【2489】 ○ 松田 定次 (原作:大佛次郎) 「赤穂浪士 (1961/03 東映) ★★★☆

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大佛次郎の原作小説をベースに考えればオーソドックス(?)なオールスター映画。

赤穂浪士 1961 .jpg赤穂浪士 1961 87.jpg 赤穂浪士 kataoka .jpg
赤穂浪士 [DVD]」 片岡千恵蔵(大石内蔵助)

赤穂浪士 1961dL.jpg 五代将軍綱吉治下、江戸市内に立てられた高札の「賄賂は厳禁のこと」の項が墨黒々と消され、犯人とおぼしき浪人・堀田隼人(大友柳太朗)が目明し金助(田中春男)に追われるが、堀部安兵衛(東千代之介)に救われる。赤穂五万石の当主・浅野内匠頭(大川橋蔵)は、勅使饗応役を命ぜらるが、作法指南役の吉良上野介(月形龍之介)は、内匠頭が賄賂赤穂浪士 1961  ookawa1.jpgを贈らないため事毎に意地の悪い仕打ちをする。勅使登城当日、度重なる屈辱に耐えかね、松の廊下で上野介に刃傷に及ぶ。内匠頭は命により即日切腹、浅野家は改易に。赤穂城代・大石内蔵助(片岡千恵蔵)のかつての親友で、上野介の長子・綱憲(里見浩太朗)を当主とする上杉家の家老・千坂兵部(市川右太衛門)は、上野介お構いなしとの片手落ちの幕府の処断に心痛する。兵部は清水一角(近衛十四郎)に命じ、腕ききの浪人者を集め、上野介の身辺を守らせ、隼人も附人の一人となる。兵部は妹の仙(丘さとみ)に内蔵助らの動静をさぐることを命じ、隼人も赤穂に赴く。内蔵助は、同志に仇討ちの意志を赤穂浪士さくら千恵蔵.jpg伝えて城を明け渡すと、京都山科に居を構えて祇園一力で遊蕩の日々を送り、妻子とも離別する。世の誹りの中、兵部だけは内蔵助の心中を知る。内蔵助は立花左近を名乗って東下りするが、三島の宿で本物の立花左近(大河内傳次郎)と鉢合わせになり、左近の情ある計らいで事無きを得る。内蔵助は討入り前に瑶泉院(大川恵子)を訪れ、言外に今生の別れを告げると、元禄14年12月14日雪の中、本所松坂町の吉良邸に討入る―。

赤穂浪士 1961 ookawa .jpg 松田定次監督による1961年の東映創立10周年記念作品。同監督による東映創立5周年記念作品「赤穗浪士 天の巻・地の巻」('56年/東映)と同じく、大佛次郎(1897-1973/享年75)の、昭和初期に「東京日日新聞」に連載、1928年改造社より刊行の小説『赤穗浪士』(新潮文庫など)を原作としています(5周年記念の後にまた10周年記念作を作ったのは、その間に大映が長谷川一夫主演のオールスター映画「忠臣蔵」('58年/大映)を作っていることへの対抗意識もあったのではないかと推察する)。5周年記念「赤穗浪士 天の巻・地の巻」の時の脚本が新藤兼人であっ赤穂浪士 東.jpgたのに対し、こちらは小国英雄の脚本。「赤穗浪士 天の巻・地の巻」の時は大石内蔵助を市川右太衛門が、浅野内匠頭を東千代之介が、立花左近を片岡千恵蔵、堀部安兵衛を堀雄二が演じていたのに対し、こちらは大石内蔵助を片岡千恵蔵(片岡千恵蔵は「忠臣蔵 天の巻・地の巻」('38年/日活)では浅野内匠頭と立花左近の1人2役を演じている。この時の大石内蔵助役は坂東妻三郎)が、浅野内匠頭を大川橋蔵が、立花左近を大河内傳次郎が、堀部安兵衛を東千代之介が演じています。また、この作品では、内蔵助の心情を知る上杉家の家老・千坂兵部の存在が大きく取り上げられていて、それを市川右太衛門が演じているほか、原作小説の主人公的存在で、千坂兵部の命により赤穂浪士の動向を探る浪人・堀田隼人という架空大友柳太朗赤穂浪士38.jpgの人物を、「赤穗浪士 天の巻・地の巻」の時に続いて赤穂浪士 月形.jpg赤穂浪士 1961 es.jpg演じています(この役は過去に大河内傳次郎や片岡千恵蔵も演じている)。因みに吉良上野介も、「赤穗浪士 天の巻・地の巻」の時に続いて月形龍之介が演じています。
大河内傳次郎(立花左近)・片岡千恵蔵(大石内蔵助)...「大石東下り」の場面

