2015年3月 Archives

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「福祉雇用型」から「仕事ベース短期決済型」へ。理論的な枠組み、方向性を示す。

高齢社員の人事管理 今野浩一郎.jpg高齢社員の人事管理』(2014/08 中央経済社)

 「70歳まで働ける企業」基盤作り推進委員会(高齢・障害者雇用支援機構)の座長なども歴任した著者が、労働者の5人に1人は高齢者であるという世界の先進国の中でも未曾有の高齢化を迎えた日本における今後の「高齢社員の人事管理」の在り方を考察・示唆した本です。

 著者によれば、これまでも多くの実務家が制度や施策を提案しているし、研究者も解決策を提案しているが、実務家の提案は「いま役に立つ」を重視するあまり人事管理の基本となる理論的な枠組みの部分が弱く、一方、研究者は現状分析や課題の捉え方には優れるが、制度を具体的に構築する手掛かりにはなりにくい―本書は実務家と研究者の両者を繋ぐべく、研究者の成果を踏まえて実務家たちが人事管理の制度構築を行ううえにおいて灯台の役割を果たす考え方、視点、進むべき方向を提示する狙いで書かれたものであるとのことです。

 第1章「人事管理のとらえ方」で、人事管理の構造を体系的に整理し、高齢社員の人事管理を考えるうえで「ことの重要性」「全体の中の一部」「戦略と戦術を区分する」という3つの視点を提示しています。さらに、経営ニーズの変化による人事管理の再編の方向性として、社員が意欲をもって新しい働き方に取り組むことを支援する人事管理、また、それを担う人材を確保・育成するための人事管理を構築することが求められるとしています。

 第2章「社員の多様化と人事管理」では、会社の指示があればどこへでも転勤し長時間労働も厭わない「無制約社員」と働く場所や時間に何らかの制約がある「制約社員」を区分して管理するこれまでの伝統的な「1国2制度型」は、基幹社員が無制約社員から制約社員化する中でその基盤が崩壊しつつあり、基幹社員の中にも制約社員がいることを前提にした多元的人事管理の方が経営パフォーマンス上優れているとし、また、交渉ベースの雇用管理、仕事基準の報酬管理というものがこれからの主流になるであろうとの見通しのもと、賃金制度はどのように変わっていくか、また、その際にどういった配慮をしなければならないかを、「リスクプレミアム手当」といった概念を用いて解説しています。

 第3章「高齢化からみる労働市場の現状と将来」では、「ことの重要性」の観点から。高齢化が人事管理にとってどの程度重要な課題であるのか、労働市場や人口構成に関するデータから、その重要性を確認し、高齢者の活用に企業も高齢者も「本気になること」が解決の出発点であるとしています。

 第4章「高齢社員の伝統的人事管理の特徴」では、企業がこれまで高年齢者の雇用確保措置をどのように行ってきたかを確認し、これまでの「1国2制度型」の人事管理の実情を検証するとともに、単に高齢者に雇用機会を提供するだけの「福祉雇用型」の人事管理には限界があり、高齢者を戦力化することに「本気になること」が必要であるとしています。

 第5章「人事改革の視点」では、高齢者を戦力化する新たに構築される戦略人事管理を「S型人事管理」と略称し、それは高齢社員の制約社員化を踏まえて作られる必要があり、また、「いまの働き対していま払う」短期決済型であるべきだとして、人事改革の基本施策、賃金の基本的な視点と制度の基本的方向を示しています。

 第6章「高齢社員を活かす賃金」では、「S型人事管理」における現役社員の賃金との関連性の視点の必要性を説いたうえで、現役社員と高齢社員の賃金制度の組み合わせ類型において、「年功的長期決済型+福祉雇用型」《P1型》→「年功的長期決済型+仕事ベース短期決済型」《P2型》→「成果主義的長期決済型+仕事ベース短期決済型」《P3型》といった賃金プロファイルの改革のベクトルを示すとともに(最終段階は「1国1制度」《P4型》)、定年を契機に賃金が低下するという問題への対応策を示唆しています。

 第7章「高齢社員に求められること」では、今後は高齢者の側も働き続ける覚悟が求められ、「働くことは稼ぐこと」であって、高齢者それぞれに「どのように貢献するか」という視点が求められているとしています。また、高齢者が職場の戦力となるキャリアを実現するために、企業側も、キャリア転換を促進し支援する仕組みやマッチングのための施策を講じていく必要があり、その際に「マッチングの市場化」(社内労働市場)の仕組み作りなども必要になってくるとしています。

