2016年6月 Archives

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一見型破りながらも原作のホームズ像に忠実な一面もあったか。ラストがやや大味になった。

シャーロック・ホームズ 2009 dvd.jpgシャーロック・ホームズ 2009 dvd.jpgシャーロック・ホームズ 映画 2009 2.jpg
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ロバート・ダウニー・Jr/ジュード・ロウ
シャーロック・ホームズ 映画 2009 00.jpg シャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)と相棒で同居人のジョン・ワトスン博士(ジュード・ロウ)は、5人の女性を儀式で殺害したブラックウッド卿(マーク・ストロング)の新たな殺人を阻止し、ブラックウッドは警察に捕まる。ホームズは死刑宣告されたブラックウッドに刑務所で面会、ブラックウッドは更に3人が死に世界が変化するだろうと言い遺して絞首刑になり、ワトスンが死亡を確認する。3日後、プロの泥棒でであるアイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダ シャーロック・ホームズ 2009s.jpgムス)がホームズのもとを訪れ、リオドンという男の捜索を依頼、ホームズは彼女を尾行し、顔の隠れた謎の雇い主に会うところを目撃する。ブラックウッドの墓が壊され棺からはリオドンの死体が現れ、リオドンの家でホームズとワトスンは、科学と魔術の融合を目的とした実験の痕跡シャーロック・ホームズ 映画 2009 03.jpgを発見、ここでブラックウッドの手先と戦った後、修道会の寺院でそのリーダーたちに会い、ブラックウッドを止めるよう依頼される。ホームズはブラックウッドは修道会のトマス卿(ジェームズ・フォックス)の息子であると言い当てるが、彼はブラックウッドによって殺され、ブラックウッドが修道会を支配する。ブラックウッドの目的は英国政府転覆と世界征服だった。ブラックウッドはホームズへの囮としてアドラーを使い、彼女は倉庫で肉切りマシンで斬られそうになったのをホームズに助けられるが、仕掛けられた爆弾でワトスンが負傷する。ホームズはブラックウッドの次の標的は議会であると結論し、ウェストミンスターSHERLOCK HOLMES 2009 london towerロード.jpg宮殿でリオドンの実験に基づいて作られた議会室にシアン化水素を流す装置を発見する。議会室に現れたブラックウッドは事前に支持者に解毒剤を飲ませており、「自分の味方にならない者は全員死ぬだろう」と宣言、ホームズとワトスンはブラックウッドの手先と戦い、アドラーは装置からシアン化化合物を盗み出して逃げる。ホームズは未完成のタワーブリッジまで逃げたアドラーを追うが、そこに計画が失敗したことに気づいたブラックウッドも現れる―。
Guy Ritchie
シャーロック・ホームズ 2009  .jpgガイ・リッチー.jpg 2009年公開の英米合作映画で、監督は、読字障害のため15歳で学校を辞めて働き始めたというガイ・リッチー(1968年生まれ)、ホームズ役は、長年の薬物依存から脱却し、2008年公開の「アイアンマン」で復活を果たしたロバート・ダウニー・Jr(1965年生まれ)です(ロバート・ダウニー・Jrは本作のホームズ役で、ゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞)。

シャーロック・ホームズ 映画 2009 01.jpg 「東洋武術で闘うホームズ」など、今までにないアクションスタイルのホームズ像ですが、一見型破りながらも原作の記述に忠実であるとのことで、但し、これまでに映像化されてこなかった部分を重点的に映像化しているようです。確かにそうした面はあったように思われ、最初はこんなのホームズじゃないと思っていましたが、観ているうちにだんだん馴染んでくる感じがするのもそのせいでしょうか。

シャーロック・ホームズges.jpg 闘いを事前に頭の中でシミュレーションする〈ホームズ・ビジョン〉など、ベネディクト・カンバーバッチ主演のBBCのドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」にも通じるSFXなどもあって、「SHERLOCK」がスタートしたのがこの映画の公開の翌年ですから、多少はドラマが先行した映画の影響を受けたということがあるのではないかという気もし、そうでなくともなかなか先駆的です。

SHERLOCK HOLMES 2009 london tower.jpg ストーリーもそれなりに凝っているし、1890年という時代の雰囲気を出すために実写・CGの両面に渡って細かい描写が施されており、この辺りも英国がシャーロック・ホームズTower-Bridge.jpg製作に噛んでいる映画らしいという感じがしました。但し、最後の建設中のタワーブリッジ(1894年開通)でのホームズとブラックウッドの対決は、CGが勝りすぎてやや大味になった印象も受けました(米国風になった?)。娯楽映画としては悪くないですが、結果として逆に印象が弱くなったかも。

 アイリーンを雇った男はホームズの宿敵であるモリアーティ教授で、この作品では顔は見せませんが、続編があるような終わり方をしています。そして、実際(映画の興業的成功もあって)続編「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」('11年)が作られていますが、こちらはキャラクター造型だけでなく実際のコナン・ドイルの作品『最後の事件』を下敷きにしており、モリアーティも出てくるようですが個人的には未見、独立した話になっているようなので、急いで観る必要もないかなという感じでしょうか。

