【2261】 △ 植村 修一 『不祥事は、誰が起こすのか (2014/09 日経プレミアシリーズ) ★★★

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取り上げた事例が多すぎて「不祥事カタログ」みたいになってしまった印象も。

IMG_3267.JPG不祥事は、誰が起こすのか.jpg        倫理の死角2.jpg
不祥事は、誰が起こすのか (日経プレミアシリーズ)』 マックス・ベイザーマン『倫理の死角ーなぜ人と企業は判断を誤るのか

 元日銀マンであり、日銀在職中には自ら考査の現場を担当したという著者が、データ漏洩、偽装表示、横領、反社会的勢力など、絶え間なく発覚する近年のさまざまな企業不祥事の数々を俎上に載せ、どこからそれは起こるのか、原因の解明に挑んだ本です。

 不祥事を起こした企業が事後に発表した第三者委員会の報告書を読み解くなどして、報道としてなされたもの以上に正確で詳細な情報を把握したうえで論考を進める姿勢には信頼が持てるとともに、内容的にも興味深いものでした。

 但し、ちょっと詰め込み過ぎだったかな。ここ何年かでこんなにも多くの多種多様の不祥事があったのかとあきれるくらい多くの不祥事の事例を取り上げていて、人命を損なう事故乃至その恐れのある事故(食品汚染・運輸事故・産業設備事故・医療過誤・設計瑕疵等)及びその隠蔽に由来する刑事犯罪から、金融に係るもの(粉飾決算・不正融資・インサイダー取引等)、官民・民民間に係るもの(談合・汚職・横領・贈収賄・カルテル・下請いじめ等)まで、確かにきちっと分類されているし、分析の方法論も理解できるものの、あまりに事例の拾い方が網羅的であり過ぎたために、結果的に「不祥事カタログ」みたいになってしまい、必ずしも読み易くない上に、1つ1つの案件の分析がやや浅くなってしまったようにも思えたのが残念です(多くを取り上げ過ぎることで、逆に著者の持ち味が見えてこない)。

 本書においても取り上げられているマックス・ベイザーマンの『倫理の死角』('13年/エヌティティ出版)にもありましたが、結論的には、不祥事を起こしやすい企業には共通の「文化」があり、そこでは正論より「大人の事情」が優先され、或いはまた、ミス発生に過剰なプレッシャーをかけたり、しがらみ構造が存在したりするということなのでしょう。M&Aを繰り返した結果、経営の統制が弱くなって現場任せが放置されていたりすることもミス等に繋がると、ガバナンスの盲点なども指摘しています。

デザートに異物混入.jpg 最近マクドナルドで相次いだ異物混入問題は、食べ物に異物なんてあり得ないという前提で商品を口にする消費者と、完全な混入ゼロは困難とする食品業界との認識のズレを浮き彫りにしましたが、本書でもビッグデータから不正を見つけ出す手法など最新のテクノロジーを紹介する一方で、現実には不正・不祥事の「ゼロ」はありえず、必ず起きるという前提の下でいかに頻度を減らすかが予防のポイントだと述べているのが興味深い点でした

マクドナルド、「デザートに異物混入、子どもけが」を受け会見 2015/01/07 19:00 【共同通信】 

《読書MEMO》
『不祥事は、誰が起こすのか』5.JPG●「不祥事防止のための10ケ条」
  第1条:人は弱い。必ずミスをする
  第2条:予兆を逃すな 
  第3条:システムにバグはつきもの  
  第4条:権威勾配の傾きに気をつけろ 
  第5条:挙証責任を転嫁するな 
  第6条:ルールは守れ 
  第7条:正論を大事にしろ 
  第8条:副作用には気をつけろ 
  第9条:組織文化を自覚しろ  
  第10条:大事な事(本分)を忘れるな

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