正社員消滅時代の人事改革.jpg 本書は、著者の前著『正社員消滅時代の人事改革-制約社員を戦力化する仕組みづくり』('12年/日本経済新聞出版社)の「高齢社員の人事管理」に的を絞った続編ともとれますが、著者自身が前書きで述べているように、これからの人事管理の「進むべき方向を確認するための灯台としての役割を果たすためのモデルとして提案」したものであり、具体的に個々の制度の詳細を解説したりすることは目的としていません。その点を踏まえておかないと、実務書として読んでしまうと物足りないものとなってしまうでしょう。

 個人的感想としては、「高齢社員の人事管理」の在り方を通してこれからの人事管理の在り方を理論的な枠組みの中できっちり示しており、実務家にとって自社制度の立ち位置や今後の方向性を探る上での理論強化に繋がる本であるように思えた一方で、出された結論はそれほど斬新なものでもなく、大方の実務者が今後はこうならざるを得ないだろうと予想していたものに近いと言えるのではないかと思った次第です。

 ただ、現状がどうかという問題は当然のことながらあると思われ、平成25年施行の改正高年者齢雇用安定法に対する各企業の対応が、「福祉雇用型」的な対応でばたばたっと決着して一息ついたようになっている現況において、次のステップに移行するための示唆と動機づけを与えてくれる本ではあると思います(実務書と言うより啓蒙書・啓発書に近いか)。

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制度をぽんぽん作ることがイコール「クリエイティブ」であるともとられかねない論調?

クリエイティブ人事19.JPGクリエイティブ人事.jpgクリエイティブ人事 個人を伸ばす、チームを活かす (光文社新書)

 本書は、サイバーエージェントの取締役人事本部長の曽山哲人氏が、組織行動研究の第一人者である金井壽宏氏との対談も交え、自社の人事制度を紹介しつつ、人事の在り方や人事制度の本質について語った本です。

 曽山氏は、自社の創業7年後の2005年の人事本部の発足と同時に人事本部長に抜擢され、すでに急成長を遂げベンチャーらしさが失われつつあった社内の雰囲気に危機感を覚え、日常業務を回すだけの「機能人事」からの脱却を図ることを目指したとのことです。そして、半年ごとの新事業提案コンテスト「ジギョつく」、役員と社員がチームを組み「あした(未来)」につながる新規事業を考え提案する「あした会議」、サービスアイディアを「モックアップ(試作品)」に落とし込んで提案するコンテスト「モックプランコンテスト」など、イノベーションと組織活性化を促すさまざまな仕組みを打ち出してきました。

 人事本部のミッションを「コミュニケーション・エンジン」と定義し、自らに月に100人の社員と話すことを課すとともに、懇親会支援制度や部活動支援制度などを導入し、インフォーマル・コミュニケーションの活性化に力を入れている点などは、個人的には興味深く感じましたが、様々な経歴の人材が集まるベンチャー企業などではそれほど珍しくない施策かもしれません。「キャリチャレ」と呼ばれる社内異動公募制度なども含め、本書にあるこうした制度は、同業他社や他業種の企業でも多くが導入しているように思います。

 序章を金井教授と曽山氏が交互に執筆して、終章(第5章)に両者の対談があるのを除き、残りの部分は曽山氏によるこうした社内の人事制度やその考え方の紹介となっていますが、結果的に、制度を紹介する企業ガイダンス的な内容になってしまっている面があるとともに、人事部目線で見ると、ある特殊なケースにおける「成功体験」を聞かされているような印象も受けました。

 「2駅ルール」というオフィスの最寄り駅から2駅以内に住む社員に補助をする仕組みを社員の5割弱が利用しているといったことも、急成長を遂げたベンチャー企業で、規模のわりには社員の平均年齢が若いという特殊性の現れではないかと。中には、やや思いつき的な発想からきたのではと思われるような制度もあり、ある程度の遊び心があってこそのベンチャーと言えなくもありませんが、制度をぽんぽん作ることがイコール「クリエイティブ」であるともとられかねません。

 本書自体、制度はあくまで表層であって、人事における「クリエイティブ」とは本質的にはもっと深いものであるという立場であるかと思いますが、第4章から終盤の対談にかけては、むしろ、人事パーソンに求められる資質といった自己啓発的観点からの論調になって、それはそれで参考になる部分もあったものの、「クリエイティブ」ということに関してはややもやっとしたまま終わってしまったようにも思えました。

