【2319】 ○ 本村 凌二 『世界史の叡智―勇気、寛容、先見性の51人に学ぶ』 (2013/06 中公新書) ★★★☆ (○ 本村 凌二 『世界史の叡智 悪役・名脇役篇―辣腕、無私、洞察力の51人に学ぶ』 (2014/05 中公新書) ★★★☆)

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世界史上の先人らの生きざまに思いを馳せる本とでも言うべきか。

世界史の叡智.jpg 世界史の叡智2.jpg世界史の叡智 - 勇気、寛容、先見性の51人に学ぶ (中公新書)』『世界史の叡智 悪役・名脇役篇 - 辣腕、無私、洞察力の51人に学ぶ (中公新書)

 著者は東京大学名誉教授で、『ローマ人の愛と性』『馬の世界史』(何れも講談社現代新書)など一般向け著書も多い歴史学者(ローマ史)。本書は、古今東西の歴史上の人物についてその功績や人生、エピソードなどをエッセイ風に紹介したもので、2012年4月から週1回のペースで2年間に渡り「産経新聞」に連載されたものを(連載時のタイトルは「世界史の遺風」)、それぞれ前半と後半の51人ずつが終わった段階で新書化したものです。

 連載の後半部分を纏めた方には「悪役・名脇役」とありますが、前半にも"脇役"級は出てくるし、後半の方にも"主役"級は出てくるので、あまりこのサブタイトルは関係無かったかな。それにしても、著者はローマ史が専門ですが、古今東西、歴史上の人物を幅広く取り上げていることには感心します。西洋に限らず東洋も、更には東洋でも中国や日本に限らず、例えばアジア諸国で言えば、インド、ベトナム、フィリピンなどの歴史上の人物を取り上げています。

 なかなか頭には残らないかもしれませんが、読んでいてそこそこ楽しかったです。各冊の中で、連載で取り上げた順からその人物の歴史上の登場順に並べ変えてあってあって、体系的とまでは言えませんが、歴史の流れの中で読み進むことが出来るようになっています(途中で世界史地図を開きたくなる場面があったかなあ)。

 一方で、エッセイ風ということで、執筆時の政局時評なども枕や結語に織り込まれていて、最初はちょっと邪魔な感じもしましたが、慣れてくると、書かれて時の時局が窺えるのもそう悪くないかなあとも。大した時評でもないのですが(失礼)、これが新聞連載であったことを思い起こさせるうえで多少のシズル感はありました。

 "主役"級の知らざれざるエピソードも悪くないですが、殆ど名前しか聞いたことのないような、或いは存在自体を初めて知る"脇役"的人物のエピソードもなかなか楽しいです。但し、そうした中には歴史的ポジショニングが3ぺージ半程度の文章の中で充分に掴み切れない人物もいて、これは自らの知識の無さによるものでしょうが、さりげなく読者を選んでいるような印象も。

 殆どの人物解説においてその人物の肖像画やポートレートを掲載しているのは親切です。それぞれのまえがきが、51人の名前を織り込んで世界史を俯瞰する文章になっているのは、やや強引なところもありましたが、これが一番苦心したのではないかなと思ってしまいました。

 世界史の試験に絶対出なさそうな人が結構多いし、それだけに、読んで他人に薀蓄を垂れるようなものでもなく、一人、世界史上の先人らの生きざまに思いを馳せる本とでも言うべきでしょうか。

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This page contains a single entry by wada published on 2015年8月14日 23:50.

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