2015年4月 Archives

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「1」ほどインパクトはないが、より深く問題に斬り込み、重層的に考察を進めている「2」。

ブラック企業2.jpgブラック企業2 文春新書.jpg   ワタミの初任給はなぜ日銀より高いのか.jpg
ブラック企業2 「虐待型管理」の真相 (文春新書)』  渡辺 輝人 著『ワタミの初任給はなぜ日銀より高いのか? ナベテル弁護士が教える残業代のカラクリ

 「大佛次郎論壇賞」を受賞した『ブラック企業―日本を食いつぶす妖怪』('12年/文春新書)の第2弾で、前著のサブタイトルも凄かったけれど(著者が考えたのか、はたまた編集者が考えたのか)、今回もなかなかという感じ。でも、「虐待型管理」というのは、確かに本書に書かれている「ブラック企業」の実態を表していると言えるかも。

 前著では、「ブラック企業」の第一の問題は、若くて有益な人材を使い潰していることであり、その特徴は、正社員を大量に採用して労働基準法ぎりぎりのラインで酷使、消耗、スポイルしてはまた新たな採用を繰り返していることであり、そうした新卒の「使い捨て」の過程が社会への費用転嫁として行われていることに問題あるとしていました。

 このように、単なる告発ジャーナリズムとは一線を画す姿勢を取り(但しサブタイトルはややその気を感じさせなくもないが)、従来の「ブラック企業」という言葉の、非正規社員が労働基準法違反の処遇条件で酷使されているというイメージに対し、正社員採用された労働者が、労基法に明確に違反するのではなく、「ぎりぎりで合法」乃至「違法と合法の間」のグレーゾーンで働かされているのがその実態であると指摘したのは画期的だったかもしれません(一方で、非正規も酷使されている実態があり、本書「2」では「ブラックバイト」という言葉が出てきてややこしいが)。

 今回は、こうした「ブラック企業」問題が依然解決されておらず、過労死や過労自殺が後を絶たない実態を踏まえ、どうして解っていてもそうした会社に入ってしまうのか(第1章)、どうして死ぬまで辞められないのか(第2章)といった働く側の心理面に実際にあった事例から迫り、それに呼応したブラック企業側の絡め取り搾りつくす手法を解析(第3章)、ブラック企業は国家戦略をも侵略しつつあるとし(第4章)、ではなぜそれらを取り締まれないのかを考察(第5章)しています。更に、規制緩和でブラック企業が無くなるといった「雇用改革論」を"奇想天外"であると非難し(第6章)、ブラック企業対策として親・教師・支援者がなすべきことを提案(第7章)しています。

 「ブラック企業」の定義にパラダイム転換をもたらした前著ほどのインパクトがあるかどうかはともかく、より深く問題に斬り込み、重層的に考察を進めていることは窺えるのではないでしょうか。前著に匹敵する力作である(単なる告発ジャーナリズムとは一線を画す姿勢は維持されている)と思う一方で、丁寧に紹介されている数々の過労自殺や過労死の事例には胸が蓋ぎます(社員をうつにして辞めさせる手法などについても、前著より詳しく紹介されている。コレ、かつて高度経済成長期に流行った感受性訓練(ST)の変形悪用だなあ)。

ワタミの初任給はなぜ日銀より高いのか? 帯.jpg 本書の著者である今野氏が帯に推薦文を書いている本に、『ワタミの初任給はなぜ日銀より高いのか?』('14年/旬報社)がありましたが(著者は日本労働弁護団等で活躍する弁護士とのこと)、固定残業制のカラクリなどは『ブラック企業』で既に紹介済みで、事例企業が「大庄(日本海庄や)」から「ワタミ」に替わっただけか。但し、その仕組みの説明の仕方が分かりにくく(今野氏の推薦文には「残業代のプロフェッショナル」とあるのだが)、普通の人が読んでも時間外割増と深夜割増の違いなんて分からないのではないかと思ったりもしました(老婆心ながら、『ブラック企業』で言っている「大庄」の例と本書で言っている「ワタミ」の例を大まかに図示してみた)。

大庄(日本海庄や)の初任給の構成.jpg ワタミの初任給の構成.jpg
by HUREC

 「ワタミ」の例で著者は、深夜割増相当分を全部使い切る試算をしているため(「深夜手当」3万円を時給相当額の2割5分で除している)、通常割増分(月45時間分)より深夜割増分(月128時間)の方が当該時間数が圧倒的に多くなっていますが、こうしたことは深夜勤務主体でないと起こり得ず、その前提がどこにも書かれていないのは不親切かも(一応、著者の説明に沿って図を作ったが、深夜手当を0.25でなく1.25で割って計算する方が、"相対的に見て"ノーマルなのだろう)。ワタミの酷さを「天狗」と比較しているけれど、「天狗」の実態をきちんと調べた形跡も無し。相対的にマシならばそれでいいとするならば、80時間の残業に満たないと固定残業代が一切払われなかった「大庄(日本海庄や)」に比べれば、「ワタミ」はまだマシということにもなってしまうのではないでしょうか。