 結局これ、自らのブログから引用して本人が書いた部分もあるけれども、大方は本人の語りを編集者が文章にしたのだろうなあ。金井壽宏氏が手を入れているにしても、平板な印象が拭いきれないのは、やはり先ほども述べたように、本人が専ら過去の成功体験を中心に語っているからなのでしょう。

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この問題に対する著者の真摯な姿勢が感じられる。「労側」の弁護士が書いた本との捉え方は意味をなさない。

過労自殺 第二版.jpg過労自殺 第二版 (岩波新書)』  過労自殺 .jpg過労自殺 (岩波新書)』 

 同著者の1998年刊行の『過労自殺』の16年ぶりの全面改訂版であり、第1章では事例をすべて書き換え、著者が直接裁判などを担当して調査を行った資料を中心に、過労自殺の実態を具体的に示しています。
 それらの事例と、続く第2章の統計から、20代や30代の若者や女性たちの間にも、仕事による過労・ストレスが原因と思われる自殺が拡大していることがわかり、そのことはたいへん危惧すべきことであるように思いました。また、旧版『過労自殺』にもそうした事例はありましたが、パワハラが絡んでいるものが少なからずあるということと、こうした事件がよく名前の知られた大企業またはその系列会社で起きているということも非常に気になりました。

 第2章では、新しい統計・研究を組み込んで、過労自殺の特徴・原因・背景・歴史を考察しています。旧版『過労自殺』によれば、1995~1997年度の過労自殺の労災申請は、それぞれ10件、11件、22件で、それに対し労災認定件数は各0件、1件、2件しかなかったとありました(有名な「電通事件」裁判も、労災申請を認めなかった労基署の判断が退けられたという形をとっている)。
 それが、本書によれば、2007~2012年度の間では毎年度63~93件の自殺労災認定があったとのこと。しかし、これは厚労省労働基準局統計による数字であって、警察庁・内閣府統計では、2007~2012年の間「勤務問題」が原因・動機の自殺が毎年2,500件前後あったとなっており、著者が過労自殺の被災者は実質的には年間2,000人以上になるとしているのは、必ずしも大袈裟とは言えないように思いました。

 第3章では、そうした実態も踏まえ、過労自殺と労災補償の関係を整理し、具体的にQ&A式で説明しています。基本的には労働者や被災者とその家族向けに書かれていますが、企業の人事労務担当者が基礎知識として知っておくべきことも含まれています。

 第4章では、今年成立した過労死等防止対策推進法(略称・過労死防止法)などの情勢の進展を踏まえ、過労自殺をなくすにはどうすればよいかについて、職場に時間的なゆとりを持たせることや、精神的なゆとりを持たせることなど、いくつかの観点から提言を行っています。個人的には、「義理を欠くことの大切さ」を説いているのが興味深かったです(版元のウェブサイトの自著の紹介でも、著者は、女優の小雪さんが語りかける「風邪?のど痛い?明日休めないんでしょ?」というCMを見て、風邪気味でのどが痛くとも、熱っぽい状態であっても、仕事を休まずに出勤することを前提にしていることに違和感を感じたとしている)。

 過労自殺はあってはならないというこの問題に対する著者の真摯な姿勢が感じられるとともに、この問題は企業と働く側の双方で(それと社会とで)解決していかなければならない問題であるとの思いを改めて抱きました(本書では、元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長の吉越浩一郎氏の『「残業ゼロ」の仕事力』(2007年/日本能率協会マネジメントセンター)や株式会社ワークライフバランス社長の小室淑恵氏の『6時に帰る チーム術』(2008年/日本能率協会マネジメントセンター)などの著書からの肯定的な引用もある)。
 ともすると、「労(働者)側」の弁護士が書いた本だと捉えられがちですが、著者は実際には企業のコンプライアンス委員会などにも関与しており、過労自殺を予防するといった観点からは、「労(働者)側」「使(用者)側」という見方はあまり意味を成さないのかもしれません。
 人事労務担当者としては押さえておきたい1冊です。

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いわばリクルート流のSL理論(状況対応型リーダーシップ理論)。分かり易く書かれている。

部下育成の教科書 00.jpg
   
  
   
   
部下育成の教科書』(2012/03 ダイヤモンド社)

