【2220】 ◎ 小柳 勝二郎 『65歳全員雇用に対応する人事・賃金・考課の知識と実務 (2013/05 労働調査会) ★★★★★

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人事・賃金・考制度のオーソドックスかつ木目の細かいテキストであるとともに、今後のあり方を探るうえでの啓発書でもある。

65歳全員雇用に対応する人事・賃金・考課の知識と実務9.JPG65歳全員雇用に対応する人事・賃金・考課の知識と実務.jpg65歳全員雇用に対応する人事・賃金・考課の知識と実務

 本書の著者の小柳(おやなぎ)勝二郎氏は、日本経営者団体連盟の元理事で、賃金部長、労務部長などを歴任し、日経連を退職した後はコンサルタント(なMMC総研代表)として活躍している人ですが、65歳雇用に限らず(もちろんその問題は念頭に置きながら)、人事・賃金・考課についての基礎知識全般を網羅したうえに、実務に沿ったオーソドックスかつ木目の細かい解説がなされているように思いました。

 第1部「65歳までの雇用確保措置と人事・賃金等の具体的対策」では、高年齢者雇用安定法の改正のポイント、雇用確保の考え方、制度化に当たっての留意点、具体的対応策を整理してまとめています。継続雇用の問題をマクロ的な観点や人事施策的な面から解説する一方で、例えば再雇用制度の導入に伴う賃金カーブの見直しについては4つの方法に分けて解説しており、さらに、定年延長の実施についても4つの方法を示すなど、それぞれの企業の人事戦略の違いに対応できる制度解説となっており、また、今後の人事管理の動向を見据えた提案的な要素も多分に含まれたものとなっています。

 第2部「これからの人事制度のあり方と具体策」では、人事制度の導入・運用・管理の方法を解説するとともに、人事制度導入についての基礎知識、等級制度の導入方法について詳しく述べ、さらに、グローバル人材の確保・育成・活用と処遇制度についても触れられています。特に、成果主義の問題点と対策について述べている箇所で、職務・役割・成果主義の制度の内容をよく理解し、従業員に十分説明して制度作りや管理・運用をすれば、公正で納得できる制度として従業員からも評価されるだろうとしている点はしっくりきました。

 以降、第3部「目標管理制度の導入・活用方法」、第4部「納得性を高める人事考課制度の導入・活用のポイント」、第5部「賃金制度の導入・見直しのポイント」、第6部「賞与・一時金制度見直しのポイント」、そして最後の第7部「退職一時金の見直し方向」まで、人事・賃金・目標管理・人事考課等を広く網羅しており、また、制度設計における実務入門書としてもかなり深いレベルまで踏み込んでいますが、それら技術面の解説の前にまず人事理念や制度背景の説明から入り、そうした制度を入れることの意義をしっかり解説しているため、技術的なテキストとして読めるだけでなく、人事・賃金・考課制度のあり方を根本的におさらいする啓発書にもなっているように思いました。

 何よりも制度解説が具体的であり、その意味では、制度設計に携わる人にとってリジッドな(手堅い)指南書であることは疑いの余地はないと思われますが、人事パーソン全般にとっても、これからの超高齢社会を念頭に置きながら人事制度のあり方を探る啓発書として読める本であり、これだけの"濃い"内容で2,000円という価格はかなり良心的であるとみていいのではないでしょうか。全体を通読し(かなり読みではあるが)、その上で手元に常備しておいて必要に応じて参考書として使う、あるいはさらなる自己啓発のために再読するといった使い方になるのではないでしょうか。役職階層を問わずお薦めしたい良書です。

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This page contains a single entry by wada published on 2014年12月 7日 08:41.

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