 更には、残業を巡る未払い賃金の相談は、社会保険労務士ではダメで弁護士にしなさいと書いていますが、弁護士だって色々でしょう。社労士を一括りにして相談すべき相手ではないとしているのもどうかと思うし、自らが開発に関わったという残業代自動計算ソフト(「給与第一」)の話なども含め、未払い賃金(未払い残業代)請求という「自らのビジネス」への誘引を促すという目的が前面に出てしまった本であり、その割には、先にも述べたように、解説は親切ではないように思いました(「ナベテル弁護士」の事務所に相談に来てもらえれば、じっくり説明するということか)。

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エグゼンプションという切り口で「日本型雇用」を変える「構造」を提案している。

いっしょうけんめい「働かない」社会をつくる.jpg                         雇用の常識 決着版.jpg
いっしょうけんめい「働かない」社会をつくる (PHP新書)』['14年]『雇用の常識 決着版: 「本当に見えるウソ」 (ちくま文庫)』['12年]

 2009年に刊行された『雇用の常識「本当に見えるウソ」』(プレジデント社、'12年/ちくま文庫)が注目され、その後も『「若アベノミクスで「雇用」はどうなる.jpg者はかわいそう」論のウソ』('10年/扶桑社新書)、『就職、絶望期』('11年/扶桑社新書)、『女子のキャリア―"男社会"のしくみ、教えます』('12年/ちくまプリマー新書)、『日本で働くのは本当に損なのか』('13年/PHPビジネス新書)などを多くの著書を発表している著者(元リクルート ワークス研究所勤務)による本です(先に取り上げた(エントリー№2284)経済学者の安藤至大氏と「ニコ生」に出ていたこともあった)。この他にもいくつもの著書があってそれらの内容が重複しているきらいが無きしもあらずですが、 本書は単独でそれなりに読みでがありました。

「ニコ生×BLOGOS」"アベノミクスで「雇用」はどうなる"(2013年)海老原嗣生氏&安藤至大氏(経済学者)

 ホワイトカラーエグゼンプションを巡る議論が再び活発化している昨今ですが、残業代の不支給と、その対象となる年収について議論が費やされてきたという経緯は、これまでとあまり変わっていないようです。これについて、本書では、今回のエグゼンプション論議は、「定期昇給・昇級・残業代の廃止」という経営都合の日本型の変更のみが念頭に置かれているとしています。

 そして、そこには、もう一つの日本型の問題――残業代を払い続け、定期昇給を維持する分、長時間労働や単身赴任で疲弊し、働く人のキャリアや家庭生活の面にもマイナス寄与しているという問題――をも取り除くという視点が欠如しているといいます。つまり、エグゼンプションを契機として、給与・生活・キャリアの三位一体の改革をすべきであるとしています。

 著者は、エグゼンプションの本質に迫ると、多くの企業に根ざす「日本型雇用」の綻(ほころ)びが見えてくるといいます。例えば、日本企業はこれまで全員を幹部候補として採用し、年功昇給によって処遇してきたため、企業の熟年非役職者が高収入となって、そのため転職が困難になっているとしています。そこで、エグゼンプション導入を機に、「同一職務=同一給与=同一査定」「職務の自律性・固定制」「習熟に応じた時短」といった「欧米型」雇用の本質も、同時に実現すべきであるとしています。

 但しし、すべての階層を一時(いちどき)に「欧米型」に移行させるのではなく、「欧米型雇用」と「日本型雇用」の強み・弱みをそれぞれ吟味し、日本人と欧米人の「仕事観」の違いや、欧米企業における人事異動のベースとなっている「ポスト雇用」という考え方を分かりやすく説明したうえで、まず、習熟を積んだキャリア中盤期以降を「欧米型」のポスト雇用に切り替えていくことを提案しています。

 エグゼンプションは、その「日本型」と「欧米型」の"接ぎ木"のつなぎ目として機能するものであり、キャリア中盤期以降は、時間管理ではなく成果見合いの職務給制となる一方、エグゼンプション導入の際には、労働時間のインターバル規制や異動・配転の事前同意制、休日の半日取得などの措置がとられるべきであるとしています。ここには、エグゼンプションにまつわる「制約」によって、「全員が階段を昇る」日本型の人事管理を終わらせるということも、狙いとして込められているようです。

