【2273】 △ 奥山 典昭 『間違いだらけの「優秀な人材」選び (2012/11 こう書房) ★★★

「●採用・人材確保」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2236】 内海 正人 『会社で活躍する人が辞めないしくみ
「●上司学・リーダーシップ」の インデックッスへ

総花的で実際の採用面接では使えない。今いる社員の見分け方としても読めるが斬新さはない。

間違いだらけの「優秀な人材」選び9.JPG間違いだらけの「優秀な人材」選び.jpg間違いだらけの「優秀な人材」選び』(2012/11 こう書房)

 あなたがデキると思っている部下は本当に利益を生む部下ですか? うわべの「優秀さ」に期待するもいつもだまされていませんか? その陰で「眠っている原石」のモチベーションを奪っていませんか? 会社に利益をもたらす本当の「優秀さ」とはなんでしょう? あなたの部下は「優秀」ですか? そしてあなた自身は...? すべての上司に一度は目を通してもらいたい本(「BOOKデータベース」より)。

 「"やや中古"本に光を」シリーズ第4弾(エントリー№2273)。サブタイトルに「『誰が会社に利益をもたらすか』を正しく見極める法」とあるように、見かけの優秀さではなく、「本当に仕事ができる人材の要素」とは何か、「仕事力」というものを、①成果管理能力(組織のために働く力)、②概念化能力(思考する力)、③内部強化力(モチベーションを高める力)、④外部受容力(新たな情報を獲得する力)の「4つのキーポテンシャル」として提示しています。

 更に、「成果管理能力」には①当事者意識、②成果意識、③目標を定める力、④収束する力、⑤リーダーシップがあり、「概念化能力」には①思考する意欲、②情報を集める力、③情報を選ぶ力、④情報を結びつける力、⑤理論を高める力があり...ということで、言っていることは尤もなのですが、あまりに網羅的・総花的で、実際の採用面接等では充分に使い切れないのではないでしょうか。

 項目ごとに言葉の概念が重なり合っているように思える部分もあって、これを採用で使った場合、論理誤差が起きるのは避けがたいのではないでしょうか。本書とほぼ同時期に刊行された、マッキンゼーの伊賀泰代氏が書いた『採用基準―地頭より論理的思考力より大切なもの』 (12年/ダイヤモンド社)のように、求める人(要件)は「将来のリーダーとなる人」(リーダーシップ)と一本に絞ったものの方が、ずっとインパクトはあるし、可も無く不可も無いような人材ばかり採ってしまう愚は避けられるのではないでしょうか。

 但し、読み進むにつれて分かったのですが、本書は必ずしも採用時における人材の見分け方とういことに限定したものではなく、今社内にいる人材を職場での行動からどう見分けるかといことに中盤以降は比重がかかっているようです。

 採用面接時にこんな総花的なチェック項目で面接しても実効性は望めないように思いますが、今いる社員を見極めるということであれば、多少の現実味はあるかもしれません。後半は、「判明してしまった『仕事力』、さて、その人をどう扱うか?」といったように、ややネガティブ対応になっているキライもありますが、実際、採用時にその人の全てを見抜くのは不可能で、採ってしまってからどうしようかというケースは珍しくないかと思います。

 しかし、そうしたことを考慮しても、帯の「すべての上司に一度は目を通してもらいたい本」とのフレーズほどに書かれていることにそれほどの斬新さは無く、Amazon.comでの「人財についてかかれた究極の本」などといったレビューには"やらせ"感を覚えずにはいられません。個人的には敢えて「("やや中古"本に)光を」当てるほどのものでもなかったか。

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1