シャーロック・ホームズ 映画 2009  01.jpg「シャーロック・ホームズ」●原題:SHERLOCK HOLMES●制作年:2009年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ガイ・リッチー●製作:ジョエル・シルバー/ライオネル・ウィグラム/スーザン・ダウニー/ダン・リン●脚本:マイケル・ロバート・ジョンソン/アンソニー・ペッカム/サイモン・キンバーグ●撮影:フィリップ・ルースロ●音楽:ハンス・ジマー●原作(キャラクター創造):アーサー・コナン・ドイル●128分●出演:ロバート・ダウニー・Jr/ジュード・ロウ/レイチェル・マクアダムス/マーク・ストロング/エディ・マーサン/ケリー・ライリー/ジェラルディン・ジェームズ/ウィリアム・ヒューストン/ジェームズ・フォックス●日本公開:2010/03●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★☆)

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'いい雰囲気'の中で撮影が行われたことを示唆する40周年記念の同窓会的イベント。

Fantomu obu Paradaisu (1974).jpgファントム・オブ・パラダイス dvds.jpgファントム・オブ・パラダイス [DVD.jpg
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ファントム・オブ・パラダイス05s.jpg 容姿は冴えないが天才的才能をもつ無名の青年音楽家ウィンスロー・リーチ(ウィリアム・フィンレイ)は、懸命に自分の曲を売り込もうとしていた最中に、無名で駆け出しの女性歌手フェニックス(ジェシカ・ハーパー)の才能を見出し、共に将来を夢見る。しかし、大手レコード会社「デス・レコード」社長のスワン(ポール・ウィリアムズ)に曲を奪われ、美しい彼女は身体を奪われかけ、自身は無実の罪で投獄される。獄中でスワンが自分の作ファントム・オブ・パラダイスs.jpg品に醜悪なアレンジをして売り出そうとすることを知ったウィンスローは激怒し、脱獄してレコード会社に乱入するが、警官に追われた際に誤ってプレス機に頭を挟まれ顔と声が潰れてしまう。復讐のため、スワンが建設した杮落とし前の大劇場「パラダイス」に現れたウィンスローは、リハーサルで自分の曲を歌うバンド「ビーチ・バムズ」の舞台セットに爆弾をしかけてスワンを襲ファントム・オブ・パラダイス02.pngうが、スワンは恐れるどころか逆にウィンスローに、「パラダイス」のオープニングをウィンスローの曲で飾る契約を持ちかける。それが悪魔との契約とは知らず、フェニックスを大劇場のオープニングにと夢見てウィンスローは作曲を続けるが、スワンはそれを裏切り、オカマロックシンガーのビーフ(ゲリット・グレアム)を舞台に立たせた。完成したスコアと愛するフェニックスもスワンに奪われていて、怒りに燃えたウィンスローは怪人ファントムと化す―。

ファントム・オブ・パラダイス08s.jpg '74年公開のブライアン・デ・パルマ監督によるロックンロール・ミュージカルで、元々ブロードウェイなどでの舞台が無い映画オリジナルの作品ですが、最初はジム・シャーマン監督の「ロッキー・ホラー・ショー」('75年/英)と二本立てで観て、こちらの方ががミュージカル調の場面は少ないにも関わらファントム・オブ・パラダイス73.jpgずロック・オペラっぽく感じられました。「オペラ座の怪人」「ファウスト」「ノートルダム・ド・パリ」「ドリアン・グレイの肖像」などがモチーフとして織り込まれていて、更にヒッチコック映画のパロディなどもあったりして盛り沢山、ある意味トラジディ(悲劇)ですが、テンポよく話が進むのと、今観ると70年代カルチャーが横溢しているのが窺え、意外と悲壮感は感じられませんでした。

ファントム・オブ・パラダイス03.jpg 主人公のウィンスロー(ファントム)を演じたウィリアム・フィンレイは、デ・パルマ監督の前作「悪魔のシスター」('73年)での変態ドクター役に続けての起用、歌姫役のジェシカ・ハーパーは、この映画を観たダリオ・アルジェントによって「サスペリア」('77年)に抜擢されることになりますが、この映画で一番目立っているのはやはりスワンを演じたポール・ウィリアムズで、本職のシンガーソングライターで、カーペンターズの「愛のプレリュード」「雨の日と月曜日は」などの作詞も手掛けている人ルパン三世 ルパンVS複製人間 11.jpgポール・ウィリアムズ.jpgです(2010年から「米国作曲家作詞家出版者協会」の会長を務めている)。日本では、アニメ「ルパン三世」の劇場版第1作「ルパン三世~ルパンVS複製人間」('78年)に登場したクローン人間マモーは、本作のスワンがモデルになっていると言われていますが、本当のところはどうなのでしょうか。

