【2229】 △ 一般社団法人モチベーション・マネジメント協会 『実践 モチベーション・マネジメント―人を活かし成果を上げる』 (2013/12 PHP研究所) ★★★

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モチベーション低下要因を「変化・慣性・理想・違い」に分類しケースで語る。読み易いが、やや浅いか。
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実践モチベーション・マネジメント』(2013/12 PHP研究所)

 高いモチベーションの実現が、成果を上げる強い組織づくりには必須であることは異論のないところだと思います。本書は、何がメンバーのモチベーションを下げるのか、どのようにモチベーションをマネジメントすればよいのかをテーマに、ありがちな会社内の「モチベーション低下」の事例をストーリー仕立てで紹介しつつ、「モチベーションUP」のための具体的な方策や考え方を、背景となる理論やセオリーとともに解説しています。

ビジネスシーン1.jpg 12の事例と24の理論解説で構成されていますが、事例は、モチベーションを下げる要因を「変化・慣性・理想・違い」の4つに分類しています。例えば「変化」がモチベーションを下げるケースでは、人事異動やM&Aなどによるモチベーション低下の事例をストーリーで示し、それらに対する対応をアドバイスするとともに、「欲求階層説」や「Ⅹ理論・Y理論」などのモチベーション理論が紹介および解説されています。

 同様に、仕事がつまらない、仕事に飽きたなど「慣性」がモチベーションを下げるケースでは、「集団疑似性」や「高原現象」などの理論が、キャリアがみえない、自信喪失などの「理想」がモチベーションを下げるケースでは、「プランド・ハップンスタンス」や「経験学習モデル」などの理論が、年下上司・年上部下、女性上司、外国人社員といった「違い」がモチベーションを下げるケースでは、「サーバント・リーダーシップ」や「PM理論」などの理論が解説されています。
 
 本書は「公認モチベーション・マネージャー資格」の「アドバンスド・テキスト」でもあるとのことですが、モチベーションに関する諸理論を最初から体系立てて解説するのではなく、モチベーションの低下要因をまず類型化し、該当する状況をケース・ストーリーで示した上で、各事例にリンクする諸理論を紹介しているという点ではユニークであると思います。

 事例が、モチベーション・コンサルタントが相談者である上司の悩みに応えるという形をとっているため、読み物のようにすらすら読める一方で、事例にリンクされて解説されている諸理論が一般的かつ広範なケースに当てはまるものであるだけに、初学者が読むと、ともすると事例に引きずられてしまい、理論の一面しか理解し得ないのではないかとの危惧もいだきました。

 更には、仕事がつまらないと感じている新人に困っている上司に対して、「修行だと思って文句を言わずやってみろ」と言ってみるのもいいとか、時流から見てどうかなと、或いは状況によって逆効果ではないかとも思われるアドバイスなどもあり、事例と理論の結び付けにも一部に強引さを感じるものがありました。

 一応は巻末で、ケースごとに紹介した理論を改めて体系化して整理しており、また、各ケースや理論に関係する参考図書も紹介されているため、モチベーション理論の初学者は、本書と併せて、巻末に紹介されている参考図書や他の入門書などに読み進むことをお勧めします。

 研修担当者など実務者の観点からすると、ケース・ストーリーを実際の研修で使ってみるというよりは(ケース・ストーリーの中にQ&Aが混在している感じなので、使うとすれば、ケース・ストーリー全体を、その後で解説する理論の理論背景として説明する感じになるか)、モチベーション・マネジメントに対する理解度を再確認するとともに、改めて意識を高める参考書といった感じでしょうか。

 読み易いことは読み易いのですが、その分「アドバンスド(上級)」というほどには歯ごたえがなく、モチベーション理論のおさらい本としてはやや浅いとの印象を受けました。

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