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"癒し系"×"お仕事系"。いい話ばかり過ぎる気もするが、上手いと思った。
『ツバキ文具店』 「ツバキ文具店~鎌倉代書屋物語~」NHK(2017)多部未華子主演
2017(平成29)年・第14回「本屋大賞」第4位作品。
祖母の葬式のため、雨宮鳩子は高校を卒業して以来8年ぶりに故郷の神奈川県の鎌倉に戻ってきた。 一人で鳩子を育ててくれた祖母は文具店を営む傍ら、思いを言葉にするのが難しい人に代わって手紙を書くことを請け負う「代書屋」でもあった。 祖母に反発して家を飛び出した鳩子は葬式と家の片付けが終わるとすぐに鎌倉を去ろうとするが、生前祖母が引き受けたものの未完であった代書の仕事を引き継ぐように促されそれに取り組むことで心境が変わり、文具店と代書屋業を継ぐことを決意する。地元の温かい人々にも支えられながら鳩子は代書屋として歩み始めた。さまざまな人の思いをすくいとり文字にして相手に届けることで、鳩子は彼らの思いに触れ彼らの人生に関わり、また仕事の師匠であった祖母の思いにも寄り添っていく―。
近年流行りの"癒し系"と"お仕事系"を掛け合わせたような作品ですが、すんなり気持ちよく読めました。今年['17年]4月にNHKラジオ第1「新日曜名作座」にてラジオドラマ化され、更にNHK総合「ドラマ10」にて「ツバキ文具店〜鎌倉代書屋物語〜」と題して多部未華子主演でテレビドラマ化(全8話)されています。
やや"いい話ばかり"過ぎて、あざとい印象を受けなくもないですが、淡々とエピソードを積み上げて、ラストで主人公が先代(祖母)の自分への想いを知るという盛り上げ方は上手いと思いました(素直に感動した)。
鎌倉という物語の舞台背景が効いているし、何よりも手紙文が「手書き」で(挿画の形を借りて)出てくるのが効いています。最初は作者が書いたのかなとも思ったりしましたが、"男爵"の手紙文が出てきたところで、これはプロの為せる技だと確信し、調べてみたら、萱谷恵子氏というプロの字書きの手によるものでした(ドラマでも多部未華子の書く字を担当している)。"挿画"と言うより、"コラボ"に近いかもしれません。
主人公の生い立ちなどについてあまり細かいことの説明をしていないのが、却ってすっと物語に入っていける要因にもなっているように思いました。テレビドラマ版で多部未華子は、原作のイメージをそう損なってはいない、まずまずと言っていい演技でしたが(多部未華子はこの演技で第8回「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」主演女優賞受賞)、ストーリー的にやや説明的な要素を付け加え過ぎたでしょうか。その結果、(これもありがちなことだが)原作に無い登場人物が出てきたりします(その典型が高橋克典演じる観光ガイド)。やっぱり脚本家というものは、原作に対して「何も足さず何も引かず」ということが出来ない性質なのかなあ。
「ツバキ文具店~鎌倉代書屋物語~」●演出:黛りんたろう/榎戸崇泰/西村武五郎●脚本:荒井修子●原作:小川糸●出演:多部未華子/高橋克典/上地雄輔/片瀬那奈/新津ちせ/江波杏子/奥田瑛二/倍賞美津子●放映:2017/04~06(全8回)●放送局:NHK
【2018年文庫化[幻冬舎文庫]】