【2238】 ○ 難波 克行 『職場のメンタルヘルス入門 (2013/07 日経文庫) ★★★★

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入門書(実務書・啓発書)としては分かりやすくオーソドックス。

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職場のメンタルヘルス入門 (日経文庫)』 難波克行/向井蘭 『現場対応型 メンタルヘルス不調者 復職支援マニュアル

 職場のメンタルヘルス問題に関心のある従業員、管理職、人事担当者を対象に、職場のメンタルヘルス不調の問題や対処・予防法について分かり易く解説した入門書です。

 全5章構成の第1章「職場のメンタルヘルス不調」では、さまざまなメンタルヘルス不調について、その症状や治療、職場での対応が簡単に解説されていて、うつ病やうつ状態だけでなく、不眠症、自律神経失調症、パニック障害、適応障害、双極性障害、アルコール依存症、さらには「いわゆる新型うつ病」や「発達障害」など、メンタルヘルス不調全般を幅広く取り上げています。

 第2章「メンタルヘルス不調を防ぐストレス対策」では、自分でできるストレスの緩和策として、ネガティブな「つぶやき」に気づいて対処する認知再構成の技法、漸進的筋弛緩法や呼吸法などのリラクゼーション技法、人間関係のストレスを見つめ直す対人関係療法的な技法や、自分の気持ちや考えを素直に表現するアサーティブネスの技法などを紹介しています。

 第3章「職場で取り組むメンタルヘルス対策」以下、第4章「メンタルヘルス不調者の早期発見・早期対応」、第5章「ンタルヘルス不調者への対応と復職支援」は、管理職や人事担当者にとっての読みどころになるかと思われます。

 第3章では、職場と組織を「元気にする」ことでメンタルヘルス不調を予防しようという「ポジティブなメンタルヘルス対策」について解説されています。特に、職場のメンタルヘルスを左右するのは上司の行動であり、職場のストレスを減らすためのマネジメント・コンピテンシーが管理職にも求められるとして、そうしたマネジメント行動を促すための「コーチング」「行動科学マネジメント」「コンフリクト・マネジメント」について紹介されています。さらに、いきいきとした職場作りに従業員全員で取り組むための「職場環境改善活動」や「組織活性化」の取り組みや、こうした「職場の活性化」「個人の活性化」対策を、どのように企業の経営課題に組み込むべきか、関連部門がどのように連携すべきか、その実施のためのヒントが示されています。

 第4章では、メンタルヘルス不調者の早期発見・早期対応のためには管理職はどういったことに留意すべきか、部下の不調に気づいたときにはどのように対処すればよいか、場面ごとに事例を挙げて解説しています。また、社内の健康管理窓口とどう連携していくか、従業員のプライバシーをどのように守ればよいかについても述べています。

 第5章ではさらに、メンタルヘルス不調で休業している社員への対応や、復職支援の進め方を、休業開始から復職判定、復職プランの準備、復職後のフォローアップまで、場面ごとに解説しています。

 実務書と啓発書を兼ねた入門書と言え、メンタルヘルス研修を行う際のチェックポイントを確認するうえでも比較的オーソドックスな参考書になるかと思いますが、新書版にして相当の内容を盛り込んでいるため、(項目主義に陥らないよう配慮はされているものの)例えば、復職支援などの解説についてはややもの足りないかもしれません。

 復職支援について書かれた最近の書籍では、同著者による『現場対応型 メンタルヘルス不調者 復職支援マニュアル』(2013年/レクシスネクシス・ジャパン、弁護士・向井蘭氏との共著)があります。また、亀田高志 著 『人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援』(2012年/労政時報選書)などもあり、実務対応についての知識を深耕したい人事パーソンは、これらに読み進まれることをお勧めします。

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