも使えるようなテクニックも紹介されています。聴力の関係から、若い女性の高い声がシニアにはウケないというのは、今まで全く気がつきませでした。

 終章にあるように、シニア人材を活用するためには、ミドル層向けの教育・研修が必要であり、そのことからすると、本書のメインターゲットはミドル層かもしれません。しかしながら、著者も述べているように、シニア層も、老年学の当事者として、その伝道師になっていただくために、本書を読まれるとよいかと思います。やや、身につまされる思いをする箇所もあるかもしれませんが...。

《読書MEMO》
●目次
〈目次〉
第1章 シニア社員はなぜ、お荷物扱いされるのか?
 部下を失った途端に、やる気がなくなるというのは本当か?
 「成功体験が自分を育てる」は嘘 ほか
第2章 60歳新入社員と新卒新入社員はこう違う
 60歳新入社員の3タイプ(転職組・再雇用組・雇用延長組) ほか
第3章 ジェロントロジーでシニアを理解する
 衰える能力と伸びる能力
 若年層よりも、ストレスに弱いシニア世代 ほか
第4章 シニア社員に対するジェロントロジー的対応術
 シニアに向いている仕事、向かない仕事
 「分かり合おう」という気持ちは、今すぐ捨てる
 「じっくり傾聴」は自分がすり切れる
 タブレットが反応しない! 操作下手はエイジングの証拠
 「聞いていない」は大きな誤解。原因は加齢性難聴
 労災防止と持病の関係
 「座っているから疲れない」は若年世代の思い込み
 この運搬姿勢が労災を招く ほか
第5章 ケースで見る シニアマネジメントで成功する会社
 1. 株式会社ゆうちょ銀行
 2. 株式会社ハードオフコーポレーション
 3. マンション管理・清掃業務企業
 4. 株式会社モスフードサービス
第6章 シニア人材を活かす管理者の養成
 「老化」が引き起こすリスクを先読みする
 管理職世代に対するジェロントロジー教育 ほか

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「メタ研修」本として読んだ。人材開発に関する知的な刺激が得られるか。

人事よ、ススメ!.jpg人事よ、ススメ! ―先進的な企業の「学び」を描く「ラーニングイノベーション論」の12講 (碩学舎ビジネス双書)』['15年]

 本書は、「人材開発の専門知識・スキル」を学ぶことを目的にした社会人向け講座「ラーニングイノベーション論」での講義の様子を紙上に再現したものです。本書の編者の中原淳氏が主任講師を務めるこの講座は、慶應丸の内シティキャンパスで行われており、企業の人事・人材開発担当者が半年のセッションを通して「人材開発の基礎理論・知識・事例」を学び、それらを活かして、自社の「人材開発のあり方」を改善する提案を最後に行う、アクションラーニング型の授業を特徴としており、毎回それぞれの領域で活躍する研究者、実務家を招き、最先端の講義や実習をしているとのことです。

 編者を含む各領域で活躍する研究者、実務家がリレー講義をしています。各講の冒頭に編者によるイントロダクションがあり、講義後は、編著者がファシリテーションをつとめるディスカッションやワークショップが用意されているというスタイルです。

 セッション1で北海道大学の松尾睦教授が、「経験学習とOJT研究の現在~育て上手のマネジャーの指導法」とのテーマのもと、「人が仕事の現場で学ぶこと」即ち「経験学習」について講義し、経験と挑戦は学びを促進するとしています。セッション2では玉川大学の難波克己准教授が、「非日常のアドベンチャーを通し、できる自分に出会う」というテーマのもと、非日常的なグループワーク(体験)を通して、チームワークや信頼を学び、自分の本質を知っていくアドベンチャーアプローチという手法を紹介しています。

 セッション3では一橋大学の守島基博教授が、「日本型戦略人的資源論とはなにか」というテーマのもと、企業の経営戦略と人材マネジメントの関係について講義し、戦略達成支援、組織強化、人材サポートの3つの人材マネジメントが相俟ってこそ、企業における経営に資する人材マネジメントは作られるとしています。セッション4ではスターバックス コーヒー ジャパンの久保田美紀・人材開発部部長が、受講者を自社のサポートセンター(本社)に招き、「やる気をひきだすマネジメント~社員自ら創り育てるわたしたちの働く場」というテーマで講義しています。

 セッション5以降は、主に人事・人材開発における体系的な知識に関する講義となっています。セッション5ではSAPジャパンのアキレス美知子・人事本部長が、現場と経営を結ぶ「ネットワーカーとしての人材開発部門のあり方」について講義し、人事が職場を元気にするとしています。セッション6では神戸大学の金井壽宏教授が、「提供価値(デリバラブル)と支援を手かかりに人材開発部門のあり方を考える」というテーマで、誰かに何かを届け、役に立つことが、「提供価値(デリバラブル)」であると説いています。
 
 セッション7は編者による「職場の学を科学する」という講義で、ここでは職場の人材育成に関する様々なエピソードが紹介され、セッション8では東京工業大学大学の妹尾大准教授が、「知識創造理論の現在~知識創造をめざす「場」のデザインとは」というテーマで講義しています。

 セッション9は東京学芸大学芸術の高尾隆氏による「創造的なコラボレーションを生む~インプロビゼーション(即興演劇)の展開」という講義であり、ここでは身体を通して創造を考えています。セッション10は再び編者による講義で、「教える」とは何かについての原理原則の確認であり、一番大切なことは学習者中心主義であり、学習者が変化すること、考えさせることが欠かせないとしています。

 セッション11で再び現場に戻り、サイバーエージェントの曽山哲人・人事本部長が、サイバーエージェントの人事制度をケーススタディとして紹介し、人事が組織を元気にするエンジンになるべきだとしています。そして最後に、セッション12で法政大学の長岡健教授と編者が対談し、「ラーニングの現在」について、企業に「実験室」はあるのかというテーマで語り合っています。

 400ページを超える本ですが、講義録のような感じなのですらすら読めます。それでいて、人材開発に関する知的な刺激も一応は得られます。敢えて言えば、1つ1つの講義の内容の全てを収録はし切れなかったと思われ、それぞれがややあっさりし過ぎになっているようにも感じられました。実務と理論のバランスはよく取れていると思います。

 個人的には、本書自体を研修の新たな在り方を示した「メタ研修」本として読んだきらいもあります。でも、だったら実際にこの「ラーニングイノベーション論」の講座を受講してみるのが一番なのだろなあ。本書でもシズル感はそれなりに伝わるよう工夫はされていますが。

《読書MEMO》
●収録されている全12講と講師
(1)経験学習とOJT研究の現在~育て上手のマネジャーの指導法
 北海道大学大学院経済学研究科教授 松尾睦
(2)「非日常のアドベンチャー」を通し、「できる自分」に出会う
 玉川大学学術研究所・心の教育実践センター准教授 難波克己
(3)日本型戦略人的資源論とはなにか
 一橋大学大学院商学研究科教授 守島基博
(4)やる気をひきだすマネジメント~社員自ら創り育てるわたしたちの働く場
 スターバックス コーヒー ジャパン (株)人事本部人材開発部部長 久保田美紀
(5)ネットワーカーとしての人材開発部門のあり方
 SAPジャパン(株) 常務執行役員人事本部長 ほか アキレス美知子
(6)提供価値(デリバラブル)と支援を手かかりに人材開発部門のあり方を考える
 神戸大学大学院経営学研究科教授 金井壽宏
(7)「職場の学び」を科学する
 中原淳
(8)知識創造理論の現在~知識創造をめざす「場」のデザインとは
 東京工業大学大学院准教授 妹尾 大
(9)創造的なコラボレーションを生む~インプロビゼーション(即興演劇)の展開
 東京学芸大学芸術・スポーツ科学系音楽・演劇講座演劇分野 准教授 高尾隆
(10)研修のデザイン~教えることを科学する
 中原淳
(11)"成長するしかけ"を創る
 (株)サイバーエージェント 執行役員 人事本部長 曽山哲人
(12)特別対談 ラーニングの現在~企業に「実験室」はあるのか
法政大学経営学部教授 長岡健×中原淳

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「タレント」とはどういう人たちなのかを説明した部分が興味深かった。

「タレント」の時代.jpg「タレント」の時代 .jpg
「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論 (講談社現代新書)』['15年]

