【2247】 ○ オバタ カズユキ 『大手を蹴った若者が集まる知る人ぞ知る会社 (2014/02 朝日新聞出版) ★★★★

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優秀さの部分はスゴすぎてマネ出来ないが、キャリアに対する考え方という点で啓発的。

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大手を蹴った若者が集まる知る人ぞ知る会社』(2014/02 朝日新聞出版)

 本書は2部構成になっていて、第1部で「大手を蹴った若者が集まっている会社」を紹介し、第2部で大企業とベンチャーのどこが違うかを考察していますが、特に第1部が興味深かったです。

テラモーターズ.jpgSansan.jpg 第1部で紹介されているのは、「テラモーターズ」(電動バイク、社員数20人)、「Sansan」(名刺管理サービス、社員数100人)、「ネットプロテクションズ」(後払い決済サービス、社員数50人)、「フォルシア」(商品検索エンジン開発、社員数53人)、「クラウドワークス」(クラウドソーシング、社員数20人)の5社で、いずれもベンチャーで従業員数は20人から最大100人までと、一般の人には殆ど知られていない比較的小さな会社ばかりです。

 創業者自身が大手企業からベンチャー経営者に転身した人が多く、そこに集まった若い社員も皆、極めて優秀で、一旦は大手企業に勤めたもののそこを辞めた人や、大手企業の幾つもの内定を蹴った人ばかりといった感じ(その意味ではタイトルに偽りなし)。
 そうした世間的にみても"レールに乗って"いて、そのまま大企業にいれば、安泰な人生を送れたかもしれない若者たちが敢えてそこから飛び出したり、最初から大手には行かなかったりしたのはなぜか(これだと「大手を蹴った」にウェイトがかかり過ぎるから、換言して「なぜ殆どの人が知らないような会社を選んだのか」と言った方がいいかも)―本書の紹介事例を読むと、そんな彼らのユニークともとれる"キャリア行動"の背景に、個々の強い意思や夢も感じられますが、それと呼応するような各社のビジョン、業界内における先進技術や戦略的ビジネスモデル、トップの人柄やリーダーシップがあることも窺えます。

 企業の人事担当者向けの、優秀な若者を惹きつける企業の魅力とは何かを考える上でのテキストとしても読めますが(最初はそういう本だと思った)、むしろ、これから就職活動をする若者や、既にキャリアの第一歩を踏み出したもののこのままこの会社にいていいのかと悩んでいる人に向けて書かれた本と言えるでしょう。
 実際にはベンチャーの世界が甘いものでないことは確かで、成功する企業はごく一握りだとも言われています。巻末には、こうした優秀な人材を得て活気に溢れる仕事をしている企業をその他にも紹介したリストがあり、ベンチャー企業への就職を希望しているものの、玉石混交でどこがいいのか分からないという人にはガイドブックとしても読めるかも。

 但し、第1部で紹介されている企業にいる社員たちは、先にも述べた通り皆「超」がつくくらい高学歴で、好不況に関わらず何社もの大手企業から内定をもらうような人ばかり、しかも、単に就活に強い、企業ウケする、といっただけでなく中身的にも優秀な若者たちです。
 取材形式のままに書かれている第1部では、著者はそうした若者に対し、彼らの生い立ちから、どのように育ち、どのように学んだり遊んだりして、どうしてその会社に入ったのかまで丁寧に聴き出しており、彼らがただ優秀なガリ勉だったわけでなく、非常に人間的で、青春を謳歌しつつ時に自らのキャリアについて迷うなど、真剣に生き、真剣に自らのキャリアを考えてきたことが窺えました。

 彼らの「優秀さ」の部分はちょっとフツーの人にはマネ出来ないなあと思わせるぐらいスゴいレベルなのかもしれませんが、キャリアというものに対する自分なりの考え方を持つことの重要性という意味では、その優秀さゆえに安泰な道を選ぶ手もあった彼らが数十人しか社員のいないベンチャーで、しかも活き活きと働いていることを想うと、非常に啓発される要素があるかと思います。

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