 エグゼンプションという切り口で「日本型雇用」を変える(終わらせる)ことを提案していて、しかも、従来よくあった「日本型全否定」ではなく「途中まで日本型肯定」のハイブリッド型になっているのが興味深く、また現実味を感じさせるところですが、入り口が日本型のままであることによって生じる諸問題についての解決策も提示されています。

 個人的には、論旨が「中高年問題」にターゲティングされていることを強く感じましたが、つまるところ、「日本型雇用」の最大の問題はそこにあるということになるのでしょうか。エグゼンプションというテーマからすると、業態などによっても読者によって受け止め方の違いはあるかもしれません。但し、「ジョブ型社員」「限定社員」といった最近話題の人事テーマに関して、従来の議論から踏み込んで具体的な「構造」を提案しているという点で、これからの議論や制度設計の一定の足掛かり乃至は思考の補助線となるものと思われます。

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入門書として分かり易く、また全体にバランスよく纏まっている。将来予測は興味深かった。

これだけは知っておきたい働き方の教科書.jpg
  あんどう・むねとも.jpg 安藤至大(あんどう・むねとも)氏[from ダイヤモンド・オンライン
これだけは知っておきたい働き方の教科書 (ちくま新書)

 NHK(Eテレ)の経済学番組「オイコノミア」やBSジャパン「日経みんなの経済教室」などにも出演している新進気鋭(だと思うが)の経済学者・安藤至大氏による「働き方」の入門解説書。1976年生まれの安藤氏は、法政大学から東京大学の大学院に進み、現在は日本大学の准教授ですが、最近はネットなどで見かけることも多く、売出し中という感じでしょうか。

 第1章で、「なぜ働くのか?」「なぜ人と協力して働くのか?」「なぜ雇われて働くのか?」といった基本的な疑問に答え、第2章で、「働き方の現状とルールはどうなっているのか?」「正社員とは何か?」「長時間労働はなぜ生じるのか?」「ブラック企業とは何か?」といった日本の「働き方の現在」を巡る問題を取り上げ、第3章で「働き方の未来」についての予見を示し、最終第4章で今自分たちにできることは何かを説いています。

 経済学者として経済学の視点から「労働」及びそれに纏わる今日的課題を分かり易く説明するとともに、労働法関係の解説も織り交ぜて解説しており(この点においては濱口桂一郎氏の著作を想起させられる)、これから社会人となる人や既に働いている若手の労働者の人が知っておいて無駄にはならないことが書かれているように思いました。

 まさに「教科書」として分かり易く書かれていて、Amazon.comのレビューに、「教科書のように当たり前なことの表面だけが書かれていて退屈だった」というものがありましたが、それはちょっと著者に気の毒な評価ではないかと。元々入門解説書として書いているわけであって、評者の視点の方がズレているのではないでしょうか。個人的には悪くなかった言うか、むしろ、たいへん説明上手で良かったように思います。

 例えば「正規雇用」の3条件とは「無期雇用」「直接雇用」「フルタイム雇用」であり、それら3条件を満たさないものが「非正規雇用」であるといったことは基本事項ですが、本書自体が入門解説的な教科書という位置づけであるならばこれでいいのでは。労働時間における資源制約とトレードオフや、年功賃金と長期雇用の関係などの説明も明快です。

 第2章「働き方の現在を知る」では、こうした基本的知識を踏まえ、日本的雇用とは何かを考察しています。ここでは、「終身雇用」は、高度成長期の人手不足のもとでのみ合理的だったと思われがちだが、業績変動のリスクを会社側が一手に引き受けることにより、平均的にはより低い賃金の支払いで労働者を雇うことができ、その企業に特有な知識や技能を労働者に身につけさせるという点においても有効であったとしています。また、法制度の知識も踏まえつつ、解雇はどこまでできるか、ブラック企業とは何かといったテーマに踏み込んでいます(著者は、解雇規制は緩和する前に知らしめることの方が重要としている)。

 更に第3章「働き方の未来を知る」では、著者の考えに沿って、まさに「働き方の未来」が予測されており、この部分は結構"大胆予測"という感じで、興味深く読めました。

 そこでは、少子高齢社会の到来によって近い将来、労働力不足が深刻化し、高齢者は働けるうちは働き続けるのが当たり前になると予測しています。更に、妻や夫が専業主婦(夫)をしているというのはとても贅沢なことになるとも。一方で、労働力不足への対処として外国人労働者や移民の受け入れが議論されるようにはなるが、諸外国の経験も踏まえて議論はなかなか進まないだろうともしています。

