2015年6月 Archives

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人事賃金コンサルタントとしての成功の秘訣を伝授。人事賃金コンサルを目指す人などにお薦め。

人事賃金コンサルタントになるための教科書8.JPGプロの人事賃金コンサルタントになるための教科書.jpg
プロの人事賃金コンサルタントになるための教科書』[日本法令]

 本書によれば、2014年頃から人事コンサルティングのニーズが再び高まっているとのこと。但し、今、企業が求めているのは、他社に追随する表面的な成果主義人事制度などではなく、将来に向けて新たな成果を創出していくための「社員が理解し、やりがいが持て、定着する」独自の人事制度であるとのことです。

 著者はこれまで「実際に運用できて十分に機能しえる人事制度」を目指してきたとのことで、本書では、著者の25年にわたる人事コンサルタントとしての実体験を基に、コンサルタントとしての基本的な心構えから、中小企業を中心とした人事制度・賃金設計の知識や手順、運用・企画提案の仕方から業務の進め方まで、広く、また重要ポイントを追って解説しています。

『プロの人事賃金コンサルタントになるための教科書』.JPG 特に第Ⅰ編「人事コンサルタントの基本」では、人事コンサルタントとしてのスタンスや企業との接点の場においてどのようなことに留意すべきかを、自らの経験に基づき余すところなく披露しており、人事コンサルタントとしての「成功の秘訣を伝授」という帯書きは決して大袈裟ではないように思いました。

 第Ⅱ編「人事コンサルティングの実行と手順」は人事コンサル、賃金コンサルの実務編であり、テキストとして著者のノウハウを丁寧に解説し、また、実際に活用しているコンサル資料も数多く添付する一方で、ここでも単なるテクニカルスキルの範疇に止まらず、制度に込められた意図や導入に際して留意すべき心構えなども併せて解説しています。

 そして第Ⅲ編「人事賃金コンサルタント(社外・社内)としてのスキルアップ」では、コンサルタントの役割とはを改めて問い直すとともに、コンサルタントの資質の磨き方、コンサルティングのきっかけづくりなどについて解説しています。個人的には、著者がその中で示している、従来の企画提案型のコンサルティングに対する新たなアドバイザリー(側面支援)型のコンサルティングというスタイルに関心を持ちました。

 全体を通して、全てのケースに同じことが当てはまるわけではないが、自らの経験上こうした方がうまくいくことが多かった―といった謙虚なスタンスの解説になっていて、一つの考えを読者に押しつけることをしないながらも、そのベースに四半世紀もの実地経験があるかと思うと、却って述べられていることに説得力が感じられました。

 人事賃金コンサルタントを目指すには格好の書であり、特に社会保険労務士などの開業者で、人事賃金コンサルを付加価値業務として行いたい人、或いは人事賃金コンサルを主体としてやったいきたいと考えている人にお薦めですが、その道に進んで暫くしてから振り返って本書を読むと、また更に得心する箇所が多くあるかもしれません。

 また、例えば賃金制度の解説部分などは、時代の流れに適合した制度の説明がしっかりなされているため、社会保険労務士に限らず、中小企業等の人事パーソンが読んでも参考になる部分は多いかと思います。更には、企業に勤務している社会保険労務士であっても必ずしも人事賃金制度の策定等に携わっているわけではないので、そうした人に賃金制度策定等に関心を持っていただき、3号業務を身近に感じるようになっていただく上でもお薦めできる本かと思います。

《読書MEMO》
●目次 :
第Ⅰ編 人事コンサルタントの基本
  はじめに/ マネジメントコンサルタントという仕事/ 人事コンサルタントとしてのスタンス ほか
第Ⅱ編 人事コンサルティングの実行と手順
  第1章 現状分析の手順とポイント
  第2章 基本人事制度の設計手順とポイント
  第3章 賃金設計
  第4章 人事評価制度設計の手順とポイント
  第5章 人事ビジョンに沿ったオリジナル評価制度の設計方法
第Ⅲ編 人事賃金コンサルタント(社外・社内)としてのスキルアップ
  コンサルタントの役割とは/ コンサルタントの資質の磨き方/ コンサルティングのきっかけづくり ほか
巻末資料 (16点)

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社会保険労務士の仕事と役割を丁寧に解説。

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労働・社会保障実務講義: 社会保険労務士の仕事と役割

支援講座.jpg 「社会保険労務士稲門会」編の、社会保険労務士の仕事と役割を解説した本で、早稲田大学で学部生向けに行われている支援講座「社会保険労務士実務概論」のテキストでもあります。「第Ⅰ部・労働法と人事労務管理の今日的課題」と「第Ⅱ部 社会保障制度の今日的課題」の2部構成、全14講から成り、第1講で、社会保険労務士とはどのような資格・士業なのかについて、社会保険労務士法を基本に、その役割と業務内容、社会的使命について述べています。

 第Ⅰ部の言わば「労働法編」の第2講では、労働法規の成立過程と日本の社会を形作ってきた特徴が概括的に述べられています。第3講から第7講は、労務・人事関係です。採用・募集、就業規則、賃金・労働時間等の労働条件に加え、雇用形態の多様化と人事労務管理について述べています。労働の意義とそこから派生する問題点を社会保険労務士ならではの労使双方からの視点により、実務に即した課題解決の指針を示しています。

 第Ⅱ部の言わば「社会保障編」の第8講では、社会保障関連法規の成立過程と日本の社会を形作ってきた特徴が概括的に述べられています。第9講からは、主に社会保障制度を形作る法律に関係する各論となり、第11講までに安全衛生・労災・雇用の各関連法規について触れ(セーフティーネットとしての広義の社会保障制度という捉え方で、ここでは労災保険や雇用保険が社会保障制度の一環として区分されている)、第12講と第13講では、医療保険・年金制度の問題点が学究的切り口から整理されています。

労働・社会保障実務講義4.jpg 社会保障制度の中心をなす諸法について、社会保険労務士の今後の活動の中で共に解決すべき課題を提起するとともに、読者に社会保険労務士の業務や実務を知ってもらうために、「コラム」として、各講の中では触れられなかった社会保険労務士の専門性の能力発揮例として、社会保険労務士が行うコンサルティング業務、個別労働紛争解決で特定社労士が果たす役割、賃金に関する考察といった個別的具体的なテーマについて述べています。

