【2397】 ○ ロナルド・ニーム (原作:ポール・ギャリコ) 「ポセイドン・アドベンチャー」 (72年/米) (1973/03 20世紀フォックス) ★★★☆

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パニック映画ブームの先駆け。CG全盛の今観ると、「実写」の"手作り"的な良さを感じる。

ポセイドン・アドベンチャー パンフ.jpgポセイドン・アドベンチャー dvd.jpg ポセイドン・アドベンチャー01.jpg
映画パンフレット 「ポセイドンアドベンチャー」 監督 ロナルド・ニーム 出演 ジーン・ハックマン アーネスト・ボーグーナイン」「ポセイドン・アドベンチャー [DVD]

ポセイドン・アドベンチャー 12.jpg 81,000トンの豪華客船「ポセイドン号」は1,400名の乗客を乗せてニューヨークを出港、ギリシャ行の航海に出たが、船長(レスリー・ニールセン)は、船の重心が高くバラスト(底荷)をしていないため、大波に襲われて転覆することを恐れていた。ポセイドン・アドベンチャー t.jpg船内ホールでは大晦日の年越しパーティーが開かれていたが、折しもクレタ島沖で海底地震が発生して高さ32mの巨大津波が船を襲い、船体に問題があった船はあっという間に転覆、ホールの船客らは、それまでのポセイドン・アドベンチャー H5.jpg上部が足下に、足下が上部にひっくり返って、躰ごと投げ出されて落下、壁に叩き落されるなどし、船内は阿鼻叫喚の地獄図となる。180度横転したホールには、この時点ではまだ相当数が生存しており、その内の1人のパーサーは、この場に留まることが最善で、救援隊が来るまでここで待機しようと訴える。しかし牧師のフランク・スコット(ジーン・ハックポセイドン・アドベンチャー7.jpgマン)は、留まっていれば海面下に置かれているホールはやがて浸水して全員死ぬので、ひとまず上に上がって「船底」の竜骨付近に行ってそこで救援隊を待つ方がよいと主張、ホールに居た船客も意見が分かれるが、牧師に従って上に登る決意をしたのは僅か8名だった。スコット牧師らは、大きなクリスマスツリーをよじ登って、上にいたボーイのエイカーズ(ロディ・マクドウォール)と合流、その時、大爆発がし鉄砲水が残りの大勢の船客を押し流すが、牧師にはどうすることも出来ない。牧師にポセイドン・アドベンチャーes.jpg従ったのは、ニューヨークの刑事マイク・ロゴ(アーネスト・ボーグナイン)と リンダ・ロゴ(ステラ・スティーヴンス)の夫婦、気ままな旅をしていたマニー・ローゼン(ジャック・アルバートソン)とベル・ローゼン(シェリー・ウィンタース)の中年夫婦、雑貨商ジェームズ・マーティン(レッド・バトンズ)、ホールで演奏していた楽団メンバーを全て失った歌手ノニー・パリー(キャロル・リンレー)、欧州へ遊びに行く予定だったスーザン・シェルビー(パメラ・スー・マーティン)とロビン・シェルビー(エリック・シーア)の姉弟の8人であり、スコット牧師、エイカーズと合わせて10人でエンジンルームを目指す―。

Poseidon Adobenchâ (1972).jpgポセイドン・アドベンチャーs.jpg 1969年に発表されたポール・ギャリコの小説を原作として1972年に映画化された作品で監督はロナルド・ニーム(1911-2010/享年99)、製作は後に同じパニック映画「タワーリングインフェルノ」('74年)を製作するアーウィン・アレンです。'72年公開作では「ゴッドファーザー」('72年)に次ぐ全米興行収入を上げ、日本でも、'73年の興行収入第1位となり、パニック映画ブームの先駆けとなった作品とされていますが、個人的にはテレビで観たと思います(記録を調べると、1976年10月11日TBS「月曜ロードショー」で放送され、その後、2006年6月15日にテレビ東京「午後のロードショー」で放送されたりしている)。
Poseidon Adobenchâ (1972)

ポセイドン・アドベンチャー8.jpg まず、豪華客船が転覆して、全てが上下ひっくり返るというのが、原作通りではあるものの、映像にしてみるとなかなか面白く、「パニック映画、こうあるべし」みたいな感じで、それでいて、1回使ったらもうよそでは使えないみたいなユニークさがあったのではないでしょうか(結局、続編を含め「ポセイドン」というタイトルをそのまま使用して、この後3度映画化された(ウォルフガング・ペーターゼン監督「ポセイドン」('06年)など))。当時の製作費1,200万ドルは船のセット、転覆場面の撮影、1,135万リットルの水に大半が費されたとのことですが、大量の海水が勢いよく、或いはじわじわと浸水してくるシーンなども含め、CGなどが無い時代のことで全て実写でやっているわけです。公開当時は大規模なセットが話題になったかと思われますが、CG全盛の今日この映画を観ると、むしろ"手作り"的な良さが感じられます。