 '14年に映画公開40周年を記念するパネルディスカッションがハリウッドで催されており、ブライアン・デ・パルマほか、ポール・ウィリアムズ(スワン役)、ジェシカ・ハーパー(フェニックス役)、ゲリット・グレアム(ビーフ役)らが登壇して活発な遣り取りがあり(ウィリアム・フィンレイは残念ながら'12年に71歳で亡くなっている)、詰めかけたファンからも喝采を浴びています。こうした同窓会的なイベントが実現するということは、この作品に幅広い年代でコアなファンがいることを示す一方、当時の撮影が非常に楽しい雰囲気の中で行われたことも示唆しているように思われます。また、そのことが、この作品がベースはトラジディ(悲劇)でありながら、何となく楽Phantom Of The Paradise 40th Anniversary Panel 7-30-14.jpgしめてしまうことにも繋がっているのかもしれないと思った次第です。タイトルからして、ストーリーの中心には「オペラ座の怪人」がきていると思いますが、その割にはシャンデリアの落下シーンなどが無いのが今思うとやや残念だったかも。70年代の雰囲気のノスタルジー効果とプラスマイナスして、最初に観た時の評価(星4つ)としました。
Phantom Of The Paradise 40th Anniversary Panel 7-30-14

ファントム・オブ・パラダイス title.jpg「ファントム・オブ・パラダイス」●原題:PHANTOM OF THE PARADICE●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ●製作:エドワード・R・プファントム・オブ・パラダイス09.jpgレスマン●撮影:ラリー・パイザー●音楽:ポール・ウィリアムズ/ジョージ・アリソン・ティプトン●92分●出演:ウィリアム・フィンレイ/ポール・ウィリアムズ/ジェシカ・ハーパー/ゲリット・グレアム/ジョージ・メモリ●日本公開:1975/05●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-02-06)(評価:★★★★)●併映:「ロッキー・ホラー・ショー」(ジム・シャーマン)

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演技陣は皆悪くなかった。バルジャンとジャベールに焦点。他を'端折った'感は否めない。

レ・ミゼラブル [DVD].jpg レ・ミゼラブル 1998 03.jpg  レ・ミゼラブル 1998 84.jpg
レ・ミゼラブル [DVD]」ジェフリー・ラッシュ(ジャベール警部)/リーアム・ニーソン(ジャン・バルジャン)

レ・ミゼラブル 1998 バルジャン.jpgレ・ミゼラブル 1998 fannte-nu .jpg ビレ・アウグスト監督による1998年作品で、ジャン・バルジャンが「シンドラーのリスト」('93年/米)でオスカー・シンドラーを演じたリーアム・ニーソン、ジャベール警部が「シャイン」('96年/豪)でアカデミー主演レ・ミゼラブル 1998 じゃベール.jpg男優賞をを受賞したジェフリー・ラッシュ(オーストラリア人初の演技部門でのオスカー受賞者)、ファンテーヌが「パルプ・フィクション」('94年/米)でアカデミー助演女優賞にノミネートされたユマ・サーマン、コゼットが「アンジェラ 15歳の日々」でレ・ミゼラブル 1998  ゴゼット.jpgゴールデングローブ賞主演女優賞(テレビドラマシリーズ部門)を受賞したクレア・デインズと、配役は何れも手堅い演技派で固めたという感じで、また、実際レ・ミゼラブル 1998 5.jpg、この作品での演技はそれぞれが良かったです(中でもジェフリー・ラッシュのジャベール警部がピカイチか。でも、幼少期のコゼットを演じた子役ミミ・ニューマンも含め、皆悪くなかった)。

レ・ミゼラブル 1998 02.jpg 残念だったのは脚本でしょうか(序盤で銀器を盗むのを'司教に見られた'バルジャンが司教を'殴り倒して'逃走するところから、ええっと思ったのだが)。2時間を少しだけ超えるくらいに収めるためか、全体にかなり端折っています

 まず、エポニーヌ(バルジャンの運営する工場を解雇されたファンテーヌの娘コゼットが預けられていた宿屋テナルディエ一家の娘。大人になってコゼットの恋人マリウスに一方的に恋をし、一時2人の恋路を邪魔するが、最期はマリウスを守って自らは犠牲となる)が、子役は出てますが大人になってから出てきません(ミュージカルなどでは結構なウェイトを占めるエポニーヌの悲恋話がすっぽり抜けていることになる)。

レ・ミゼラブル 1998 mariusu .jpgレ・ミゼラブル 1998 abc.jpg それから、マリユスが反政府派である共和派の秘密結社ABC(アー・ベー・セー)の首領になっています(本来はマリユスも主要メンバーではあるが、首領はアンジョルラス)。だとしたら、司令官が決戦を前にしてそうちょくちょく恋人に会いにいくのは難しいのではないかと思ってしまうのですが、これがちょくちょく会いに行く―そうしたマリユスをしばしば牽制するアンジョルラスの役は、それはそれで黒人のレニー・ジェームズが演じている―といった具合です。

