【2561】 △ 増村 保造 「女体(じょたい) (1969/10 大映) ★★★

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浅丘ルリ子の演技(悪女ぶり)と肉体(若々しさ)が見所か。ラストは安易。

女体 1969.jpg女体 1969 09.jpg 浅丘ルリ子 『女体』 スチールi.jpg
女体 [DVD]」浅丘ルリ子・伊藤孝雄      岡田英次・浅丘ルリ子・川津祐介
               浅丘ルリ子・岸田今日子
女体 浅丘ルリ子岸田今日子スチル.jpg 浜ミチ(浅丘ルリ子)は、大学理事長・小林卓造(小沢栄太郎)の息子・行夫(青山良彦)に強姦されとして慰謝料200万円を要求したが、行夫の姉・晶江(岸田今日子)に侮辱的な扱いを受け、敵意を抱く。スキャンダルを恐れた卓造は、婿である秘書の石堂信之(岡田英次)に処理を一任し、信之は晶江の意志に反して200万円を支払う。ミチは信之に愛を感じ、二人は求め合うが、ミチは信之との情事を晶江に伝えてしまう。それを知った信之は、ミチが元画家の青年・五郎(川津祐介)とも交渉があることを知ってミチと別れる決心をする。しかし、ミチを捨てられず、逆に五郎女体 1969_1.jpgから手切れ金を要求され、卓造から預っていた裏口入学金の一部500万円を流用して払う。だが、五郎はミチと別れないばかりか、金の出所を追求すると嘯き、信之はそんな五郎を誤って殺害する。やがて保釈された信之は、晶江を捨て、仕事も捨ててミチとの生活に飛び込女体 1969m.jpgむが、バー経営が行き詰まり、加えてミチの束縛を嫌う奔放な性格から二人の間に亀裂が生じる。ミチはやがて信之の妹・雪子(梓英子)の婚約者・秋月(伊藤孝雄)に心を寄せるようになる。秋月はミチの誘惑を拒むが、ミチは入水自殺する素振りをみせた挙句、深夜のドライブに秋月を誘い出し、事故による無理心中を図るも失敗する。信之にも去られて独りになったミチは「また素敵な男を見つければいいわ」と酔って、ふらつく足で風呂場のガス管を引っ掛けたまま湯舟で微睡み、永遠の眠り向かう―。

盲獣poster.jpg盲獣 .jpg 増村保造(1924-1986)監督の1968年10月公開作で、同監督は60年代は大体年3本くらい撮っていて、この年も江戸川乱歩原作、船越英二・緑魔子主演の「盲獣」('68年/大映)と川端康成原作、平幹二朗・若尾文子主演の「千羽鶴」('68年/大映)が公開されています。昔の監督は量産だったなあと思いますが、増村保造監督について言えば、次の年1970年に撮っているのが「でんきくらげ」「やくざ絶唱」「しびれくらげ」の3本であり、文芸路線、エンタメ路線、ピンク路線と何でも混在しているところが増村保造監督らしいです。
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緑はるかに.jpg緑はるかに2.jpg浅丘ルリ子 昭和44年 女体.jpg 15歳でカラー映画「緑はるかに」('55年/日活)でいきなり主役映画デビューした浅丘ルリ子は、29歳ですでに80本以上の映画に出演していましたが、当時まさに人気絶頂で、その日活に所属する超人気の浅丘ルリ子が大映映画に出ることになったということで、当時の大映のエース・増村保造監督が起用されたとのことです。

愛の化石L.jpg また、浅丘ルリ子はこの年('69年)にシングルレコード曲「愛の化石」をヒットさせており(唄よりもセリフが愛の化石.jpg浅丘ルリ子-p2.jpg多い曲だった)、翌年の1970年には、浅丘ルリ子と田宮二郎、高橋悦史主演で同名映画「愛の化石」('70年/日活)も製作されました。因みに、それまでも20曲以上シングルを発表していた彼女ですが、この曲で一旦歌謡曲の世界からは身を引き、「愛の化石」の次のシングルが出たのは45年後でした(小林旭とのデュエット曲「いとしいとしというこころ」('14年))。
愛の化石 [EPレコード 7inch]」/「愛の化石 [DVD]」/「愛の化石」('70年/日活)スチール写真
    