 本書の著者は、タレントマネジメント分野の人材コンサルタントとして、日本の優秀な技術者が「ものづくり敗戦」の過程でリストラされる場面を散々見てきたとのことです。著者は、日本企業の多くは「タレントを生かす仕組み」を持たずにここまできてしまったとし、今日の変化と競争の激しい時代におけるタレントマネジメントの重要性とその在り方を、本書では掘り下げています。

 3部構成の第1部では、日本企業がおよび日本がうまくいかなくなっている現状の分析を通して、ものつくりやサービスにおいて人々が求めるものがどう作りだされるのかを解説し、そこにおいては設計情報の質が決定的に重要であり、設計情報を作っていく過程で中心的な役割となる優れた人材、すなわち「タレント」が重要になるとしています。そのことを受け、第2部で、タレントとはどういう人たちなのかを説明し、さらに第3部では、タレントを生かす仕組みについて解説しています。

 著者は、優秀な人材を集めても利益に結びつけられず、グローバル競争に敗れた日本企業に対し、「売れないモノを高品質に作り上げたのでは、はじめから終わっている」として、自身の属したことのある通信業界や、凋落を続ける電機産業が犯した誤りを分析し、市場の成熟化や、世の中の情報化・知識化・グローバル化といった流れの中で、そうしたトレンドを正しく読み取って今でも勝ち続けているトヨタと、負け続けている日本のエレクトロニクス産業、あるいはソニーの迷走とアップルの躍進といったように対比的に捉え、「タレントを生かす仕組み」のどこに違いがあったかを解説しています。

 第2部終わりから第3部にかけて、タレントとそれ以外の人の知の領域の違いを示し、タレントを生かすのが難しい理由として、B級人材はA級人材を評価できない、ゆえに採用しない、登用しない、排除する―といった悪循環の構図を分かりやすく解説しています。また、第3部にある、「リーン・スタートアップ」というシリコンバレー発として日本でも注目されている方法が、実は米国が日本企業(トヨタ)に学んだものだったといった話なども興味深いのですが、後半になるとこうした生産工学的な視点からの分析が多くなり、成功モデルとしてトヨタの「主査」制度に注目している点などもやや特定のケーススタディに寄った考察のように思えました。

 人事パーソンの読み処としては、第1部の現状分析と第3部の解決編の繋ぎの部分にあたる第2部での、タレントとはどういう人たちなのかを規定している箇所であるかもしれません。

 第2部で著者は、労働の内容別の賃金相場について、①知識を伴わない定型労働-時給1000円、②改善労働を伴う非定型労働-年収300万~500万円、③知識を伴う定型労働-年収400万~600万円、④複数分野の知識を伴う創造的知識労働-年収1000万~数億円とし、日本ではほとんどの公務員はハタラキに対して賃金が割高であるのに対し、年収的には3000万円~5000万円程度貰っていても不思議でないタレントが、年収600万円~1000万円くらいしか貰っていないとしています。

 それでは、タレントとはどういう人たちなのか―著者によれば、タレントとプロフェッショナルやスペシャリストの違いは、「知識あり・定型労働、既知の事柄を確実にこなす」のがプロフェッショナルであり、「知識あり・定型労働、特定分野の知識に詳しい専門家」スぺシャリストであるのに対し、「複数分野の知識あり、創造的知識労働、目的的・改革・改善・地頭・洞察・未知を既知に変える能力」タレントであるとのこと、単なるスペシャリストは、知識を活用する「目的」よりも「知識そのもの」にアイデンティティを持っている人が多く、プロフェッショナルも同様であるのに対し、優れたタレントは、知識にせよ職業にせよ、「目的」を達成するための「手段」だと考えているところに、際立った特徴があり、そのため、タレントは目的的に知識を獲得し、獲得した知識を手段として使うとしています。

 Amazon,comでの本書の評価は高いようですが、どちらかというと、第1部と第3部はケーススタディ的な要素のウェイトが高く、本書の繋ぎにあたる第2部が、ある意味で最もコンセプチュアルで且つすっきりした(個人的に腑に落ちるといった)論考がなされているように思いました。

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処世術ではなく、従来の日本的人事を一旦対象化して、功罪を捉え直してみるという意味で○。

知らないと危ない、会社の裏ルール.jpg知らないと危ない、会社の裏ルール (日経プレミアシリーズ)』['15年] 働かないオジサンの給料はなぜ高いのか.jpg働かないオジサンの給料はなぜ高いのか: 人事評価の真実 (新潮新書)』['14年]

 『人事部は見ている』('11年/日経プレミアシリーズ)、『働かないオジサンの給料はなぜ高いか』('14年/新潮新書)などで、日本的人事の仕組みを分かりやすく解説してきた著者が、本書においても、日本企業における社内のヒト同士の関係や組織の在り方に就業規則や社内規定からは窺い知ることのできない「奇妙なルール」があることを指摘することで、"日本的人事"なるものを分かりやすく解説するとともに、そのベースにある日本企業の組織風土的な特質を鋭く分析しています。

 例えば、日本企業においては懲戒処分よりも仲間はずれにされることの方が恐ろしく、公私の区分よりも一体感が重視され、「親分―子分」構造が階層型組織を支えているとのことです。こうした日本企業特有のメンタリティの数々を解き明かすとともに、専門職制度がうまくいかないのはなぜか、問題社員でも昇給してしまうのはなぜか、といったことなども分析されています。

働かないオジサンの給料はなぜ高いのか7.JPG 前著と重なる内容も多く、サラリーマンの出世のシステムについては『人事部は見ている』以来繰り返されており、日本企業固有のメンバーシップ契約や「同期」についての考察は、テーマ自体はユニークですが『働かないオジサンの給料はなぜ高いか』でもすでに取り上げており、「働かなくても」中高年の給与が高い理由も、(タイトル通り)同書において既に「ラジアーの理論」でもって解説されています。

 但し、読み物としても組織論としても『働かないオジサンの給料は...』より洗練されているような気がしました。「同期」についての考察では、人気を博したTVドラマ「半沢直樹」で同期入社の社員同士が協力し合う姿が描かれていることを指摘していますが、何気なく見ているドラマの一場面から始まって、「同期」が日本型雇用の一要素であることを説いてみせているのは巧み。詰まるところ、日本型雇用システムは1つのパッケージであり、組織を動かすボタンの押し方にもルールがあるということになるようです。

 著者は最後に、日本型雇用システムは女性からも外国人からも見捨てられるとして、グローバル化が進展する今日において「日本型」をどう変えるのかについて論じていますが、この部分は10ページも無く、やや付け足し風であり、主たる読者ターゲットが一般サラリーマンであることを考えれば、この辺はやむを得ないところでしょうか。

 いわゆるサラリーマンを対象にこうした「見えないルール」を説くことは、本書を100パーセント「処世術の書」として読んでしまうような読者がいた場合、「男性正社員モデル」を再生産することに繋がるのではないかとの危惧もあるかもしれませんが、むしろ若い世代ほど、組織の「ルール」やその根底のある風土を認識することと、そうした「ルール」や風土に対する個人的な見方はどうかということは別問題として捉えることが出来るのではないかという気もします。

 一方で、人事パーソンの中には、こうした「ルール」を所与のものとして受け容れてきた人も結構いるような気がして、従来の日本的人事の仕組みや「男性正社員モデル」をベースとした社内価値観というものを一旦対象化して、その功罪を捉え直し、これからの人事の在り方を考えてみるという意味で(解説策まで充分には示されていないまでも)本書は意義があるかもしれません。

 著者は企業に勤めながらペンネームで執筆業をしているとのことで、内部にいるワーカーとして(役職に就きながら一度それを外された経験を持つ)こうした日本的な会社内のヒトや組織構造の在り方を目の当たりにしてきたであろうことは、本書の随所から窺えます。そして、それらを所与のものとして全肯定するのでなく、一方で、外から見ている評論家のようにそれらをあっさり全否定してしまうわけでもない、そうした、体験的現実感に基づくバランスの上に立っているのが、著者ならではの視点であり、『サラリーマンは二度会社を辞める』('12年/日経プレミアシリーズ)などが読者の共感を呼ぶのもそのためでしょう。

 著者は本書を上梓した2014年3月で定年とのこと、その後どのようなテーマを扱い、どのような展開を著作において見せるのか、個人的に注目したいと思ってましたが、じやはり「定年&定年後」にその関心はいったようです。

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日本的雇用慣行や人事管理が急速にガラパゴス化しつつあるという危機とその解決策を示している。
日本企業の社員は、なぜこんなにも.jpg  ロッシェル・カップ  .jpg ロッシェル・カップ  2.jpg
日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』(2015/01 クロスメディア・パブリッシング)/ロッシェル・カップ氏(2015年6月29日付日本経済新聞)