「レ・ミゼラブル」 (98年/米) .jpg ジャベールが、同じ自殺するにしても、バルジャンの見ている前で自らの命を絶つというのも原作やミュージカルとは異なり(罪人にするはずだった手錠を自身にして川へ身を投げたことに監督の解釈が示唆されているようだが)、また、原作ではジャベールの死後も話はまだまだ続くところを、ミュージカルではそこのところはかなり圧縮されていますが、それがこの作品では「圧縮」どころか、ジャベールの死を以って映画は終わってしまいます(「‎Wikipedia」によれば、「本作ではジャン・バルジャンとジャベールの関係に焦点が絞られている。そのため、ジャベール警部の身投げと共に映画は幕を閉じる」ということらしい。成人後のエポニーヌは全く登場しないのも同様の理由によるようだ)。何度も映画化されている作品なので、オリジナルの視点があってもいいとは思いますが、ジャベールの死を以って終わるのはともかく、最後にバルジャンが浮かべる笑みの意味がイマイチよく分かりませんでした。

レ・ミゼラブル 1998 684.jpg また、後の方をカットしているために、バルジャンの秘密をマリユスが知るのは、コゼットとの結婚式の後にバルジャンから知らされるのではなく、反政府派のバリケード内に潜入しようとして捕まってしまったジャベールの口から知らされるという展開になっていて、更には、反政府運動の最中に負傷した自分を担ぎ、官憲の目を逃れるため下水道を通って包囲網を突破し救ってくれたのは誰かという、マリユスにとっての謎解きは、バルジャンの死の間際になってマリユスは初めて全てを知るというのではなく、そもそもそうした謎は最初からカットされています(これだと、父娘が離れ離れに暮らす理由は無くなるのでは? まあ、この映画では後のことはどうなったか分からないわけだが)。

 長さ的には、自分が観たものでは、ジャン=ポール・ル・シャノワ監督、ジャン・ギャバン主演の「レ・ミゼラブル」 ('57年/仏・伊)が186分で、トム・フーパー監督、ヒュー・ジャックマン主演のミュージカルの映画化である「レ・ミゼラブル」 ('12年/英)は158分でした。ミュージカルが通常3時間強ですからこれでもやや圧縮していますが、この作品は、134分という長さの割にはかなりの「'端折った'感」があるのはどうしてでしょうか。ミュージカル版と比べるのではなく(例えば、ジャベールの死を本作品はロジックで説明しているが、ヒュー・ジャックマン主演のミュージカル版では感情で表しているため時間がかからない(?))、ジャン・ギャバン主演の「レ・ミゼラブル」のような通常版同士で比べるべきなのかもしれません(134分/186分=72%)。

レ・ミゼラブル.jpgレ・ミゼラブル 1998 04.jpg このように気になった点は多くありましたが、原作に忠実なところの方が当然に多い訳で、やはりあの「レ・ミゼラブル」だけあって見ているうちに引き込まれ、この作品だけ観る分には楽しめます。但し、先に原作を読んだり、ミュージカルを観ていたりすると、今度はどこが端折られるのか...といった方向につい気持ちが行ってしまう、そんな映像化作品でした。

リーアム・ニーソン(「沈黙 -サイレンス-」('16年/米)/ユマ・サーマン

レ・ミゼラブル 1998 title2.jpg「レ・ミゼラブル」●原題:LES MISERABLES●制作年:1998年●制作国:アメリカ●監督:ビレ・アウグスト●製作:サラ・ラドクリフ/ジェームズ・ゴーマン●脚本:ラファエル・イグレシアス●撮影:ヨルゲン・ペルソン●音楽:ベイジル・ポールドゥリス●原作:ヴィクトル・ユゴー●134分●出演:リーアム・ニーソン/ジェフリー・ラッシュ/ユマ・サーマン/クレア・デインズ/ミミ・ニューマン/ハンス・マシソン/ジョン・ケニー/ジリアン・ハンナ/シルヴィ・コヴィルィズコヴァ/シェイン・ハーヴィ/レニー・ジェームズ/ジョン・マッグリン/リーネ・ブリュノルフソン/ピーター・ヴォーン●日本公開:1999/02●配給:ソニー・ピクチャーズ(評価:★★★☆)

ユマ・サーマン パルプフィクション.jpgレ・ミゼラブル 1998 ファンテーヌ.jpgユマ・サーマン キルビル.jpg ユマ・サーマン in 「パルプ・フィクション」('94年)/「レ・ミゼラブル」('98年)/「キル・ビル Vol.1」('03年)

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最後まで高いテンションが維持されているのは、アン・ハサウェイの勢いある「助走」のお蔭。