小谷野敦.jpg この「女体」については、比較文学者の小谷野敦氏が「ここでの浅丘ルリ子はニンフォマニアかサイコパスとしか思えず、ひたすらうざい。海に入って死のうとする時なんか、とめないで死なせたほうがいいと思ってしまう。『痴人の愛』よりひどく、まともな男ならまず逃げ出す。魅力のかけらもない。小沢栄太郎、岸田今日子ら理事長一家の描き方がまた類型的でげんなりする。どいつもこいつもゲヘナの火で焼きつくされてしまえばいいのにというような映画」と酷評していましたが(Amazon. comで星1つ)、お説ごもっともながら、そこまでヒドイかなあ(?)とも思ってしまいました。

痴人の愛 京マチ子.jpg 確かに『痴人の愛』のナオミに比べたら、この映画の浅丘ルリ子演じるミチは、なぜこんな女性に男が入れ込んでしまうのかなあと思うぐらい「自己愛性人格障害」ぶりが露骨に前面に出ているように感じられました。今で言う「ストーカー」的要素もあるし...(まあ、『痴人の愛』のナオミにおける谷崎ならではの絶妙なファム・ファタールぶりも、何度か映画化されたものにおいてそれが十全に描き出せているかというと、そうでもない気がするが)。

痴人の愛」('49年)京マチ子、宇野重吉

浅丘ルリ子 女体 .jpg ミチのウザさは、彼女が海に入って死のうとする時に、小谷野敦氏ならずとも、自分だってとめないで死なせたほうがいいと思ってしまったくらいですが、観客目線でミチという女性が好きだ嫌いだということとは別に、少なくとも映画の中では、伊藤孝雄演じる男はミチを助けに海に飛び込み、岡田英次演じる男は彼女を捨てられないわけであって、そこがこの映画のミソなのではないかと思います(と言っても、男たち、特に岡田英二演じる男に感情移入し切れない面があったが)。

女体 1969.jpg 男を引き付けるのはやっぱり、タイトル通り"女体"の力なのでしょうか。この映画の浅丘ルリ子はあっけらかんと下着姿を見せていて、しかも非常に締まったスレンダーな小麦色のボディをしています。但し、こうなると、女体(にょたい)と言うより、やはり女体(じょたい)になるのだろうなあ(野坂昭如風に言えば、エロスの具象かもしれないが、エロは感じられないと言うことか。野坂は、エロは分かるがエロスは自分にはよく分からないとも言っている)。

 浅丘ルリ子は、やや芝居臭さがあって、演技に無理があるようにも見えますが、穿った見方をすれば、主人公の「演技性人格障害」を体現していると言えるのかも。川津祐介は増村保造監督の「」('64年/大映)でも、若尾文子演じる両性愛的女性の婚約者だかヒモだかよく分からない男を演じていて、ちんけなワルが似合います。「卍」で若尾文子に想いを寄せる女性を演じた岸田今日子は、「卍」の方がいい演技でしたが、こちらでは脇に回ったから仕方がないか(やったことと言えば、離婚を承諾しなかったことだけ)。

 全体にパターン化された演技が多いため(何だか小谷野敦氏に近くなってきた)、やはり浅丘ルリ子の演技(悪女ぶり)と肉体(若々しさ)が見所でしょうか。最後にミチを死なせてしまうのがいかにも安易に思われました。ラストでミチが独りポツンと居るだけの方が、余韻があったように思います。
1969(昭和44)年公開(大映)
浅丘ルリ子9.jpg女体  .jpg女体 1969m.jpg「女体(じょたい)」●制作年:1969年●監督:増村保造●脚本:池田一朗/増村保造●撮影:小林節雄●音楽:林光●時間:94分●出演:浅丘ルリ子/岡田英次/岸田今日子/梓英子/伊藤孝雄/川津祐介/小沢栄太郎/青山良彦/早川雄三/北村和夫/伊東光一/中条静夫/中田勉/小山内淳/三笠すみれ/川崎陽子/仲村隆/白井玲子●公開:1969/10●配給:大映●最初に観た場所:角川シネマ新宿(シネマ2・おとなの大映祭)(17-07-12)(評おとなの大映祭.jpg角川シネマ新宿  0.jpg角川シネマ新宿 .jpg角川シネマ新宿 2.jpg価:★★★)
角川シネマ新宿(新宿3丁目「新宿文化ビル」4・5階)シネマ1(300席)・シネマ2(56席)  2006(平成18)年12月9日〜旧文化シネマ1・4が「新宿ガーデンシネマ1・2」として、旧文化シネマ2・3が「シネマート新宿1・2」として再オープン、2008(平成20)年6月14日「新宿ガーデンシネマ1・2」が「角川シネマ新宿1・2」に改称)

「緑はるかに」('55年/日活)

                          



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和田泰明

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This page contains a single entry by wada published on 2017年7月15日 01:01.

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