 また、機械によって人間の仕事が失われる可能性が今より高くはなるが、仕事の減少よりも人口の減少の方が相対的にスピードが速く、やはり、労働力を維持する対策が必要になるとしています。

 雇用形態は多様化し、安藤至大 (あんどうむねとも) (@munetomoando).jpg限定正社員は一般化して、非正規雇用も働き方の1つの選択肢として考えられ、また、社会保障については、企業ではなく国の責任で行われる方向へ進み、職能給や年功給は減少して職務給で雇われる限定正社員が増えるなどの変化が起きる一方で、新卒一括採用は、採用時の選別が比較的容易で教育コストなども抑えられることから、今後もなくならないだろうとしています。

 入門書の体裁をとりながらも、第3章には著者の考え方が織り込まれているように感じられましたが、若い人に向けて、今だけではなく、これからについて書いているというのはたいへん良いことだと思います。個別には異論を差し挟む余地が全く無い訳では無いですが、全体としてはバランスよく纏まっており、巻末に労働法や労働経済に関するブックガイドが付されているのも親切です(「機械によって人間の仕事が失われる」という事態を考察したエリク・ブリニョルフソン、 アンドリュー・マカフィー著『機械との競争』('13年/日経BP社)って最近結構あちこちで取り上げられているなあ)。
安藤至大 (あんどうむねとも) (@munetomoando)

《読書MEMO》
●目次
はじめに
第1章 働き方の仕組みを知る
1 私たちはなぜ働くのか?
生活のために働く
稼得能力を向上させるために働く
仕事を通じた自己実現のために働く
2 なぜ人と協力して働くのか?
自給自足には限界がある
分業と交換の重要性
比較優位の原理
比較優位の原理と使い方
「すべての人に出番がある」ということ
3 なぜ雇われて働くのか?
なぜ雇われて働くのか
他人のために働くということ
法律における雇用契約
雇われて働くことのメリットとデメリット
4 なぜ長期的関係を築くのか?
市場で取引相手を探す
長期的関係を築く
5 一日にどのくらいの長さ働くのか?
「収入-費用」を最大化
資源制約とトレードオフ
限界収入と限界費用が一致する点
6 給料はどう決まるのか?
競争的で短期雇用の場合
長期雇用ならば年功賃金の場合もある
取り替えがきかない存在の場合
給料を上げるためには
コラム:労働は商品ではない?

第2章 働き方の現在を知る
1 働き方の現状とルールはどうなっているか?
正規雇用と非正規雇用
正規雇用の三条件
7種類ある非正規雇用
非正規雇用の増加
2 正社員とはなにか?
正規雇用ならば幸せなのか
正社員を雇う理由
正規雇用はどのくらい減ったのか
3 長時間労働はなぜ生じるのか?
長時間労働の規制
長時間労働と健康被害の実態
なぜ長時間労働が行われるのか
一部の労働者に仕事が片寄る理由
4 日本型雇用とはなにか?
定年までの長期雇用
年功的な賃金体系
企業別の労働組合
職能給と職務給
中小企業には広がらなかった日本型雇用
5 解雇はどこまでできるのか?
雇用関係の終了と解雇
できる解雇とできない解雇
日本の解雇規制は厳しいのか
仕事ができる人、できない人
6 ブラック企業とはなにか?
ブラック企業はどこが問題なのか
なぜブラック企業はなくならないのか
どうすればブラック企業を減らせるのか
コラム:日本型雇用についての誤解

第3章 働き方の未来を知る
1 少子高齢社会が到来する
生産年齢人口の減少
働くことができる人を増やす
生産性を向上させる
2 働き方が変わる
機械により失われる仕事
人口の減少と仕事の減少
「雇用の安定」と失業なき労働移動
3 雇用形態は多様化する
無限定正社員と限定正社員
働き方のステップアップとステップダウン
非正規雇用という働き方
社会保障の負担
4 変わらない要素も重要
日本型雇用と年功賃金
新卒一括採用
コラム:予見可能性を高めるために

第4章 いま私たちにできることを知る
1 「労働者の正義」と「会社の正義」がある
「専門家」の言うことを鵜呑みにしない
目的と手段を分けて考える
会社を悪者あつかいしない
2 正しい情報を持つ
雇用契約を理解する
労働法の知識を得る
誰に相談すればよいのかを知る
3 変化の方向性を知る
働き方は変わる
失われる仕事について考える
「機械との競争」をしない
4 変化に備える
いま自分にできることは何か
これからどんな仕事をするか
普通に働くということ

