【2233】 × 小玉 歩 『仮面社畜のススメ (2013/12 徳間書店) ★☆

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全否定はしないが、「自己啓発ポルノ(キャリアポルノ)」の一種か。

小玉 歩 『仮面社畜のススメ』 .jpg仮面社畜のススメ (一般書)』(2013/12 徳間書店)

仮面社畜のススメ9.jpg 著者の略歴(自己PR?)を見ただけで既に大いに胡散臭そうなのに、Amazon.comのブックレビューで意外と本書を推す人が多かったのには驚きましたが、個人的にはこの本は、谷本真由美氏が言うところの「キャリアポルノ」の典型ではないかと思いました。「自己啓発ポルノ」と言ってもいいかな。

 ビジネスパーソンは自分なりの考えや価値観、行動指針を持つべきでしょうが、実際のビジネスの場面においては状況対応型になるのが普通でしょう。リーダーシップ理論だって、あるべきリーダー像を唯一のものとする「特性論」は廃れ、50年前から「状況対応型」のリーダーシップ論が主流になっています。

 本書に書かれていることも、原則論で捉えれば、特段目新しいことでもないような内容が多く、但し、本書の危ういところは、ビジネス及び職場の実態や個別の状況に全くおかまいなしに、特定の形式やスタイルを押し付けている点で、その決めつけによって類書との差別化、影響力の強化を図っている点です。

 まあ、本書を読んで目からウロコが落ちたという人はそういないと思いますが、Amazon.comのブックレビューなどからみて、"我が意を得たり"と思ってしまった人は結構いたみたいです。でも、ここに書いてあることは全てが実行可能とは思えないし(逆に出来ることは既にやっているだろうし)、この本を読んだ人が明日から新たに本書にある通りに行動するかどうかも疑わしいです。

 考えなしに実行すれば(そんなこをする人も出来る人も殆どいないと思うが)、結局は著者と同じように会社をクビになるかも。この本、服務規律違反で会社をクビになった人物が書いていることに留意すべきでしょうね。

 ブラック企業と思われる会社に入ってしまった人が指南書として読むつもりならば、こんな本読んで「仮面」を気取ってその会社にしがみついているよりは、早目に自らのキャリア発達が可能な場を他所(よそ)に探した方が良いように思います。

 書かれていることを全否定はしませんが、読むことによって(ある人にとっては)その間ドーパミンが出続け、それで読み終わって暫くしたら後には何も残っていない―「消費されるだけの本」という意味で、やはり「自己啓発ポルノ」の一種、その典型でしょう。

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