赤穂浪士0.gif 豪華俳優陣がそれぞれに相応しい役を演じているという印象を受け、オーソドックスに作られたものの中では完成度はまずまず高いのではないでしょうか。まあ、大友柳太朗が演じる堀田隼人は完全に架空の人物であるし、千坂兵部(実在)も赤穂事件の2年前(1700年)に既に没していたことが後に判明しているため、"オーソドックス"というのはあくまでも大佛次郎の小説『赤穗浪士』をベースとして考えた場合ということになりますが...(マキノ正博/池田富保監督の「忠臣蔵 天の巻・地の巻」('38年/日活京都)などの"古典"と比べればいじりまくっているということになる)。因みに、立花左近は「実録忠臣蔵」('21年)でマキノ省三監督がこしらえた架空キャラクターで、モデルは垣見五郎兵衛(実在)という人ですが、大石内蔵助とは鉢合わせするどころか、実際には会ってもおらず、大佛次郎の原作にも登場しません。マキノ省三監督が「勧進帳」の要素を「忠臣蔵」に取り込み、それを受け継いだのでしょう(つまり、監督による"いじり"はそれまでも絶えず行われていたということか)。今や「大石東下り」として定番的な名場面となっています。

 まあ、あまり史実にこだわり出すと、そもそも吉良上野介は本当に浅野内匠頭に意地悪したのかも怪しくなり、浅野内匠頭に対する取り調べの記録なども確かな史料は無いため、結局は多くが推測の域を出ないことになってしまうというのもあるかと思います。だからこそフィクションが成り立つとも言え、フィクションはフィクションとして楽しむべきなのかもしれません。

赤穂浪士 大友.jpg この大佛次郎原作・松田定次監督版の場合、やはり何と言っても大友柳太朗が演じる堀田隼人の存在が特徴的で、「賄賂は厳禁のこと」と書かれた立札に落書きし(この話は原作には無い)、賄賂を受け取っている吉良上野介を揶揄することで、浅野内匠頭の吉良上野介への怒りを単なる"私憤"の域に止めず"公憤"の域にまで引き上げ、観客が浅野内匠頭に同情しやすい状況を作り出す役割を果たしているように思います。でも、結局隼人自身は、浪士たちに共感を覚えながらも自らを浪士たちに同化しきれないことを悟って、スパイ同士の関係から恋仲になった仙の下へ戻って行きます。映画からは隼人が自らが抱える虚無を克服できなかったことが窺えますが、原作では後日譚として隼人と仙は心中したとなっています(原作では仙は兵部の妹でも何でもない非血縁者)。

赤穂浪士 中村.jpg あとは目立ったのは、浅野内匠頭のことを心配していた中村錦之助(萬屋錦之介)演じる脇坂淡路守。吉良上野介ごときで命を落とすのは惜しいと内匠頭に辛抱を説き、浅野家臣には上野介への付け届をもう少し配慮しろとの実践的アドバイスをしています(この人の言うことを聞いていれば赤穂事件は起きなかった?但しこの話も原作には無い)。しかし、遂に刃傷事件が起きてしまって悔しがり、松の廊下を搬送される吉良にわざと(?)ぶつかって「我が家の紋所を不浄の血でけがすとはなにごとぞ!無礼者!」と言って吉良上野介を扇子でしたたか打ち据えます(この話も原作には無い)。でもこれはまあ立花左近の"勧進帳"(大石東下り)と併せて定番と言えば赤穂浪士 市川.jpg定番です。むしろ、市川右太衛門演じる上杉家の家老・千坂兵部赤穂浪士 里見.jpg後半の目立ちぶりが顕著だったかも。千坂兵部は内蔵助と旧知の関係になっていて(原作には無い設定)、なぜか内蔵助が立花左近と鉢合わせになった三島の宿にまで出没し、内蔵助と目と目だけの"会話"。最後は、父親の危機に馳せ参じようとする上野介の長子・綱憲(里見浩太朗)を上杉家のためだと言って(世間は皆、赤穂浪士側を支持していますとの殆ど観客向けのような説明の仕方がスゴイけれど)命を張って押しとどめます(原作では赤穂浪士討ち入りの時点で千坂兵部は国元に戻されているため、この場面も無い)。