おわりに

ブックガイド:「働くこと」についてさらに知るために

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長期的な雇用関係(オールドディール)を捨てニューディールに移行した米国企業が直面した課題を精緻に分析。
The New Deal at Work.jpg雇用の未来 キャペリ.jpg雇用の未来 P・キャペリ.JPG  Peter Cappelli.jpg
雇用の未来』['01年/日本経済新聞社] Peter Cappelli
"The New Deal at Work: Managing the Market-Driven Workforce"

 終身雇用(長期的な雇用)は日本企業独自のものであって、米国企業にはそうした雇用慣行は無かったかのように思われているフシもにありますが、実は米国でも1970年代くらいまでは終身雇用をベースにした企業が殆どだったと言われています。それが、1980年代に米国は深刻な不況に陥り、企業は人員削減の必要に迫られ、従業員が企業に貢献できる限りは雇用するが、そうでなくなれば雇用は保証しないという新たな雇用スタイルに移行したとされています。

 1999年にピーター・キャペリ(Peter Cappelli)が著した本書(原題:"The New Deal at Work")は、米国企業が雇用においてそうした旧来型の長期的な雇用関係(オールドディール)をどのような経緯と理由で捨て、雇用者と労働者が雇用契約の内容を状況に応じて書き改めるオープン型の新たな関係(ニューディール)に移行したか、また、その結果としてどのような問題が生じ、それをどう乗り越えようとしているか(したか)が書かれています。

 第1章「雇用のニューディール」では、職場における「ニューディール」の概略を紹介し、企業は社員との暗黙の了解をいかに書き改めたのかを概説するとともに、それによって進行した社員の離職や無断欠勤の増加などの行動変化により経営者が抱えるようになった問題の領域―コア社員の維持、コミットメント、スキル開発―について解説しています。

雇用の未来  キャペリ.jpg 第2章「置き去りにされてきた雇用契約」では、米国における雇用慣行の歴史を遡ることで、「伝統的」だと考えられている長期的な雇用関係は、実はある経済状態に応じて比較的最近に出現し70年代末期から80年代初頭にかけて一層活発化したものであること、そしてそれがその後10年もしないうちに終焉を迎えることになったことを示しています(「オールドディール」以前には「ニューディール」に近い状態があったというのが興味深い)。

 第3章「何が雇用のリストラクチャリングを引き起こしたのか」では、長期的な雇用関係を徐々に崩壊させたその原因の多くは経済全体に関わるものであるが、最も重要な圧力は経営のイノベーションに関わるものであったとし、それゆえに、リストラクチャリングは継続的な変化を意味し、そのことは同時に、雇用主と労働者が相互にコミットメントし合う長期的な雇用関係の終焉を意味するとしています(つまり、長期的な雇用関係にはもう戻れないというのが著者の考えとみてよい)。

 第4章「変化の大きさ」では、こうした圧力が実際にはどの程度のものであったのか、雇用関係や社員自身にどのような影響を与えたかを、職場における変化の具体的な事例を取り上げながら解説しています。この中では特に、企業が新入社員に対する人材育成投資を手控えるようになったことに注目しています(今後は、企業が教育訓練に投じてもよいと考える額は、外部市場からの採用がどの程度困難かよって決まるだろうとしている)。

 第5章「市場原理に基づく雇用関係―外部労働市場はどう機能するか」では、以前からニューディール的な雇用関係が成立している業界や職種に着目し(航空パイロット、高等教育機関、シリコンバレーなど)、雇用・人事面の問題を克服するために必要となった調整手段について概説しています(例えばシリコンバレーの外部人材開発の事例では、様々な社員の評価を共有する情報ネットワークなど、外部インフラが自然発生的に出来あがったことに着眼している)。

 第6章「ニューディールが突きつけた課題にどう対処するか」では、コア社員の維持、コミットメント、スキル開発の問題を企業がどのような調整をもって克服しようとしたかを取り上げています。そして、ニューディールの下では、社員の組織に対するコミットメントは、今後ますます外部要因によって左右されるようになるとしています(社員のモラール維持に努めコミットメントの向上を意図した施策を講じても、労働市場が逼迫し、人材の引き抜きが盛んになれば、社員のコミットメントは低下せざるを得ないということ)。