 「"やや中古"本に光を」シリーズ第7弾(エントリー№2277)。表紙折り返しに「自立しない若手、伸び悩む中堅、やる気のないベタラン社員にも効く育て方の『「ものさし」』とあるように、ビジネスパーソンを10の「段階」に分け、その段階に合わせた育成方法を指南しています。その10の段階=ステージとは以下の通り。

部下育成の教科書 図.jpg

●一般社員層:4つのステージ(段階)
(1)スターター(Starter/社会人):ビジネスの基本を身につけ、組織の一員となる段階
(2)プレイヤー(Player/ひとり立ち):任された仕事を一つひとつやりきりながら、力を高める段階
(3)メインプレイヤー(Main Player/一人前):創意工夫を凝らしながら、自らの目標を達成する段階
(4)リーディングプレイヤー(Leading Player/主力):組織業績と周囲のメンバーを牽引する段階

●マネジャーとして部下を持つ管理職層:4つのステージ(段階)
(1)マネジャー(Manager/マネジメント):個人と集団に働きかけて、組織業績を達成しながら変革を推進していく段階
(2)ダイレクター(Director/変革主導):対立や葛藤を乗り越えながら、変革・改革を起こし、組織の持続的成長を実現する段階
(3)ビジネスオフィサー(Business Officer/事業変革):戦略的な資源配分を通じて、自ら描いた事業構想を実現する段階
(4)コーポレートオフィサー(Corporate Officer/企業変革):社会における自社の存在意義を絶えず問い直し、自社の針路を決める段階

●部下を持たない管理職層:2つのステージ(段階)
スペシャリストとして部下を持たない管理職層:2つのステージ(段階)
(1)エキスパート(Expert/専門家):高い専門性を発揮することを通じて、組織業績と事業変革に貢献する段階
(2)プロフェッショナル(Professional/第一人者):卓越した専門性を発揮することを通じて、事業変革に道筋をつける段階
部下育成の教科書 図1.jpg

 「10」と聞いてやや多過ぎか?と思いましたが、上記のように一般社員層4、部下を持つ管理職層4、部下を持たない管理職層4ということで納得。これを全部均等に解説していくと"総花的"になってしまうところを、一般社員層の4段階を特に詳しく説明し、更にステージの変わり目(トランジッション)をどう見極め、上司としてどう対処するかを説いたりもしているため、総花感は回避されているように思いました。

 部下の成長の段階の違いによって育成方法や指導に関する関与の在り方を違えるべきだという気付きを与えるという意味では、啓発される要素は多い本であるし、何よりも分かり易く書かれています。

 一般社員について、スターター、プレイヤー、メインプレイヤー、リーディングプレイヤーの4段階に分かれているというのは、SL理論(Situational Leadership Theory)との対比で捉え直してみると面白いのではないでしょうか。

 著者らは何れもリクルートマネジメントソリューションズ(前HRR、旧人事測定研究所)の所属。本書はいわばリクルート流のSL理論(状況対応型リーダーシップ理論)であり、一般職の部分に更に管理職層の部分を繋げて作ったものとも言えるのではないかと思いました。

 個人的なツン読本、または読み残しや書評の書き残しを改めて振り返った「"やや中古"本に光を」シリーズはここまで下記の通り。読んでみて大したことが書かれていなかった本もあれば、もっと早く読んでおけばという本もあって、本を読むときの時間的優先順位の決め方というのは難しいと改めて思った次第です。
【2270】 × 中澤 二朗 『働く。なぜ? (2013/10 講談社現代新書) ★☆
【2071】 △ 齋藤 孝 『雑談力が上がる話し方―30秒でうちとける会話のルール』 (2010/04 ダイヤモンド社) ★★★
【2272】 △ 近藤 圭伸 『上司の「人事労務管理力」―部下との信頼関係を築くために大切なこと』 (2012/09 中央経済社) ★★★
【2273】 △ 奥山 典昭 『間違いだらけの「優秀な人材」選び (2012/11 こう書房) ★★★
【2275】 ○ 三菱UFJ信託銀行退職給付会計研究チーム 『図解 退職給付会計はこう変わる! (2013/08 東洋経済新報社) ★★★★
【2276】 ◎ 笹島 芳雄 『最新アメリカの賃金・評価制度―日米比較から学ぶもの』 (2008/04 日本経団連事業サービス) ★★★★★
【2277】 ○ 山田 直人/木越 智彰/本杉 健 『部下育成の教科書 (2012/03 ダイヤモンド社) ★★★★(本書)