 「社会保険労務士稲門会」とは、早稲田大学校友会認定の職域稲門会(早稲田大学卒業生の会)であり、会員相互の親睦と情報交換を図り、定期的な研修会等を通じて社会保険労務士業務の発展に寄与している全国組織です。個人的には自分が関与している組織でもあるため、そこが編纂した本の"評者"としては不適格かもしれませんが、普及・販促に協力する立場からも、星5つとさせていただきました。

 手前味噌になりますが、社会保険労務士資格を取ったばかりの人やこれからこの資格を目指そうとしている人には、多くの示唆と何らかの指針を与えてくれる本ではあるかと思います。実際、社労士稲門会が早稲田大学で毎年、士業の業務の内容や社会的役割を学生に伝えるために行っている支援講座のテキストとなっている本でもあります。執筆陣の熱い思いを通して、社会保険労務士の社会的使命を考えるヒントとなれば幸いです。

労働・社会保障実務講義L.jpg

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ジャンルを幅広く取って簡潔にポイントを解説。極々スッキリしたスタイル。

明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む.jpg明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む3.jpg
明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む』(2014/04 ティー・オーエンタテインメント)

 ビジネス書の分析・解説がほぼメインの仕事になっていると思われる著者が、「明日から使える世界のビジネス書」を99冊セレクトし、あらすじと名著である理由を解説したもので、今回は海外のビジネス書に限定して、(1)ビジネス理論 Theory、(2)自己啓発 Self-Help、(3)経営者・マネジメント Management、(4)哲学 Philosophy、(5)古典中の古典 Classics、(6)投資 Investment の6つのジャンルに分類して取り上げ解説しています。

明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む2.jpg 見開き2ページ毎に各1冊紹介する形で、左ページにその本の「著者略歴」の紹介と「この本を一言でいうと」どういう本なのか、また「この本が名著とされる理由」、更にはわかりやすさ度、有名度、お役立ち度、エンタメ度をそれぞれ★で5段階評価しています。

 そして右ページにその本のポイントを2つに絞って解説をしていますが、確かにスッキリしたスタイルではあるものの、そうなるとあまりに簡単にしか本の内容の紹介ができないのではないかという気もしますが、著者の考え方は、「本書ではざっくり言って、1冊の本に書かれている真実の量は1%程度だと結論づけている。つまり200ページの本であれば、2ページの自分にとって役立つ知識が吸収されれば十分なのだ」「したがってこの本では、筆者が厳選した"100冊のビジネス書"をジャンル分けしたうえで、内容を1%で要約し、"本書から得るべき真実"を抽出した」(水野俊哉,ITmediaより)とのことです。

 ナルホド、言い得ているなあと思われる面もあるし、何ページにもわたって解説したところで、結局のところ、元の本そのものに当たってみないと分からない(体感できない)エッセンスのようなものは残るものでしょう。短く纏める方が却って難しい場合もあるでしょうし、著者(水野氏)の視点での"纏め"ということで読めば(誰が纏めても"その人の纏め方"にしかならないわけだが)これはこれでいいのではないでしょうか(タイトルにある「あらすじ」とまではいっていない気もするが)。「この本がどうしてこのジャンル?」というのもありますが、ビジネス書って元々読み手によってどのジャンルに属するか違ってくる面もあるかもしれず、その点も含めて、著者の一視点と見ればいいのでは。

 著者のデビュー作が『成功本50冊「勝ち抜け」案内』('09年/光文社ペーパーバックスBusiness)であることからも窺えるように、著者はこれまでビジネス書の中でも「成功本」的な本を数多く取り上げているようです。元マイクロソフト日本法人社長の成毛眞氏が『本は10冊同時に読め!』('08年/知的生きかた文庫)の中で、「家にある成功者うんぬんといった本を捨てるべきである」としていますが、個人的にむしろそっちの考え方に近く、従って著者の選評本をまともに読むのは今回が初めてですが、この本に限れば、ジャンルを幅広く取っているため「成功本」指向はそれほど鼻につきませんでした。

 「哲学」や「古典中の古典」といったジャンルがあり、『銃・病原菌・鉄』や『奇跡の脳』『利己的な遺伝子』といった本なども取り上げられているのは興味深いですが、所謂「教養系」となると、成毛眞氏の編による『ノンフィクションはこれを読め!―HONZが選んだ150冊』('12年/中央公論新社)もそうですが、ライフネット生命の会長兼CEOの出口治明氏の『ビジネスに効く最強の「読書」―本当の教養が身につく108冊』('14年/日経BP社)など、筋金入りの読書人による更に"上手(うわて)"の(よりハイブローな)読書案内があるので、そうした本を指向する人はそちらの方がいいと思います。

 本書は本書で、これまでの著者の本との比較ではそう悪くないのではと思います。と言っても、これまで著者の本は書店の立ち読みでしか読んでいないのですが...(随分といっぱい書いてるなあ)。

《読書MEMO》
●目次と内容
1 ビジネス理論 Theory
・『ビジネスモデル・ジェネレーション』アレックス・オスターワルダー/イヴ・ピニュール
モチベーション3.0.bmp・『モチベーション3.0』ダニエル・ピンク
・『ザ・プロフィット』エイドリアン・スライウォツキー
・『ハイパワー・マーケティング』ジェイ・エイブラハム
・『MAKERS』クリス・アンダーソン
ビル・ゲイツの面接試験.jpg・『ビル・ゲイツの面接試験』ウィリアム・パウンドストーン
 ほか
2 自己啓発 Self-Help
・『ハーバードの人生を変える授業』タル・ベン・シャハー
・『一瞬で「自分の夢」を実現する方法』アンソニー・ロビンズ
・『スタンフォードの自分を変える教室』ケリー・マクゴニガル
 ほか
3 経営者・マネジメント Management
・『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝』レイ・A・クロック/ロバート アンダーソン
・『スティーブ・ジョブズ』ウォルター・アイザックソン
・『ストレスフリーの整理術』デビッド・アレン
LEAN IN(リーン・イン)3.jpg・『LEAN IN(リーン・イン)』シェリル・サンドバーグ
・『フェイスブック 若き天才の野望』デビッド・カークパトリック
・『Google誕生』デビッド・ヴァイス/マーク・マルシード
 ほか
4 哲学 Philosophy
・『予想どおりに不合理』ダン・アリエリー
・『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイアモンド
・『これからの「正義」の話をしよう』マイケル・サンデル
EQリーダーシップ2.jpg・『EQ リーダーシップ』ダニエル・ゴールマン
フリーエージェント社会の到来  sin.jpg・『フリーエージェント社会の到来』ダニエル・ピンク
ワーク・シフト ―00_.jpg・『ワーク・シフト』リンダ・グラットン
奇跡の脳.jpg・『奇跡の脳』ジル・ボルト・テイラー
・『なぜ選ぶたびに後悔するのか』バリー・シュワルツ
・『新ネットワーク思考』アルバート・ラズロ・バラバシ
・『ワープする宇宙』リサ・ランドール
 ほか 
5 古典中の古典 Classics
・『思考は現実化する』ナポレオン・ヒル
・『道は開ける』D・カーネギー
・『自助論』S・スマイルズ
・『7つの習慣』スティーブン・R・コビー
ドラッカーマネジメント.jpg・『マネジメント[エッセンシャル版]』ピーター・F・ドラッカー
フロー体験 喜びの現象学1.jpg・『フロー体験 喜びの現象学』ミハイ・チクセントミハイ
・『人を動かす』D・カーネギー
ピーターの法則.jpg・『ピーターの法則』ローレンス・J・ピーター/レイモンド・ハル
 ほか
6 投資 Investment
・『ブラック・スワン』ナシーム・ニコラス・タレブ
・『となりの億万長者〔新版〕』トマス・J・スタンリー/ウィリアム・D・ダンコ
 ほか
全99冊