 本書の著者ロッシェル・カップは、職場における異文化コミュニケーションと人事管理が専門の経営コンサルタントですが(さらに言うと、「アメリカ式上司を期待しているアメリカ人社員」を管理する日本人マネジャーが彼女の仕事の対象であるとのこと、『反省しないアメリカ人をあつかう方法』('98年/アルク新書)という著書もある)、序章でいきなり、日本のこれまでの人事管理は持続が不可能であり、完全に考え直す必要があるとしています。

日本企業の社員は、なぜこんなにも605.JPG 第1章「日本人の働き方」では、エンゲージメントを社員のモチベーションを測定する鍵であるとして、日本企業で働く社員のエンゲージメントや労働生産性の低さを諸外国との比較データで示し、その根源にある雇用スタイル、人事管理の慣行、人材育成の方法、企業文化の問題を指摘しています。

 第2章「社員のモチベーションとパフォーマンスをいかに高めるか」では、モチベーションやエンゲージメント向上の要因は何かを解説し、社員を一人前として扱い、信頼を置くことを重視した企業の事例、公平・自由・柔軟性のあるチームづくりをすることで社員のモチベーションやエンゲージメントを高めた企業の事例を紹介しています(以下、各章末で、それぞれのテーマに関連した先進海外企業のケーススタディが紹介されている)。

 第3章「雇用関係の構造」では、日本企業が非正規社員への依存度が高いことの問題を指摘するとともに、正社員も非効率な人事異動によりキャリアが追求しにくいとして、異動・昇進に関する外国企業の優れた取り組みを紹介しています(日本企業の人事異動の慣行は、江戸時代の参勤交代がそのまま引き継がれたのではないかと思われるとしている)。

 第4章「仕事中毒の日本人」では、日本企業の長時間勤務は当たり前とされている環境やサービス残業の横行を問題視し、また日本人のライフスタイルが長時間労働を助長しており、さらに仕事慣行が非効率で、仕事の時間帯と場所に関する自由がないとしています(威圧的状況と長時間労働の文化が排除されないままでのホワイトカラーエグゼンプションの導入に反対しているのが興味深い)。

 第5章「日本におけるマネージメントスキルとリーダーシップの現状」では、日本人マネジャーは個人のエンパワーメントに欠けるとし、日本で励行されているホウレンソウは、アメリカではマイクロマネジメントと呼ぶものに近く、マイクロマネジメントはエンパワーメントの対極にあるものとして忌避されるとしています。また、日本では、マネジャーはヒエラルキーによって部下に接する一方、フィードバックは欠如しており(日本のマネジャーはダグラス・マグレガー言うところのⅩ理論のマネジャーであると)、企業の上層にいるマネジャーがリーダーシップを発揮していないことも、社員のモチベーションが低い要因であるとしています。

 第6章「人事管理システムのあり方」では、職務内容記述書、求人活動、報酬、業務管理、段階的懲罰制度、キャリアパスなどについて、具体的に言及し、さらに、社員の意識を測定して、潜在的な問題を把握し、是正措置をとることの大切さを説いています。とりわけ職務内容記述書については、序章においても、仕事の定義を明確にすることの重要性を説いています。

 第7章「多様な社員の有効活用のあり方」では、切迫した労働者不足とグローバル化に対応するために、女性、高齢労働者、非日本人労働者、多様な背景を持つその他の労働力の4種類の人材をどう活用していくべきか、そのポイントを述べています。

 第8章「自ら進路を選択し、やる気を出す」では、世界の変化は続き、日本も変化の波は避けられないのであって、個人はキャリアの目標を自分で立て、自己の能力を開発し、ネットワークを広げていかなければならないとしています。

 日本の企業文化や労働慣行に対する批判が続き、日本企業は、人事管理の仕方に関して「典型的」な欧米の企業を模倣するより、最先端を行く例から学んだ要素を取り入れることは一考に値するとして、第2章位以下各章末で、それぞれのテーマに関連した先進海外企業のケーススタディが紹介されています。それが「新しい働き方」の事例として何れも新鮮に感じられました。

 著者自身、人材の長期的な育成など、日本的人事管理の良い点は残せとは言っていますが、これだけ日本的人事管理に対する批判が続くと(書かれていることの1つ1つは以前にもどこかで聞いたことがあるようなものであったとしても、これだけまとめて言われると)、しかも、そうした企業文化や労働慣行のギャップを埋めることをサポートする仕事をしている知日派の外国人からそれが語られると(本書は翻訳書ではないということになっている)、やはり日本も変わっていかなければならないのだろうなあと思わざるを得ません。

 本書で述べられていることは、日米の違いと言って済まされるものではなく、日本の雇用慣行や人事管理が世界に対して急速にガラパゴス化しつつあるという危機を如実に示しているとも言え(ケータイだけの話じゃないね)、そうした危機感が喚起させられたという意味で、個人的には、啓発度の高い本でした。また、問題をあげつらうだけでなく、それに対して解決策も提示しているという点でも(こちらの方は、個人的には一部、そうは言ってもその前に...というのが幾つかあった―外部市場の問題や労働法の問題など―が)一定の評価はできるかと思います。

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日本型タレントマネジメントの概念的フレームワークをきっちり示していると言えるのでは。

タレントマネジメント概論ド.jpgタレントマネジメント概論.jpg
タレントマネジメント概論---人と組織を活性化させる人材マネジメント施策』(2015/01 ダイヤモンド社)

 近年その重要性が注目されながら、一方で、どことなくもやっとしたイメージでしか受け止められていないフシもある「タレントマネジメント」について、人事戦略的な観点から解説した本です。因みに、本書でも紹介されている米国人材マネジメント協会(SHRM)によるタレントマネジメントの定義は、「人材の採用、選抜、適材適所、リーダーの育成・開発、評価、報酬、後継者養成等の人材マネジメントのプロセス改善を通して、職場の生産性を改善し、必要なスキルを持つ人材の意欲を増進させ、現在と将来のビジネスニーズの違いを見極め、優秀人材の維持、能力開発を統合的、戦略的に進める取り組みやシステムデザインを導入すること。」となっています。

 チャプター1「変化を勝ち抜くためのタレントマネジメント」では、外国企業のタレントマネジメントが次世代の経営者を育てるサクセッションプランに近いものであるのに対し、日本におけるタレントマネジメントは、労働人口の急速な減少傾向などを考慮すると、後継者候補やマネジメント人材、有能なリーダーといった特定人材だけではなく、アルバイトやパートを含めた全ての従業員にあてはめなければならないという考えを示しています。HRM(ヒューマン・リソース・マネジメント)からHC(ヒューマン・キャピタル)そしてTM(タレントマネジメント)への「人材→人財→個」という潮流の変化についての解説はオーソドックスですが、人口構造の変化のみならず、サービス産業の隆盛、情報・IT産業の急伸、グローバル競争の激化、ダイバーシティ、ワーク・ライフ・バランスの浸透、労働価値の変化などを考え併せると、日本においては全ての階層においてタレントマネジメントが求められるとしているのが本書の特徴であり、一方で、「個」の認識について日本は欧米に比べ10年の遅れがあり、一部IT企業や大手企業ではERPシステムを導入するなどの動きはあるものの、全体としてまだまだタレントマネジメントは浸透が浅いとしています(中小企業ほどタレントマネジメントを使いこなしたいともしている)。

 チャプター2「タレントマネジメント実践編」では、タレントマネジメントの実践に際しては 設計・活用・開発・運用という4つのフェーズがあるとして、導入事例なども交えつつそれぞれのフェーズについて解説するとともに、タレントマネジメントを採り入れることで、管理職はタレントマネジャーになり、人事部は処理の人事から「戦略的人事」を担う部門へ変化するとともに、従業員個人にも自らのキャリアへの責任とタレントマネジメントに向き合う姿勢が求められるとしています。

 チャプター3「真の競争力とエンゲージメントのある組織へ」では、個を活かしたタレントマネジメントにより飛躍する企業の事例を、それぞれ〈事象〉〈課題〉〈設計〉〈活用〉〈運用〉〈開発〉〈効果〉という流れで4社紹介するとともに、タレントマネジメントではとりわけ運用のPDSサイクルと開発のPDSサイクルがエンジンとして重要であり、また「人事と現場」(企画と実行)の両輪を回し続けなければならないとしています。更に、タレントマネジメントは会社と個人に大きな変化をもたらし(例えば年功制は無くなるし、過度の成果主義も無くなり、男性・女性の区別も無くなるとしている)、会社は従業員と対等な関係を築くことによりエンゲージメントの高い組織を構築していくことが可能になるとしています。