《読書MEMO》
sl理論.gif●SL理論(「INVENIO LEADERSHIP INSIGHT」より)
(1977年にハーシィ(P.Hersey)とブランチャード(K.H.Blanchard) が提唱したリーダーシップ条件適応理論の1つ)
S1:教示的リーダーシップ/ 具体的に指示し、事細かに監督する 
(タスク志向が高く、人間関係志向の低いリーダーシップ)
→部下の成熟度が低い場合
S2:説得的リーダーシップ/こちらの考えを説明し、疑問に応える 
(タスク志向・人間関係ともに高いリーダーシップ)
→部下が成熟度を高めてきた場合
S3:参加的リーダーシップ/ 考えを合わせて決められるように仕向ける 
(タスク志向が低く、人間関係志向の高いリーダーシップ)
→更に部下の成熟度が高まった場合
S4:委任的リーダーシップ/ 仕事遂行の責任をゆだねる
(タスク志向・人間関係志向ともに最小限のリーダーシップ)
→部下が完全に自立性を高めてきた場合

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内容的に他の追随を許さない水準ながら学術書っぽさがない。デューデリ担当者には必読書か。

最新アメリカの賃金・評価制度4.JPG最新アメリカの賃金・評価制度―日米比較から学ぶもの.jpg最新アメリカの賃金・評価制度―日米比較から学ぶもの』(2008/04 日本経団連事業サービス)

 「"やや中古"本に光を」シリーズ第6弾(エントリー№2276)。長年にわたってアメリカの賃金制度の研究に携わってきた著者が、80社以上に及ぶ企業・労働組合をヒアリング調査した成果を纏めたものであり、限られた情報に基づき一面的に捉えがちだったアメリカの賃金の現状制度について、データの裏付けの下、総合的、客観的に分析しています。

 本書は同著者による『アメリカの賃金・評価システム』('01年/日本経団連出版)の続編であり、前著はアメリカの賃金制度を分かり易く紹介するとともに、アメリカの賃金制度の変容にも触れ、同時に、曲がり角にある日本の賃金制度の方向性を示唆していましたが、本書も同じような趣旨ながら、データのみならず具体的な企業事例がぐっと増えて、より実務に供する内容となっています。

 前著でも、文章が簡潔明快で読み易く、参考文献も充実していましたが、本書ではさらに図解や資料が多く挿入されていて、それらが何れも見易く纏まっているのが有難いです。内容的に他の追随を許さない水準でありながら、学術書っぽさがないのがいいです。

 日本人事労務研究所刊行の『月刊人事労務』に2001年から2006年まで断続的に連載した原稿がベースになっているとのことですが、著者は2007年にアメリカ報酬管理協会のワールドアトワークの年次カンファランスに日本からただ一人参加しており、そうした本書刊行時点での直近の調査結果や報告なども織り込まれているため、"やや中古"本(2008年刊)といっても、あまり古さは感じさせません。

 むしろ、本書を超えるレベルのものがその後に見当たらないので、これから企業規模を問わずどの企業にもグローバル化の波が押し寄せる公算が大きい「今日的」乃至「近日的」状況に際して、アメリカの賃金・評価システムがどのようなものであるかを知っておくことは無駄にはならず、その手引きとしては絶好の書と言えるのではないかと思います。アメリカ企業とのM&Aにおけるデューデリジェンス担当者などにはとっては必読書ではないかと(とりわけ米国企業では個々の賃金決定は現場のライン管理職に任されていることもあってか、デューデリで賃金制度を最初から重点的に議論し合うことは稀のように思う)。「"やや中古"本に光を」シリーズ第6弾にしてやっと5つ星です(どちらかと言うとリアルタイムで取り上げるべき本だった)。

 最近話題になっているホワイトカラー・イグゼンプションや非正規雇用の問題などについても(たまたま本書刊行時もそれぞれテーマについての時期的な議論のヤマ場があったりしたということもあるが)、アメリカを参照しつつ日本の場合はどうかという視点から解説しています。