  

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「●日経プレミアシリーズ」の インデックッスへ

シニアの問題を、本人の意識・心構えの問題にすり替えてはならないというのが趣旨だが...。

劣化するシニア社員2.JPG劣化するシニア社員4.JPG  「新型うつ」な人々.jpg
劣化するシニア社員 (日経プレミアシリーズ)』 『「新型うつ」な人々 (日経プレミアシリーズ)

 『「新型うつ」な人々』('11年/日経プレミアシリーズ)などの著書のある産業カウンセラーによる本書は、仕事を選り好む、マネジメントに口を出す、「あと数年だから」と無気力に陥る、過去の経験や職位を振りかざす、「もう年だから」を理由に努力をしない等々、シニア社員の"問題児化"を六つのタイプに分類し、筆者が遭遇した実例を交えながら、シニア問題の根本要因に迫っています。

 第1章「『縦横無尽』に振る舞うシニア社員たち」で、その6タイプを示し、ケースを挙げて典型的な口癖などと示すとともに、そのケースの最後に周囲の声が付されており、それらは以下の通りです。
 ①自分の不遇への共感を周囲に求める「嘆きタイプ」
 「その仕事はちょっとね...」
  そんな人には「そんなに仕事をしたくなければ辞めてしまえ!」と叫びたくなる。
 ②年下の社員に対する依存が止まらない「おんぶに抱っこタイプ」
 「ねえねえ、パソコン教えて」
  「私はあなたのパソコンインストラクターではない!」と叫びたくなって、結局「そんなに働きたくないなら、早く辞めてよ!」と叫びたい。
 ③自分で選んだ仕事しかしない「わが道を行くタイプ
 「1人でできる仕事がしたい」
  「いい加減、チームで働くことを覚えろ!」と叫びたい。
 ④職場を地域のサークルと勘違い「ご隠居タイプ」
 「その指輪、彼氏のプレゼント?」
  「頼むから、1日も早く全員辞めてほしい。その仕事は無償で引き受けてやる!」と叫びたい。
 ⑤安請け合いが最悪のトラブルを生む「無責任タイプ」
 「まあ、なんとかしますよ」
  「1日も早く、辞めてくれ!」と叫びたい。
 ⑥権限を超越し暴走する「勘違いやり過ぎタイプ」
 「俺が若手にビシッと言ってやる」
  「あなたにそんなことは期待していない、自分の身分をわきまえろ!」と叫びたい。
う~ん、これを読んで、確かにこういうシニアはいるなあと思った人は多いのでは。

 第2章「なぜ『問題児』化するのか」では、タイプごとに本人の抱える意識面での背景要因を分析していますが、これ読むと、本人の人格的要素が占める割合が大きいような...。

 ここまで本人責任論っぽいですが、第3章「ほんとうは本人が苦しい」では一転してシニア本人の側に立ち、上司サイドに問題があって職場適応でつまずいたり、更に職場適応への失敗からメンタル不調に陥ったりするケースなどが紹介されています。

 そして、第4章「その職場環境がやる気を奪う」では、無視できない環境・状況面での問題を取り上げ、第5章「周囲の社員の危険な思い込み」では、周囲の様々な思い込みが状況をますます悪化させることに繋がる場合があることを示唆しています。

 更に「実践編」として、シニア社員を受け入れる側からとシニア社員本人からのアプローチを示し(チェックリストのようなもの)、終章「『「意味』があれば仕事はつらくない」で、「価値観の創造」ということについて述べています。

 全体を通して、シニア社員の職場で問題になるケースや本人が辛い思いを抱えているケースを具体的に示し、環境・状況面の問題性、本人の意識の問題性、周囲の意識の問題性など幅広い観点から分析することで、シニアの問題を、本人の意識・心構えの問題にすり替えて考えてはならないことを訴えています。周囲が「いい大人なのだから、周囲にとけ込む努力をしてほしい」「わからないときは、本人から教えを請うべきである」と明らかな上から目線から捉えているとしたら、それはシニア社員を完全に拒絶する意識とも言え、"厄介者"発想に根ざして、はじめから配慮するつもりがないのなら、摩擦が起きてくるのも当然だというのは穿った指摘でした。

 但し、第1章「『縦横無尽』に振る舞うシニア社員たち」が全体の中で相対的にインパクトあり過ぎて(マンガ的であり過ぎて?)、"あるある本"みたいな(うっ憤解消本みたいな)印象が強くなってしまった感じもします(タイトルもさることながら、帯にも「"問題シニア"の驚くべき生態とは?」とあるくらいだからなあ)。それに比べると、後半は、産業カウンセラーという立場からなのか、企業内外の制度や仕組みには触れず、ヒューマンスキルでの対応のみで事を解決しようとしている分、ちょっと弱かったように思われました。

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リーダーシップに対する「思い込み」を解く。分かり易さ、理論的なバックボーン、現場のシズル感がいい。

マネジャーになってしまったら読む本.JPGマネジャーになってしまったら読む本 2.jpg

 
 

