【2603】 ○ 東野 圭吾 『素敵な日本人 東野圭吾短編集 (2017/03 光文社) ★★★☆

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短編集。通勤電車などで読む分にはまずまず。「君の瞳に乾杯」「水晶の数珠」が良かった。

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 作者が2011年から2016年にかけて『宝石 ザ ミステリー』('11年/光文社)などに発表した短編を収めたもので、「正月の決意」「十年目のバレンタインデー」「今夜は一人で雛祭り」「君の瞳に乾杯」「レンタルベビー」「壊れた時計」「サファイアの奇跡」「クリスマスミステリ」「水晶の数珠」の9編を所収。

 「正月の決意」...書き初めやお屠蘇の準備が出来た達之と康代の夫婦は、毎年の習慣の初詣に出掛ける。神社への境内に着くと人が倒れていた。倒れていたのは下着姿の77歳の町長で、警察に連絡しやって来たのは、やる気の無い刑事2人と署長だった。町長は病院に運ばれ、後頭部を殴れて記憶喪失になっているらしいと連絡がある。町長は、誰に殴られ、且つ、下着姿だったのか? 小さな神社で起きた小さな事件と夫婦の決意とは?

 「十年目のバレンタインデー」... 小説家の峰岸は、10年前に突然振られた彼女・津田知理子とバレンタインデーに10年ぶり会うことになり、胸を躍らせる。峰岸の小説家としての活躍を認め、本の内容の話をする知理子に甘い夜の時間を期待をする峰岸だったが、話の行方は、知理子の友人が10年前に自殺してしまったという話になる―。

 「今夜は一人で雛祭り」...妻・加奈子に先立たれ、娘・真穂が結婚する事になった三郎だが、真穂が嫁ぐ先は地元の名家で、大病院を経営している家だった。自分の夢のため出版社に就職していた真穂は、名家の家に嫁ぐため退職するという。結婚のために娘が無理をしているのではないかと思った三郎に対し、真穂は「そんなことない、私はお母さんの娘」だからと言って笑う。三郎はしまっていた雛人形を見て、亡妻・加奈子の意外な一面に改めて気付づく―。

 「君の瞳に乾杯」...内村は休日の競馬場にいた。顔馴染みのハマさんと話した後、ふと後ろから声をかけられると、大学同期の柳田だった。「久しぶり、今お前何してるの?」と訊かれ、「広告関係の会社に就職した」と答える内村。ありきたりな再会の会話の後、柳田に合コンに誘われた内村は参加し、アニメ好きの女性モモカに出会う。自分もアニメ好きの内村は彼女に惹かれてゆき、何度かデートを重ね、遂に告白と彼女の瞳を見つめた時、彼女の隠された秘密を知る―。

 「レンタルベビー」...未来の晩婚化、非婚化の世界。エリーは結婚にはメリットを見いだせないと思いながら、子育てには少し関心があったため「疑似子育」体験をしてみることに。赤ちゃん型アンドロイドに「パール」と名付け、ボーイフレンドの「アキラ」と疑似子育てし、子育ての大変さを実感しながらも徐々に愛着が湧いてくる。いよいよパールとの別れが来るが、その時意外な真実が明らかに―。

 「壊れた時計」...失業中で家賃も滞納している俺に、Aから連絡が入る。Aは周旋屋で、俺は過去に何度か危ない仕事をしていたが、今回の仕事は、「白い彫像」の入った白いケースを盗み出すことだった。仕事を引き受け、指定のマンションの一室に侵入するが、そこへ部屋の主が帰宅してしまい、咄嗟に突き飛ばして彼を殺してしまう。白いケースは彼の手に握られていた。焦った俺がAに連絡すると、問題ないから「わざとらしいことをせず」に立ち去れと指示される。Aに白いケースを渡し、報酬を得た俺だったが、部屋の主の男の壊れた腕時計が気になり、悩んだ末に―。

 「サファイアの奇跡」...小学生の未玖は学校帰りに神社による習慣があった。神社には茶毛の猫・イナリがいるからで、野良猫だが、未玖はピンクの首輪を買って猫に付け、猫に将来の夢を心の中で語って過ごしていた。そんなある日、神社でイナリを見かけなくなる。学校の帰り道、道路のガードレールに見覚えのあるピンクの首輪を見つける。そこには花が添えられ、未玖は見張りの末に、花を添えている人物を見つける。軽トラで来た男で、運転中に急に飛び出してきたイナリを轢いてしまったらしい。男はイナリを動物病院に連れて行ったが、亡くなってしまったのだと言う。男に連れられ行ったその病院で、未玖は不思議な気配を感じ、それを辿ると1つのケージに行き着く。そこには、青色の毛を持つ猫・サファイアがいた―。

 「クリスマスミステリ」...貧乏劇団員の売れっ子・黒須は人気脚本家の弥生に殺意を抱いていた。黒須は弥生のお蔭で売れっ子俳優になれたが、15歳年上の弥生と男と女の関係になっていた。しかし、若い女優の恋人ができた黒須は、業界に顔が利く弥生が邪魔になった。一緒に出る事になっていたクリスマスパーティの前に二人は会う約束をしていたが、黒須はそこで、かつて弥生が話し所持している毒物マンドラゴラを使って弥生を殺害しようと企む。毒を含ませたワインを飲んだ弥生は倒れて、自分がいた痕跡を消した黒須は劇団に戻り、その後パーティに出席する。そこに死んだと思っていた弥生が現れる―。

 「水晶の数珠」...アメリカで俳優として成功する夢を追う直樹に、姉・貴美子から、父・真一郎が癌で余命僅かなので、父の最後の誕生日パーティに来て欲しいと電話がある。直樹の実家は地元の名家で、長男の直樹は一度は地元企業に就職したが、自分の夢を追うために父に勘当されながら渡米したのだ。大事なオーディションがあったが、直樹は7年ぶりに帰国、実家に向かう電車を降りると父から電話があり、それは直樹の夢を嘲笑するものだった。怒った直樹は父の誕生日パーティには出ず、アメリカにトンボ返りする。3週間後に父は亡くなり、訃報を受けた直樹は日本に戻る。葬儀の後の通夜振舞いで、親族から、一度だけ時間を1日戻せるという「水晶の数珠」言い伝えを聞く。信じがたい話だが、父からの遺言書は「水晶の数珠」の取扱説明書だった。「水晶の数珠」の力は本物なのか? 父はいつ何のために水晶の数珠を使ったのか?

 最初に「正月」次に「バレンタインデー」、更には「雛祭り」と来るので、季節ごとに順番に出て来るのかと思ったら、途中からそうでもなくなって、アンドロイドを扱った「レンタルベビー」、脳移植を扱った「サファイアの奇跡」のような近未来SFもあったりして、最後の方で「クリスマス」が出てきた程度。しかしながら9編は比較的粒ぞろいと言っていいのではないでしょうか。長編ほどの重みやインパクトは無いですが、通勤電車などで暇つぶしに読む分にはまずまずだと思います。読む人によって好みが分かれそうですが、個人的には、「君の瞳に乾杯」「水晶の数珠」が良かったでしょうか。

    



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和田泰明

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