【2443】 ○ ジョン・カーニー 「はじまりのうた」 (13年/米) (2015/02 ポニーキャニオン) ★★★★

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関係性が"再生"される物語。原題タイトル「BEGIN AGAIN」の「AGAIN」に意味がある。

はじまりのうた01.jpgはじまりのうた02.jpg はじまりのうた98.jpg ジョン・カーニー監督.jpg
はじまりのうた BEGIN AGAIN [DVD]」 キーラ・ナイトレイ(Keira Knightley)/ジョン・カーニー(John Carney)監督
はじまりのうた15.jpg ミュージシャンの恋人デイヴ(アダム・レヴィーン)と共作した曲が映画の主題歌に採用されたのを機に、イギリスからニューヨークへやってきて彼とニューヨークで暮らすことにしたシンガーソングライターのグレタ(キーラ・ナイトレイ)だったが、デイヴがスターとなって二人の関係の歯車に狂いが生じ始め、デイヴの浮気により彼と別れて、旧友の売れないミュージシャンのスティーブ(ジェームズ・コーデン)の家に居候する。スティーブは失意のグレタを励まそうとライブ・バーに連れていき、彼女を無理やりステージに上げる。歌い終わると、音楽プロデューサーを名乗るダン(マーク・ラファロ)にアルバムを作ろうと持ち掛けられる―。

 2013年にトロント国際映画祭で上映、2014年に一般公開のアメリカの音楽映画ですが、監督および脚本のジョン・カーニーは「ONCE ダブリンの街角で」('07年/アイルランド)の監督でアイルランド出身、主演のキーラ・ナイトレイはジェーン・オースティン原作の「プライドと偏見」('05年/英)など時代物の出演作が多いイングランド出身の女優であり(アメリカや日本ではむしろ「パイレーツ・オブ・ キーラ・ナイトレイ パイレーツ・オブ・カリビアン.jpgカリビアン」シリーズの第1作('03年)から第3作('07年)に出ていたことで知られているが)、ダン役のマーク・ラファロは米国俳優、デイヴ役のアダム・レヴィーンは米国のシンガーソングライター、ギタリストでロックバンド「マルーン5」のボーカル、ということで、英国的雰囲気と米国的雰囲気が入り交じったような映画だったでしょうか(グレタのことを励ます旧友スティーブ役の ジェームズ・コーデンもイングランド出身の俳優・コメディアン)。ジョン・カーニー監督の前作「ONCE ダブリンの街角で」もそうですが、最初は公開館数が非常に少なかったのが、口コミでその良さが伝わり大ヒットを記録したようです。

キーラ・ナイトレイ in「パイレーツ・オブ・カリビアン」

はじまりのうた86.jpg 冒頭のライブ会場の場面で、スティーブがグレタを無理矢理ライブのステージに上げて歌わせ、それにダンが聞き入ってしまうところから始まって、そこからフラッシュバックしてグレタの失意に至る道のりを振り返り、今度はダンの失意への道のりを振り返るという映画の前半部分の構成が、「倒叙法」とでも言うか、「長い導入部」とでも言うか実に巧みであり、しかも、技巧が勝ちすぎることなく、前半部分だけでもしっかり感動させてくれます(誰かが「開始3分で泣ける」と言っていたが確かに。しかも同じ場面で3回泣ける(?)というのはスゴイ)。

はじまりのうた4.jpg ここまでしっかり作られてしまうと、後半はもう予定調和でメデタシメデタシしかないのではないかと思ってしまいましたが、物語がグレタの"再生"に止まらずダンの"再生"も描いていて、これがグレタの"再生"だけだと単なる敏腕プロデューサーの話になってしまうところを、途中からダンの"再生"も描くことでバランスが良くなっています。

はじまりのうた53.jpg しかも、グレタは、ダン〈個人〉を"再生"させると言うよりは、過去の出来事によりダンとそれまでうまくいっていなかった彼の妻や娘との〈関係性〉を再生させます(それによってダン自身も再生する)。これはスゴいなあと思って観ていたら、今度はグレタと別れた恋人デイヴの〈関係性〉が"再生"されるのです。相互に関係性が"再生"される物語なんだなあと(原題タイトル'BEGIN AGAIN'の'AGAIN'に意味がある)。
 
はじまりのうた89.jpg 従って、グレタとダンはあくまで仕事上のパートナーに止まり、再会を約して「爽やかに」別れることになるわけですが、観ていていいなあという感じでした。やや出来過ぎた話との印象もありますが、ダンがバックバンドのメンバーを集めるところなどはコミカルで面白かったし、路上でのゲリラ・ライブはシズル感満点だったし(タイムズ・スクエアやエンパイア・ステート・ビルなどマンハッタンの名所巡りも味わえる)、「プライドと偏見」でアカデミー主演女優賞にノミネートされたキーラ・ナイトレイの演技力は、この現代劇でも発揮されていたように思います。

 エンディング・タイトルバックと共に映し出されるエピローグの、レーベル契約を結ばずにネットで曲を1ドルで曲を売るというアイデアも洒落ていて楽しかったです。

シング・ストリート 未来へのう3.jpgシング・ストリート 未来へのうた2.jpg 今月 ['16年7月]9日からは渋谷・シネクイントで、カーニー監督の最新作「シング・ストリート 未来へのうた」('15年/アイルランド・英・米)の上映が始まります。80年代半ばのダブリンが舞台のカーニー監督の自伝的要素も含んだ作品のようですが、シネクイントが「パルコ・パート3」の建て替えに伴う一時休業(?)で8月7日をもって最終上映となるため、シネクイントの実質ラストショーになるのではないだろうか。(実際その通りになった。ジョン・カーニーに着眼したシネクイントらしいラストショーか)

「シング・ストリート 未来へのうた」('15年/アイルランド・英・米)
    

はじまりのうた66.jpg「はじまりのうた」●原題:BEGIN AGAIN●制作年:2014年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジョン・カーニー●製作:アンソニー・ブレグマン/トビン・アームブラはじまりのうた88.jpgスト(英語版)/ジャド・アパトー●撮影:ヤーロン・オーバック●音楽:グレッグ・アレキサンダー●104分●出演:キーラ・ナイトレイ/マーク・ラファロ/ヘイリー・スタインフェルド/アダム・レヴィーン/ジェームズ・コーデン/ヤシーン・ベイ/シーロー・グリーン/キャサリン・キーナー●日本公開:2015/02●配給:ポニーキャニオン●最初に観た場所:渋谷・CINE QUINTO(シネパルコスペース Part3.jpg渋谷シネクイント劇場内.jpgCINE QUINTO tizu.jpgクイント)(15-02-28)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(16-06-27)(評価:★★★★)
CINE QUINTO(シネクイント) 1981(昭和56)年9月22日、演劇、映画、ライヴパフォーマンスなどの多目的スペースとして、「PARCO PART3」8階に「PARCO SPACE PART3」オープン。1999年7月~映画館「CINE QUINTO(シネクイント)」。 2016(平成28)年8月7日閉館。

              



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