永禮弘之 氏.jpg 永禮 弘之 氏 (エレクセ・パートナーズ)
マネジャーになってしまったら読む本―リーダーシップに自信が持てる7つの方法

 本書Part1第1章によれば、最近のマネジャー研修やリーダーシップ研修などで、参加者の中から、そもそもリーダーシップに興味が無いとか、元々"損な役回りである"マネジャーにはなりたくなかったとかいう声が聞かれることがあるとのことですが、これは個人的にも少なからず感じます。続く第2章では、こうした傾向は、日本人のマネジャーのリーダーシップに対する自信の無さからくるとし、その根底にリーダーシップへの「思い込み」があるとしています。

 Part2(第3章から第9章)では、新任マネジャーがよく抱く「リーダーシップに対する7つの思い込み」(1.自分にはリーダーシップがない、2.常に、部下には仕事で勝たなければならない、3.指導力が高くなければならない、4.人望を高めなければならない、5.リーダーシップのスキルやテクニックを身につけなければならない、6.自分を犠牲にしなければならない、7.自分の分身をつくらなければならない)が、リーダーシップへの過大な期待や要求につながり、多くの人の自信を失わせる原因となっていることを解き明かしています。

 Part3(第10章)では、自信を失う原因である「7つの思い込み」への対処方法を示すことで、自ら考え、行動するリーダーとして自信が湧いてくるよう読者を導くとともに、エピローグでは、更にリーダーとして成長していくための4つのステージ(セルフ・リーダーシップ → ワン・トウ・ワン・リーダーシップ → チーム・リーダーシップ → オーガニゼーション・リーダーシップ →ソサエティ・リーダーシップ )を示しています。

 労政時報の人事ポータル「ジンジュール」で著者の人材育成、教育・研修に関する連載を読み、本書を思い出しました。著者は数多くのセミナーやマネジャー・リーダーシップ研修をこなしており、個人的にも著者の人事担当者向けの企業内研修企画作成セミナーを聴いたことがありますが、双方向性の講義とワークショップ方式のグールプ作業から成り、たいへん分かり易く、また、身に付くものでした。

 こうした研修主体の仕事をしている所謂「セミナー講師型コンサルタント」が本を書くと、ともすると本がセミナーの内容そのものになってしまって、しかも "企業秘密"に属するメソッドの中核の部分は明かさないといった研修誘引型の(結果としてスカスカの内容の)本になりがちであるのに対し、本書は「指南書」としてきちんと纏まっているうえに、各章末のコラムなどでリーダーシップ理論などを紹介していることから窺えるように、理論的なバックボーンもしっかりしています。そのうえで分かり易くか書かれているので、新任マネジャーには是非ともお薦めですが、人事パーソンが読んでも得られるものは多分にあるのではないでしょうか。

 これは著者のセミナーや研修についても言えることですが、理論的なバックボーンをしっかり持ちながらも、多くのマネジャーや人事担当者のナマの声をしっかり吸い上げ反映させていてるシズル感があり、読み易い、分かり易いというのが共通する特長でしょうか。セミナー講師だけでなく、実際に人材育成や組織風土改革に関わっているコンサルタントであることがよく分かります。

 また、世の流れとして、リーダーシップとマネジメントを分けて考える風潮がありますが、本書では最初から「リーダーシップに対する思い込み」がマネジャーの自信を失わせているとして、マネジャーに欠かせないものとしてのリーダーシップという捉え方になっています。やみくもにスキルや知識を身につけても、他人に使われる器用な道具にはなれても、自分の人生の主役にはなれない―という著者の考えなどと併せて、個人的にはしっくりくるスタンスでした。刊行されてから何度か読み返しているため、却って取り上げるのが遅くなりましたが、五つ星です。

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就活後ろ倒しの影響を企業の対応までを含めて概観するのにいい。

こう変わる! 新卒採用の実務.jpgこう変わる! 新卒採用の実務 (労政時報選書)』(2014/12 労務行政)

こう変わる! 新卒採用の実務- 新卒採用の実務 -2.JPG 先に取り上げた『新卒採用の実務』(2014/11 日経文庫)のところでも触れた1冊。 2016年新卒採用(2015年度の大学4年生)から、採用広報の開始が3月1日(従来は12月1日)、採用選考の開始が8月1日(同4月1日)に、それぞれ広報が3ヵ月、選考が4ヵ月後ろ倒しされることを受け、予想される影響やそのことへの企業の対応にフォーカスして編集されています。

 「総論解説」「各論解説」「最新調査にみる採用の現状とこれから展望」「企業事例」「採用関連実務Q&A」の5部構成で、「総論解説」はスケジュール変更の影響についてHRプロ㈱の寺澤康介氏が、新卒採用の今後の在り方についてリクルートワークス研究所の大久保幸夫氏が寄稿しています。

 個人的には寺澤氏が、経団連の「指針」は縛りが緩いルールであって、8月1日「解禁」前に6割以上の企業が選考を始めるだろうとし、インターンシップを採用に繋げる企業が増えるだろうとしているのが関心を引きました。

 こうした見通しは既に類書などでも言われていますが、自社のアンケートでもって、「指針」が守られると思っている企業が4割以下なのに対し、「指針」が守られないと思っている企業が6割近くあると示しているのは説得力があるように思われました(「どちらとも言えない」と答えた企業の中にも「今も守られていない」という声があったとのこと)。

 「各論解説」ではインターンシップやリクルーター制度、内定者フォロー、キャリアセンターとの連携などについて各分野の専門家や実務家が解説し、「最新調査」としては調査会社による調査結に加え、労務行政研究所オリジナルで企業の動向や人事担当者のホンネを探る調査を載せています。ここでも「早めに広報活動や学生の接触、選考を行う」32.2%、「指針に示された時期にとらわれず、独自のスケジュールで活動する」27.6%と、両方を合わせると約6割になるという結果が出ています。

先進の「企業事例」としてはネスレ日本、タカラトミー、ワークスアプリケーションズなど5社の採用の実情を紹介しています。ワークスアプリケーションズの「入社パス」などはすっかり有名になったように思いますが、その他にも各社さまざまな工夫をしていることが窺えます。

 「実務Q&A」では、「インターンシップの学生に報酬を払えば労働者とみなされるか」など5つのQ&Aが付されています。

 今回の「就活後ろ倒し」は、インターンシップが選考の場と化すなど、採用活動のアンダーグランド化を招く恐れがあるとして評判はあまりよくないようですが、そうは言っても、大学および学生、並びに企業は、も対応をしなければならないのが現実でしょう。本書はやや総花的な印象もありますが、就活後ろ倒しの影響だけでなく、企業の対応までを含めて概観するのにはちょうど良く、「調査結果」と併せて解説することでより説得力のあるものになっていると思いました。