レ・ミゼラブル ps.jpgレ・ミゼラブル dvd.jpg レ・ミゼラブル バルジャンとコゼットX.jpg
レ・ミゼラブル [DVD]」 ヒュー・ジャックマン

レ・ミゼラブル 冒頭.jpg 1815年、フランス革命後の王政復古下、飢えた姪のためにパンを1つ盗み20年の刑に受けていたジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、19年目で仮釈放となるも、身分レ・ミゼラブル 燭台.jpg証の危険人物の烙印のため仕事につけずにいた。飢え、暴行を受けたバルジャンが教会の前で倒れていると、司祭が彼を客人として迎え入れ、暖かい食事とベッドを与えるが、バルジャンは夜中に教会の銀の食器を盗み逃亡する。すぐに捕まったバルジャンだったが、司祭は「食器は彼に与えたものだ」と警官に告げ、更に銀の蜀台をバルジャンへ与える。バルジャンは己(おのれ)の恥を知り、生まれ変わることを決意、身分証を破り捨て、仮釈放に伴う毎月の出頭も止める―。

レ・ミゼラブル バルジャンとジャベール.jpg 1823年、バルジャンは、貧者の味方と尊敬されレ・ミゼラブル ファンテーヌ1.jpgる市長になっていた。新任の署長ジャベール(ラッセル・クロウ)が挨拶にやってくるが、バルジャンの面影から彼の過去に疑惑を抱く。バルジャンの作業所で働く娘・ファンテーヌ(アン・ハサウェイ)は、男に捨てられ幼い娘コゼットを宿屋レ・ミゼラブル ファンテーヌ.jpgの夫婦に預けていたが、そのことで職場で騒動となり、バルジャンから穏便に収めるよう命じられた工場長により解雇されてしまう。ファンテーヌは、髪の毛、奥歯を売り、娼婦に身を窶(やつ)すが、娼婦街で彼女をからかった男を突き飛ばしたところへ警官隊が通りかかり、男は彼女レ・ミゼラブル バルジャンとファンテーヌ.jpgに襲われたと主張、ジャベールはファンテーヌを逮捕しようとするが、バルジャンが庇い病院へ運ぶ。ジャベールはバルジャンを逃亡犯として告発するが、別人が誤認逮捕される。バルジャンは苦悶し、法廷に乗り込んで事実を明らかにするが、法廷は取り合わない。バルジャンは病院にファンテーヌを訪ねるが、彼女はコゼットの幻を見ながら亡くなる。バルジャンはファンテーヌにコゼットの保護を約束し、ジャベールから逃げながら、宿屋で使用人の扱いを受けていた幼いコゼットを引き取る―。

レ・ミゼラブルABC.R.jpg 1832年、バルジャンは、美しい娘に成長したコゼット(アマンダ・サイフリッド)を連れ、貧民街で施しをしていた。そこにジャベールが現れる。パリでは革命気炎が高まり、特権階級の青年マリウス(エディ・レッドメイン)は、家を出て貧民街で革命運動に身を投じていた。宿屋夫婦の娘で、かつてコゼットと同じ家に暮らしてレ・ミゼラブル マリウスとエポニーヌ.jpgいた娘エポニーヌ(サマンサ・バークス)は、マリウスに恋をしていたが、マリウスはそれに気づかずコゼットに一目惚れし、コレ・ミゼラブル05.jpgゼットも同じく恋に落ちる。ジャベールに見つかったバルジャンは、家を引き払い、英国へ出発するとコゼットに告げる。マリウスは、エポニーヌにコゼットを探してくれと頼む。コゼLES MISERABLES.jpgットは、マリウスへの手紙を門に残し、エポニーヌが手紙を取る。民衆に慕われていた将軍の葬列の日、学生運動家たちは革命を決意、コゼットに恋していたマリウスも革命を選ぶ。王政側の兵から被弾し倒れたエポニーヌは、マリウスへコゼットの手紙を渡す。一方で、マリウスからコゼットへの手紙を受け取ったバルジャンは、彼を死なすまいとバリケード内部に侵入、そこにはジャベールが居た。彼は志願兵を名乗って偽情報を流していたが、正体を看破され拘束されていた。バルジャンはレ・ミゼラブル 7.jpgジャベールを逃す。翌朝、大砲でバリケードが粉砕され革命軍は全員が死亡したが、バルジャンが負傷したマリウスを抱えて下水道から逃亡し、2人だけが無事だった。その途中でジャベールに遭遇するも、ジャベールは彼らを捕えずに自殺する。マリウスはコゼットと結婚、父代わりだったバルジャンは、マリウスに自らの過去を明かし、その事実が明らかにされればコゼットを苦しませることになるとし、隠遁する。結婚式の日、宿屋夫婦からバルジャンが修道院にいることを明らかにされたマリウスは、コゼットとともに修道院へと向う。愛しいコゼットに見守られながら、ファンテーヌの幻に導かれ、バルジャンは天に召される―。