 とりわけ、ホワイトカラー・イグゼンプションの導入に関しては、真っ向から反対はしていませんが、労働時間規制を一旦強化し、長時間労働や恒久的残業が極めて例外的な現象とされる社会構造を構築したうえで導入すべきだという慎重な見解を示しているのは、アメリカの労働社会や人事賃金諸制度に通暁している著者が言っていることだけに重いものがあります(個人的にはホワイトカラー・イグゼンプションは賛成だが、年収いくら以上とかいうことよりも、そうした社会構造のチェックとでもいうべき付帯条件が確かに必要と思う。そのチェック自体が難しいという問題があるにしても)。
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〈著者紹介〉
笹島芳雄
1967年東京都立大学卒業後、労働省(現厚生労働省)入省。73年ブラウン大学大学院修了。経済企画庁、OECD出向などを経て、89年より明治学院大学教授。厚生労働省「これからの賃金制度のあり方に関する研究会」「男女間の賃金格差に関する研究会」などの座長を歴任。中央労働委員会関東地方調整委員会委員長。著書「アメリカの賃金・評価システム」(日本経団連出版)、「現代の労働問題」「賃金決定の手引」(現・明治学院大学名誉教授)

《読書MEMO》
・第1章  アメリカの賃金の全体像
・第2章  職務グレード制と基本給の決定
・第3章  職務評価の手法と実態
・第4章  労働組合員の賃金
・第5章  ボーナス制度の仕組み
・第6章  人事評価制度の実情
・第7章  ペイ・フォー・パフォーマンスの構造と特色
・第8章  日米賃金制度比較からの示唆

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改正全般へのターゲティングということで言えば、コンパクトに纏まっている。

『図解 退職給付会計はこう変わる』 .JPG図解 退職給付会計はこう変わる1.jpg図解 退職給付会計はこう変わる!』(2013/08 東洋経済新報社)

 「"やや中古"本に光を」シリーズ第5弾(エントリー№2275)。2013年4月以降適用の年金積立不足のBS計上義務づけ新会計基準に対応した入門書であり、日本基準とIFRS(国際税務報告基準)の改正内容を解説するとともに、具体的な対応例を示します。2015年4月現在でも退職給付会計基準は本書の通りであり、"やや中古"本といってもまだ100%現役であるわけですが...。

 退職給付会計の解説書は意外と少ないことに気づきますが、おそらく、改正のたびに改訂しなければならないのに対し、毎回どのレベルから説明していけばよいのか測りかねるというのもあるのではないでしょうか。基本的事項は一通り解っているとの前提でいくならば、大企業においても本当にその基本事項を押さえている人ですらそれほど多くはおらず、「一般書」として出すにしても読者ターゲットが絞られてしまうというのもあるのかもしれません。

退職給付債務の算定方法の選択とインパクト.jpg 以前に、井上 雅彦/江村 弘志著『退職給付債務の算定方法の選択とインパクト』('13年/中央経済社)を取り上げましたが、あちらは2013年改訂伴う退職給付債務の算定方法の選択(「期間定額基準」か「給付算定式基準」か)に絞って解説した参考書であり、一方、本書は、会計基準の今回の改正全般にフォーカスしたものです。その部分にターゲティングしているという点で言えば、本書は非常にコンパクトに纏まっていたように思いました。退職給付会計の基本について1章を割いたうえで、改正のポイントに移り、更に、日本基準とIFRSの相違点を解説し、最後に、会計基準変更の影響と今後の対応を解説しています。

図解 退職給付会計はこう変わる3.JPG この本よりももっと基本事項について遡って解説したもので且つ今回の改定に合わせて改訂されているものもありますが、そうなると結構ページ数が多くなります(井上雅彦著『キーワードでわかる退職給付会計(3訂増補版)』('13年/税務研究会出版局)などがそう)。自分も持っていますが、制度改定のごとに買い換えるのは効率が良くないかも。その点、本書は手頃ではあるかと思います(結局両方買ってしまったが、もっぱらこちらを読んでいる)。

 2012年6月発表の日本の会計基準の改正は、「貸借対照表での即時認識の導入」「退職給付債務の計算方法の変更」「退職給付制度運営に関する開示の充実」でしたが、IFRSの退職給付会計基準も2011年5月に「遅延認識の選択肢の排除(即時認識への統一)」「退職給付に関する費用の要素ごとの分解表示」「退職給付制度運営リスクに関する開示の充実」などの改正が行われていて、但し、日本基準ではこれが連結貸借対照表でしか適用されません。損益計算書においては遅延認識が認められており、貸借対照表も単独企業ベースでは変更なし。となると、「単独」のBSと「連結」のBSが合致しないというおかしなことが必然として生じることを許容しているということになるため、こうした状況が過渡期的なものであることは予想に難くありません。

 IFRSの退職給付会計基準改定に際してのキーワードは「透明性(=わかりやすさ)」。国際基準に簡単に合わせられないわが国独自の事情はあるかと思いますが、この複雑さは何とかして欲しいと思います。