 先に挙げた寺澤氏は、8月1日の「解禁」までのんびり構えて、出遅れる学生が増えると警告する一方、企業に対し、自社のスタンスを決めて採用戦略を立て柔軟に動ける準備をするようアドバイスしていますが、尤もだと思いました。

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非正規社員を含めた自社の賃金制度の将来的な在り方を考えていくうえでの指標になるか。

『これからの賃金』.JPG遠藤公嗣『これからの賃金』.jpgこれからの賃金』(2014/10 旬報社)

 これからの日本の賃金には、日本で働くすべての労働者の均等処遇をめざす賃金制度が必要であり、その賃金制度は「範囲レート職務給」が中心になるはずであって、それに必要な職務評価は「同一価値労働同一賃金」の考え方で実施すべきであるというのが本書の主張です。

 著者の言う「日本で働くすべての労働者」とは、正規労働者だけでなく非正規労働者も、男性労働者だけでなく女性労働者も、日本人労働者だけでなく外国人労働者も含むことを意図しています。

 第1章「日本企業における賃金の動向」では、そのことを象徴するように、非正規労働者の賃金制度から考察を始めています。また、この第1章では、正規のホワイトカラーの労働者の賃金改革の歩みを振り返るに際して、「成果主義」と「コンピテンシー」の2つを"言説"として捉え、その実態はどうであったかを述べるとともに、「役割給」が普及した経緯を分析し、その特徴として「ミッション」の概念を重視していることを指摘している点は、実務者にとってもたいへん興味あるものではないでしょうか

 第2章「賃金形態の分類を考える」では、最近の賃金制度改革の方向性を議論するための前提として、賃金形態を理論的に分類していますが、雇用慣行並びにそれに対応する賃金形態を「属人基準」と「職務基準」に大別し、さらに「属人基準賃金」を「年功給」と「職能給」に(「職能給」を「職務基準」ではなく「属人基準」としている点に注目)、「職務基準賃金」を「職務価値給」(職務給、職務価値給の労働協約賃金、時間単位給)と「職務成果給」(個人歩合給・個人出来高給、集団能率給、時間割増給)に分類したうえで、現在の日本の賃金は、全体として、「職務価値給」の1つである「範囲レート職務給」に移行しつつあるとしています。

 この第2章では、「成果主義賃金」「コンピテンシー」の流行が終わったと捉え、正規ホワイトカラー労働者については「役割給」が主流となったとしていますが、その「役割給」というものを「範囲レート職務給」に近いとしながらも、「ミッション」概念が付与されているという意味で、「範囲レート職務給」まがいのものであるとしているのが興味深かったです。

 第3章「賃金制度改革の背景」では、賃金制度改革が主張される背景として、「日本的雇用慣行」と「男性稼ぎ主型家族」の組み合わせた従来型の社会システムである「1960年代型日本システム」が崩壊しつつあることを指摘しています。そうした旧来のシステムが崩壊したことの原因と労働者への影響を探る中で、正規も非正規も階層化が進んでいることを指摘している点が興味深かったです。

これからの賃金6.JPG 第4章は本書の結論部分であり、1960年代型日本システムに代わる新しい社会システムが「職務基準雇用慣行」と「多様な家族構造」の組み合わせであること、冒頭に述べたとおり、そこで適用されるべき賃金制度は「範囲レート職務給」であり、その社会的規制は「同一価値労働同一賃金」の考え方の職務評価であることを主張しています。

 ホワイトカラーエグゼンプションや地域限定正社員、有期雇用社員の無期転換など、多様な働き方の推進が議論されている昨今、また、「日本的雇用慣行」と「男性稼ぎ主型家族」の組み合わせである「1960年代型日本システム」の崩壊が進む中で、著者が提唱する「同一価値労働同一賃金」に基づく職務評価をベースとした職務基準賃金という方向性は、現状における正社員と有期非正規社員の賃金形態や賃金水準の大きなギャップを埋めていく上でも、概念的な示唆を含むものと思われ、非正規社員を含めた自社の賃金制度の将来的な在り方を考えていくうえでも一つの指標になるかもしれません。お薦めです。

「●マネジメント」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2205】 ピーター・M・センゲ 『学習する組織』(『最強組織の法則』)

プロフェッショナル・マネジャーの資質とやるべきことを実証的に説いたこの上ない指南書。

プロフェッショナルマネジャー ハロルド ジェニーン.jpg プロフェッショナルマネジャー ハロルド ジェニーン 2.jpg       ハロルド・ジェニーン.png Harold Geneen(1910-1997)
プロフェッショナル マネジャー―わが実績の経営』(1985/11 早川書房)田中融二:訳
プロフェッショナルマネジャー』(2004/05 プレジデント社)

ハロルド・ジェニーン2.jpg 本書は、かつての巨大コングロマリット米ITT(International Telephone and Telegraph)の社長兼CEO(最高経営責任者)として「58四半期連続増益」を遂げたハロルド・ジェニーン(Harold Sydney Geneen、1910年1月22日 - 1997年11月21日/享年87)の経営論です(原題: Managing、1984,Garden City,NY)。

 ハロルド・ジェニーンは1910年に米国生まれ、父は実業家でしたが、土地投機で破産、16歳からニューヨーク証券取引所のボーイとして働きながらNY大学で会計を学び、'50年にエレクトロニクスの会社レイセオン社の副社長となり、会社業績を飛躍的に伸ばした実績で'59年にITT社長に就任、在任中に利益を7.6億ドルから170億ドルまで、14年半連続増益というアメリカ企業史上空前の実績を上げ(これが邦訳サブタイトル「58四半期連続増益の男」に繋がる)、「経営の鬼神」とも言われたそうです。本書は1985年早川書房刊行の邦訳を復刊したもので、本邦初訳時から本書を経営の教科書とする柳井正ファーストリテイリング会長兼CEOが解説を加えています。

 第1章「経営に関するセオリーG」では、当時の日本的経営を礼賛する風潮や「セオリーZ」の流行を引き合いに、ビジネスはもちろん、他のどんなものでも、既成のセオリーなどで経営できるものではないとしています(Gはジェニーンの頭文字であり、"ジェニーン理論"、つまり"セオリー俺"という意味である)。

 第2章「経営の秘訣」では、《三行の経営論》を説いていますが、それは、本を読む時は、初めから終わりへと読むのに対し、ビジネスの経営はそれとは逆であり、終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだというものです。