 単にデータベースを導入しましょうとかいった話ではなく、タレントマネンジメントというものの概念的なフレームワークをきっちり整理したうえで、更に日本的な独自性を備えたタレントマネンジメントというものも打ち出している点は評価できるかと思います。経営戦略としてのタレントマネンジメントというものを考える上で参考になり、ややコンサルファーム出身者系の概念先行的な部分も無きにしもあらずですが、一応、事例を通して制度への落とし込みがされています。タレントマネンジメントに限定せず、これからの人事の在り方を探る上で、啓発的な要素はある本かと思います。

【著者紹介】
大野順也 : 株式会社アクティブアンドカンパニー代表取締役社長兼CEO。1974年生まれ。大学卒業後、株式会社パソナ(現パソナグループ)に入社。営業を経て、営業推進、営業企画部門を歴任し、同社の関連会社の立ち上げなども手掛ける。後に、トーマツコンサルティング株式会社(現デロイトトーマツコンサルティング株式会社)にて、組織・人事戦略コンサルティングに従事し、2006年1月に『株式会社アクティブアンドカンパニー』を設立し、代表取締役に就任。

《読書MEMO》
●目次
第1章 変化を勝ち抜くためのタレントマネジメント(あなたの会社の「タレント」は眠っている/ HRM、HC、そしてタレントマネジメント―世界はいかにタレントマネジメントに行き着いたか/ 日本には日本独自のタレントマネジメントが求められている/ まだまだ浸透が浅い日本企業)
第2章 タレントマネジメント実践編(タレントマネジメントの全体像/ 設計/ 活用・開発/ 運用と役割―各部署の仕事はどれほど変わるのか)/
第3章 真の競争力とエンゲージメントのある組織へ(個を活かして飛躍する企業/ PDSサイクルを回せ/ 経営と従業員の良好な関係―エンゲージメントの実現を)

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努力の「量」ではなく「質」が求められる時代に。あとはどう実践するかか?

がんばると迷惑な人.jpgがんばると迷惑な人 (新潮新書)』['14年]

 かつては企業内でがんばっていさえすれば報われたものが、今日においては成果を出さなければ報われないというのは、『雇用の未来』の著者ピーター・キャペリが「ニューディール」と呼んだ、社員が企業に貢献できる限りは雇用するが、そうでなくなれば雇用は保証しないという欧米の雇用スタイルが、日本にも徐々に浸透しつつあることを示しているとも言えるし、また、まだ日本企業はそこまではいっておらず、報われないながらにも雇用の保証は相対的にみて欧米企業などよりは保たれているとも言えるのかもしれません。しかし何れにせよ、努力量よりも結果が求められる時代になりつつあることは間違いないかと思います。

がんばると迷惑な人06.JPG 本書は、はりきるほどズレる、意欲はあるのにスベる、やる気ばかりでツカえない、そんな人っていませんか(カバー折り返し)と読者に問いかけることから始まり、"がんばり"が価値を生む時代から、がんばることが価値を生まないばかりか、逆に価値を損ないかねない時代になり、努力の「量」ではなく「質」が求められる時代へのドラスティックな変化が起きたにも関わらず(著者はその変化の起きた時期を、1990年代を境にそうなったとしている)、実際にはがんばりの量に価値を見出す"がんばり病"からまだ抜け出せないでいる人がいて、この"がんばり病"が組織に蔓延すると、がんばることが自己目的化して、「手抜き」ならぬ「頭抜き」状態に陥ると警告しています。

 第1章では90年代に起きた変化と、なぜわが国がそこで選択を誤ったかを解説し、第2章では実際に組織や会社の中でどれだけ"がんばり病"が蔓延し、害を与えているかを解説しています。第3章では具体的な研究成果や事例などを紹介しながら、"がんばり病"を撃退し、良質なモチベーションを引き出すための方法を紹介しています。第4章では、同じ視点から機能しなくなったチームワークにメスを入れ、機能するチームワークづくりのポイントについて説明しています。

 第2章では、「時代遅れのモットーを部下に押しつける課長」などといった身近にいそうな"がんばり病"の弊害例を挙げ、"がんばり主義"が暴走し、周囲が多大な迷惑をこうむっている構図を浮き彫りにするとともに、日本人の場合、評価に情が入り易いことに加えて、法律などの制度が努力の量で評価することを陰で後押ししているとしています。

 第3章では、ムダながんばりをどう防ぐかについて書かれていて、過剰な管理をやめ、オフィスのレイアウトを、壁や窓の方に向いて座る方式、更には、隣人が気にならないような六角形や八角形に変えてみることなどを提案しています。また、思い切って時間外労働の割増率を引き上げた方がコスト意識から残業は減るだろうし、残存有給休暇を買い取れるようにした方が、会社に恩を売るような意識を捨てさせ有給休暇の取得促進につながるだろうとしているのは興味深いです。

 更にこの章では、質の高い努力をどう引き出すかについても書かれていますが、まず仕事が楽しい、面白いと感じられることが大事であり(内発的動機づけ)、その楽しさ、面白さの背後には、夢や目標があるはずだとしています。夢や目標は達成されてしまえばそれでモチベーションは終わるため、それを維持させるには夢や目標が青天井であることが必要であって、「野心」が努力の質を高めるとしています。では、「野心」の中心には何があるか―それは、承認欲求の一種である名誉欲であるとし、"がんばり"ではなく、実績を讃える表彰制度などを推奨しています。

 第4章では、"がんばり病"がチームまで冒す例を挙げています。またここでは、チームワークには「同質性を軸に成り立つチームワーク」と「異質性を軸に成り立つチームワーク」の2種類があり、日本人が今まで得意としてきたのは「同質性を軸にしたチームワーク」だが、これからは「異質性を軸に成り立つチームワーク」が求められるとしています。そして、ヒロイズムを肯定的に捉え、健全なヒロイズムはチームを強くするとしています。

 著者によれば、本書で述べていることは、最近説く人が多い「スローライフ」や「がんばらない生き方」といったものとはある意味で真逆であるとのことですが、確かに「がんばらないで」と言っているわけではなく、「がんばる」時間とエネルギーを「考える」ことに振り向けろと、「量」より「質」だと言っているわけです。

 全体を通して平易に書かれていて読み易かったし、ユニークな視点の提示によって啓発される要素も多々ありました。帯に「画期的仕事論」とありますが、あとは、こうした考えをどのように日々の仕事において実践していくか、そのためには常に「考える」ことが必要なのでしょうが、これがなかなかたいへんかも。但し、そうしたことを考える際の一定の視座は提供している本ではあると思います。

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リーダーシップ研究の最近の歩みをシズル感を持ちつつ概観するには手頃。

Thinkers50 リーダーシップ.jpg 『Thinkers50 リーダーシップ』(2014/11 プレジデント社)

 「Thinkers 50」は、マネジメント思想を調査、ランク付けしたうえで世の中に広く紹介する取り組みで、2001年以降、隔年で発表されているランキングは、「マネジメント思想のアカデミー賞」とも言われています。歴代の第1位は、ピーター・ドラッカー(2001年、2003年)、マイケル・ポーター(2005年)、C.K.プラハラード(2007年、2009年、クレイトン・クリステンセン(2011年、2013年)。日本では「経営思想家トップ50」などと訳されていますが、日本人では過去に大前研一氏が複数回ランクインしているほか、2013年に野中郁次郎氏が"Lifetime Achievement Award(生涯業績賞、功労賞)"を受賞しています。

 当シリーズは、「Thinkers 50」にランクインした経営思想家を、直接インタビューした内容とともに紹介し、ジャンル別に分けてそれぞれ1冊に要約することで、テーマごとの本質に迫る入門書であり、本書「リーダーシップ」は、「マネジメント」「ストラテジー」「イノベーション」の3ジャンルの邦訳に続くシリーズ第4弾になります。

リーダーシップの王道2.jpg 第1章でリーダーシップ研究の変遷を概観した後、第2章では『リーダーシップの王道』などの著者として知られ、今年['14年]逝去したウォレン・ベニスの思想を、本人へのインタビューを中心に紹介していますが、その中でベニスは、「クルーシブル(厳しい試練)」がリーダーを作ることを強調しています。そして、今の若いリーダーにとって難しいのは、クルーシブルが滅多に存在しないことであり、次世代のリーダーは自分でそれを見つけねばならないとしています。

