【2291】 ○ 亀田 高志 『管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント―「ストレスチェック」義務化に対応!』 (2015/03 労務行政) ★★★★ (○ 亀田 高志 『人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援―リスクを最小化するためのルールとステップ』 (2012/10 労務時報選書) ★★★★)

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「ストレスチェック制度」と不調者の早期発見、職場運営、応用的対応の解説。

管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント.jpg管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援20.JPG人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援~リスクを最小化するためのルールとステップ~(労政時報選書)

 産業医であり、企業におけるメンタルヘルスに関する分かり易い解説で定評のある著者による本。

 以前の同著者の著書『人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援―リスクを最小化するためのルールとステップ』('12年/労政時報選書)では、メンタルヘルスの復職支援を中心に、人事労務担当者をナビゲーションするという意味で、ルールやステップの実務パッケージを「メンタルヘルス・ナビ」と呼び、その4つのステップとして、1.対応ルール策定、2.管理職研修、3.産業医の役割決め、4.不調者への対応ルールの適用・運用の順で解説をしていました。

 今回は、2014年の労働安全衛生法の改正により「ストレスチェック制度」が企業に義務付けられたことを受けて(実施は2015年12月から)、管理職向けに、第1章でその「ストレスチェック」の概要を解説するとともに、第2章で「不調者への対応と早期発見のコツ」について、第3章で「職場ストレスを最小化する職場運営」について、第4章で「生産性向上とリスク管理に役立つメンタルヘルス対応(応用編)」について解説しています。

 このように前著同様に全体を4つのステップに分け、尚且つ管理職向けということで、より分かり易くなっているだけでなく、単なるメンタルヘルスの解説本ではなく、冒頭の著者自身の定義にもあるように、「職場のストレスやメンタルヘルス不調を考えながら、マネジメントやリーダーシップを強化するための本である」となっています。

 とりわけ著者が主張しているのは、メンタルヘルス不調社員に対して「思考停止」してしまうのではなく、問題を要素(職場に発生している問題点、疾病性、会社責任、職務適性など)に切り分けて実務的に対応していくべきであるという方法論です。そして、事例ごとにリスクと損失を最小化するゴール・落としどころを設定していくことを求めています。そうした意味では、管理職に限らず、人事労務担当者や経営者が読んでも啓発される要素は多いかと思います。

 「ストレスチェック」においてどのような調査票を用いるかは事業者が自ら選択可能ですが、国では標準的な調査票として、本書でも第1章でその中身について解説されている「職業性ストレス簡易調査票(57項目) 」を推奨しています。この「ストレスチェック」については各章末にもコラムがありますが、巻末のコラムで著者が指摘しているように、企業に実施は義務づけられるものの、それを受けるかどうかは労働者の自由であり、また、対応する専門家の不足から、50人未満の事業場では当面は、その実施は努力義務に留まることとなっています。プライバシー等との関係で難しい問題はあるかと思われますが、受けるのは労働者の任意みたいな捉えれ方になってしまうと、この辺りでの実効性はどうなのかという懸念もあります。

 また、ストレスチェックの結果の通知を受けた労働者のうち、高ストレス者として面接指導が必要と評価された労働者から申出があったときは、医師による面接指導を行うことが事業者の義務になりますが、これなどは、先の労働安全衛生法の改正で定められた長時間労働者に対する「医師による面接指導」(第66条の8)が、1週 40時間超の労働時間が1カ月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者に対しては、その要件に該当する労働者からの申出があったときは、面接指導を実施しなければならないとされているのとパラレルであって、何れも労働者からの申し出がない場合は義務とされていない(長時間労働者に対する「医師による面接指導の場合は"努力義務")というのが、ともすると"ザル法"となってしまう恐れもあるのではないかと、個人的には危惧するところです。

 何れにせよ、制度の施行を控えて管理職向けにこうした本が出ているくらいですから、人事労務担当者はそれ以前にその内容を把握し、まず自らを啓発すると共に、具体的な施策についての見通しをイメージしておくべきでしょう。

『人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援』...【2018年改訂版】

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