【2275】 ○ 三菱UFJ信託銀行退職給付会計研究チーム 『図解 退職給付会計はこう変わる! (2013/08 東洋経済新報社) ★★★★

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改正全般へのターゲティングということで言えば、コンパクトに纏まっている。

『図解 退職給付会計はこう変わる』 .JPG図解 退職給付会計はこう変わる1.jpg図解 退職給付会計はこう変わる!』(2013/08 東洋経済新報社)

 「"やや中古"本に光を」シリーズ第5弾(エントリー№2275)。2013年4月以降適用の年金積立不足のBS計上義務づけ新会計基準に対応した入門書であり、日本基準とIFRS(国際税務報告基準)の改正内容を解説するとともに、具体的な対応例を示します。2015年4月現在でも退職給付会計基準は本書の通りであり、"やや中古"本といってもまだ100%現役であるわけですが...。

 退職給付会計の解説書は意外と少ないことに気づきますが、おそらく、改正のたびに改訂しなければならないのに対し、毎回どのレベルから説明していけばよいのか測りかねるというのもあるのではないでしょうか。基本的事項は一通り解っているとの前提でいくならば、大企業においても本当にその基本事項を押さえている人ですらそれほど多くはおらず、「一般書」として出すにしても読者ターゲットが絞られてしまうというのもあるのかもしれません。

退職給付債務の算定方法の選択とインパクト.jpg 以前に、井上 雅彦/江村 弘志著『退職給付債務の算定方法の選択とインパクト』('13年/中央経済社)を取り上げましたが、あちらは2013年改訂伴う退職給付債務の算定方法の選択(「期間定額基準」か「給付算定式基準」か)に絞って解説した参考書であり、一方、本書は、会計基準の今回の改正全般にフォーカスしたものです。その部分にターゲティングしているという点で言えば、本書は非常にコンパクトに纏まっていたように思いました。退職給付会計の基本について1章を割いたうえで、改正のポイントに移り、更に、日本基準とIFRSの相違点を解説し、最後に、会計基準変更の影響と今後の対応を解説しています。

図解 退職給付会計はこう変わる3.JPG この本よりももっと基本事項について遡って解説したもので且つ今回の改定に合わせて改訂されているものもありますが、そうなると結構ページ数が多くなります(井上雅彦著『キーワードでわかる退職給付会計(3訂増補版)』('13年/税務研究会出版局)などがそう)。自分も持っていますが、制度改定のごとに買い換えるのは効率が良くないかも。その点、本書は手頃ではあるかと思います(結局両方買ってしまったが、もっぱらこちらを読んでいる)。

 2012年6月発表の日本の会計基準の改正は、「貸借対照表での即時認識の導入」「退職給付債務の計算方法の変更」「退職給付制度運営に関する開示の充実」でしたが、IFRSの退職給付会計基準も2011年5月に「遅延認識の選択肢の排除(即時認識への統一)」「退職給付に関する費用の要素ごとの分解表示」「退職給付制度運営リスクに関する開示の充実」などの改正が行われていて、但し、日本基準ではこれが連結貸借対照表でしか適用されません。損益計算書においては遅延認識が認められており、貸借対照表も単独企業ベースでは変更なし。となると、「単独」のBSと「連結」のBSが合致しないというおかしなことが必然として生じることを許容しているということになるため、こうした状況が過渡期的なものであることは予想に難くありません。

 IFRSの退職給付会計基準改定に際してのキーワードは「透明性(=わかりやすさ)」。国際基準に簡単に合わせられないわが国独自の事情はあるかと思いますが、この複雑さは何とかして欲しいと思います。

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