赤穂浪士 松方.jpg 松方弘樹(1942年生まれ、デビュー2作目で当時18歳)が大石内蔵助の息子・大石主税役で出ていて、討ち入り前に元服しますが(実在の大石主税は当時15歳ぐらいか)、討ち入った先に近衛十四郎(松方弘樹の実父)が演じる二刀流の剣豪・清水一角がいるという取り合わせが興味深いです(清水一角は歌舞伎で使われた名前で、本名は清水一学(実在))。"親子出演"で、親子を敵味方にしてしまったのだなあ。近衛十四郎の剣戟がちらっと見られるのはいいです(松方弘樹の方はまだ、ただ出ているだけ程度の存在か)。

 江戸っ子の畳職人・伝吉を演じた中村賀津雄(中村嘉葎雄)(こちらは中村錦之助と"兄弟出演")とその棟梁を演じた吉田義夫(いつもは悪役が多い)、内匠頭の一の側近・片岡源吾右衛門(史料では無言であることを条件に内匠頭の切腹への立ち合いを許されたとある)を演じた山形勲(この人も普段は悪役が多く、後に吉良上野介も演じるがここでは忠義の家臣)も良かったです。オールスター映画ですが、ストーリーは概ね定番です(但し、改めて振り返ると、大佛次郎の原作と比べても細部においては「無い無い尽くし」であるため、「(原作をベースに考えれば)オーソドックス」の"オーソドックス"には?マークがつくが)。そうした意味では、個々の役者を楽しむ映画かもしれません。

赤穂浪士1961 _0.jpg「赤穂浪士」●制作年:1961年●監督:松田定次●製作:大川博●脚本:小国英雄●撮影:川崎新太郎●音楽:富永三郎●原作:大佛次郎「赤穂浪士」●時間:150分●出演:片岡千恵蔵/中村錦之助(萬屋錦之介)/東千代之介/大川橋蔵/丘さとみ/桜町弘子/三原有美子/藤田佳子/花園ひろみ/大川恵子/中村賀津雄(中村嘉葎雄)/松方弘樹/里見浩太郎/柳永二郎/宇佐美淳也/堺駿二/田中春男/多々良純/尾上鯉之助/徳大寺伸/香川良介/小柴幹治/片岡奈良東映赤穂浪士超満員昭和36年.jpg栄二郎/堀正夫/高松錦之助/有馬宏治/楠本健二/月形哲之介/瀬川路三郎/団徳麿/小田部通麿/潮路章/有川正治/南方英二(後のチャンバラトリオ)/遠山金次郎/尾上華丈/大前均/中村錦司/赤木春恵/上代悠司/国一太郎/水野浩/中村時之介/北龍二/明石潮/清川荘司/吉田義夫/星十郎/沢村宗之助/戸上城太郎/阿部九洲男/加賀邦男/長谷川裕見子/花柳小菊/青山京子/千原しのぶ/木暮実千代/大河内傳次郎/近衛十四郎/山形勲/薄田研二/進藤英太郎/大友柳太朗/月形龍之介/市川右太衛門●公開:1961/03●配給:東映(評価:★★★☆)

「赤穂浪士」封切時(奈良東映・昭和36年)写真:谷井氏

      
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和田泰明

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This page contains a single entry by wada published on 2016年12月15日 00:03.

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