 第3章「経験と金銭的報酬」では、ビジネスの世界では、誰もが2通りの通貨―金銭と経験―で報酬が支払われるが、金は後回しにして、まずは経験を取れとし、さらに、ビジネスで成功したかったら上位20%のグループに入るこよが必要だとしています(上位3%とは言っていない点がミソ)。この章は、ジェニーンがITTに入るまでのキャリアの振り返りにもなっていて、非常に面白く読めます。

 第4章「二つの組織」では、どの会社にも二つの組織があり、一つは組織図に書き表すことができる公式のもの、そしてもう一つは、その会社に所属する男女の、日常の血の通った関係であるとしています。この章は、ジェニーンがITTに来てから何をやったかが書かれています(これらの章に限らず、全体として実証的に書かれている点が、経営学者ではなく経営者の視点から書かれた本書の特長でもある)。

 第5章「経営者の条件」では、「経営者は経営しなくてはならぬ!」ということを繰り返し強調しています。「しなくてはならぬ」とは、それをやり遂げなくてはならぬという、経営者としての信条を信条たらしめている能動的な言葉であるとしています。

 第6章「リーダーシップ」では、リーダーシップは伝授できるものではなく、各自が自ら学ぶものであって、ビジネス・スクールで編み出された最新の経営方式を適用するだけでは経営はできず、なぜならば、経営は人間相手の仕事であるからだとしています。

 第7章「エグゼクティブの机」では、机を見れば人がわかるとし、マネジメントに属する人間にとって、当然なすべき程度と水準の仕事をしながら、同時に机の上をきれいにしておくことなど、実際には不可能であるとしています。

 第8章「最悪の病―エゴチズム―」では、現役のビジネス・エグゼクティブを侵す最悪の病は、アルコール依存症ではなくエゴチズムであるとし、自分の成功を盾にエゴチズムを撒き散らす社員、全体最適を考えず、自己最適に走る社員をどうすべきかを論じています。

 第9章「数字が意味するもの」では、数字が強いる苦行は自由への過程であるとし、数字自体は何をすべきか教えてくれず、企業経営において肝要なのは、そうした数字の背後で起こっていることを突き止めることであるとしています。

 第10章「買収と成長」では、自らが行ってきたM&Aを振り返り、難点は皆が同じ戦略を思いつくことであり、その結果、巨大市場をめぐって、トップメーカー同士で争うことになるのだとしています。そして、そうした中、投資に対するリターンが最も大きくなる選択は何かを、自分の目と頭で見極めることが大事だとしています。

 第11章「起業家精神」では、起業家精神は大きな公開会社の哲学とは相反するものであり、大企業を経営する人々は大方、何よりもまず過ちを(たとえ小さな過ちでも)犯さないように心掛けるものであるとしています。「起業家精神が大事だ」とか「シリコンバレーに学べ」などとは決して言わないところに、ジェニーンの"経営の個性"が感じられます。

 第12章「取締役会」では、勤勉な取締役会は、株主のために、その会社のマネジメントの業績達成の基準をどこに置くか、去年または今年、会社がどれだけ収益を(上げたかではなく)上げるべきであったかという基本問題に取り組まなければならないとしています。

 第13章「気になること―結びとして―」では、良い経営の基本的要素は、情緒的な態度であり、マネジメントは生きている力であって、それは納得できる水準(その気があるなら高い水準)に達するよう物事をやり遂げる力であるとしています。

 第14章の「やろう!」は1ページに満たない終章ですが、実績のみが実在する―これがビジネスの不易の大原則であるとして、本書を締め括っています。

 経営は成果が全てであるという強烈なリアリズムに立脚しながら、そうした冷徹な経営哲学の根本に、人間への深い洞察があることが窺えます。

 部下の報告には「5つの事実」が含まれているとか、リーダーシップの発揮においては現場の間に「緊張感ある対等関係」を作ること鍵になるとか、部下の指導法に際しては「オレオレ社員」の台頭を許すなとか、後継者の育成法としては「社員FC制度」が究極の形である、などといった、リーダーシップや部下の指導・育成に関する示唆に富み、また、「本来の自分にないものの振りをするな」「事実と同じくらい重要なのは、事実を伝える人間の信頼度である」「組織の中の良い連中はマネジャーから質問されるのを待っている」といったマネジャーとしての気づきを促す指摘も数多く含まれています(個人的には、できるエグゼクティブの机は散らかっているというのが面白かった)。

 人事パーソンの視点で見るならば、マネジャーとしての資質とやるべきことは何か、それも、プロフェッショナルなマネジャーとしてのそれらは何かということを実証的に説いたこの上ない指南書であると言えるかと思います。

【2202】 ○ ダイヤモンド社 『世界で最も重要なビジネス書 (世界標準の知識 ザ・ビジネス)』 (2005/03 ダイヤモンド社)
【2701】 ○ 日本経済新聞社 (編) 『マネジメントの名著を読む』 (2015/01 日経文庫)

「●マネジメント」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1657】 望月 護 『ドラッカーの実践経営哲学
○経営思想家トップ50 ランクイン(ゲイリー・ハメル)

「一人ひとりの主体性と創造性を解放させ、個人と組織の持つ自己組織化能力を開花させていく」

経営の未来 マネジメントをイノベーションせよ.jpg経営の未来The Future of Management.jpg"The Future of Management"ゲイリー・ハメル.jpg Gary Hamel

 ロンドン・ビジネススクール客員教授で、シカゴを本拠地とする国際的なコンサルティング会社ストラテゴスの創設者であり、『コア・コンピタンス経営』などの著書で知られるゲイリー・ハメルの、その『コア・コンピタンス経営』と並ぶ世界的なベストセラーになった経営書です(原題: The Future of Management、2007)。

 第Ⅰ部「なぜ経営管理イノベーションが重要なのか」では、まず第1章で、経営管理は終わったのかと問いかけ、これからの変化の時代においてこそ経営管理イノベーションの重要性が増すことを説いています。第2章ではイノベーションには業務イノベーション、製品イノベーション、戦略イノベーション、経営管理イノベーションという種類があり、どのイノベーションもそれぞれ独自の形で成功に貢献するが、これらのイノベーションを上に行くほど価値創造と競争上の防御力が高くなる階層図で示すとしたら、経営管理イノベーションが一番上にくるとしています。第3章では、経営管理イノベーションの挑戦課題は、戦略変更のペースを劇的に加速させること、イノベーションをすべての社員の日常的な業務にすること、すべての社員が自分の最高の力を出す企業を築くことであるとしています。そしてこれらを実現しようとしたとき、「よりよく」「より早く」「より迅速に」「より安く」をめざしてきた近代経営管理では無理であり、経営管理そのもののイノベーションが重要になるとしています。