ビジョナリー・カンパニー2  .jpg 第3章では、インタビューにおいてC.K.プラハラードがリーダーに求められる謙虚さを語り、『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』の著者ジム・コリンズが、企業を「まあまあ良い」水準から「偉大」な水準に飛躍させる「レベル5リーダーシップ」とは何かについて語っています。コリンズが提唱する「レベル5リーダーシップ」も、謙虚さと強い意志の組み合わせからなり、レベル5のリーダーは「物静かなリーダー」だとしています。

なぜ、あなたがリーダーなのか 旧版2 .jpg 第4章では、『なぜ、あなたがリーダーなのか?』の共著者ロバート・ゴーフィーガレス・ジョーンズが、自分らしいリーダーシップとは何かを語り、さらにエリザベス・メロンがリーダーの思考についての自らの考えを述べています。それらを統合すると、自分らしいリーダーシップにおいては、自分がすでに保有している資質を最大限に活用するものであって、他の成功したリーダーのスタイルを真似るものではなく、また、内省と高い自己意識が求められる―その際に近道をしたり、自己開発に不可欠な段階を省略したりすると、自分の価値観と異なる人格を装ってしまう―としています。

名経営者が、なぜ失敗するのか?.jpg 第5章では、著者がカリスマとリーダーシップの関係について考察するとともに、『カリスマCEOの呪縛』の著者ラケシュ・クラナ『名経営者が、なぜ失敗するのか?』の著者シドニー・フィンケルシュタインとの対話を通して、カリスマはリーダーの特性として、以前は望ましいもの、或いは不可欠なものと考えられていたが、現在では、リーダーとして効果ある特性なのか、疑問視されていることを示唆しています。

経営の未来 2.jpg 第6章では、フォロワーについての研究の歩みを概観し、フォロワーの類型を再整理するとともに、『フォロワーシップ(未訳)』の著者バーバラ・ケラーマン『経営の未来』の著者ゲーリー・ハメルへのインタビューを行っています。ケラーマンは、フォロワーを孤立者・傍観者・参加者・活動家・硬骨漢の5つのタイプに分けるとともに、「フォロワーが権力と影響力を拡大する一方で、リーダーは権力と影響力を失いつつある」とも主張しています。

トータル・リーダーシップ2.jpg 第7章では、『トータル・リーダーシップ―世界最強ビジネススクール ウォートン校流「人生を変える授業」』の著者スチュワート・フリードマンとの対話を通して、リーダーシップは企業や組織の中だけに存在するのではなく、リーダーの人生のそれ以外の部分とも重なり合い、影響を与えるとし、仕事とプライベートな生活のバランスをとるトータル・リーダーシップという考えが紹介されています。

コーチングの神様が教える後継者の育て方 .jpg 第8章では、現場で活用できるリーダーシップについて考察するとともに、『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』『コーチングの神様が教える後継者の育て方』『コーチングの神様が教える「前向き思考」の見つけ方』『リーダーシップ・マスター』の共著者マーシャル・ゴールドスミスにリーダーシップの実践的な側面についてインタビューしています。

 以上のように、リーダーシップに関する代表的な考えと論者を紹介しながらも、インタビューで構成されている部分の比重が大きいため、とっつきやすいものとなっています。リーダーシップ研究の最近10年の歩みを、単なる項目主義ではなくある種シズル感を持ちつつ概観するには手頃であり、興味を持たれた経営思想家がいれば、その著書に読み進むと更によいかと思います。

《読書MEMO》
【目次】
◆第1章 リーダーシップ研究の変遷
◆第2章 クルーシブルがリーダーをつくる
◆第3章 レベル5リーダーシップ
◆第4章 自分らしいリーダーシップ
◆第5章 カリスマと影
◆第6章 フォロワーシップ
◆第7章 トータル・リーダーシップ
◆第8章 現場で活用できるリーダーシップ

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2017年芥川賞受賞3作は、超高齢化社会、異文化、LGBT&東日本大震災。"時事性"が鍵?

おらおらでひとりいぐも.jpg 百年泥ド.jpg 芥川賞 若竹 石井.jpg  影裏.jpg 芥川賞 沼田真佑.jpg
おらおらでひとりいぐも 第158回芥川賞受賞』『百年泥 第158回芥川賞受賞』若竹千佐子氏・石井遊佳氏 『影裏 第157回芥川賞受賞』沼田真佑 氏

 24歳の秋、桃子さんは東京オリンピックの年に故郷を離れ、身ひとつで上京。それから住みこみで働き、結婚し、夫の理想の女となるべく努め、都市近郊の住宅地で二人の子どもを産み育て、15年前に夫に先立たれた。残された桃子さんは今、息子、娘とは疎遠だが、地球46億年の歴史に関するノートを作っては読み、万事に問いを立てて意味を探求するうちに、自身の内側に性別も年齢も不詳の大勢の声を聞くようになった。それらの声は桃子さんに賛否の主張をするだけでなく、時にジャズセッションよろしく議論までする。どれどれと桃子さんが内面を眺めてみれば、最古層から聞こえてくるのは捨てた故郷の方言だった―。(「おらおらでひとりいぐも」)

70歳以上、初の2割超え.jpg 「おらおらでひとりいぐも」は2017(平成29)年・第54回「文藝賞」受賞を経て、2017(平成29)年下期・第158回「芥川賞」受賞作となった作品。芥川賞選考では、選考委員9人のうち5人が強く推して、積極消極のニュアンスの差はありながら、選考委員のほぼ全員がこれに票を投じたとのことで"圧勝"という感じです。72歳の女性の内面を描いて巧みと言うか、選考委員が推すのも納得という感じで、ある種、ブレークスルー小説になっているのも良かったです。最初は主人公と同じくらいの年齢の人が書いたのかと思いましたが、作者の受賞時の年齢は63歳とのことで、主人公よりやや若く、全部計算して書いていることが窺えます。そのことから、橋本治氏の近作『九十八歳になった私』('18年/講談社)と同じような技法を感じました。「敬老の日」を前に総務省が今日['18年9月16日]に発表した推計人口(15日時点)によると、70歳以上の人口の総人口に占める割合は20.7%で、初めて2割を超えたそうです。超高齢化社会ということで、こうした小説("独居老人小説"?)がこれからどんどん出て来るのでしょうか。


 私はチェンナイ生活三か月半にして、百年に一度の洪水に遭遇した。橋の下に逆巻く川の流れの泥から百年の記憶が蘇る。かつて綴られなかった手紙、眺められなかった風景、聴かれなかった歌。話されなかったことば、濡れなかった雨、ふれられなかった唇が、百年泥だ。流れゆくのは、あったかもしれない人生、群れみだれる人びと―。(「百年泥」)

 「百年泥」は、2017(平成29)年・第49回「新潮新人賞」受賞を経て、2017(平成29)年下期・第158回「芥川賞」受賞作となった作品。読み物としては芥川賞同時受賞の「おらおらでひとりいぐも」よりも面白かったですが、選考員の島田雅彦氏が、「海外体験のバリエーションが増えた現代、ルポルタージュのジャンルはかなり豊かになって来たが、小説との境界線を何処に引くべきかといったことを考えさせられた」と述べているように、その面白さや興味を引く部分は、ルポ的なそれとも言えます(終盤に挿入されている教え子が語る、彼の半生の物語などはまさにそう)。泥の中から行方不明者や故人を引きずり出し、何事もなかったように会話を始めたり、会社役員が翼を付けて空を飛んで通勤したりするとか、こうしたマジックリアリズム的手法を用いているのは、インド的と言えばインド的とも言えるけれど、むしろ、この作品がルポではなく小説であることの証しを無理矢理そこに求めた印象がなくもありませんでした。


 大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、「あの日」以後、触れることになるのだが―。(「影裏」)

