【2418】 ○ ビリー・ワイルダー 「シャーロック・ホームズの冒険」 (70年/米) (1971/03 ユナイテッド・アーティスツ) ★★★☆

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ワイルダーのシャーロック。「SHERLOCK/ベルグレービアの醜聞」に影響を与えた?

シャーロック・ホームズの冒険 ps.jpgシャーロック・ホームズの冒険 1970 dvd.jpg シャーロック・ホームズの冒険 1970.jpg  SHERLOCK(シャーロック)/ベルグレービアの醜聞2.jpg
シャーロック・ホームズの冒険(特別編)[DVD]」「SHERLOCK/シャーロック シーズン2 [DVD]」(「SHERLOCK(第4話)/ベルグレービアの醜聞」)

シャーロック・ホームズの冒険 1970 001.jpg ジョン・ワトスン医師の死後50年が経過し、遺言に沿って未発表の記録が公開された。19世紀末のロンドン。私立探偵シャーロック・ホームズ(ロバート・スティーブンス)はロシアのプリマバレリーナから強引な求婚を受ける。ホームズは助手ワトスン(コリン・ブレークリー)とホモ関係にあると偽って求婚から逃れるが、それを知ったワトソンを怒らせる。この騒動から一息ついた彼らの元に、記憶喪失の女性が運び込まれる。ホームズの機転により記憶を取り戻したシャーロック・ホームズの冒険 1970 002.jpgシャーロック・ホームズの冒険 1970 03.jpg彼女ガブリエル(ジュヌヴィエーヴ・パージュ)の依頼で、ホームズ達は行方不明の彼女の夫を探し始めるが、ホームズの兄マイクロフト(クリストファー・リー)が調査の中止を勧告する。ホームズは表面上忠告に従うふりをするも、ホームズとガブリエルが夫婦、ワトソンが執事と身分を偽って捜査を続ける。スコットランドのネス湖畔を訪れた彼らはガブリエルの夫の死を知る。真相を求めて更に捜査を続け、ネス湖にボートで漕ぎ出した3人の眼前に、伝説の怪物ネッシーが姿を現す―。

シャーロック・ホームズの冒険 1970 1.jpg ビリー・ワイルダーが脚本・監督・製作を担当した1970年公開作。邦題はコナン・ドイルの短編集と同じで、一応、原作もドイルになっていますが、ストーリー内容は原作にはないオリジナルです(そもそも最初にネッシー騒動が起きたのはドイルの死の3年後の1933年のこと)。この作品、当初は、「逆さまの部屋の珍事件」「ロシア人バレリーナの奇妙な事情」「ホームズのビックリ仰天旅シャーロック・ホームズの冒険te.jpg行」「裸のハネムーン・カップルにご用心」という4つのエピソードが盛り込まれた4時間近い大作でしたが、公開にあたって配給会社の要請で2時間ほどに編集され、バレリーナからの求婚のエピソードを序盤に残し、謎の美女とネッシーに纏わるエピソード(「ホームズのビックリ仰天旅行」)をメインに据える内容となっています。カットされたフィルムの多くは現存しないそうですが、全体としてはホームズの生活に身近な事件が主だったのが、国家機密に関わる大仰な事シャーロック・ホームズの冒険7A.jpg件がメインストーリーとして残ったため、原題にある"Private Life"からもやや遠くなってしまったようです(マイケル&モリー・ハードウィックによるノベライゼーションが『シャーロック・ホームズの優雅な生活』の邦題で創元推理文庫から刊行されているが、当然のことながら4話中の映像化された部分しか扱っていない)。

シャーロック・ホームズの冒険 1970 スコットランド.jpg 冒頭のバレリーナからの求婚のエピソードも面白いけれど、一部を残したのが結果として取って付けた感じになり、全体のバランスを欠く原因にもなっています。ただ、モリー・モーリンがヴィクトリア女王役で出てくることはさて置いて、全体として、ロンドンの街中の様子やホームズの下宿の様子などにおいてヴィクトリア朝時代の雰囲気をよく伝えており、スコットランドの風景も美しく、ファンの間では必ずしも評価は低くはないようです。

シャーロック・ホームズの冒険 1970 01.jpg おそらく全体としてコメディタッチであったと思われ、コリン・ブレークリー演じるワトスンがかなり軽い、というか、お調子者のように描かれていますが、ロバート・スティーブンス演じるシャーロックもややエキセントリックな部分が強調された描かれ方をしており、ちょうど最近のTV版「SHERLOCK(シャーロック)」のベネディクト・カンバーバッチ演じるシャーロック像の先駆け的な雰囲気を醸しています。因みに、「SHERLOCK」のプロデューサー、スティーヴン・モファットは、「コメディであるが故に、かえって原作のことがよく分かる」としてこの作品を絶賛しています。

シャーロック・ホームズの冒険 1970 02.jpg ジュヌヴィエーヴ・パージュ演じるガブリエルは、謎深く、また魅力的に描かれていて作品に華を添えており(むしろ推理という点では、ホームズの方が欺かれ放しであまりぱっとしない)、ビリー・ワイルダーらは、「ボヘミアの醜聞」に出てくる、ホームズが唯一愛した女性であると"推察される"アイリーン・アドラーに匹敵するような女性を、独自に創生したように思われます。因みに「ボヘミアの醜聞」の「SHERLOCK」版である「ベルグレービアの醜聞」('11年/英)では、アイリーンがベルグレービアの醜聞001.jpgベルグレービアの醜聞002.jpg全裸でホームズの前に現れ、ラストではホームズが、異国の地でスパイとして処刑される寸前のアイリーンを死地から救ったように見えますが、おそらく、そうした際どい場面や飛躍した結末は、この作品の影響を受けているのではないでしょうか。
SHERLOCK/ベルグレービアの醜聞」('11年/英)[TVシリーズ版]

シャーロック・ホームズの冒険 1970 ps.jpgシャーロック・ホームズの冒険 1970dvd.jpgシャーロック・ホームズの冒険 [DVD]
「シャーロック・ホームズの冒険」●原題:THE PRIVATE LIFE OF SHERLOCK HOLMES●制作年:1970年●制作国:アメリカ●監督・製作:ビリー・ワイルダー●脚本:ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド●撮影:クリス・チャリス●音楽:ミクロス・ローシャーロック・ホームズの冒険 1970  クリストファー・リー.jpgザ●原作:アーサー・コナン・ドイル●時間:125分●出演:ロバート・スティーブンス/コリン・ブレークリー/ジュヌヴィエーヴ・パージュ/クリストファー・リー/アイリーン・ハンドル/モリー・モーリン/クライヴ・レヴィル/スタンリー・ハロウェイ/タマラ・トゥマノヴァ●日本公開:1971/03●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★☆)

A Scandal in Belgravia 003.png「SHERLOCK(シャーロック)(第4話)/ベルグレービアの醜聞」」●原題:SHERLOCK:A SCANDAL IN BELGRAVIA●制A Scandal in Belgravia 022.jpg作年:2011年●制作国:イギリス●演出:ポール・マクギガン●脚本:スティーブン・モファット●出演:ベネディクト・カンバーバッチ/マーティン・フリーマン/ララ・パルバー/ルパート・グレイヴス/ウーナ・スタッブズ/マーク・ゲイティス/アンドリュー・スコット●日本放映:2012/07●放映局:NHK-BSプレミアム(評価:★★★★)

     
  



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和田泰明

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