 第7章「雇用の未来」では、社員に対して以前よりも多くの決断やリスクを迫る新しい雇用関係が個人や社会全体に与える影響など、マクロ的観点から考察しています。ニューディールがもたらす社会的影響については、就業に向けた万全の準備を学生たちに求める圧力が強まることなどを挙げています。
 ニューディールがもたらす結果について多くの人は不平等の拡大の問題を懸念するが、「市場性」の高い社員は、就職や昇進の見通しが明るくなる―、雇用の変動性と人材の内部育成に対する企業能力の低下が相俟って、個人が自分で自分のスキルを磨くことが求められる―こうした変化を「よい」とするかどうかは「よい」をどう定義するかによって答えが違ってくるわけであり、良し悪しの枠組みで議論するには限界があるとしています(良し悪しは別として企業や個人が対応しなければならない問題だということか)。
 著者は、ニューディールもいずれは過去のものとなるかもしれず、長期的な見方をすることをニューディールに関する最後の忠告として本書を結んでいます。

 バブル崩壊後、「失われた10年」と言われた平成不況に入った日本企業は、まさに本書にある米国のニューディールを追いかけたと言えるでしょう。リストラの嵐が吹き荒れ、成果主義賃金が叫ばれる中で、終わってみれば今もって「働かないオジさんの給料はなぜ高いか」などと言われているくらいですから、それは必ずしもオールドディールを全面的にひっくり返すほどではなかったかもしれませんが、一方で、人材の流動化や雇用形態の多様化、全労働者に占める非正規社員の比率の増大などは、当初の予想を超えて大幅に進行したと言えるかと思います。

 80年代、日本より10年先行してニューディールに移行した米国企業でも、90年代に入って雇用保障や内部人材の教育・育成の重要性が見直され、実際そうした「人材を活かす企業」こそがいち早く構造不況を脱したといったフェッファー(Jeffrey Pfeffer)などの研究報告もあります(『人材を生かす企業―経営者はなぜ社員を大事にしないのか?』(1998年/トッパン)。このいち早く構造不況を脱した企業の中にアメリカ・トヨタなども入っている)。そして、日本企業でも、2000年代に入って人材の重視が再び言われるようになり、2010年代に入ってそれがモチベーションアップなどのための様々な施策として具現化されてきているよう思います。

 日本と米国の雇用環境の決定的な違いは、人材の外部市場(人材情報の外部インフラ)の形成という面で日本が決定的に遅れているということでしょう。この差はすぐに埋まるものではなく、そうした所与の条件が違う中で、全てにおいて米国型を追っかけるのは無理があるし、その必要もないですが、多少の揺り戻しがあっても、当面は本書にあるニューディール自体がグローバルな流れであることは、見据えておく必要があるように思われます。その意味で本書は、これからの雇用のあり方、経営者と社員の関係のあり方を探る上で参考になる点が多いかと思います(一応断っておくと、書かれていることは「未来」ではなく、書かれた当時の「現在」なのだが)。

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○経営思想家トップ50 ランクイン(ヘンリー・ミンツバーグ)

名著『マネジャーの実像』の著者自身による"エッセンシャル版"。読みやすいが深い。

『エッセンシャル版 ミンツバーグ マネジャー論』3.jpgエッセンシャル版 ミンツバーグ マネジャー論2.jpg エッセンシャル版 ミンツバーグ マネジャー論  .jpg マネジャーの実像.jpg
エッセンシャル版 ミンツバーグ マネジャー論』['14年/日経BP社] 『マネジャーの実像 「管理職」はなぜ仕事に追われているのか』['11年/日経BP社]

 本書は、実際にマネジャーの役割を担っている人や、そのマネジャーの行動に影響を受け、その活動に関心を持つすべての人たちを対象に、「マネジメントとは何か」を記したものであり、著者が2009年に発表した『マネジャーの実像』(2011年/日経BP社)の内容を、忙しい読者のために大幅に圧縮し(『マネジャーの実像』は500ページ近い大著である)、いくらか新しい内容を加えたものです。

 第1章「マネジャーにまつわる定説」では、「マネジメントよりリーダーシップの方が重要だ」などといった一般に流布する定説(思い込み)を1つずつ論破するとともに、マネジメントとは、アート、サイエンス、クラフトの3つの要素が合わさった仕事であり、実践の行為と呼ぶべきものであるとしています。

 第2章「時間に追われるマネジャーたち」では、マネジャーに絶えずのしかかる、慌ただしい日々、頻繁に強いられる中断、解決しなくてはならない混乱といったプレッシャーに焦点を当て、マネジメントを成功させるには、計算と混沌、統制と無秩序の間で微妙なバランスをとることが不可欠だとしています。

 第3章「情報、人間、行動をマネジメントする」では、マネジャーはどういう理由で、どういう活動をしているのか、マネジャーの仕事の基本的な構成要素を見ていて、具体的には、マネジメントは、情報、人間、行動の3つの次元で行われるとしています。

