【2438】 ◎ ジャン=ポール・ル・シャノワ (原作:ヴィクトル・ユゴー) 「レ・ミゼラブル」 (57年/仏・伊) (1959/06 中央映画社) ★★★★☆

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原作に忠実な文芸大作であるとともに、ジャン・ギャバンが圧倒的存在感を見せる。

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「レ・ミゼラブル」映画パンフレット(1959年6月1日)

les_miserables01jw.jpg 1815年のある日、ミリエル司教(フェルナン・ルドゥー)の司教館をジャン・バルジャン(ジャン・ギャバン)という名の男が訪れる。彼は、貧困からたった1本のパンを盗んだ罪で服役し、脱獄すること4回、都合19年の刑期を終え、ようやっと出所したばかりだった。行く先々で冷遇された彼を、司教は暖かく迎え入れる。しかし、その夜、大切にしていた銀の食器をバルジャンに盗まれてしまうles_miserables03jw.jpg。翌朝、彼を捕らえた憲兵に対して司教は「食器は私が与えたもの」だと告げて彼を放免させたうえに、2本の銀の燭台をも彼に差し出す。それまで人間不信と憎悪の塊だったバルジャンの魂は司教の信念に打ち砕かれ、迷いあぐねているうちに、サヴォワの少年の持っていた銀貨を結果的に奪ってしまうが、それを悔いて、正直な人間として生きていくことを誓う―。

les_miserables05jw.jpg 1819年、バルジャンはマドレーヌと名乗り、黒いガラス玉および模造宝石の事業で成功を収め、更に、その善良な人柄と言動が人々に高く評価されて町の市長になっていた。彼の営む工場でファンティーヌ(ダニエル・ドロルム)という女性が、3歳になる娘をモンフェルメイユのテナルディエ夫妻(ブールヴィル、エルフリード・フローリン)に預け女工として働にles_miserables05tw.jpgいていていたが、その後売春婦に身を落とし、あるいざこざが契機でバルジャン救われる。病に倒れた彼女の窮状を知ったバルジャンは、彼女の娘コゼットを連れて帰ることを約束する。テナルディエは養育費と称し、様々な理由をつけてはファンティーヌから金をせびっていた。モンフェルメイユへ行こうとした矢先、バルジャンは、自分と間違えられて逮捕された男のことをジャベール警部(ベルナール・ブリエ)から聞かされ、葛les_miserables06w.jpg藤の末、彼を救うことを優先し、自身の正体を公表して逮捕されるが、通算5度目となる脱獄を図る。1823年、亡きファンティーヌとの約束を果たすためモンフェルメイユにやって来たバルジャンは、村はずれの泉でコゼット(マーティン・ハーヴェット)に出会う。彼女は8歳で、テナルディエ夫妻の営む宿屋で女中としてただ働きさせられていた。バルジャンはテナルディエの要求どおり金を払い、コゼットを奪還してそのままパリへ逃亡、パリに赴任していたジャベールら警察の追っ手をかいくぐり、修道院で暮らし始める―。

les_miserables09jw.jpg パリのプリュメ通りにある邸宅に落ち着いたバルジャンとコゼット(ベアトリス・アルタリバ)は、よくリュクサンブール公園に散歩に来ていた。そんなふたりの姿をマリユスles_miserables05mw.jpg(ジャンニ・エスポジト)というの若者が見ていた。共和派の秘密結社ABC(ア・ベ・セー)のv友に所属する貧乏な学生である。ブルジョワ出身の彼は幼い頃に母を亡くし祖父に育てられたが、ナポレオン1世のもとで働いていた父の死がきっかけでボナパルティズムに傾倒し、王政復古賛成の祖父と対立、家出していた。マリユスは美しく成長したコゼットに一目惚れする。テナルディエの長女エポニーヌ(シルヴィア・モンフォール)の助けを得て彼女の住まいを見つけ、同じころ彼に惚れていたコゼットに、ようやく出逢うことが出来、互いを深く愛し合うようになるが、les_miserables07mw.jpgles_miserables01pw.jpgコゼットはバルジャンから、1週間後にイギリスへ渡ることを聞かされる。コゼットとジャン・バルジャンとマリユスの3人を中心とした運命の渦は、ジャベール、テナルディエ一家、マリユスの家族や親しい人々、ABCの友のメンバーまで巻き込んで大きくなっていき、七月革命の混沌にあるパリを駆け回り、やがて1832年の六月暴動へと向かって行く―。

