【2436】 ○ ルパート・ジュリアン (原作:ガストン・ルルー) 「オペラ座の怪人」 (25年/米) (1925/09 ユニバーサル・ピクチャーズ) ★★★★

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1925年に作られた映画とは思えないくらい今風なスぺクタルシーンを見せてくれる。

オペラ座の怪人 1925 dvd1.jpg オペラ座の怪人 1925 dvd2.jpg オペラ座の怪人 1925 vhs.jpg オペラ座の怪人 1925 02.jpg
IVC BEST SELECTION オペラ座の怪人 [DVD]」['13年]/「オペラ座の怪人 【サイレント】 [DVD] FRT-302」['08年]/「オペラ座の怪人【字幕版】(淀川長治 名作映画ベスト&ベスト) [VHS]」['98年] Lon Chaney

オペラ座の怪人 1925 0.jpg 1880年、パリ・オペラ座には恐ろしい幽霊が現われるという評判が立ち、舞姫や道具方らは恐怖に見舞われる。折しも道具方の一人が縊死し、これも幽霊の仕業だと益々人々は恐れる。オペラ座の支配人引退興行の夜、プリマドンナのカルロッタ(ヴァージニア・ペアソン)が突然の病気のため、無名の歌手クリスティーヌ・ダーエ(メアリー・フィルビン)が「ファウスト」のマルグリットを演じて大成功を博す。子爵ラウル(ノーマオペラ座の怪人 1925 181.jpgン・ケリー)は彼女に思いを寄せ、彼女の仕度部屋を訪れると部屋の中には何者とも知れぬ男の声がし、クリスティーヌの哀訴の声が聞えたため、ラウルは嫉妬する。新しい支配人は幽霊などいないと冷笑し、怪人の警告を無視してカルロッタを舞台に立たせると、天井に吊したシャンデリアが墜ちて多くの人々が死傷する。クリスティーヌは愛するラウルに、怪人というのはオペラ座の地下の湖に棲むエリック(ロン・チェイニー)であることを告げる。ある晩の開演中、エリックはクリスティーヌを連れ去る。ペルシャ人レドー(アーサー・エドモンド・カリュー)を案内としてラウルは愛人を助けに地下湖へ向かう―。

オペラ座の怪人 1925 01.jpg フランスの作家ガストン・ルルーによって1909年に発表された『オペラ座の怪人』の、2004年までに9回映画化されたうちの2回目の映画化作品で、「ノートルダムのせむし男」('23年)などでも知られ「千の顔を持つ男(MAN OF A THOUSAND FACES)」と称されたロン・チェイニー(1888-1930)が"怪人"を演じています。"怪人"エリックが音楽と奇術に明るい、脱獄した猟奇犯罪者に設定が変更されていますが(ビデオジャケット(旧版)には、解雇された元オペラ座の楽団員とある)、全体としては原作に比較的忠実な映画化作品とされています。

オペラ座の怪人 1925 178.jpg 原作がアンドリュー・ロイド・ウェバーによってミュージカル化(1986年10月のロンドンが初演)された際に、ホラー調のストーリーがラブ・ロマンス風に改変されていますが、原作でも一応クリスティーヌは最後は怪人に対して真心で接します。しかし、この映画化作品では、クリスティーヌが一瞬は怪人に寄り添うかのように見えた場面もあったものの、結局彼女にとって怪人はあくまでも「怪人」であり、その分、怪人の方はストーカー的存在に終始しています。

オペラ座の怪人1925    .jpg 原作のペルシャ人の元秘密警察ダロガは、該当する人物(レドー)は登場しますが、過去にエリックとの間であった経緯は描かれておらず、そもそも出て来るなり何だか怪しげです。しかし、ラウルがエリックに連れ去られたクリスティーヌを奪回しようとするに際しては、積極的にラウルをエリックの隠れ家である地下湖に導き、その結果、ラウルと共に散々危険な目に遭います。一方、2004年版の映画や劇団四季版などでダロガの役割まで併せて担わせている元バレイ教師、現案内係りのマダム・ジリは登場しません。