 第4章「いろいろなマネジメント」では、マネジメントの多様性―文化や職階などによる違い、アート、サイエンス、クラフトの3要素への比重の置き方によるマネジメントのスタイルの違いなど―について論じています。

 第5章「マネジャーの綱渡り」では、マネジメントが容易でない理由の核心に切り込み、マネジャーにいくつもの綱渡りを同時に強いるジレンマの数々を検討するとともに、それらのジレンマは解決不能なものであって、マネジメントと切っても切り離せない(マネジメントそのものと言ってもいい)ものであるとしています(著者は、この章が本書の中で最も重要であると思うとしている)。

 第6章(最終章)「有効なマネジメントとは」では、マネジャーの選考は、長所ではなく短所を見て決めるべきであり、その短所を最もよく知っているのはその人物の部下であるとし、また、優れたマネジャーとはたいてい、情緒面で健全な人物であることなどを指摘し、本当に求められているのは、人々を関わらせることができるマネジャーであり、ヒーロー型のリーダーはもういらないとしています。

『エッセンシャル版 ミンツバーグ マネジャー論』.JPG 帯に「悩めるマネジャー(社長・部長・課長・現場責任者)に捧げる福音の書!」とありますが、ベースとなっている『マネジャーの実像』に比べてかなり読みやすくなっていて、但し、だからといって言っていることがやさしいかというと必ずしもそうともいえず、結構"深い"ことを言っており、別な言い方をすれば、全体を端折ってしまって本質まで違えてしまうようなことはしていないという意味で、原著者自身がまとめた"エッセンシャル版"であるということの意義は大きいと思います。

 ただ、本書自体、マネジャー研修の教材として使えるような内容である一方で、表向きには比較的さらっと読めてしまう分、『マネジャーの実像』のように、時間をかけながら読み進んでいくことで(読むという行為を通して)啓発されていく要素というのは若干弱くなったようにも思います(ミンツバーグの経営思想の体系を解さずとも、普通の啓発書として読めてしまうかも)。マネジャー研修等を企画する側にある人事パーソンとしては(或いは人事パーソンであれば研修担当者でなくとも)、『マネジャーの実像』の方に読み進むことで、自身のミンツバーグの経営思想へのより深い理解に繋がるのではないかと思います。

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忘我の境地こそ「フロー」の感覚。フロー体験についての原典的な本。

Flow:The Psychology of Optimal Experience.jpgフロー体験 喜びの現象学1.jpg  フロー体験 喜びの現象学2.jpg
フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)
"Flow: The Psychology of Optimal Experience"by Mihaly Csikszentmihalyi

ミハイ・チクセントミハイ.jpg 「フロー理論」とは、1960年代に当時シカゴ大学の教授であったハンガリー出身のアメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイ(Mihaly.Csikszentmihalyi)が提唱したもので、人が喜びを感じるということを内観的に調べていくと、仕事、遊びにかかわらず何かに没頭している状態であるというものであり、本書("Flow: The Psychology of Optimal Experience"1990)は、その考えを体系的に纏め上げたものです(因みにハンガリー語に沿った名前の表記はチークセントミハーイ・ミハーイ(Csíkszentmihályi Mihály)。ハンガリー語は日本語と同じく姓、名の順になる)。

 チクセントミハイが「フロー」と呼ぶのは、完全に何かに集中し没頭している忘我の境地のことであり、このフローを手に入れる時、人は恋焦がれてやまない幸福という状態を手に入れるとのことです。活動の経験そのものがあまりに楽しいので、人はただ純粋に、何としてもそれを得ようとするとのことです。

 このような機会は、はかなくて予測不可能に思われがちですが、本書第1章「幸福の再来」で著者は、それは偶然に生じるものではなく、ある種の仕事や活動はフローの状態になりやすいとしています。以下、本書では、内面生活の統制による幸福への達成過程を検討しています。

 第2章「意識の分析」では、我々の意識はどのように働き、どのように統制されるのかについて述べています。我々が経験する喜びまたは苦しみ、興味または退屈は心の中の情報として現れ、この情報が統制できれば、我々は自分の生活がどのようなものになるかを決めることができるとしています。

 第3章「楽しさと生活の質」では、内的経験の最適状態とは、意識の秩序が保たれている状態であって、これは心理的エネルギー(注意)が目標に向けられている時や、能力や挑戦目標と適合している時に生じるとしています。1つの目標の追求は意識に秩序を与え、人は当面する目標達成に取り組んでいる時が、生活の中で最も楽しい時であるとしています。

