【2356】 △ 池井戸 潤 『ようこそ、わが家へ (2013/07 小学館文庫) ★★★

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会社と家庭で「内憂外患」。読み易いがインパクトはやや弱いか。

ようこそ、わが家へ 池井戸潤0_.jpg ようこそ、わが家へ 池井戸潤1.jpg ようこそ、わが家へ tvC.jpgようこそ、わが家へ (小学館文庫)』「ようこそ、わが家へ DVD-BOX」出演:相葉雅紀/沢尻エリカ/有村架純/南果歩/寺尾聰

ようこそ、わが家へ 池井戸潤c.jpg 真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに、車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから窮地へと追い込まれていく―。

 季刊誌「文芸ポスト」2005年秋号から2007年冬号まで6回にわたって連載されたものに加筆修正して、単行本化を経ずいきなり文庫化された作品。最近は企業小説の旗手として脚光を浴びている作者ですが、この作品は、そうした企業サスペンス(企業ドラマ)的なストーリーと、以前に作者がよく書いていたホーム・サスペンス的なストーリーが並行して進行していくという構成です。

 連載時のものからどれぐらい加筆修正されているのか分かりませんが、読み易かったです。但し、主人公の「内憂外患」には大いに同情するものの、インパクトは弱かったか。企業サスペンスの方は、やや盛り上がりを欠いたまま予定調和的な帰結を迎えるし、ストーカーが出てくるホーム・サスペンスの方も、犯人に関して特にサプライズ的要素があるわけでなかったように思います。

 最近の作者の企業小説に比べると"軽めの読み物"という感じでしょうか。それでも、あの高視聴率をマークした「半沢直樹」の原作者による作品ということもあってか、2015年にフジテレビでドラマ化され(それ以前の2014年に、NHKラジオ第1放送「新日曜名作座」にて全6回放送されていた)、TBSが「半沢直樹」であれだけ視聴率を稼げたドラマを僅か10回で終わらせてしまった(しかもそこに原作2冊分を詰め込んで使ってしまった)その轍を踏むまいとしてか、かっちり1クール、場合によっては延長も有りでスタートしました。しかし、そうなると今度は案の定、原作に無い登場人物とか出てきて、原作者はどう思っていたのでしょうか。以前、NHKで『鉄の骨』がドラマ化された際には、「どんどん原作から離れていきますね。まさにNHK版『鉄の骨』です」と自らのブログで書いていましたが、今は作者はブログを休止しているので分かりません。

ようこそ、わが家へ ード.jpgようこそ、わが家へl_k.jpg ドラマ版の方は、そもそも主役が倉田ではなく、相葉雅紀が演じる息子の健太が"ヒーロー"になっていて、それに合わせて沢尻エリカのような原作に無い役どころの女性が"ヒロイン"として出てきたりします。本来は倉田という個人において、会社の問題と家庭問題とで「内憂外患」状態のまま事態がダブル進行していくことがこの作品のミソであって、息子を主人公にしてしまったのでは...。ラストは謝る謝らないで、土下座までは行かなかったけれど、殆ど「半沢直樹」風の世界に改変されていました。

ようこそ、わが家へ  tv2.jpgようこそ、わが家へ tv.jpg「ようこそ、わが家へ」●演出:中江功/谷村政樹●プロデューサー:羽鳥健一●脚本:黒岩勉●音楽:川井憲次●原作:池井戸潤「ようこそ、わが家へ」●出演:相葉雅紀/沢尻エリカ/有村架純/佐藤二朗/山口紗弥加/眞島秀和/堀内敬子/足立梨花/藤井流星(ジャニーズWEST)/高田純次/竹中直人/近藤芳正/南果歩/寺尾聰●放映:2015/04-06(全10回)●放送局:フジテレビ


【2013年文庫化/小学館文庫】

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This page contains a single entry by wada published on 2016年1月 7日 22:46.

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