【2166】 ○ 三浦 しをん 『まほろ駅前狂騒曲 (2013/10 文藝春秋) ★★★★

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シリーズ第3弾にしてパワーアップ? 作者のシリーズへの愛着が感じられる。

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まほろ駅前狂騒曲』(2013/10 文藝春秋)『まほろ駅前多田便利軒』(2006/03 文藝春秋) 「まほろ駅前狂騒曲」2014年映画化(監督:大森立嗣/主演:瑛太・松田龍平)

 多田便利軒に行天が転がり込み、居候を始めて早3年が経とうとしていた。そして多田は、ついに禁断の依頼(子供の預かり)を引き受けることに。それに対して行天の反応は―。

 作者の直木賞受賞作『まほろ駅前多田便利軒』('06年/文藝春秋)の第2弾『まほろ駅前番外地』('09年/文藝春秋)に続くシリーズ第3弾ですが、シリーズ物はシリーズが続いていくにつれてパワーダウンしていく傾向があるのに対し、このシリーズはここにきてパワーアップしている感じで、作者自身もこのシリーズに殊の外に愛着を抱いているのではないかと思わせるものでした。

 当初のコマ切れの話の連なりから、ここにきて大きなうねりのようなストーリー展開になっていて、相変わらず横中バスの間引き運転疑惑の追及に燃える岡さん(憎めないキャラだなあ)が、何故か、怪しげな無農薬野菜の販売組織の秘密を暴こうとする多田便利軒の多田・行天らの意向に沿った行動をとるようになるといった、ややご都合主義ともとれる話の展開もありましたが、まあ、面白かったからいいか。大きなストーリーになっている分、盛り上がりも十分でした。

 今回は、行天が主役といった感じで、その秘められた過去が徐々に明かされますが、飄々とした感じの男が、実は重い過去をしょっているという設定が何とも言えません(行天は怖いものを問われ「記憶」と答える)。預かった子供は実は仰天と別れた妻との間の実子であるわけですが、最初はその娘に恐怖を抱き、距離を置こうとして「あれ」呼ばわりしていた彼が、次第に親としての親愛の情を見せるようになり、終盤は「はる」と名前で呼ぶようになる展開は絶妙です。最後は実際に身を挺して娘を守ろうとして...(多田の方は多田の方で、バツイチ男&寡婦のキャリアウーマンの恋愛話があり、これはこれで楽しませてくれたが、行天に比べると今回はややインパクトが弱いか)。

 第1弾『まほろ駅前多田便利軒』が瑛太・松田龍平主演で映画化されたのに対し、第2弾『まほろ駅前番外地』はTVドラマ化でした。そして、この第3弾『まほろ駅前狂騒曲』は今年('14年)秋に映画化作品が公開予定です。但し、個人的には、これまでの映像化作品は観ていません。作中の「多田・行天」と配役の「瑛太・松田龍平」にギャップを感じ、映像化されたものに引っ張られるのが嫌だからというのがその理由です。シリーズが完結するまでは、映像化作品の方は観ないでおこうと勝手に決め込んでいます(それでも観てしまうかもしれないが)。

【2017年文庫化[文春文庫]】

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This page contains a single entry by wada published on 2014年8月11日 22:21.

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