影裏 (文春文庫)
『影裏』 (文春文庫).jpg 「影裏」は、2017(平成29)年・第122回「文學界新人賞」受賞を経て、2017(平成29)年上期・第157回「芥川賞」受賞作となった作品。前2作に比べると、これが一番オーソドックスに芥川賞受賞作っぽい感じです。途中で語り手である主人公がマイノリティ(LGBT)であることが分かり、ちょっとだけE・アニー・プルー原作、アン・リー監督の「ブロークバック・マウンテン」 ('05年/米)を想起させられました。この作品では、日浅という人物の二面性が一つの鍵になりますが、その日浅の隠された一面を表す行動について、その事実がありながら、わざとその部分を書いていません。こういうのを"故意の言い落とし"と言うらしいですが、そのせいか個人的にはカタルシス不全になってしまいました。選考委員の内、村上龍氏が、「推さなかったのは、『作者が伝えようとしたこと』を『発見』できなかったという理由だけで、それ以外にはない」というのに同感。村上龍氏は、『わたしは「これで、このあと東日本大震災が出てきたら困るな』と思った」そうですが、それが出てきます。


 芥川賞受賞作品3作の選考過程をみると、「おらおらでひとりいぐも」はやはりすんなり受賞が決まったという感じで、「百年泥」と「影裏」は若干意見が割れた感じでしょうか("回"は異なるが、「百年泥」を推す人は「影裏」を推さず、「「影裏」を推す人は「百年泥」を推さないといった傾向が見られる)。3作並べると、超高齢化社会、社会のグローバル化に伴う異文化体験、LGBT&東日本大震災―ということで、"時事性"が芥川賞のひとつの〈傾向と対策〉になりそうな気がしてしまいます。

芥川賞のすべて・のようなもの」参照
akutagawasyou.jpg

『影裏』...【2019年文庫化[文春文庫]】

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「●「ヴェネツィア国際映画祭 マルチェロ・マストロヤンニ賞」受賞作」の インデックッスへ(ジェニファー・ローレンス) 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ

「女たちの肖像」特集からの2作は、女優の演技を堪能できる映画。

あの日、欲望の大地で dvd.jpg あの日、欲望の大地で セロン.jpg ギジェルモ・アリアガ.jpg まぼろし dvd.jpg フランソワ・オゾン.jpg
あの日、欲望の大地で [DVD]」シャーリーズ・セロン/ギジェルモ・アリアガ監督 「まぼろし<初回限定パッケージ仕様> [DVD]」シャーロット・ランプリング/フランソワ・オゾン監督
キム・ベイシンガー/ジェニファー・ローレンス(当時17歳)
あの日、欲望の大地でes.jpg シルヴィア(シャーリーズ・セロン)は、ポートランドの海辺に建つ高級レストランのマネージャーとして働いている。だが、ひとたび職場を離れると、行きずりの男と安易に関係を持ち、自傷行為に走る。そんな彼女の前に、カルロス(ホセ・マリア・ヤスピク)と名乗るメキシコ人男性が現れ、彼が連れてきた12歳の少女マリア(テッサ・イア)の姿にシルヴィアは動揺し、思わず逃げ出す。その胸に、砂漠の中で真っ赤に燃え上がるトレーラーハウスの幻影が浮かび上がる...。シルヴィアがマリアーナと呼ばれていた10代の頃、彼女の一家はニあの日、欲望の大地で mix.jpegューメキシコ州の国境の町で暮らしていた。病気を克服したばかりの母親ジーナ(キム・ベイシンガー)に代わって、父親ロバート(ブレット・カレン)と3人の幼い兄弟の面倒を見るのはマリアーナ(ジェニファー・ローレンス)の役目だった。そんな中、ジーナは隣町に住むメキシコ人のニック(ヨアキム・デ・アルメイダ)と情事を重ねていた。お互いに家庭を持つ二人は、中間地点のトレーラーハウスを忍び逢いの場所に選び、貪るように愛を交わすが、その情事は唐突に終わりを告げる。二人が密会中にトレーラーハウスが炎上、二人は帰らぬ人となった。母の事故死は、多感なマリアーナの心に大きな傷跡を残したが、それはニックの息子・サンティアゴ(J・D・パルド)にあの日、欲望の大地で   セロン.jpgとっても同様だった。やがて、両親を真似るように密会を重ねるようになった二人は、本気で恋に落ちていく―。それから12年、シルヴィアは、マリアーナの名前と共に置き去りにした過去と向き合うべき時が来たことを悟る―。


Charlize Theron/Kim Basinger/Jennifer Lawrence
あの日、欲望の大地で 8.jpg 「あの日、欲望の大地で」('08年/米、原題:The Burning Plain)は、メキシコ出身の脚本家・作家で「21グラム」('03年)、「バベル」('06年)などの脚本映画があるギジェルモ・アリアガが、2人のオスカー女優、シャーリーズ・セロン(1975年生まれ)とキム・ベイシンガー(1953年生まれ)を主演に迎えて撮り上げた2008年の監督デビュー作。「時代と場所を越えて3世代にわたる女性たちが織りなす愛と葛藤と再生の物語を、時制を錯綜させた巧みな語り口で描き出していく」という謳い文句ですが、まさにその通りの佳作でした。

 まず冒頭に、草原の中にあるトレーラーハウスが爆発炎上するシーンがあって、その後、アメリカ北東部メイン州の海辺の街ポートランドで高級レストランの女マネージャーとして働きながら、複数の男性といきずりの関係を繰り返す、シャーリーズ・セロン演じるシルヴィアの話と、アメリカ南部ニューメキシコ州の国境沿いの町でメキシコ人男性とトレーラーハウスで不倫を重ねる、キム・ベイシンガー演じる主婦ジーナの話が交互に展開され、まさに「場所を越えた」話になっています。さらに、ニューメキシコでの話には、シルヴィアの娘マリアーナが重要な位置を占めるようになり、3人の女性の物語かと思ったら実は...。

あの日、欲望の大地で7.jpg "脚本家"監督のまさに脚本の上手さを感じさせますが、驚くべきは、重要な役どころであるシルヴィアの娘マリアーナを演じたジェニファー・ローレンス(1990年生まれ)の演技力で、当時17歳にして、2人のオスカー女優の体当たり演技(これはこれで流石と言うべき好演)に拮抗する演技となっています。ギジェルモ・アリアガ監督には「メリル・ストリープの再来かと思った」と言わしめ、2008年・第65回ヴェネツィアジェニファー・ローレンス マルチェロ・マストロヤンニ賞.jpg国際映画祭ではマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞しました。その4年後、コメディ映画「世界にひとつのプレイブック」('12年/米)でアカデミー賞主演女優賞を受賞、彼女自身もオスカー女優となっていますが、この「あの日、欲望の大地で」での演技の方が「世界にひとつのプレイブック」より上のように思います(シリアスドラマとコメディを比較するのは難しいが)。

ジェニファー・ローレンス(18歳)2008年・第65回ヴェネツィア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)受賞

 この作品は、シネマブルースタジオで「女たちの肖像」特集の1本として観ましたが、この特集でその前に上映されたのが、最近「2重螺旋の恋人」('17年/仏・ベルギー)が日本公開されたばかりの、フランソワ・オゾン監督の「まぼろし」('00年/仏)でした。この監督も、ほぼ全作自分で(共同脚本もあるが)脚本を書いています。

ブリュノ・クレメール(ジャン)/シャーロット・ランプリング(マリー)
まぼろし ブリュノ・クレメール(左、ジャン).jpg 大学で英文学を教えるマリー(シャーロット・ランプリング)は、夫ジャン(ブリュノ・クレメール)とは結婚して25年になる50代の夫婦。子どもはいないが幸せな生活を送っている。毎年夏になると、フランス南西部・ランド地方の別荘で過ごし、今夏も同様にヴァカンスを楽しみに来た。昼間、マリーが浜辺でうたた寝する間、ジャンは海に泳ぎに行く。目を覚ましたマリーは、ジャンがまだ海から戻っていないことに気づく。気を揉みながらも平静を装うマリーだが、不安は現実のものとなる。ヘリコプターまで出動した大がかりな捜索にもかかわらずジャンの行方は不明のまま。数日後、マリーはひとりパリへと戻るが―。

まぼろし シャーロット・ランプリング(マリー).jpg シャーロット・ランプリング(1946年生まれ)が演じる、夫の死を受け入れられないマリーが、"壊れている"感がある分、どこかいじらしさもありました。彼女がパリに戻って最初の方のシーンで夫が出てくるため、その部分はカットバックかと思ったら、どうやらそうではなかったみたい。すでに「まぼろし」は始まっていた?(原題: Sous le sableは「砂の下」の意)。そう言えば、すでに女友達のアマンダ(アレクサンドラ・スチュワルト)に精神科に診てもらうよう勧められていました。

ジャック・ノロ(ヴァンサン)/アレクサンドラ・スチュワルト(アマンダ)
まぼろし ジャック・ノロ(左、ヴァンサン).jpgまぼろし アレクサンドラ・スチュワルト(アマンダ).jpg 彼女にとって夫は生きているわけで、女友達のアマンダはヴァンサン(ジャック・ノロ)を再婚相手として紹介したつもりなのだろうけれども(一見カットバック・シーンと思われた食事会は、二人をくっつけるためのものだったわけか)、彼女自身は不倫のスリルと快感を味わっているようなまぼろし シャーロット・ランプリング まぼろし.jpg感じでした(やや滑稽にも見える)。夫の薬棚からうつ病の薬を見つけて夫が自殺することを心配し、医者に行ってヴァカンス以降は薬を受け取りに来ていないことを知っても、あくまでも自殺を心配しています。仕舞には、ラスト近くで夫と思しき水死体が揚がって自ら検死に行くも、腕時計が違うという理由だけで(それが正確かどうかも怪しいが)夫とは認めようとしない―精神分析でいう"合理化"なのでしょうが、やっぱり"壊れている"!