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ストーリーがよく出来ていて、いいタイミングでドラッカーの言葉が出てくる。

まんがでわかる ドラッカーのリーダーシップ論.JPGまんがでわかる ドラッカーのリーダーシップ論2.jpg   まんがと図解でわかるドラッカーのリーダーシップ論.jpg
まんがでわかる ドラッカーのリーダーシップ論』『まんがと図解でわかるドラッカーのリーダーシップ論 (別冊宝島) (別冊宝島 1750 スタディー)

 東京での仕事で挫折し、失意のまま退職した赤井満は、いつのまにか生まれ故郷で村おこしのプロジェクトリーダー「特命村長」に任命されていた! 村役場から選ばれたメンバーを率い、彼らの強みを生かした成果が期待される満。彼女を支えたのは、経営学の父・ドラッカーが唱えたリーダーシップの真髄だった―。

まんがでわかる ドラッカーのリーダーシップ論21.JPG 『まんがでわかる7つの習慣』('13年/宝島社)の第2弾ということですが、本書が刊行される以前に「別冊宝島」(ムック)として本書と同じ監修者による『まんがと図解でわかるドラッカーのリーダーシップ論』('11年)が刊行されており(その他に『まんがと図解でわかるドラッカー マネジメント、イノベーションなどが初心者でも簡単に理解できる!』('10年)や『まんがと図解でわかるドラッカー 使えるマネジメント論』('11年)などもある)、やや既知感のようなものもあってそれほど期待せずに読んだら、これが意外と"優れもの"でした。

 『まんがと図解でわかるドラッカーのリーダーシップ論』も好評で文庫化されたりもしていますが、マンガは添え物で図解がメインといった感じでしょうか。テーマ項目ごとにきちんと纏まっていましたが、「項目主義」になってしまっていて、逆に本当の意味での理解に繋がらない面もあるのではないかという気もしました。

まんがでわかる ドラッカーのリーダーシップ論00_.jpg その点本書は、マンガとしてのストーリーがよく出来ていて、いいタイミングでドラッカーの言葉が出てくるため、それがまた相互作用として活きているように思いました。ドラッカーの述べていることの中には時期によってニュアンスが少しずつ違っている部分もあり、その点、複数のドラッカーの著者から引用することで、ドラッカーがあたかも最初からそうしたことを提唱していたように捉えられてしまうのはどうかというのはムック版でもあり、本書でもありましたが、これくらいの入門レベルになると、そこまでこだわることもないでしょうか(むしろ、テンポが大事で、その点は合格点!)。

 こうした本は、普段本よりもマンガを読む人向けという捉えられ方をしがちですが、さらっと読めてドラッガーを身近に感じられるという点では、マンガへの親和度の高い低いに関わらずお薦めです。

まんがでわかる ドラッカーのリーダーシップ論 (宝島社新書)』['19年]

【2019年新書化[宝島社新書]】

《読書MEMO》
●コミュニケーションが成立するには経験の共有が不可欠だ...。組織においてコミュニケーションは手段ではない。組織のあり方である。―P.F.ドラッカー『マネジメント(中)』p157(本書23p)
●あまりに多くのリーダーが、自分のしていることとその理由は、誰にも明らかなはずだと思っている。そのようなことはない。多くのリーダーが自分の言ったことは誰もが理解したと思う。しかし誰も理解していない。―P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』p 30(本書24p)
●重要なのはカリスマ性ではない。...リーダーが初めに行うべきは、自らの組織のミッションを考え抜き、定義することである。―P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』p2(本書35p)
●人の配置は、あらゆる事業においてきわめて重要な事案である。...人が一人あるいは小さなチームとして、事細かな監督なしに自主的に働くとき、単に働きたいという意欲からより良い仕事をしたいという意欲に左右される。すなわち配置によって左右される。―P.F.ドラッカー『現代の経営(下)』p157(本書54p)
●専門職たる者は、自らの仕事が何であるべきか、優れた仕事とは何であるべきかを自ら決める。何を行うべきか、いかなる基準を適用すべきかについて、誰も彼に代わって決めることは出来ない。彼らは、誰からも監督されない。―P.F.ドラッカー『現代の経営(下)』p201(本書68p)
●専門職は一人で働こうとチームで働こうと、自らの貢献について責任をもつ。―P.F.ドラッカー『現代の経営(下)』p199-201(本書69p)
●上司は部下の仕事に責任をもつ。部下のキャリアを左右する。したがって、強みを生かす人事は、成果をあげるための必要条件であるだけでなく、倫理的な至上命令、権力と地位に伴う責任である。―P.F.ドラッカー『経営者の条件』p126(本書80p)
●人を問題や費用や脅威として見るのではなく、資源として、機会として見ることを学ばなければならない。管理(manage)で. はなくリード(lead)すること、支配(control)ではなく方向づけ. (direct)することを学ばなければならない。―P.F.ドラッカー『マネジメント(上)』p31(本書89p)
●成果をあげるための秘訣を1つだけあげるならば,それは集中である。成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない。―P.F.ドラッカー『プロフェッショナルの条件』p138(本書111p)
●リーダーシップが発揮されるのは、真摯さによってである。範となるのも、真摯さによってである。真摯さは、取って付けるわけにはいかない。真摯さはごまかせない。―P.F.ドラッカー『マネジメント(中)』p109(本書127p)
●自らをマネジメントするということは、一つの革命である。...あたかも組織のトップであるかのように考え、行動することが要求される。―P.F.ドラッカー『明日を支配するもの』p231(本書166p)

