【2236】 △ 内海 正人 『会社で活躍する人が辞めないしくみ (2013/11 クロスメディア・パブリッシング) ★★★

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辞めない「しくみ」づくりの具体性がもう少し欲しかった(中小企業経営者向けの啓発書か)。

会社で活躍する人が辞めないしくみ .jpg会社で活躍する人が辞めないしくみ』 (2013/11 クロスメディア・パブリッシング)

辞める.jpg 序章で、社員が残る理由も、離れる理由もやはり"人"であるとし、第1章「会社のしくみ」で、会社が社員に対して「安心」を与えているかどうかが、優秀な社員が辞めずにのびのびと働くための条件となるとしているのには納得。結局、社員が辞める理由の大半は、ハーズバーグが言うところの「動機づけ要因」よりも「衛生(環境)要因」によるものでしょう。

 従業員たちが求めているのは「安心して働ける職場環境」であるとの考えに基づき、第2章「職場環境」では、「会社のゴールを社員と共有する」「社員に会社の将来図を見せる」などといったことが提唱されています。第3章以下、「人間関係」「仕事」「評価」「給与」「採用」「育て方」というそれぞれの視点から、社員が辞めないしくみについて言及しています。

 これを見て分かるように、著者は、1つの施策だけを打てば大丈夫ということはなく(また、そうした便利な施策があるわけでもなく)、これらを総合的に組み合わせていくことが必要であるとしており、また、そうした施策を複合的に講じることが、"魅力のある会社"になることに繋がり、そのことがまた、その会社にとっての優秀な人材が辞めないという好循環に繋がるとの考え方に立っていて、こうした著者の考えには個人的にも大いに賛同するところです。時間のかかる取り組みですが、人材経営の真実であることには違いないでしょう。

 但し、その結果として本全体が網羅的にならざるを得ず、「しくみ」とタイトルにありながらも、1つ1つの章の内容が「しくみ」そのものはさほど解説されておらず、「そうしたしくみ作りが必要である」といった、理念的なものに留まっていて、基調講演を聴いているような読後感を持ちました(「数年先の展望が抱ける」「失敗が許容される」「育てる仕組みがある」「尊敬できる上司がいる」「育成型の評価制度『会社で活躍する人が辞めないしくみ』.jpgがある」―皆すべて確かにそうであり、また、「安心して働ける職場環境」という冒頭のコンセプトとリンクはしているのだが...)。

 優秀な人材をどうすれば採用できるか(アトラクション(Attraction))について書かれた本にくらべると、優秀な人材が会社を辞めないための対策(リテンション(Retention))について書かれた本はそう多くはなく、内容的に期待したのですが、もう少し具体性が欲しかった気もします。「しくみ」そのものの事例やヒントが全く書かれて無いわけではないものの、やや目新しさには欠けたように思います(どちらかと言うと、中小企業経営者向けの啓発書か)。

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