 ストーリー的にはそれだけで、「あの日、欲望の大地で」に比べるとずっとシンプルでした。ラストに救いがあり、それが主人公の"ブレークスルー"にもなっている「あの日、欲望の大地で」とは異なり、主人公が夫の死を受け入れられないまま(壊れたまま)終わるところが個人的にはややあっけなく、これってヨーロッパ映画的なのかなと思いましたが、この作品は本国フランスのみならずアメリカでも好評を得たというのが興味深いです(日本でも、キネマ旬報ベストテンで外国映画の5位にランクインした)。

シャーロット・ランプリング まぼろし .jpg アメリカでも好評を得た理由の1つは、シャーロット・ランプリングがアメリカ映画にもよく出ていることもあるのでは。まさにシャーロット・ランプリングの演技を観る映画になっているような感じですが、彼女はその負託に応えている感じで、この作品の演技が、「さざなみ」('15年/英)などでの高い評価を得た近年の演技の下地として連なっているのではないかと思います。かつて「愛の嵐」('74年/伊)の頃は、こんなに息の長い女優になるとは思われていなかったように思います。

シャーロット・ランプリング in「まぼろし」('00年)

「女たちの肖像」特集からの2作は、ストーリー的には「あの日、欲望の大地で」が良かったですが、2作とも、女優の演技を堪能することができる映画でした。

シャーロット・ランプリング in「スパイ・ゲーム」('01年/米)/「デクスター 警察官は殺人鬼(シーズン8)」('08年/米)/「わたしを離さないで」(10年/英)(原作:カズオ・イシグロ)
Charlotte Rampling-spy-game-(2001) -.jpg シャーロット・ランプリング デクスター.jpg シャーロット・ランプリング わたしを離さないで.jpg

あの日、欲望の大地でs.jpg「あの日、欲望の大地で」●原題:THE BURNING PLAIN●制作年:2008年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ギジェルモ・アリアガ●製作:ウォルター・パークス/ローリー・マクドナルド●撮影:ロバート・エルスウィット●音楽:ハンス・ジマー/オマール・ロドリゲス=ロペス●時間:106分●出演:シャーリーズ・セロン/キム・ベイシンガー/ジェニファー・ローレンス/ホセ・マリア・ヤスピク/ジョン・コーベット/ダニー・ピノ/テッサ・イア/ジョアキム・デ・アルメイダ/J・D・パルド/ブレット・カレン●日本公開:2009/09●配給:東北新社●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-09-07)(評価:★★★★)

まぼろしSOUS LE SABLE.jpg「まぼろし」●原題:SOUS LE SABLE●制作年:2000年●制作国:フランス●監督:フランソワ・オゾン●製作:オリヴィエ・デルボス/マルク・ミソニエ●脚本:フランソワ・オゾン/エマニュエル・ベルンエイム/マリナ・ドゥ・ヴァン/マルシア・ロマーノ●撮影:アントワーヌ・エベルレ/ジャンヌ・ラポワリー●音楽:フィリップ・ロンビ●時間:95分●出演:シャーロット・ランプリング/ブリュノ・クレメール/ジャック・ノロ/アレクサンドラ・スチュワルト/ピエール・ヴェルニエ/アンドレ・タンジー●日本公開:2002/09●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-09-03)(評価:★★★☆)

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初めて読んだ時は驚いたが、「限られた生」という意味では自分たちも登場人物らと同じか。

わたしを離さないで 文庫 2008.jpgわたしを離さないで 2006.jpg わたしを離さないで 映画dvd__.jpg わたしを離さないで dorama d_.jpg
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)』/単行本/「わたしを離さないで [DVD]」/「わたしを離さないで DVD-BOX


 キャシー・Hは31歳、優秀な介護人として11年間、提供者と呼ばれる人たちを世話している。生まれ育ったヘールシャムでの親友、ルースとトミーもキャシーが介護してきた。キャシーはヘールシャムで過ごした日々を懐かしく回想していく。毎週の健康診断や、図画工作に力をいれた授業など、保護官の監視のもと「外」とは違う奇妙な、しかし懐かしい日々。「教わっているけど教わっていない」ヘールシャムでの日常を回想しながら、運命に翻弄された人々の真実が徐々に明らかになっていく―。

Never Let Me Go .jpg 2017年のノーベル文学賞受賞者となったカズオ・イシグロの2005年発表の長編第6作であり(原題:Never Let Me Go)、その前の第5作『わたしたちが孤児だったころ』(2000年)が歴史探偵小説風、この後の第7作が『忘れられた巨人』(2015年)がファンタジー小説風であるのに対し、この作品はSF小説風ということで、一作毎にいろいろな小説スタイルを採り入れているのが興味深いです。SF作家でノーベル文学賞を受賞した人はいませんが、"代表作"の中にSF小説がある作家というと、カズオ・イシグロは当て嵌まるかもしれません(ノーベル文学賞受賞の際に、受賞理由である「世界と繋がっているという我々の幻想に隠された深淵を偉大な感情力で明るみにした一連の小説」を体現する代表作として本作を紹介する解説者が多くいた)。

"Never Let Me Go"ペーパーバック(2011)

 この作品は、個人的には、まだカズオ・イシグロが日本でそれほど話題になっていない頃に予備知識無しで読んだため、途中で登場人物たちの負っている運命が明かされた時は本当に驚いてしまい、よくこんな話を考えたものだと思いました。作者は、未読の人にネタバラシしても構わないと言っているようですが、そのことはとりもなおさず"読み物"の形を借りた"文学"であることを意味しているのでしょう。とは言え、個人的には、読んでいて途中でそうした事実が明かされた時の衝撃の大きさが本の一番の印象になっているため、もうかなり知られているとは思いますが、ここでストレートにすべてを明かしてしまうのはやや気が引けます(読んでいるうちに分かってしまうが)。

ドリー・パートン.jpgクローン羊ドリー.jpg 作者は、1996年に英国で世界初のクローン羊"ドリー"(米国のシンガーソングライター兼女優ドリー・パートンの巨乳に因んで名づけられた)が誕生したニュースから、この作品のモチーフを着想したそうです。この作品の発表の翌年2006年に、山中伸弥教授が率いる京都大学の研究グループがiPS細胞を開発し、その時点でノーベル受賞が確実視されるほど話題になりましたから(2012年ノーベル生理学・医学賞を受賞)、そのニュースの後だったら違った作品になっていたかもしれないという気もします(iPS細胞の開発はこの作品の前提を変えてしまうから)。

「ブレードランナー」より
『ブレードランナー』4.jpg この作品の登場人物たちは、自分たちの運命に抵抗もしますが、それを宿命として受け入れている部分がかなり大きいように思います。P・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』の映画化作品リドリー・スコット監督の「ブレードランナー」('82年/米)における"レプリカント" (クローン技術の細胞複製(レプリケーション)からとった造語)は彼らよりもっと自らの運命に抗ったし、さらに遡ると、カレル・チャペックの1920年刊行の戯曲『ロボット』では、創造主である人間に抵抗し滅ぼそうとする"ロボット"たちが登場し、最後、人間は一人だけが生き残り、ロボット同士の結婚を認めるというスゴイ話になっています。