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総花的で実際の採用面接では使えない。今いる社員の見分け方としても読めるが斬新さはない。

間違いだらけの「優秀な人材」選び9.JPG間違いだらけの「優秀な人材」選び.jpg間違いだらけの「優秀な人材」選び』(2012/11 こう書房)

 あなたがデキると思っている部下は本当に利益を生む部下ですか? うわべの「優秀さ」に期待するもいつもだまされていませんか? その陰で「眠っている原石」のモチベーションを奪っていませんか? 会社に利益をもたらす本当の「優秀さ」とはなんでしょう? あなたの部下は「優秀」ですか? そしてあなた自身は...? すべての上司に一度は目を通してもらいたい本(「BOOKデータベース」より)。

 「"やや中古"本に光を」シリーズ第4弾(エントリー№2273)。サブタイトルに「『誰が会社に利益をもたらすか』を正しく見極める法」とあるように、見かけの優秀さではなく、「本当に仕事ができる人材の要素」とは何か、「仕事力」というものを、①成果管理能力(組織のために働く力)、②概念化能力(思考する力)、③内部強化力(モチベーションを高める力)、④外部受容力(新たな情報を獲得する力)の「4つのキーポテンシャル」として提示しています。

 更に、「成果管理能力」には①当事者意識、②成果意識、③目標を定める力、④収束する力、⑤リーダーシップがあり、「概念化能力」には①思考する意欲、②情報を集める力、③情報を選ぶ力、④情報を結びつける力、⑤理論を高める力があり...ということで、言っていることは尤もなのですが、あまりに網羅的・総花的で、実際の採用面接等では充分に使い切れないのではないでしょうか。

 項目ごとに言葉の概念が重なり合っているように思える部分もあって、これを採用で使った場合、論理誤差が起きるのは避けがたいのではないでしょうか。本書とほぼ同時期に刊行された、マッキンゼーの伊賀泰代氏が書いた『採用基準―地頭より論理的思考力より大切なもの』 (12年/ダイヤモンド社)のように、求める人(要件)は「将来のリーダーとなる人」(リーダーシップ)と一本に絞ったものの方が、ずっとインパクトはあるし、可も無く不可も無いような人材ばかり採ってしまう愚は避けられるのではないでしょうか。

 但し、読み進むにつれて分かったのですが、本書は必ずしも採用時における人材の見分け方とういことに限定したものではなく、今社内にいる人材を職場での行動からどう見分けるかといことに中盤以降は比重がかかっているようです。

 採用面接時にこんな総花的なチェック項目で面接しても実効性は望めないように思いますが、今いる社員を見極めるということであれば、多少の現実味はあるかもしれません。後半は、「判明してしまった『仕事力』、さて、その人をどう扱うか?」といったように、ややネガティブ対応になっているキライもありますが、実際、採用時にその人の全てを見抜くのは不可能で、採ってしまってからどうしようかというケースは珍しくないかと思います。

 しかし、そうしたことを考慮しても、帯の「すべての上司に一度は目を通してもらいたい本」とのフレーズほどに書かれていることにそれほどの斬新さは無く、Amazon.comでの「人財についてかかれた究極の本」などといったレビューには"やらせ"感を覚えずにはいられません。個人的には敢えて「("やや中古"本に)光を」当てるほどのものでもなかったか。

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