オペラ座の怪人 ブロードウェイ .jpgオペラ座の怪人 1925 03.jpg オペラ座のセットが大掛かりで、仮面舞踏会のシーンなどは圧巻、しかも、この部分はカラーです。登場する怪人はドクロの仮面を被っていますが、これはブロードウェイ・ミュージオペラ座の怪人 1925 04.jpgカル(上右)でも同じです。シャンデリアがオペラ座の怪人G.jpg墜ちるシーンも、ジョエル・シュマッカー監督の2004年版みたいにスローモーションではなく、ドスンと墜ちる分、リアリティがありました。警告を無視してカルロッタを舞台に立たせたことへの怪人の〈報復〉としてシャンデリアが墜ちるという、後に引き継がれていく解釈は、この映画が最初のようです。更に、地下湖のセットもこれまた大掛かりで、怪人エリックとラウル、レドーの攻防を、熱責めあり、水責めありで、これでもかこれでもかというぐらいアクション映画風に描いていて、かなり愉しめます。

iオペラ座の怪人1925K7.jpg 怪人エリックは奇術師の才能も持ち合わせている訳ですが、奇術師というより地下に秘密基地を築いたマッド・サイエンティストといった感じでしょうか。クリスティーヌとの婚礼を迫り、小箱の中にあるバッタとサソリの細工を見せてクリスティーヌに選択を求めるのも原作と同じ。バッタを回せばノー、サソリを回せばイエスのサインであると説明をしますが、バッタを選ぶとオペラ座の地下の火薬庫を爆発させるいうことです。クリスティーヌがやむなくサソリを選ぶと、地下に閉じ込められたラウル、レドーが水没の危機に晒されるという展開で、先にも述べた通り、1925年に作られた映画とは思えないくらい今風なスぺクタルシーンを見せてくれます。
     
オペラ座の怪人009.jpgロン・チェニー.jpg とにかく、ロン・チェイニーの怪人のメイクの異様さが際立っていて、原作もミュージカルも、ジョエル・シュマッカー版をはじめとする近年の映画化作品も、顔の一部のみをマスクで覆っているのに対し、ここではほぼフルフェイスのマスクを被っており、それを外オペラ座の怪人1925 2.jpgすと顔全体が凄いことになっています(さっきまで一部覗いていたかのように見えた目までメイクが変化している)。

 原作のホラーなテイストを継承しているとも言えるし、ある意味、ロン・チェイニーという怪優を介して、おぞましさをより強調している印象も受けました。ただ、強調され過ぎて、やや漫画的になっている印象も受けなくはありませんでしたが、その分、逆に同情を誘う効果も狙ったのでしょうか。群衆に集団リンチされ、川に投げ込まれるというこの映画オリジナルのラストと考え合わせると、これはこれで、エリックを"悲劇的人物"として描いた作品であるようにも思えました。

The-Phantom-of-the-Opera-6400_5.jpg この作品、VHSはパートカラーだったのに、最初に出たDVDは廉価版だったせいか全編モノクロになっています(その後出たDVDはパートカラーに)。とりわけパートカラーの部分は出来るだけ綺麗な映像で観たいところですが、アメリカではBlu-ray Discが発売されているものの、日本ではまだのようです。

「オペラ座の怪人」●原題:THE PHANTOM OF THE OPERA●制作iオペラ座の怪人1925X.jpg年:1925年●制作国:アメリカ●監督:ルパート・ジュリアン●製作:カール・レムリ●脚本:エリオット・J・クローソン/レイモンド・L・シュロック●原作:ガストン・ルルー●時間:(最長版)107分・(短縮版)75分●出演:ロン・チェイニー(エリック)/メアリー・フィルビン(クリスティーヌ)/ノーマン・ケリー(ラウル)/ヴァージニア・ペアソン(カルロッタ)/アーサー・エドモンド・カリュー(レドー)●日本公開:1925/09●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ(評価:★★★★)

          



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和田泰明

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