 それらに比べると、この作品は冒頭から何となくシュール感が漂うものの、リアリズム基調を維持していて、"異常"でありながらも"劇的"な事態は生じず、「記憶の物語」が静かに進行していくという感じです。そのため、どうして彼らは逃げ出さないのかという疑問は誰もが抱くのではないかと思いますが、作者は、この英国の片田舎の"平行世界"を舞台とした小説を、2015年までの自身の作品のうちでもっとも「日本的」な小説だと考えているとしており、それは所謂"日本的諦念"というのが反映されているということでしょう。別のところで作者は、登場人物たちの死生観を、難病の子供たちのそれに擬え、彼らは決して絶望しているわけではないともしていました。

日の名残り%E3%80%80文庫.jpg また、同じ作者の代表作『日の名残り』について、作者自身が「われわれは皆"執事"のようなものである」ということが言いたかったと述べているのは、この作品にも当て嵌まるように思います。つまり、相対比較で見れば、この小説の登場人物のような境遇でなくて良かったということになるのかもしれませんが、絶対的に限られた時間を生きているという意味では自分たちも彼らとまったく同じであり、ただ、"限られた生をどう生きるか"そこまで突き詰めて考えていないで日常を過ごしているだけなのかもしれないと思いました。この小説に引き込まれるのは、登場人物の思念を通して、そうした生の有限性や生きることの意味を考えさせられるためではないかと思います。

わたしを離さないで 01.jpg この作品は、2010年にマーク・ロマネク監督、キャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイ、アンドリュー・ガーフィールド主演により、イギリスにおいて映画化されています。キャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイ共に1985年生まれで、キーラ・ナイトレイは「プライドと偏見」('05年/英)でアカデミー主演女優賞にノミネートされ、ハリウッド映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズでジョニー・デップの相手役でブレイク、一方のキャリー・マリガンは、そのキーラ・ナイトレイが主演した「プライドと偏見」がデビュー作ということで、当初はキャリアに相当差がありましたが、その後「17歳の肖像」('09年/英)で英国アカデミー賞主演女優賞を受賞、この「わたしを離さないで」では、キャリー・マリガンが主人公キャシーを演じ、ルースを演じたキーラ・ナイトレイ、トミーを演じたアンドリュー・ガーフィールドと共に2010年・第13回英国インディペンデント映画賞の主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞にそれぞれノミネートされ、キャリー・マリガンだけが受賞しています。

キャリー・マリガン/キーラ・ナイトレイ/アンドリュー・ガーフィールド
わたしを離さないで05.jpg 役者達の演技は悪くなく、特にキャリー・マリガンはいいです。子役たちも、意図して選んだのだと思いますが、3人の役者にそれぞれ似ていました。ただ、小説におけるヘールシャムからは英国のパブリック・スクールに代表される「イギリス的学校」の雰囲気が感じられ、ここにも作者の"英国的"なものへの批判が込められていると思わたしを離さないで シャーロット・ランプリング.jpgいましたが、映画ではもろにパブリック・スクールそのものになってしまっていて、ストレートすぎて逆にイマジネーションが阻害された感じ。それと、シャーロット・ランプリング演じるヘールシャムの校長が、かなり早い段階で生徒たちに事実を告げてしまうので、これもどうかなと思いました。原作を読んでいて、読みながら何かこの学校にはあるぞという思いを巡らせる、そうした時間に相当する部分が短かすぎたため、原作を"追体験"した気分にならなかったです(そう考えると、原作は"引っ張る"ことの効果まで計算されていたということか)。

わたしを離さないで 舞台.jpg 日本では2014年に蜷川幸雄演出、多部未華子主演により舞台化され、2016年には森下佳子(「おんな城主 直虎」('17年/NHK))脚本、綾瀬はるか主演でテレビドラマ化されました。多部未華子の舞台は観ていまわたしを離さないで  ドラマ.jpgせんが(PVは観た)、綾瀬はるかのドラマの方は、全10話の内最初の3話が登場人物の幼年期で、子役の演技をずっと見せられるのはややしんどかったです(NHKの大河ドラマで言えば、4月まで子役が児童劇を演じているようなもの)。しかも、この間に生徒(児童)たちに事実が告げられ、告知が映画より更に早わたしを離さないで  ドラマs.jpgまっています(これ、何歳でそうした事実を知らされるかで、話がやや違ってくるように思われ、児童劇のような序盤と併せ、原作と最もイメージが違った点だった)。更に、ラストの方は、ドラマのオリジナルの話になっています。映画化も舞台化もされているため、オリジナリティを出そうとしたのかもしれませんが、ドラマ化は初なので、原作通りで真っ向勝負して欲しかった気もします(歴史さえ改変してしまう「直虎」の脚本家だから、何でもありか)。


わたしを離さないで 02.jpgわたしを離さないで03.jpg「わたしを離さないで」●原題:NEVER LET ME GO●制作年:2010年●制作国:イギリス●監督:マーク・ロマネク●製作:アンドリュー・マクドナルド/アロン・ライヒ●脚本:アレックス・ガーランド●撮影:アダム・キンメル●音楽:レイチェル・ポートマン●原作:カズオ・イシグロ●時間:105分●出演:キャリー・マリガン/アンドリュー・ガーフィールド/キーラ・ナイトレイ/イソベル・メイクル=スモール/エラ・パーネル/チャーリー・ロウ/エミリシャーロット・ランプリング/サリー・ホーキンス/ナタリー・リシャール/アンドレア・ライズボロー/ドムナル・グリーソン●日本公開:2011/03●配給:フォックス・サーチライト・ピクチャーズ(評価:★★★)

キーラ・ナイトレイ in「プライドと偏見」('05年/英)/「はじまりのうた」('13年/米)
キーラ・ナイトレイ プライドと偏見.jpg はじまりのうた98.jpg
アンドリュー・ガーフィールド in「ソーシャル・ネットワーク」('10年/米)/「沈黙-サイレンス-」('16年/米)
アンドリュー・ガーフィールド.jpg 沈黙%E3%80%80サイレンス.jpg
シャーロット・ランプリング in「まぼろし」('00年/仏)/「スパイ・ゲーム」('01年/米)/「デクスター 警察官は殺人鬼(シーズン8)」('08年/米)
シャーロット・ランプリング まぼろし .jpg Charlotte Rampling-spy-game-(2001) -.jpg シャーロット・ランプリング デクスター.jpg

わたしを離さないで  ドラマ s.jpgわたしを離さないで tv.jpg「わたしを離さないで」●演出:吉田健/山本剛義/平川雄一朗●プロデューサー:渡瀬暁彦/飯田和孝●脚本:森下佳子●原作:カズオ・イシグロ●出演:綾瀬はるか/三浦春馬/水川あさみ/真飛聖/伊藤歩/甲本雅裕/麻生祐未●放映:2016/01~03(全10回)●放送局:TBS

●朝日新聞・識者120人が選んだ「平成の30冊」(2019.3)
1位「1Q84」(村上春樹、2009)
2位「わたしを離さないで」(カズオ・イシグロ、2006)
3位「告白」(町田康、2005) 4位「火車」(宮部みゆき、1992)
4位「OUT」(桐野夏生、1997)
4位「観光客の哲学」(東浩紀、2017)
7位「銃・病原菌・鉄」(ジャレド・ダイアモンド、2000)
8位「博士の愛した数式」(小川洋子、2003)
9位「〈民主〉と〈愛国〉」(小熊英二、2002)
10位「ねじまき鳥クロニクル」(村上春樹、1994)
11位「磁力と重力の発見」(山本義隆、2003)
11位「コンビニ人間」(村田沙耶香、2016)
13位「昭和の劇」(笠原和夫ほか、2002)
13位「生物と無生物のあいだ」(福岡伸一、2007)
15位「新しい中世」(田中明彦、1996)
15位「大・水滸伝シリーズ」(北方謙三、2000)
15位「トランスクリティーク」(柄谷行人、2001)
15位「献灯使」(多和田葉子、2014)
15位「中央銀行」(白川方明2018)
20位「マークスの山」(高村薫1993)
20位「キメラ」(山室信一、1993)
20位「もの食う人びと」(辺見庸、1994)
20位「西行花伝」(辻邦生、1995)
20位「蒼穹の昴」(浅田次郎、1996)
20位「日本の経済格差」(橘木俊詔、1998)
20位「チェルノブイリの祈り」(スベトラーナ・アレクシエービッチ、1998)
20位「逝きし世の面影」(渡辺京二、1998)
20位「昭和史 1926-1945」(半藤一利、2004)
20位「反貧困」(湯浅誠、2008)
20位「東京プリズン」(赤坂真理、2012)

【2008年文庫化[ハヤカワepi文庫]】

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