【2219】 ○ 山川 隆一 『労働法の基本 (2013/06 日経文庫) ★★★★

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前著『労働契約法入門』の改定だが、タイトル通りの入門書としてスッキリした。

労働法の基本36.JPG労働法の基本 (日経文庫)』〔'13年〕労働契約法入門 山川隆一.jpg労働契約法入門 (日経文庫)

 '08(平成20)年3月に労働契約法施行された際に、日経文庫で、大学教授(昨年['13年]、慶應大学から東大に移った)の山川隆一氏の『労働契約法入門』と弁護士の浅井隆氏の『労働契約の実務』がほぼ同時に刊行されましたが、今度は、その労働契約法の'12(平成24)年の改正に伴って、同じ日経文庫で浅井氏の『Q&A 管理職のための労働法の使い方』が'13年3月に刊行され、それに続くかのように山川氏による本書『労働法の基本』が刊行されました。

 日経文庫編集部は、法制定及び改正のごとに弁護士と大学教授でセットにして書かせているのか? ('12年の法改正については、同じく日経文庫で、安西愈弁護士による『雇用法改正―人事・労務はこう変わる』が今年['13年]2月に刊行されている)。日経文庫編集部は、法制定及び改正のごとに弁護士と大学教授でセットにして書かせているのか?(悪くない試みだと思うが)

 今回の浅井氏と山川氏の著書を比べると、浅井氏の本は「職場の管理職」向けで、山川氏の方は「初学者」向け(人事部の初任者なども含まれるか)と、多少読者層を変えてきているようです。

 山川氏の前著『労働契約法入門』は、「労働契約法」に的を絞ったものと言うより労働法全般の入門書として読めるもので、その分、はっきり言ってややタイトルずれの感もありましたが(労働契約法だけだと、規定を置いた事項が限られている上に判例は未だ無い状況だったので、労働基準法などについても取り上げ、個別的労働関係法全般を概観するものとした―と本書まえがきにもある『労働法の基本』.JPGが)、本書『労働法の基本』は前著『労働契約法入門』を改定し、平成24年の労働契約法の改正など最近の法改正の状況を織り込みつつ、個別的労働関係法の解説を充実させるとともに、労働組合法など集団的労働関係法における法的ルールについてもとり上げたとのことです。

 その分、網羅的であるとともに、タイトルずれが無くなって、入門書としてスッキリしたという感じでしょうか。労働法とは何かということから始まって、労働契約の基礎と労働条件の決定・変更、人事をめぐる法的ルール、労働契約の終了と続き、労働条件(賃金・労働時間・労災補償)、更に、雇用平等・ワークライフバランス、様々な雇用形態といった今日的テーマを取り上げ、最後に、労働組合と労使関係についての解説がきています。

 工夫されていると思ったのは、本文の各所にQ&A形式の「チェックポイント」が設けられていて、自学自習ででも理解度を確認することできるようになっていることです(質問の解答は巻末に纏められている)。

 例えば第1章の章末には次の4つの問いがあります。
 Q1 労働基準法の定める基準を下回る労働条件も、労働者が自由な意思で合意した場合には有効となる。
 Q2 使用者が労働契約法の規定に従わない場合、労働基準監督官が是正勧告をすることがある。
 Q3 労働審判制度は、労働組合が使用者に対する権利を実現するためにも利用できる。
 Q4 都道府県労働局における個別労働紛争解決制度では、当事者に対して法に従った紛争解決を強制することはできない。
 解答は、
 Q1 × 労働基準法13条により無効となる。
 Q2 × 労働契約法は労働基準監督制度による実現は予定されていない。
 Q3 × 労働審判制度の対象は労働者個人が当事者となる個別紛争のみである。
 Q4 ○ 個別労働紛争解決促進制度のもとでの助言・指導もあっせんも、自主的な紛争解決を促進するための制度である。

 知ってる人は知ってるけれど、知らない人は知らないといった感じの問題が多いかな。設問文自体が本文テキストの延長及び要約としてあるようにもとれる良問が揃っているように思います。
 ベテランの人事パーソンは、部下である人事部の初任者に本書を読ませる前に、取り敢えず自身でこれらの設問に解答してみましょうね。

《読書MEMO》
●章立て
第1章 労働法とは何か
第2章 労働契約の基礎と労働条件の決定・変更
第3章 人事をめぐる法的ルール
第4章 労働契約の終了
第5章 労働条件--賃金・労働時間・労災補償
第6章 雇用平等・ワークライフバランス
第7章 様々な雇用形態
第8章 労働組合と労使関係

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This page contains a single entry by wada published on 2014年12月 7日 07:40.

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【2220】 ◎ 小柳 勝二郎 『65歳全員雇用に対応する人事・賃金・考課の知識と実務』 (2013/05 労働調査会) ★★★★★ is the next entry in this blog.

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