トム・フーパー監督.jpgレ・ミゼラブル 岩波.jpg 「英国王のスピーチ」('10年/英)でアカデミー作品賞を受賞したトム・フーパー監督の2012年作で、原作はもちろんヴィクトル・ユゴーですが(1862年発表)、1980年代にロンドンで上演され、以後、ブロードウェイを含む世界各地でロングランされていた同名のミュージカルの映画化作品であるとのことで、オリジナルのミュージカルの脚本家も原作者に名を連ねています。
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レミゼラブル ブロードウェイ.jpg ミュージカルとしては、1985年のロンドン初演から史上最長ロングランを誇り、ブロードウェイでは1987年から2003年まで6,680回に渡ってロングラン上演されており、終了時点では第3位の連続公演(劇団四季のような"断続"公演ではない)回数でした。大体、バブル期後半の頃ニューヨークに行った日本人観光客が観るブロードウェイ・ミュージカルと言えば、この「レ・ミゼラブル」か、「キャッツ」(1982年~2000年、公演数7,485回)か、「オペラ座の怪人」(1988年~、公演数11,000回超)が定番でした。

 ゴールデングローブ賞でミュージカル・コメディ部門の作品賞を受賞したこの映画化作品の方は、波乱万丈のストーリーに、スケールの大きさと背景や細部のリアリティが加わり、更には、登場人物の表情がよく分かるという映画の特長がよく生かされていたように思います。それまでの多くのミュージカル映画が、歌の部分を事前にスタジオで収録してから、その音に合わせて演じる姿を撮影するのが一般的であったのに対し、この作品では、撮影時にピアニストを常駐させて仮の伴奏をする中で、俳優たちがその場で歌い、演技をしたため、よりリアルな感情表現を追求できたということです。

 イギリス映画ですが、ジャン・バルジャンを演じたヒュー・ジャックマンはオーストラリア出身、ジャベールを演じたラッセル・クロウはレ・ミゼラブル 2012 カーター ・コーエン.jpgレ・ミゼラブル  宿屋夫婦.jpgニュージーランド出身、ファンティーヌを演じたアン・ハサウェイとその娘コゼットを演じたアマンダ・サイフリッドが米国女優で、マリウスを演じたエディ・レッドメインが英国俳優です。欲深な宿屋夫婦を演じたサシャ・バロン・コーエンとヘレナ・ボナム=カーターも英国。ヘレナ・ボナム=カーター、ハリー・ポッターのベラトリックス・レストレンジ役以来どんどんスゴイ役になっていきますが、幼い子供までが凶弾に倒れるというヘビーな物語の中で、彼女とサシャ・バロン・コーエンの2人は、ある種ピエロ的なユーモアを醸していました。

レ・ミゼラブルハザウェイX.jpg この中ではバルジャンを演じたヒュー・ジャックマンもいいのですが、個人的"圧巻"は薄幸の女性ファンテーヌを演じたアン・ハサウェイでした。ファンテーヌは映画の前半3分の1くらいのところで死んでしまいますが、疾走するような集中力の高い演技で、う~ん、こんなスゴイ女優だったのかとビックリ。ミュージカルにおける俳優の演技ってパターン化しがちなのに対し(ラッセル・クロウなどがややそれ気味か)、彼女の演技はミュージカルの枠を超えてリアリティがありました。髪を売るために切るシーンでは自前の髪をばっさり切ったそうで、役者魂を感じます。彼女はこの作品で、ゴールデングローブ賞とアカデミー賞の両方で助演女優賞を獲得しています(英国アカデミー賞、放送映画批評家協会賞の各助演女優賞も獲得)。

 2時間半以上の大作ですが、ミュージカル版の場合は第1幕・第2幕の間に途中で休憩があります。一方、一般にはミュージカルが映画化された作品の場合は休憩がない場合が多いので、どこか圧縮するケースと、舞台同様に全部やるケースがあり、後者の場合は観客の集中力を維持するのが一つ課題となる気がします。この作品はオリジナル・ミュージカルの"完全映画化"版を謳っており、ストーリーを端折ることは出来るだけしていないわけで、それでも初めから最後まで高いテンションが維持されていて、また、観ていてそれについていけるのは、やはり最初にアン・ハサウェイが勢いのある「助走」をつけてくれたからではないでしょうか。ヴィクトル・ユゴーの"ストーリーテラー"ぶりも再認識しましたが、ストーリーの面白さだけでなく、泣ける映画でもあります。

レ・ミゼラブル 2012.jpgレ・ミゼラブル 05.jpg「レ・ミゼラブル」●原題:LES MISERABLES●制作年:2012年●制作国:イギリス●監督:トム・フーパー●製作:ティム・ビーヴァン/エリック・フェルナー/デブラ・ヘイワード/キャメロン・マッキントッシュ●脚本:ウィリアム・ニコルソン/アラン・ブーブリル/クロード=ミシェル・シェーンベルク/ハーバート・クレッツマー●撮影:アン・ハサウェイ2.jpgアン・ハサウェイ.jpgダニー・コーエン●音楽:クロード・ミシェル・シェーンベルク●原作:(小説)ヴィクトル・ユゴー/(ミュージカル)アラン・ブーブリル/クロード・ミシェル・シェーンベルク●時間:158分●出演:ヒュー・ジャックマン/ラッセル・クロウ/アン・ハサウェイ/アマンダ・サイフリッド/エディ・レッドメイン/ヘレナ・ボナム=カーター/サシャ・バロン・コーエン/サマンサ・バークス/ダニエル・ハトルストーン/アーロン・トヴェイト/キリアン・ドネリー/フラ・フィー/アリスター・ブラマー●日本公開:2012/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(15-07-29)(評価:★★★★☆)