 第4章「フローの条件」では、フロー体験が生じる条件を概観し、「フロー」とは意識がバランスよく秩序づけられた時の心の状態であるとしています。たえずフローを生み出すいくつかの行動―スポーツ、ゲーム、芸術、趣味―を考えれば、何が人々を楽しくするかを理解することは容易だとしています。

 第5章「身体のフロー」及び第6章「思考のフロー」では、心の中に生じることを統制することで、人は例えば競技や音楽からヨーガに至る身体的能力や感覚的能力の使用を通して、または詩、哲学、数学などの象徴的能力の発達を通して、殆ど無限の楽しみの機会を利用できるとしています。

 第7章「フローとしての仕事」第8章「孤独と人間関係の楽しさ」では、殆どの人々は生活の大部分を労働や他者との相互作用、特に家族との相互作用に費やしており、仕事をフローが生じる活動に変換すること、及び両親、配偶者、子供たち、そして友人との関係をより楽しいものにする方法を考えることが決定的に重要であるとしています。

 第9章「カオスへの対応」では、多くの生活が悲劇的な出来事によって引き裂かれ、最高の幸運に恵まれた人々ですら様々なストレスに悩まされるが、不幸な状態から益するものを引き出すか、惨めな状態に留まるかを決定するのは、ストレスにどう対応するかによるとし、人は逆境の中でどのようにして生活に楽しみを見出すかについて述べています。

 第10章「意味の構成」では、どうすればすべての体験を意味のあるパタンに結びつけることができるかというフローの最終段階について述べています。それが達成され、自分自身の生活を支配していると感じ、それを意味あるものと感じる時、それ以上望むものは何も無くなるとしています。

 本書は、課題達成に向けたアプローチを幅広く考察するうえで大いに参考になるとともに、「フロー」体験は、生産性以上に幸福な時間を生み出すものであるという観点からも重要と言えるでしょう。忘我の境地へもっと頻繁に至るには、努力を怠ってはならないということも忘れてはならないように思います。

チクセントミハイの本.JPG 本書のほかに、フロー体験について著者自身が書いたものに、『フロー体験入門―楽しみと創造の心理学』("Finding Flow: The Psychology of Engagement With Everyday Life"1997、'10年/世界思想社)や『フロー体験とグッドビジネス―仕事といきがい』("Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning"2003、'08年/世界思想社)がありますが、ビジネス寄りに書かれていたりするものの、「フロー」というものが何かについて最も深く書かれているのは本書であり(「フロー」状態の例として、ロッククライミング自体に何の外発的報酬もなく観客の喝采も期待出来ないのに、命を賭してまで没入する人のことを書いているが、ミクセントミハイ自身、ロッククライマーであり、それにのめりこんだ経験を持つ)、やや大部ではあるが、先に原典的な本書を読んでおいてから『フロー体験フロー体験 喜びの現象学3.jpg入門』や『フロー体験とグッドビジネス』に読み進む方が、結果として効率が良かったりするのではないでしょうか。

フロー体験.gif
清水康太郎「ベンチャー企業で働く人たちのモチベーション」

【2203】 ○ ジャック・コヴァート/トッド・サッターステン (庭田よう子:訳) 『アメリカCEOのベストビジネス書100』 (2009/11 講談社)

【2298】 ○ 水野 俊哉 『明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む』 (2014/04 ティー・オーエンタテインメント)

《読書MEMO》
●著者のフロー関連本(出版順)
・Beyond Boredom and Anxiety: Experiencing Flow in Work and Play 1975
・The Meaning of Things: Domestic Symbols and the Self 1981
・Optimal Experience: Psychological studies of flow in consciousness 1988
・Flow: The Psychology of Optimal Experience 1990
・The Evolving Self 1994
・Creativity: Flow and the Psychology of Discovery and Invention 1996
・Finding Flow: The Psychology of Engagement with Everyday Life 1997
・Flow in Sports: The keys of optimal experiences and performances 1999
・Good Work: When Excellence and Ethics Meet 2002
・Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning 2002
●内、邦訳が入手可能なもの
・Beyond Boredom and Anxiety: Experiencing Flow in Work and Play 『楽しみの社会学』
・The Meaning of Things: Domestic Symbols and the Self 『モノの意味』
・Flow: The Psychology of Optimal Experience 『フロー体験 喜びの現象学』
・Finding Flow: The Psychology of Engagement with Everyday Life 『フロー体験入門』
・Flow in Sports: The keys of optimal experiences and performances 『スポーツを楽しむ フロー理論からのアプローチ』
・Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning 『フロー体験とグッドビジネス』

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