【2411】 ○ アンドリュー・ビディントン 「名探偵ポワロ(第26話)/二重の手がかり」 (91年/英) (1992/04 NHK) ★★★★ (○ アンドリュー・グリーブ 「名探偵ポワロ(第27話)/スペイン櫃(ひつ)の秘密」 (91年/英) (1992/04 NHK) ★★★☆)

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原作に先んじてポワロが恋に落ちた「二重の手がかり」(第26話)。原作よりエグい殺害方法の「スペイン櫃」(第27話)。

名探偵ポワロ[完全版]Vol.14 [DVD].jpg 第26話/二重の手がかり 05.jpg  スペイン櫃の秘密 dvdbook.jpg 第27話/スペイン櫃の秘密 dvd.jpg
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第26話/二重の手がかり 01.jpg ジャップ警部が浮かない顔でポワロのもとを訪れ、イギリス各地の貴族の邸で発生した3件の宝石強盗事件の解決の糸口が掴めず、自らのクビさえ危ないと言う。待つしかないというポワロの言葉通り、第4の事件が発生。宝石コレクターとしても有名なマーカス・ハードマン氏の邸での野外コンサートに客たちが招かれた際に、邸内の金庫が壊され、カトリーヌ・ド・メディシスのエメラルドのネックレスが盗まれたのだった―(第26話「二重の手がかり」)。

 「名探偵ポワロ」の第26話(第3シーズン第7話)で本国放映は1991年2月10日、本邦初放映は1992年4月1日(NHK)。原作はクリスティー文庫『教会で死んだ男』、創元推理文庫『砂に書かれた三角形』などに所収。

第26話/二重の手がかり 03.jpg "二重の手がかり"とは、破られた金庫の中に白い手袋が、その近くに"B.P."のイニシャル入りのシガレットケーがあったことを指し、容疑者はネックレスが盗まれた晩に屋敷に出入りした4人の客ということになりますが、ポワロはその容疑者の一人、ロシア人亡命貴族を称するヴェラ・ロサコフ伯爵夫人に一目惚れしたようで、3日以内に事件を解決しないとクビになると総監から言い渡されているジャップ刑事を尻目にロサコフ夫人とデートばかりしていて、事件を投げ出した印象さえあります。そこで、ヘイスティングスとミス・レモンが、それぞれに怪しいところがある他の3人の調査に当たります。

第26話/二重の手がかり 02.jpg このポワロのシリーズにおけるロサコフ夫人は、シャーロック・ホームズの「ボヘミアの醜聞」における、ホームズが恋した唯一の女性アイリーン・アドラーに相当するわけです。ということで宝石盗難犯の見当はおおよそつくわけですが、ポワロは犯人を捕まえる気がないわけで(クライアントの了解済み)、となるとこの事件にどう決着をつ第26話/二重の手がかり 04.jpgけるのかが見所になるわけです。そうした意味では、なかなかユニークな展開でした。

 原作シリーズでは、ポワロはこのエピソードよりむしろ「ビッグ4」で本当に恋に落ち、そして別れ、その20年後、「ヘラクレスの冒険」(ケルベロスの捕獲)でまた再会するようですが、このTVシリーズでは今回で既に恋に落ちてしまって(このことは「ビック4」の改変を余儀なくするのでは)、しかも「ビッグ4」の次の回が「ヘラクレスの冒険」であるため、その辺り、どのような繋がり方になっているのか関心が持たれます。


The Mystery of the Spanish Chest  .jpg第27話/スペイン櫃の秘密 02.jpg オペラ劇場で旧知のレディ・チャタートンに、友人のクレイトン夫人が夫に命を狙われているらしいと言われたポワロは、様子を探りにクレイトン夫妻が出席するパーティに出掛ける。クレイトン夫人と親しくしているリッチ少佐、クレイトン夫人を巡って決闘して敗れたこともあり、今もまお夫人を執拗に追いかけるカーティス大佐らがパーティに出席していたが、クレイトン氏は急な仕事で欠席。翌日、パーティ会場にあったスペイン櫃の底から、大量の血が流れ出してるのをメイドが発見し、蓋を開けると中にクレイトン氏の刺殺体があった―(第27話「スペイン櫃(ひつ)の秘密」)。

The Mystery of the Spanish Chest2.jpg 「名探偵ポワロ」の第27話(第3シーズン第8話)で本国放映は1991年2月17日、本邦初放映は1992年4月2日(NHK)。原作はクリスティー文庫『クリスマス・プディングの冒険』、などに所収。

第27話/スペイン櫃の秘密 01.jpg 先ず逮捕されたのは、屋敷のオーナーであるリッチ少佐で、スペイン櫃(エリザベス朝の家具で大きくて蓋がある)の持ち主でもない限り、クレイトンの死体を持ち込むなど不可能と思われたわけですが、クレイトン夫人がポワロのマンションを訪ねて来て、リッチ少佐の無実を証明することを依頼したため、ポワロは動き出します。

第27話/スペイン櫃の秘密   .jpg リッチは逮捕されましたが、第一容疑者は真犯人ではないというのはもうお約束事のようになっており、そうなると、リッチとは別に最初から怪しい人物はいるなあと思われ、それがそのまま結末までいってしまい、 "犯人当て"という面ではヒネリはさほどなかったように思います。

 しかしながら、犯人がクレイトンの嫉妬心を煽って、妻の浮気を確認させるためにスペイン櫃に身を潜まさせるというのはなかなか巧妙(死体を持ち込んだのでなく、自分で櫃に入ってしまったわけだ)。原作では酒に薬を入れて眠らせるのに対し、この映像化作品では、櫃に穴を空けて覗かせたものだから、犯人によってクレイトンは"目刺し"にされてしまったわけだなあ(櫃が柩になってしまった)。

 殺害方法としては、眠って鼾をかかれるよりは確実だという見方と、短剣を刺した時に穴から覗いているかどうか不確実だという両方の見方が成り立つのでは。さすがに死体までは見せなかったけれど、何れにせよ、洒落たタイトルに反してエグい殺害方法になった気がします。

「名探偵ポワロ(第26話)/二重の手がかり」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROTⅢ:THE DOUBLE CLUE●制作国:イギリス●本国放映:1991/02/10●監督:アンドリュー・ビディントン●脚本:アンソニー・ホロウィッツ●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス)/フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部)/ポーリン・モラン(ミス・レモン)/キカ・マーカム(ロサコフ伯爵夫人)/デヴィッド・ライアン(マーカス・ハードマン)●日本放映:1992/04/01●放映局:NHK(評価:★★★★)

The Mystery of the Spanish Chest .jpg「名探偵ポワロ(第27話)/スペイン櫃(ひつ)の秘密」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROTⅢ:THE MYSTERY OF THE SPANISH CHEST●制作国:イギリス●本国放映:1991/02/17●監督:アンドリュー・グリーブ●脚本:アンソニー・ホロウィッツ●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス)/フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部)/アントニア・ペンバートン(レディー・チャタートン)、キャロライン・ラングリッシュ(マーゲリート・クレイトン))●日本放映:1992/04/02●放映局:NHK(評価:★★★☆)
The Mystery of the Spanish Chest

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