【2180】 ○ 安西 水丸/和田 誠 『青豆とうふ (2003/09 講談社) ★★★★

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安西氏が急逝した今となっては貴重なコラボ。文庫化されて入手し易く気軽に読めるのが有難い。

『青豆とうふ』.jpg青豆とうふ.jpg 青豆とうふ 文庫.jpg 安西 水丸.jpg   『パートナーズ』[08年].jpg
青豆とうふ』['03年] 『青豆とうふ (新潮文庫)』['11年]安西 水丸(1942-2014.3.19/享年71)『パートナーズ』['08年]

 今年('14年)3月19日に脳出血のため71歳で亡くなったイラストレーターの安西水丸(1942年生まれ)氏と、同じくイラストレーターの和田誠(1936年生まれ)氏のリレーエッセイで、安西氏が文章を書くときは和田氏がイラストを描き、和田氏が文章を書くときは安西氏がイラストを描くという、この二人ならではのコラボレーションです。

チャペック「ロボット」2.jpg イラストレーターが二人寄れば同じことは出来そうにも思えますが、やはりそこはこの二人ならではと言うか、最初が「ハゲの話」で始まって、最後も「ハゲの話」で終わっていて、共にショーン・コネリーの話になっているという循環構造を成しているのも洒落ていますが、チャペックの「ロボット」から美空ひばり、キングコング、市原悦子、寺山修司、怪奇的体験、ジェイムズ・スチュアート、IVYファッション、映画で観た景色...と、とにかく文章や話題のつなぎ方が上手いなあと思います。

村上春樹 09.jpg 二人の文章の上手さは、あとがきの村上春樹氏も絶賛していますが、この本のタイトルは、安西氏が村上氏にタイトルをどうしょうか相談した時に二人が中華料理店で食べていたのが「青豆とうふ」だったというところから村上氏が「青豆とうふ」と名付けたということで、こうした"軽さ"と言うか"ユルさ"もいいなあと思いました。

 但し、ユルい話も結構多い中で、こと映画の話になると二人ともかなりマニアックになるのが面白いです。和田氏が高校時代にジェイムズ・スチュアートに絵入りのファンレターを出したら返事が来たというのなどは、その典型でしょうか。

 読んでいるうちに、今どちらが文章を書いていてどちらがイラストを描いているのか判らなくなるくらい、二人の文章と絵が次第に似てくると言うか、溶け込んでくるのですが、これ、計算してやっているとすればスゴイなあと。

 しいて言えば、安西氏が和田氏を描くことは少なく、描いてもあまり真正面から捉えないのに対し、和田氏は安西氏の正面から見た無精髭のある顔を描いていて、それでふと今和田氏が文章を書いているんだなとか思い出したりするのですが、この辺りは業界の先輩・後輩の関係とか影響しているのかなあ。

 この二人はその後、『パートナーズ』('08年/文藝春秋)でもコラボしており、こちらは「ライバルともだち」と「ことわざバトル」の二分冊になっていますが、例えば「ことわざバトル」の場合は、二人で諺を選び、それぞれについて文章担当を決めた上でイラストは半分ずつ受け持つという試みをしていて(一枚の紙に、先に描く方が左側に描き、描き終ったところで絵を交換し、空いている右側に絵を描く)、これを見ても二人の絵は似ているなあという気がします。

 どちらかと言うと、安西氏の方が和田氏の画風を意識してトーンを揃えていうような気がするのですが、他の作品におけるそれぞれの画風を十分にチェックしたわけではないので何とも言えません。

 ただ、安西氏が急逝して、こうしたコラボの機会が将来に渡って望めなくなったことは残念であり、寂しく思います。今となっては貴重なコラボですが、文庫化もされて入手し易く気軽に読めるのが有難いです。

寺山修司 by 安西 水丸/和田 誠
青豆豆腐_0406.JPG青豆豆腐_0407.JPG
【2011年文庫化[新潮文庫]】

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