【2580】 ○ スティーブン・ダルドリー (原作:ベルンハルト・シュリンク) 「愛を読むひと」 (08年/米・独) (2009/06 ショウゲート) ★★★★ (○ ベルンハルト・シュリンク 『朗読者 (2000/04 新潮社) ★★★★)

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主人公が "彼女の秘密"に気づく場面はミステリの謎が明かされるようで白眉。。

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愛を読むひと<完全無修正版> [DVD]」ケイト・ウィンスレット ベルンハルト・シュリンク『朗読者 (新潮文庫)

愛を読むひと 01.jpg 第二次世界大戦後のドイツ。15歳のマイケル(ダフィット・クロス)は、体調が優れず気分が悪かった自分を偶然助けてくれた21歳も年上の女性ハンナ(ケイト・ウィンスレット)と知り合う。猩紅熱にかかったマイケルは、回復後に毎日のように彼女のアパートに通い、いつしか彼女と男女の関係になる。ハンナはマイケ愛を読むひと 03 2.jpgルが本を沢山読む子だと知り、本の朗読を頼むようになる。彼はハンナのために『オデュッセイア』や『犬を連れた奥さん』などを朗読する。ある日、ハンナは働いていた市鉄での働きぶりを評価され、事務職への昇進を言い渡されると、マイケルの前から姿を消愛を読むひと80.jpgしてしまう。理由がわからずにハンナに捨てられて8年が経ったある日、ハイデルベルク大学法学部生となったマイケルは、ロール教授(ブルーノ・ガンツ)のゼミ研究のためにナチスの戦犯を裁くアウシュビッツ裁判を傍聴し、被告席の一つにハンナの姿を見つける。彼女は第二次世界大戦中に強制収容所で看守をしていたのである。裁判はハンナに不利に進み、彼女は無期懲役の判決を受ける―。
 
Der Vorleser(ドイツ語paperback)/Bernhard Schlink
Der Vorleser.jpgベルンハルト・シュリンク.jpg 2008年のアメリカ・ドイツ合作映画で、監督は英国人のスティーブン・ダルドリー、原作は1995年に出版されたベルンハルト・シュリンク(Bernhard Schlink)の長編小説『朗読者』('00年/新潮社、原題:Der Vorleser/The Reader)です。映画は(終盤に主人公がニューヨークへ行く場面を除き)ドイツで撮影されていますが、英語による製作であるため、主人公の名前も、原作のミヒャエルからマイケルになっています。但し、少年時代のマイケルを演じたダフィット・クロスはドイツの俳優、母親を演じたズザンネ・ロータもドイツ人女優、法学部のロール教授はスイス出身のブルーノ・ガンツが演じていてます。ハンナ役のケイト・ウィンスレットは英国人女優、成人してからのマイケルを演じたレイフ・ファインズも英国人俳優、アウシュヴィッツの生存者母子ローゼ・マーターとイラーナ・マーターの二役を演じたレナ・オリンはスウェーデン出身、若き日のイラーナを演じたアレクサンドラ・マリア・ララはルーマニア人、成人したマイケルの娘を演じたハンナー・ヘルツシュプルングは、これまたドイツ人女優です(アメリカ人、いないね)。

愛を読むひとes.jpg 先に原作を読みましたが、かつて齋藤美奈子氏が「包茎小説」と呼んでいたのを思い出しました。15歳のミヒャエルと21歳年上のハンナが出会い、男女の関係を持って別れるまでを描いた第1章だけならば、確かに"筆おろし"小説と言えなくもなく、元判事で法学部教授である作者がこういうの書くのが興味深いと思いました。しかし、第2章の裁判の場面はまさにキャリアに裏打ちされたもので、作品に深みを与えることにも繋がっているように思いました。小説はこれに、裁判以降の主人公とハンナの話を描いた第3章を加えた3つの章から成ります。