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原作に忠実な文芸大作であるとともに、ジャン・ギャバンが圧倒的存在感を見せる。

レ・ミゼラブル 映画パンフレット.jpgレ・ミゼラブルdvd.jpg レ・ミゼラブル ニューマスター.jpg レ・ミゼラブル ニューマスター2.jpg
レ・ミゼラブル [DVD]」〔'02年〕/「レ・ミゼラブル ニューマスター版 [DVD]」〔'12年〕/「レ・ミゼラブルニューマスター版DVD ジャン・ギャバン主演」〔'15年〕
「レ・ミゼラブル」映画パンフレット(1959年6月1日)

les_miserables01jw.jpg 1815年のある日、ミリエル司教(フェルナン・ルドゥー)の司教館をジャン・バルジャン(ジャン・ギャバン)という名の男が訪れる。彼は、貧困からたった1本のパンを盗んだ罪で服役し、脱獄すること4回、都合19年の刑期を終え、ようやっと出所したばかりだった。行く先々で冷遇された彼を、司教は暖かく迎え入れる。しかし、その夜、大切にしていた銀の食器をバルジャンに盗まれてしまうles_miserables03jw.jpg。翌朝、彼を捕らえた憲兵に対して司教は「食器は私が与えたもの」だと告げて彼を放免させたうえに、2本の銀の燭台をも彼に差し出す。それまで人間不信と憎悪の塊だったバルジャンの魂は司教の信念に打ち砕かれ、迷いあぐねているうちに、サヴォワの少年の持っていた銀貨を結果的に奪ってしまうが、それを悔いて、正直な人間として生きていくことを誓う―。

les_miserables05jw.jpg 1819年、バルジャンはマドレーヌと名乗り、黒いガラス玉および模造宝石の事業で成功を収め、更に、その善良な人柄と言動が人々に高く評価されて町の市長になっていた。彼の営む工場でファンティーヌ(ダニエル・ドロルム)という女性が、3歳になる娘をモンフェルメイユのテナルディエ夫妻(ブールヴィル、エルフリード・フローリン)に預け女工として働にles_miserables05tw.jpgいていていたが、その後売春婦に身を落とし、あるいざこざが契機でバルジャン救われる。病に倒れた彼女の窮状を知ったバルジャンは、彼女の娘コゼットを連れて帰ることを約束する。テナルディエは養育費と称し、様々な理由をつけてはファンティーヌから金をせびっていた。モンフェルメイユへ行こうとした矢先、バルジャンは、自分と間違えられて逮捕された男のことをジャベール警部(ベルナール・ブリエ)から聞かされ、葛les_miserables06w.jpg藤の末、彼を救うことを優先し、自身の正体を公表して逮捕されるが、通算5度目となる脱獄を図る。1823年、亡きファンティーヌとの約束を果たすためモンフェルメイユにやって来たバルジャンは、村はずれの泉でコゼット(マーティン・ハーヴェット)に出会う。彼女は8歳で、テナルディエ夫妻の営む宿屋で女中としてただ働きさせられていた。バルジャンはテナルディエの要求どおり金を払い、コゼットを奪還してそのままパリへ逃亡、パリに赴任していたジャベールら警察の追っ手をかいくぐり、修道院で暮らし始める―。

les_miserables09jw.jpg パリのプリュメ通りにある邸宅に落ち着いたバルジャンとコゼット(ベアトリス・アルタリバ)は、よくリュクサンブール公園に散歩に来ていた。そんなふたりの姿をマリユスles_miserables05mw.jpg(ジャンニ・エスポジト)というの若者が見ていた。共和派の秘密結社ABC(ア・ベ・セー)のv友に所属する貧乏な学生である。ブルジョワ出身の彼は幼い頃に母を亡くし祖父に育てられたが、ナポレオン1世のもとで働いていた父の死がきっかけでボナパルティズムに傾倒し、王政復古賛成の祖父と対立、家出していた。マリユスは美しく成長したコゼットに一目惚れする。テナルディエの長女エポニーヌ(シルヴィア・モンフォール)の助けを得て彼女の住まいを見つけ、同じころ彼に惚れていたコゼットに、ようやく出逢うことが出来、互いを深く愛し合うようになるが、les_miserables07mw.jpgles_miserables01pw.jpgコゼットはバルジャンから、1週間後にイギリスへ渡ることを聞かされる。コゼットとジャン・バルジャンとマリユスの3人を中心とした運命の渦は、ジャベール、テナルディエ一家、マリユスの家族や親しい人々、ABCの友のメンバーまで巻き込んで大きくなっていき、七月革命の混沌にあるパリを駆け回り、やがて1832年の六月暴動へと向かって行く―。

