【2270】 × 中澤 二朗 『働く。なぜ? (2013/10 講談社現代新書) ★☆

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上から目線で尚且つ分かりにくい。昭和的なものに凝り固まっている旧来型人事の体現者か。

働く。なぜ? 講談社現代新書1.jpg 中澤 二朗 『働く。なぜ?』.JPG働く。なぜ? (講談社現代新書)「働くこと」を企業と大人にたずねたい.jpg 『「働くこと」を企業と大人にたずねたい ―これから社会へ出る人のための仕事の物語』['11年]

 自分で勝手に名付けた「"やや中古"本に光を」シリーズ第1弾(エントリー№2270)。以前に著者の『「働くこと」を企業と大人にたずねたい―これから社会へ出る人のための仕事の物語』('11年/東洋経済新報社)を読み、巷ではそこそこ好評であるのに自分には今一つぴんと来ず、自分の理解力が足りないのか、或いはそもそも相性が悪いのかなどと思ったりもしました。文中にあまりに"考え中"のことが多いような気がして、しかもその"考え中"のことを"考え中"のまま書いているような気がし、そのモヤっとした感じが全体にも敷衍されていて、図説等にもその傾向がみられたように思います。

 今回、同じ著者の本書を読んでみて、また同じような印象を持ちました。前著を読んだ際も感じましたが、著者は真面目な人なのでしょう。今回も、停滞する日本経済がアジア全体の成長に置いていかれ気味な今日、日本で働くことの意味を今一度見つめ直し問い直そうとする真摯な姿勢は感じられました。しかし、如何せん、"考え中"のことを"考え中"のまま書いているという前著での著者のクセは治っていないどころか進行しており、理解に苦しむ図説が再三登場します。

 今回も自分だけが物分かりが悪いのかと思って(ちょっと心配になって?)Amazon.comのレビューなどを見ると、ほかにもそういう人は多くいたようです。まあ、前著同様に良かったという人もいるようですが、個人的には、あまりに我田引水、唯我独尊的な論理展開並びに見せ方に感じられ、大企業の人事出身者に時折見られる上から目線的なものを感じました。

 今まで1万人と面接したとか、ベンチャー企業を起こして売り込みをかけているわけでもないのに、そんなことを誇ってはいけません。冒頭の留学生の疑問に対する回答をはじめ、「日本型雇用の素晴らしさ」を説き、「40年ひとつの会社で働くことの意味」を語っているところなど、逆にこれまでの経験が仇(あだ)になって、昭和的なものに凝り固まってそこから抜け出せないでいる旧来型の人事の体現者のように思えてしまいます。

 「日本は就職ではなく就社」なんて今頃言っているし、「石の上にも三年、下積み十年」という考えが著者の職業人生の礎でありモットーであったのかもしれないけれど、それを上から目線で人に押しつけるのはマズイのではないでしょうか(人事の人って自分が特別な人間だと思い込んでいる人がたまにいるけれど)。

 後半になると「名著名言」の引用だらけで、う~ん、「第2の佐々木常夫」を目指しているのか、この人は。それは著者の勝手ですが、Amazon.comのレビューでも指摘されていたように、M.ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」について致命的な誤読があります。それも旧約聖書と読み間違えたのかというくらい真逆の読み方になっていて、あとがきで謝辞を献じられている大先生らは本書についてどう思っているのか、老婆心ながらもやや心配になりました。本書に関して言えば、「中古本」に光は当たらずじまいか。

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