les_miserables11jw.jpg 1957年のジャン=ポール・ル・シャノワ監督作で、原作は勿論ヴィクトル・ユゴーの同名小説。Wikipediaには、「数々の映画化作品の中で、最も原作を忠実に再現された作品として高く評価されており、約10億フランの巨額を賭けて製作された巨編映画である。今日でも、古典映画の中でも特に最高傑作として評価されており、根強いファンも少なくない」とあり、実際、Amazon.comのレビューなどを見てもそれは窺えます。レビューの中には、「他の映画化作品は、2012年のミュージカル映画も含めて、興業上の理由から短く話を端折って、その代わりに、脚本家や監督、俳優の"色"を濃く打ち出して独自の商品価値を出すスタイルと考えてよく、ユーゴーの作品に着想を得た"何か別のもの"だと考えたほうが良い」といったような"通"っぽいコメントもありました。

レ・ミゼラブル ps.jpg 個人的には、トム・フーパー監督によるミュージカル映画「レ・ミゼラブル」('12年/英)も良かったように思われ、原作を忠実に映画化しているとされる本作と、ミュージカルのオリジナル脚本を忠実に映画化しているとされるトム・フーパー版を観比べてみるのも面白いかもしれません。

 確かにトム・フーパー版は、バルジャンがサヴォワの少年の持っていた銀貨を奪うエピソードが無かったりしますが(原作では、元囚人である事を明かしたバルジャンは、少年の銀貨を奪った罪で逮捕される)、全体としてものすごく改変されて"何か別のもの"になっているというまでの印象は受けませんでした。

レ・ミゼラブルO.jpg 一方、このル・シャノワ版は、約3時間の大作ですが、派手な演出や作為的な盛り上げもなく、文芸作品路線とでも言うか、物語を淡々と読み進めていくように話が進んでいき、それでいて感動を惹き起こすのは、やはり原作の力でしょうか。それともう一つ大きいのは、やはり、ジャン・バルジャンを演じたジャン・ギャバン(当時53歳)の圧倒的な存在感でしょう。トム・フーパー監督のミュージカル映画「レ・ミゼラブル」が群像劇という印象を受けるのに対し、このル・シャノワ版「レ・ミゼラブル」はジャン・ギャバン演じるジャン・バルジャンを中心とした、まさに"ジャン・ギャバン版"といった印象を受けました。

レ・ミゼラブル vhs.jpg 過去4回脱獄を繰り返した囚人で、市長になった後に再び囚われの身となるもあっさり5回の脱獄を成し遂げるとか、犯罪者集団を相手に凄んでみせて逆に連中をビビらせるとかいった役どころは、ギャング映画で鳴らしたジャン・ギャバン向き(?)。一方で、幼い少女コゼットとの取り合わせなどは、前年作「へッドライト」('56年)を彷彿させ、これはこれで絵になるという、観る前に抱いていたイメージよりもずっと"はまり役"であったような気がします(バルジャンと間違えられて逮捕された男までジャン・ギャバンが演じているのは、ちょっとした"お遊び"的要素か。ビデオジャケットにもなっているけれど、この時の役どころはジャン・バルジャンではなく"ジャン・バルジャンに間違えられた男"である)。

レ・ミゼラブル ポスター.jpg 1957年公開という古い映画だけに、以前のDVD(2002年アイ・ヴィー・シー版)には画質にやや難がありましたが、2012年のトム・フーパー版「レ・ミゼラブル」の公開に合わせてか、同年にデジタルニューマスター版DVDが発売されており、更に今年['15年]5月にもデジタルニューマスター版DVDが発売されています。ミュージカル乃至ミュージカル映画を観る際の予習(または復習)として観るのもいいのではないでしょうか。

レ・ミゼラブル-2.jpg「レ・ミゼラブル」●原題:LES MISERABLES●制作年:1957年●制作国:フランス・イタリア●監督・製作:ジャン=ポール・ル・シャノワ●脚本:ルネ・バジャベル/ミシェル・オーディアール/ジャン=ポール・ル・シャノワ●撮影:ジャック・ナトー●音楽:ジョルジュ・バン・パリス●原作:ヴィクトル・ユゴー●時間:186分●出演:ジャン・ギャバン/ダニエル・ドロルム/ベルナール・ブリエ/セルジュ・レジアニ/ブールヴィル/エルフリード・フローリン/シルヴィア・モンフォール/ジャンニ・エスポジート/ベアトリス・アリタリバ/フェルナン・ルドゥー/マーティン・ハーヴェット●日本公開:1959/06●配給:中央映画社(評価:★★★★☆)

          



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和田泰明

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