les_miserables11jw.jpg 1957年のジャン=ポール・ル・シャノワ監督作で、原作は勿論ヴィクトル・ユゴーの同名小説。Wikipediaには、「数々の映画化作品の中で、最も原作を忠実に再現された作品として高く評価されており、約10億フランの巨額を賭けて製作された巨編映画である。今日でも、古典映画の中でも特に最高傑作として評価されており、根強いファンも少なくない」とあり、実際、Amazon.comのレビューなどを見てもそれは窺えます。レビューの中には、「他の映画化作品は、2012年のミュージカル映画も含めて、興業上の理由から短く話を端折って、その代わりに、脚本家や監督、俳優の"色"を濃く打ち出して独自の商品価値を出すスタイルと考えてよく、ユーゴーの作品に着想を得た"何か別のもの"だと考えたほうが良い」といったような"通"っぽいコメントもありました。

レ・ミゼラブル ps.jpg 個人的には、トム・フーパー監督によるミュージカル映画「レ・ミゼラブル」('12年/英)も良かったように思われ、原作を忠実に映画化しているとされる本作と、ミュージカルのオリジナル脚本を忠実に映画化しているとされるトム・フーパー版を観比べてみるのも面白いかもしれません。

 確かにトム・フーパー版は、バルジャンがサヴォワの少年の持っていた銀貨を奪うエピソードが無かったりしますが(原作では、元囚人である事を明かしたバルジャンは、少年の銀貨を奪った罪で逮捕される)、全体としてものすごく改変されて"何か別のもの"になっているというまでの印象は受けませんでした。

レ・ミゼラブルO.jpg 一方、このル・シャノワ版は、約3時間の大作ですが、派手な演出や作為的な盛り上げもなく、文芸作品路線とでも言うか、物語を淡々と読み進めていくように話が進んでいき、それでいて感動を惹き起こすのは、やはり原作の力でしょうか。それともう一つ大きいのは、やはり、ジャン・バルジャンを演じたジャン・ギャバン(当時53歳)の圧倒的な存在感でしょう。トム・フーパー監督のミュージカル映画「レ・ミゼラブル」が群像劇という印象を受けるのに対し、このル・シャノワ版「レ・ミゼラブル」はジャン・ギャバン演じるジャン・バルジャンを中心とした、まさに"ジャン・ギャバン版"といった印象を受けました。

レ・ミゼラブル vhs.jpg 過去4回脱獄を繰り返した囚人で、市長になった後に再び囚われの身となるもあっさり5回の脱獄を成し遂げるとか、犯罪者集団を相手に凄んでみせて逆に連中をビビらせるとかいった役どころは、ギャング映画で鳴らしたジャン・ギャバン向き(?)。一方で、幼い少女コゼットとの取り合わせなどは、前年作「へッドライト」('56年)を彷彿させ、これはこれで絵になるという、観る前に抱いていたイメージよりもずっと"はまり役"であったような気がします(バルジャンと間違えられて逮捕された男までジャン・ギャバンが演じているのは、ちょっとした"お遊び"的要素か。ビデオジャケットにもなっているけれど、この時の役どころはジャン・バルジャンではなく"ジャン・バルジャンに間違えられた男"である)。

レ・ミゼラブル ポスター.jpg 1957年公開という古い映画だけに、以前のDVD(2002年アイ・ヴィー・シー版)には画質にやや難がありましたが、2012年のトム・フーパー版「レ・ミゼラブル」の公開に合わせてか、同年にデジタルニューマスター版DVDが発売されており、更に今年['15年]5月にもデジタルニューマスター版DVDが発売されています。ミュージカル乃至ミュージカル映画を観る際の予習(または復習)として観るのもいいのではないでしょうか。

レ・ミゼラブル-2.jpg「レ・ミゼラブル」●原題:LES MISERABLES●制作年:1957年●制作国:フランス・イタリア●監督・製作:ジャン=ポール・ル・シャノワ●脚本:ルネ・バジャベル/ミシェル・オーディアール/ジャン=ポール・ル・シャノワ●撮影:ジャック・ナトー●音楽:ジョルジュ・バン・パリス●原作:ヴィクトル・ユゴー●時間:186分●出演:ジャン・ギャバン/ダニエル・ドロルム/ベルナール・ブリエ/セルジュ・レジアニ/ブールヴィル/エルフリード・フローリン/シルヴィア・モンフォール/ジャンニ・エスポジート/ベアトリス・アリタリバ/フェルナン・ルドゥー/マーティン・ハーヴェット●日本公開:1959/06●配給:中央映画社(評価:★★★★☆)

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