 第Ⅱ部「経営管理イノベーションの実行例」では、第4章で、目的で結ばれたコミュニティを築くことで社員の活力と参加意識が最も高い企業の一つとなったホールフーズ・マーケットの事例を、第5章で、上司はいないがリーダーは大勢いるという世界中で最も風変りで最も効率的な組織を築くことでイノベーションの民主化を実現したW.L.ゴア(ブランド名:ゴアテックス)の事例を、第6章で、他の何よりも適応力(レジリエンス)を重視する経営管理システムを構築することで、優位性を進化・持続させ続けてきたグーグルの事例を取り上げています。これら企業の共通点として、既成の経営管理の概念に捉われず、時には従来の常識を根底から覆すような独自の経営管理イノベーションを行っていること分かり、いずれも興味深い事例かと思われます。

 第Ⅲ部「経営の未来を思い描く」では、第7章で、いかにして前例の束縛から逃れ、従来の中核的な経営原理に反旗を翻すかを説き、第8章では、新しい経営原理をどのようにして見つけ実行に移していくかを説き、第9章では、新しい視点や見方を得るために「周縁から学ぶ」という考え方を提起しています。

 第Ⅳ部「経営の未来を築く」では、第10章で、経営管理プロセスの改革に取り組み経営管理イノベータ―になるためにはどうすればよいか、IBMの「新規事業機会(EBO)」育成事例を基に10の教訓を導き出し、更に最終第11章で、ウェブの進化に対応し、未来の適者となるためのマネジメント2.0という概念を提起しています。

 本書は、「一人ひとりの主体性と創造性を解放させ、個人と組織の持つ自己組織化能力を開花させていく」、そして「過去から未来を描くのではなく、未来から学び現在を築きあげていく」というのがこれからのマネジメントのあり方(イノベーションの方向性)であるということを、企業事例を掲げることで具体的なイメージとともに分かり易く伝えていて、人事パーソンにとっても示唆に富む啓発書であるように思います。

《読書MEMO》
●我々が過去半世紀の間に目にしてきた技術やライフスタイル、地政学の途方もない変化に比べると、経営管理の手法は亀のようにのろのろとしか発展してこなかったように感じられる。残っている中間管理職は、管理者が昔からやってきたことをそのままやっている。つまり、予算を作成し、作業を割り当て、業績を評価し、部下をおだててもっと成果を上げさせようとしているわけだ。(p3)
●経営管理を構成する要素
•目標を設定し、そこに到達するための計画を立てる。
•動機づけをし、努力の方向を一致させる。
•活動を調整・管理する。
•人材を開発・任命する。
•知識を蓄積・応用する。
•資源を蓄積・配分する。
•関係を構築・育成する。
•利害関係者の要求を、うまくバランスをとりながら満たす。(p22)
●第二に、多くの経営幹部が大胆な経営管理イノベーションが実際に可能であるとは思っていない。奇妙なことに、管理職は科学が長足の進歩を遂げることは当然のように思っているのに、経営管理の手法が進歩しないことは少しも気にしていないようだ。(p42)
●つまり、前例を破る経営管理イノベーションの可能性を最大にするために、重要で興味をそそり、本質的で賞賛に値する問題に取り組むべきなのだ。
1.あなたの会社がこの先直面することになる新しい課題は何か。
2.あたたの会社がうまくやれそうにない難しい両立課題は何か。
3.あなたの会社の理論と現実のギャップのうち、最大のものは何か。
4.あなたは何に憤りを感じているか。(p47)
●ほとんどの企業で、管理職の権限は、その人物が管理している資源と直接的な相関関連があり、資源を失うことは地位や影響力を失うことを意味する。そのうえ、個人の成功は通常その人物の事業部門やプロジェクトの業績だけで決まる。そのため、プログラム・マネージャーは「自分の」資本や人材を新しいプロジェクトに配分しようとする動きには―その新プロジェクトがどれほど魅力的あるかに関係なく―抵抗する。第二に、資源配分のプロセスは一般に新しいアイデアに不利になっている。既存事業の延長線上にあるプロジェクトはリターンを予想しやすいが、まったく新しいアイデアのリターンはいつだって計算を立てにくい。ところが大企業は、新しいアイデアの一つひとつを、それぞれ独立した投資とみなす傾向があり、そのため既存の活動をほんの少し拡大しただけのプロジェクトしか満たせないような高レベルの確実さを要求する。その一方で、既存事業を運営している幹部は、徐々に衰退しているビジネスモデルに大金を注ぎ込とき、あるいはすでに収益が減少しつつある活動に過度に資金を投入するとき、その戦略的リスクを弁明するよう求められることはめったにないのである。(p57)
●イノベーションを阻む真のブレーキは、古いメンタルモデルの足かせなのだ。長年その会社に勤めている幹部は、概して既存の戦略に強い思い入れを持っている。その会社の創業者ともなると、なおさらだ。多くの起業家があまのじゃくとしてスタートするのだが、成功はともすると彼らを、唯一の真の信仰を守ろうとする枢機卿に変えてしまう。(p66)
●肩書に頼って物事を進めることに慣れているリーダーは、ゴアのモデルを羨望だけでなく、それに劣らぬ大きな恐怖をもって眺めることだろう。従来どおりの考え方をしている管理職は、権力が地位から切り離されている組織という現実を前にすると、無理からぬことではあるが、あわてふためく。そのような組織では、より上の階層にいるというだけで決定を押し通すことはできないし、自分が命令を下せる「直属の部下」もいない。その人に従いたいと思う人間が誰もいなければ、その人の権力はまたたく間に消えうせる。おまけに、資格や知的優位が立派な肩書という栄誉で認められることもない。(p121)
●彼らの論理は単純明快だ。Aレベルの人間はAレベルの人間と、つまり自分の思考を刺激し、自分の学習を加速してくれる優秀な同僚と働きたがる。だが、Bレベルの人間は、Aクラスの人間に脅威を感じるので、ひとたび入社したら、自分と同程度の凡庸な同僚を採用する傾向がある。さらに悪いことに、自信の面で若干問題のあるBクラスの社員は、自信がなくて誰の意見にも反対できない℃クラスの社員を採用することさえある。凡庸な社員が多くなると、本当に非凡な連中を引き寄せたり引き止めたりすることは難しくなる。そして、いつのまにか社員の質の低下という流れが反転不可能になっている、というわけだ。(p136)
●小規模なチームは、グーグルを和気あいあいとした企業に―膨れ上がった官僚型組織ではなく新規企業のように―感じさせる働きもしている。大規模なチームでは、個人の抜きん出た貢献がえてして上司の手柄にされたり、まぬけな同僚によって帳消しにされたりする。グーグルの小規模なチームは、個人の努力とその人の業績の密接なつながりを維持するのに役立っているのである。(p142)
●実をいうと、「エンプロイー(従業員)」という概念は近代になって生み出されたもので、時代を超越した社会慣行ではない。強い意志を持つ人間を従順な従業員に変えるために、二十世紀初頭にどれほど大規模な努力がなされ、それがどれほど成功したかを見ると、マルクス主義者でなくてもぞっとさせられる。近代工業化社会の職場が求めるものを満たすためには、人間の習慣や価値観を徹底的に作り変える必要があった。生産物ではなく、時間を売ること、仕事のペースを時計に合わせること、厳密に定められた間隔で食事をし、睡眠をとること、同じ単純作業を一日中際限なく繰り返すこと―これらのどれ一つとして人間の自然な本能ではなかった(もちろん、今もそうではない。)したがって、「従業員」という概念が―また、近代経営管理の教義の他のどの概念であれ―永遠の真実という揺るぎないものに根ざしていると思い込むのは危険である。(p163)
●つまり、次の四つの条件が満たされていれば、トップダウンの規律はあまり必要ないのである。
1.現場の社員が結果に責任を負わされている。
2.社員がリアルタイムの業績データを入手できる。
3.業績に影響を及ぼす主要変数について社員が決定権を持っている。
4.結果、報酬、評価の間に密接な関連がある。(p172)
●企業においても同じことが言える。新しいアイデアは古いアイデアを少しばかり拡大したアイデアと同じ間接費を負担することはできないし、同じリスク・ハードルを満たすことこともできない。また同じ短い期間で投下資本を回収することもできない。この点を認識していない経営管理システムや間接費配分ルールは、イノベーションを抑圧することになる。これに劣らず重要な点として、最先端のアイデアに取り組んでいる人たちは、同じものをたくさん生み出すことを担っている人たちと日々触れ合う必要があり、後者もまた前者と日々触れ合う必要がある。都市の場合と同様、新しいものや奇抜なものが、時の試練を経たものや、まともなものと隣り合っていれば、誰もが得をするのである。(p228)

