【2588】 ○ ジョン・ヒューストン (原作:ダシール・ハメット) 「マルタの鷹」 (41年/米) (1951/01 セントラル) ★★★★

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曲者俳優に事欠かない作品。その中でサム・スペード像をよく体現していたH・ボガート。

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マルタの鷹03.jpgマルタの鷹Bogart.jpg サンフランシスコの私立探偵サム・スペード(ハンフリー・ボガート)は、家出した妹を連れ戻したいという女性(メアリー・アスター)の依頼を受け、相棒のマイルズ・アーチャー(ジェローム・コーワン)に、フロイド・サースビーという男を尾行させる。しかし、その夜サースビーとアーチャーは死体となって発見される。スペードはアーチャーの妻(グラディス・ジョージ)と密通しており、警察は彼に嫌疑を向ける。スペードはジョエル・カマルタの鷹AstorMaltFalc1941Trailer.jpgマルタの鷹GeorgeMaltFalc1941Trailer.jpgイロ(ピーター・ローレ)という男の訪問を受け、彼はスペードが何かを握っていると考えており、それを探ろうとしている様子だった。女依頼人に再会したスペードは、彼女が最初に名乗ったのは偽名で、本名はブリジッド・オショーネシーであること、カイロとも関係していることを知る。2人を引き合わせたスペードは、彼らの会話からその関心がある鳥の彫像にあること、「G」なる人物もまたそれを求めてマルタの鷹LorreMaltFalc1941Trailer.jpgマルタの鷹GreenstreetMaltFalc1941Trailer.jpgいるらしいことを知る。やがて「G」ことガットマン(シドニー・グリーンストリート)もスペードに接触してくる。スペードはハッタリを仕掛け、彼らの捜し求めるマルタ騎士団にゆかりを持つ「マルタの鷹」の存在を聞き出す。ガットマンは、ロシアの将軍が「鷹」を所持していることを知り、カイロ、サースビー、オショーネシーの3人を代理人として派遣したが、「鷹」の価値に勘付いた3人はそれを秘匿してしまったのだという。やがて、オショーネシーの意を受けて、貨物船「ラ・パロマ」号の船長がスペードの事務所を訪れるが、彼は「鷹」をスペードに託して息絶える。「鷹」を手に入れたスペードはそれを切り札にガットマンらと交渉し、すべての経緯を炙り出す―。

マルタの鷹 b.jpgマルタの鷹〔改訳決定版〕.jpg 1941年のジョン・ヒューストンの脚本・監督作で、監督デビュー作でもある作品。ダシール・ハメットの同名探偵小説の3度目の映画化作品ですが、この作品が圧倒的に有名です(2007年の American Film Institute による「ベスト映画100」では第31位にランクインしている。因みに、先に取り上げた「黄金」('48年)は第38位)。日本公開は本国公開の10年後の1951年ですが、ハメットの原作の本邦初訳は更に後で1954年のハヤカワ・ポケット・ミステリなので、翻訳者(砧一郎)も先に映画の方を観たのではないでしょうか。まあ、読者側からすれば、原作を先に読もうと映画を先に観ようと、映画のイメージが強烈なので、原作に対するイメージに影響を与えることは必至のような気がします。

マルタの鷹S (2).jpg ハンフリー・ボガートが40代で初めてタイトルでトップになった作品ですが、カイロを演じたピーター・ローレとガットマンを演じたマルタの鷹s.jpgシドニー・グリーンストリートの曲者ぶりが強烈で、ガットマンの手下の用心棒役で性格俳優のエリシャ・クック・Jrなども出ていたりして、ハンフリー・ボガートのアクの強さが中和され、むしろ爽やかに見えるくらいです。とりわけ、ぬめっとした異様さを漂わすピーター・ローレは、風貌も演技も何とも言えず薄気味悪いですが、この人、「カサブランカ」('42年)にも、出国ビザを売買するブローカー役で出ていました(ヒッチコックの「暗殺者の家」('34年)にも出ていた)。

マルタの鷹the-maltese-falcon.jpg ストーリーは概ね原作に忠実ですが、ラ・パロマ号の中で何があったのかが全く説明されておらず、交渉上「マルタの鷹」を所持しているとハッタリをかましたスペードのところへ「鷹」が偶然転がり込んできて、ややご都合主義に見えてしまうキライがなくもありません。原作では、ラ・パロマ号の中での出来事は登場人物の一人によって語られる形になっており、これを映像化すると"映像のウソ"になるし、"語り"でやると、せっかくそこまでテンポよく話が展開していたのに間延びしてしまうことになり、敢えて説明をすっ飛ばしたのではないかと、個人的には推察します。

マルタの鷹09.jpg 実は登場人物の"語り"でストーリーを展開させている部分が既に結構あり(フィルム・ノアールに特有の作劇法で、この作品がその原型になったとも言われている)、とりわけハンフリー・ボガートがよく喋っているので(しかも早口で)、これ以上やるとセリフばかりになってしまうという危惧もあったのかも。まあ、その他にもサスペンスの要素はあるし、ハードボイルド作品の場合、謎解きも大事ですがテンポや雰囲気も大事なので、ラ・パロマ号での出来事の説明を省いてしまったのは、これはこれで妥当な選択だったのかもしれません。

マルタの鷹mages.jpg サム・スペードがいなければ、レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウも、ロス・マクドナルドのリュウ・アーチャーも存在しなかったと言われています。原作者ハメットはサム・スペードについて「スペードにはモデルはいない。彼は私が一緒に働いていた私立探偵の多くがこうでありたいと願い、時にうぬぼれて少しは近づけたと思い込んだという意味で、夢に描いた男なのである」「彼はいかなる状況も身をもってくぐり抜け、犯罪者であろうと無実の傍観者であろうと、はたまた依頼人であろうと、関わりを持った相手に打ち勝つことの出来る強靭な策士であろうと望んでいる男なのである」と述べていますが、ハンフリー・ボガートはそうしたサム・スペード像をよく体現していたように思います。

マルタの鷹08.jpgマルタの鷹  0.jpg「マルタの鷹」●原題:THE MALTESE FALCON●制作年:1941年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジョン・ヒューストン●撮影:アーサー・エディソン●音楽:アドルフ・ドイチュ●原作:ダシール・ハメット●時間:101分●出演:ハンフリー・ボガート/メアリー・アスター/グラディス・ジョージ/ピーター・ローレ/バートン・マクレーン/リー・パトリック/シドニー・グリーンストリート/ウォード・ボンド/ジェローム・コーワン/エリシャ・クック・Jr/ジェームズ・バーク/マレイ・アルパー/ジョン・ハミルトン/ウォルター・ヒューストン(ノン・クレジット)●日本公開:1951/01●配給:セントラル●最初に観た場所:新宿・シアターアプル(85-10-13)(評価:★★★★)

ピーター・ローレ in「マルタの鷹」('41年)
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ピーター・ローレ in「暗殺者の家」('34年)/「カサブランカ」('42年)/ヒッチコック劇場「南部から来た男」(1960) (日本放送時のタイトル「指」)with Steve McQueen
暗殺者の家 ピーター・ローレ.jpg ウーガーテ(ピーター・ローレ)_.jpg ダール 南から来た男es.jpg

                  ビービー・ダニエルズ主演 ベティ・デイヴィス主演



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和田泰明

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