レイフ・ファインズ(現在のマイケル)/ダフィット・クロス(少年時代のマイケル)
愛を読むひとralph_fiennes_in_the_reader.jpg愛を読むひと kurosu.jpg 一方の映画の方は、1995年の主人公マイケルの「現在」を軸に、1958年の15歳の時にハンナと出会った少年期、1966年のハンナの裁判を偶然傍聴することになった法学部生愛をよむ人 s.jpg時代、1976年のマイケルが本を朗読しテープに録音して、それを獄中のハンナに送ることを思いついた時期、1980年のハンナから届いた短い文章の礼状にマイケルが感動した出来事、1988年の20年の刑に減刑されたハンナが釈放されることが決まった時などとの愛を読むひと ブルーノ・ガンツ.jpg間を行き来する形をとっていますが、概ね原作に忠実であるといっていいでしょう(マイケルが離婚して娘となかなか会えないでいるといった現況は映画のオリジナル。あとは、ブルーノ・ガンツ演じる教授のウェイトが原作より大きくなって、主人公に精神的に導き支えるという点で、原作における主人公の父親である哲学教授の役割を一部代替していたりする)。

ブルーノ・ガンツ(後ろ)

愛を読む人aioyomu.jpg 原作でも言えるのは、ハンナが幾つか謎を抱えている女性であるという点であり、①なぜマイケルと交わるようになったのか?(単なる気まぐれ?)、②なぜ裁判で不利になることを承知で自らの"秘密"を明かさなかったのか?(主人公がその"秘密"に気づく場面は、ミステリの謎が明かされるようで、原作でも映画でも白眉)、③そして最後に彼女がとった行動の理由は?―等々。映画を観て、①の理由は、マイケルが彼女にとっての癒しとなる"朗読者"であり、自らを成長させるパートナーであったことが窺えましたが心と響き合う読書案内2.jpg、②については、映画を観てもまだ解らない部分が残りました。小川洋子氏は、「彼女は疲れ切っていたに違いない。彼女は裁判で闘っていただけではなかった。彼女は常に闘っていたのだ。何ができるかを見せるためではなく、何ができないかを隠すために」としています(『心に響き合う読書案内』('09年/PHP新書)。この原作は、関川夏央氏の『新潮文庫20世紀の100冊』('09年/新潮新書)にも取り上げられている)。

愛を読む人 ウィンスレット.jpg こうした"秘密"を持つ女性を演じるのは難しいだろうなあと思いますが、それだけ魅力的でもあり、ケイト・ウィンスレット(1975年生まれ)はそこに上手く嵌ったように思います(ニコール・キッドマンが妊娠で降板し、当初の候補だったケイト・ウィンスレットが結局演じることになった)。ケイト・ウィンスレットは、この作品で「タイタニック」('97年)以来4度目のアカデミー賞主演女優賞ノミネート(「助演賞」ノミネートを含むと6度目)にして、初の受賞を果たしています。「タイタニック」で共演したレオナルド・ディカプリオ(1974年生まれ)も、「レヴェナント:蘇えりし者」('15年)で4度目のアカデミー賞主演男優賞ノミネート(「助演賞」ノミネートを含むと5度目)にして初受賞していますが、若い頃から演技の天才などと呼ばれたレオナルド・デカプリオよりもケイト・ウィンスレットの方が受賞は7年早かったことになります。

ケイト・ウィンスレット in「タイタニック」('97年)/ブルーノ・ガンツ in「ヒトラー~最期の12日間~」('04年)
ケイト・ウィンスレット タイタニック.jpg ブルーノ・がンツ ヒトラー ~最期の12日間~.jpg

愛を読むひig.jpg「愛を読むひと」●原題:THE READER●制作年:2008年●制作国:アメリカ・ドイツ●監督:スティーブン・ダルドリー●製作: アンソニー・ミンゲラ/シドニー・ポラック/ドナ・ジグリオッティ/レッドモンド・モリス●脚本:デヴィッド・ヘアー●撮影:クリス・メンゲス●音楽:ニコ・マーリー●原作:ベルンハルト・シュリンク「朗読者」●時間:124分●出演:ケイト・ウィンスレット/レイフ・ファインズ/ダフィット・クロス/ブルーノ・ガンツ/レナ・オリン/アレクサンドラ・マリア・ララ/ハンナー・ヘルツシュプルング/ズザンネ・ロータ●日本公開:2009/06●配給:ショウゲート●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(17-09-19)(評価★★★★)

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和田泰明

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