ポセイドン・アドベンチャー00.jpg パニック映画ではありますが、ヒューマンドラマ的な部分もしっかりしていました。とりあえず、船内ホールにいた100人ぐらいの船客以ポセイドン・アドベンチャーK.jpg外は"絶望"として生存者を絞り込んで、更に「船底」に退避するかその場に留まるかで、結局、留まった人々は全滅、退避した10名だけに早々に絞り込まれます。そのことによって、以降、演劇的な、丹念な人物像の描き方となっていたように思います。そして、その10人の中から更に犠牲者が1人、2人と出続ける―。

ポセイドン・アドベンチャー09.jpg 序盤の船内ホールには、居残り組にも牧師がいて、こちらはただ祈るのみ。一方のジーン・ハックマン演じる牧師は、とにかく生きるために前へ進もうとする、この対比のさせ方はかなり明確です。そして、その牧師が最後にとった自己犠牲的な行動―。やや典型的なヒロイズムになってしまった印象もあるし、その際に、牧師が"神"に向かって「邪魔しないでくれ」と言いますが、牧師がそんなこと言うかなあというものちょっと引っ掛かったけれど、穿った見方をすれば、この映画ではこの牧師が「モーゼ」のような神により近い存在ということなのかもしれません。
   
ポセイドン・アドベンチャー03.jpg ジーン・ハックマンは好演でした。他の俳優陣では、牧師と意見の衝突を繰り返す刑事役のアーネスト・ボーグナイン(1917-2012/享年95)ポセイドン・アドベンチャー20s.jpgの、ジーン・ハックマンとの演技合戦が見所でしょうか。ジーン・ハックマンは英国アカデミー賞の主演男優賞を受賞しましたが、アーネスト・ボーグナインの濃い演技もパニック映画向きで良かったように思います(元水泳選手ポセイドン・アドベンチャー 001.jpgPicture of The Poseidon Adventure.jpgで牧師を救うも自らは斃れる中年婦人ベル・ローゼンを演じたシェリー・ウィンタースがゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞している)。最近観直してみて、船長役が「裸の銃を持つ男」('88年)などコメディに転ずる前のレスリー・ニールセン、ボーイ役が「猿の惑星」シリーズのロディ・マクドウォールだったことに改めて気づきました。 

ポセイドン・アドベンチャー _b.jpg「ポセイドン・アドベンチャー」●原題:THE POSEIDON ADVENTURE●制作年:1972年●制作国:アメリカ●監督:ロナルド・ニーム●製作:アーウィン・アレン●脚本:スターリング・シリファント/ウェンデル・メイズ●撮影:ハロルド・E・スタイン●音楽:ジョン・ウィリアムズ/アル・カシャ/ジョエル・ハーシュホーン●原作:ポール・ギャリコ「ポセイドン・アドベンチャー」●時間:117分●出演:ジーン・ハックマン/アーネスト・ボーグナイン/レッド・バトンズ/キャロル・リンレー/ロディ・マクドウォール/ステラ・スティーヴンス/シェリー・ウィンタース/ジャック・アルバートソン/パメラ・スー・マーティン/エリック・シーア/レスリー・ニールセン/アーサー・オコンネル●日本公開:1973/03●配給:20世紀フォックス(評価:★★★☆)

リンダ・ロゴ(ステラ・スティーヴンス)、スーザン・シェルビー(パメラ・スー・マーティン)、ノニー・パリー(キャロル・リンレー)の各フィギア
ポセイドン・アドベンチャー 53.jpg ポセイドン・アドベンチャー 50.jpg ポセイドン・アドベンチャー b5.jpg

《読書MEMO》
●70年代の主要パニック映画と個人的評価
・「大空港」('71年/米)ジョージ・シートン監督(原作:アーサー・ヘイリー)★★★☆
・「激突!」('71年/米)スティーヴン・スピルバーグ(原作:リチャード・マシスン)★★★☆
・「ポセイドン・アドベンチャー」('72年/米)ロナルド・ニーム監督(原作:ポール・ギャリコ)★★★☆
・「日本沈没」('73年/東宝)森谷司郎監督 (原作:小松左京)★★★☆
・「タワーリング・インフェルノ」('74年/米)ジョン・ギラーミン監督(原作:リチャード・M・スターン)★★★☆
・「新幹線大爆破」('75年/東映)佐藤純彌監督 ★★☆
・「JAWS/ジョーズ」('75年/米)スティーヴン・スピルバーグ監督(原作:ピーター・ベンチュリー)★★★★
・「ジェット・ローラー・コースター」('77年/米)ジェームズ・ゴールドストーン監督 ★★★
・「エアポート'77/バミューダからの脱出」('77年/米・英)ジェリー・ジェームソン監督(原作:A・ヘイリー)★★
・「太陽を盗んだ男」('79年/東宝) 長谷川和彦監督 (原作:レナード・シュレイダー)★★★★☆

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