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ジャンルを幅広く取って簡潔にポイントを解説。極々スッキリしたスタイル。
『明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む』(2014/04 ティー・オーエンタテインメント)
ビジネス書の分析・解説がほぼメインの仕事になっていると思われる著者が、「明日から使える世界のビジネス書」を99冊セレクトし、あらすじと名著である理由を解説したもので、今回は海外のビジネス書に限定して、(1)ビジネス理論 Theory、(2)自己啓発 Self-Help、(3)経営者・マネジメント Management、(4)哲学 Philosophy、(5)古典中の古典 Classics、(6)投資 Investment の6つのジャンルに分類して取り上げ解説しています。
見開き2ページ毎に各1冊紹介する形で、左ページにその本の「著者略歴」の紹介と「この本を一言でいうと」どういう本なのか、また「この本が名著とされる理由」、更にはわかりやすさ度、有名度、お役立ち度、エンタメ度をそれぞれ★で5段階評価しています。
そして右ページにその本のポイントを2つに絞って解説をしていますが、確かにスッキリしたスタイルではあるものの、そうなるとあまりに簡単にしか本の内容の紹介ができないのではないかという気もしますが、著者の考え方は、「本書ではざっくり言って、1冊の本に書かれている真実の量は1%程度だと結論づけている。つまり200ページの本であれば、2ページの自分にとって役立つ知識が吸収されれば十分なのだ」「したがってこの本では、筆者が厳選した"100冊のビジネス書"をジャンル分けしたうえで、内容を1%で要約し、"本書から得るべき真実"を抽出した」(水野俊哉,ITmediaより)とのことです。
ナルホド、言い得ているなあと思われる面もあるし、何ページにもわたって解説したところで、結局のところ、元の本そのものに当たってみないと分からない(体感できない)エッセンスのようなものは残るものでしょう。短く纏める方が却って難しい場合もあるでしょうし、著者(水野氏)の視点での"纏め"ということで読めば(誰が纏めても"その人の纏め方"にしかならないわけだが)これはこれでいいのではないでしょうか(タイトルにある「あらすじ」とまではいっていない気もするが)。「この本がどうしてこのジャンル?」というのもありますが、ビジネス書って元々読み手によってどのジャンルに属するか違ってくる面もあるかもしれず、その点も含めて、著者の一視点と見ればいいのでは。
著者のデビュー作が『成功本50冊「勝ち抜け」案内』('09年/光文社ペーパーバックスBusiness)であることからも窺えるように、著者はこれまでビジネス書の中でも「成功本」的な本を数多く取り上げているようです。元マイクロソフト日本法人社長の成毛眞氏が『本は10冊同時に読め!』('08年/知的生きかた文庫)の中で、「家にある成功者うんぬんといった本を捨てるべきである」としていますが、個人的にむしろそっちの考え方に近く、従って著者の選評本をまともに読むのは今回が初めてですが、この本に限れば、ジャンルを幅広く取っているため「成功本」指向はそれほど鼻につきませんでした。
「哲学」や「古典中の古典」といったジャンルがあり、『銃・病原菌・鉄』や『奇跡の脳』『利己的な遺伝子』といった本なども取り上げられているのは興味深いですが、所謂「教養系」となると、成毛眞氏の編による『ノンフィクションはこれを読め!―HONZが選んだ150冊』('12年/中央公論新社)もそうですが、ライフネット生命の会長兼CEOの出口治明氏の『ビジネスに効く最強の「読書」―本当の教養が身につく108冊』('14年/日経BP社)など、筋金入りの読書人による更に"上手(うわて)"の(よりハイブローな)読書案内があるので、そうした本を指向する人はそちらの方がいいと思います。
本書は本書で、これまでの著者の本との比較ではそう悪くないのではと思います。と言っても、これまで著者の本は書店の立ち読みでしか読んでいないのですが...(随分といっぱい書いてるなあ)。
《読書MEMO》
●目次と内容
1 ビジネス理論 Theory
・『ビジネスモデル・ジェネレーション』アレックス・オスターワルダー/イヴ・ピニュール
・『キャズム』ジェフリー・ムーア
・『モチベーション3.0』ダニエル・ピンク
・『ザ・プロフィット』エイドリアン・スライウォツキー
・『ハイパワー・マーケティング』ジェイ・エイブラハム
・『MAKERS』クリス・アンダーソン
・『ビル・ゲイツの面接試験』ウィリアム・パウンドストーン
ほか
2 自己啓発 Self-Help
・『ハーバードの人生を変える授業』タル・ベン・シャハー
・『天才!』マルコム・グラッドウェル
・『一瞬で「自分の夢」を実現する方法』アンソニー・ロビンズ
・『スタンフォードの自分を変える教室』ケリー・マクゴニガル
・『非才!』マシュー・サイド
ほか
3 経営者・マネジメント Management
・『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝』レイ・A・クロック/ロバート アンダーソン
・『スティーブ・ジョブズ』ウォルター・アイザックソン
・『ストレスフリーの整理術』デビッド・アレン
・『LEAN IN(リーン・イン)』シェリル・サンドバーグ
・『フェイスブック 若き天才の野望』デビッド・カークパトリック
・『Google誕生』デビッド・ヴァイス/マーク・マルシード
ほか
4 哲学 Philosophy
・『予想どおりに不合理』ダン・アリエリー
・『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイアモンド
・『これからの「正義」の話をしよう』マイケル・サンデル
・『EQ リーダーシップ』ダニエル・ゴールマン
・『フリーエージェント社会の到来』ダニエル・ピンク
・『ワーク・シフト』リンダ・グラットン
・『奇跡の脳』ジル・ボルト・テイラー
・『なぜ選ぶたびに後悔するのか』バリー・シュワルツ
・『新ネットワーク思考』アルバート・ラズロ・バラバシ
・『ワープする宇宙』リサ・ランドール
ほか
5 古典中の古典 Classics
・『思考は現実化する』ナポレオン・ヒル
・『道は開ける』D・カーネギー
・『自助論』S・スマイルズ
・『7つの習慣』スティーブン・R・コビー
・『マネジメント[エッセンシャル版]』ピーター・F・ドラッカー
・『フロー体験 喜びの現象学』ミハイ・チクセントミハイ
・『人を動かす』D・カーネギー
・『ピーターの法則』ローレンス・J・ピーター/レイモンド・ハル
ほか
6 投資 Investment
・『ブラック・スワン』ナシーム・ニコラス・タレブ
・『となりの億万長者〔新版〕』トマス・J・スタンリー/ウィリアム・D・ダンコ
ほか
全99冊