【2425】 ○ ヴェルナー・ヘルツォーク 「フィツカラルド」 (82年/西独) (1983/07 大映インターナショナル) ★★★★

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やはりクライマックスは船の山越えか。文化人類学的な視点の入った映画だったかも。

フィツカラルド dvd.jpgフィツカラルド 山越え.jpg フィツカラルド 2.png
フィツカラルド [DVD]」 クラウス・キンスキー/クラウディア・カルディナーレ

フィツカラルド01.jpg 19世紀末のブラジル・マナウスのオペラハウス。オペラ歌手エンリコ・カルーソの公演を聴こうとペルー・イキトスからボートを漕いで来たフィツカラルド(クラウス・キンスキー)とモリー(クラウディア・カルディナーレ)。会場にもぐり込んだフィッカラルドは、カルーソのテノールに聞き入る。アイルランド出身の彼の本名はブラ『フィツカラルド』(1982).jpgイアン・スウィーニー・フィツジェラルドだが、インディオたちは彼をフィツカラルドと呼ぶ。今は製氷業だが、かつてアンデスに鉄道を敷設しようとして破産した経歴の持主で、白人らは彼を奇人とみなしていたが、娼家経営の愛人モリーは良き理解者であり、インディオの子らも彼を慕う。彼はイキトスにオペラ・ハウスを建てようと決意するが、それには莫大な資金が必要で、ゴム成金たちには相手にされない。そこで彼は、自らがジャングルを切り拓いてゴム園を作ることを計画、モリーが出してくれた金で成金の一人ドン・アキリノ(ホセ・レーゴイ)から中古の蒸気船フィツカラルド tikuonnki.jpgを買い、パウル船長(ポール・ヒッチャー)、料理人ウェレケケ(ウェレケケ・エンリケ・ボホルケス)、機関士チョロ(ミゲル・アンヘル・フェンテス)らを雇う。"モリー号"と命名された船は修理を終えてアマゾン川に船出、彼のゴム園用地は流れの激しい"ボンゴの瀬"のあるウカヤリ川上流にあったため、彼はフィツカラルド 02.png船をパテリア川に進める。途中、中断された鉄道駅に寄り、レールを外して船に積み込む。船が進んで首刈り族の土地に入ると、乗組員らの多くは逃亡してしまう。フィツカラルドは操舵室の屋根上に蓄音機を置いてレコードをかけ、密林にオペラが流れるとインディオたちが姿を現わす。彼らは続々と船に乗り込んで来フィツカラルド 01.jpgるが、フィツカラルド一行に手を出さない。フィツカラルドは、パテリア川とウカヤリ川が最も接近したところで、船を川から揚げて山越えしてウカヤリ川に降ろすという計画をインディオに伝えると、酋長(D・P・エスピノサ)は協力するという。目的地に着いてレールを降ろし、ジャングルを切り拓き、滑車で船を引っぱり揚げる。7ヵ月後、遂に船はウカヤリ川に浮かぶ。祝杯に酔ったフィツカラルドらが寝ている隙に、インディオたちは船を激流に放つ。彼らは激流の荒ぶる魂を静める儀式として協力したのだった。フィッカラルドらを乗せたモリー号は、木の葉の如く激流を流されていく―。
   
フィツカラルド 00.jpg ヴェルナー・ヘルツォーク監督による1982年作品で、同年のカンヌ国際映画祭「監督賞」受賞作。完成まで4年半を要し、苛酷なロケのためスターが次々と降板していった末にフィツカラルドの役をクラウス・キンスキーが得たことは知られていますが、結果として、オペラハウス建設への情熱に憑かれたフィツカラルドを演じたクラウス・キンスキーはハマリ役でした(思えば彼は、同監督の「アギーレ/神の怒り」('72年)で既に、エル・ドラドへの夢に憑かれアマゾン川を遡行するピサロの分遣隊の副隊長を演じていたのだが)。

ヴェルナー・ヘルツォーク監督/クラウス・キンスキー

 結局フィツカラルドは何とかイキトス(1900年代始めにゴムブームが起き、街はゴム産業で知られていた)に帰り着くが、彼の計画自体は水泡に帰し、彼はモリー号をドン・アキリノに売り、その金でオペラ一座を雇って一度だけの船上オペラを上演する―。

フィツカラルド ラスト.jpg ラストの、数日後には自分の所有から離れるモリー号の船上で、オペラを聴きながらフィツカラルドが見せる陶酔と誇りと狂気が入り交ざった表情はなかなかですが(ヘルツォーク作品の中ではかなり爽やかなエンディング?)、この映画のクライマックスはやはり、この映画を観たことがない人でもビデオやCDのジャケットでその場面は知っていると思われる、例の蒸気船の山越えでしょう。

フィツカラルド yamage2.jpg ヘルツォーク監督、ホントに船を山越えさせてしまったなあという感じで、実写でここまでやるというのは当時でもスゴイと思いましたが(完璧主義者だったフリッツ・フォン・シュトロハイム(「愚なる妻」「グリード」)の系譜か)、CG全盛の今ではもうこんな撮影はあり得ないか。"ボンゴの瀬"に船が突っ込むシーンはさすがにミニチュアを使っていますが、これまで本チャンでやったらそれこそ死者が出ていたかもしれません。「山越え」でスペクタクル的には充分満足でした(アマゾン支流をゆっくり遡上するシーンも含め、劇場で観たい作品ではある)。

フィツカラルド03.jpg アギーレと同様フィッツカラルドも実在の人物に改変を加えて描いてるようですが、最初観た時は西洋肉食系人種の凄まじい執念のようなものを感じました。また、異文化の出会いの物語でもあったなあと。最初は、西洋人の自らの文化への自信のようなものを感じましたが(「オペラで未開の地を啓蒙してやる」みたいな)、最近観直してみて、ラストの方でフィツカラルドが、初めてナイヤガラ瀑布を見つけた西洋人の言葉をぼそっと語る場面があったことに気づき、ああ、自分のことをなぞらえていたのだなあと。つまり、人に語っても信じてもらえないような不思議な体験をしたということであり、そこに彼の異文化への畏敬のようなものを感じました。結構、文化人類学的な視点の入った映画だったかもしれません。

Fitsukararudo(1982)
Fitsukararudo(1982).jpg
フィツカラルド      .jpg「フィツカラルド」●原題:FITZCARRALDO●制作年:1982年●制作国:西ドイツ●監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク●製作:ヴェルナー・ヘルツォーク/ルッキ・シュティペティック●撮影:トーマス・マウホ●音楽:ポポル・ヴー●時間:158分●出演:クラウス・キンスキー/クラウディア・カルディナーレ/ホセ・レーゴイ/ポール・ヒッチャー/フィツカラルド c.カルディナーレ.jpgウェレケケ・エンリケ・ボホルケス/ミゲル・アンヘル・フェンテス/グランデ・オセFITZCARRALDO Claudia Cardinale.jpgロ/ペーター・ベルリング/デイヴィッド・ペレス・エスピノサ/パウル・ヒットシェル●日本公開:1983/07●配給:大映インターナショナル●最初に観た場所:東急名画座(83-04-16)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(15-06-23)(評価:★★★★)
Claudia Cardinale in FITZCARRALDO
FITZCARRALDO Claudia Cardinale2.jpg

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