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「ストレスチェック制度」と不調者の早期発見、職場運営、応用的対応の解説。

管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント.jpg管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援20.JPG人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援~リスクを最小化するためのルールとステップ~(労政時報選書)

 産業医であり、企業におけるメンタルヘルスに関する分かり易い解説で定評のある著者による本。

 以前の同著者の著書『人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援―リスクを最小化するためのルールとステップ』('12年/労政時報選書)では、メンタルヘルスの復職支援を中心に、人事労務担当者をナビゲーションするという意味で、ルールやステップの実務パッケージを「メンタルヘルス・ナビ」と呼び、その4つのステップとして、1.対応ルール策定、2.管理職研修、3.産業医の役割決め、4.不調者への対応ルールの適用・運用の順で解説をしていました。

 今回は、2014年の労働安全衛生法の改正により「ストレスチェック制度」が企業に義務付けられたことを受けて(実施は2015年12月から)、管理職向けに、第1章でその「ストレスチェック」の概要を解説するとともに、第2章で「不調者への対応と早期発見のコツ」について、第3章で「職場ストレスを最小化する職場運営」について、第4章で「生産性向上とリスク管理に役立つメンタルヘルス対応(応用編)」について解説しています。

 このように前著同様に全体を4つのステップに分け、尚且つ管理職向けということで、より分かり易くなっているだけでなく、単なるメンタルヘルスの解説本ではなく、冒頭の著者自身の定義にもあるように、「職場のストレスやメンタルヘルス不調を考えながら、マネジメントやリーダーシップを強化するための本である」となっています。

 とりわけ著者が主張しているのは、メンタルヘルス不調社員に対して「思考停止」してしまうのではなく、問題を要素(職場に発生している問題点、疾病性、会社責任、職務適性など)に切り分けて実務的に対応していくべきであるという方法論です。そして、事例ごとにリスクと損失を最小化するゴール・落としどころを設定していくことを求めています。そうした意味では、管理職に限らず、人事労務担当者や経営者が読んでも啓発される要素は多いかと思います。

 「ストレスチェック」においてどのような調査票を用いるかは事業者が自ら選択可能ですが、国では標準的な調査票として、本書でも第1章でその中身について解説されている「職業性ストレス簡易調査票(57項目) 」を推奨しています。この「ストレスチェック」については各章末にもコラムがありますが、巻末のコラムで著者が指摘しているように、企業に実施は義務づけられるものの、それを受けるかどうかは労働者の自由であり、また、対応する専門家の不足から、50人未満の事業場では当面は、その実施は努力義務に留まることとなっています。プライバシー等との関係で難しい問題はあるかと思われますが、受けるのは労働者の任意みたいな捉えれ方になってしまうと、この辺りでの実効性はどうなのかという懸念もあります。

 また、ストレスチェックの結果の通知を受けた労働者のうち、高ストレス者として面接指導が必要と評価された労働者から申出があったときは、医師による面接指導を行うことが事業者の義務になりますが、これなどは、先の労働安全衛生法の改正で定められた長時間労働者に対する「医師による面接指導」(第66条の8)が、1週 40時間超の労働時間が1カ月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者に対しては、その要件に該当する労働者からの申出があったときは、面接指導を実施しなければならないとされているのとパラレルであって、何れも労働者からの申し出がない場合は義務とされていない(長時間労働者に対する「医師による面接指導の場合は"努力義務")というのが、ともすると"ザル法"となってしまう恐れもあるのではないかと、個人的には危惧するところです。

 何れにせよ、制度の施行を控えて管理職向けにこうした本が出ているくらいですから、人事労務担当者はそれ以前にその内容を把握し、まず自らを啓発すると共に、具体的な施策についての見通しをイメージしておくべきでしょう。

『人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援』...【2018年改訂版】

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