【2165】 △ サム・テイラー/フレッド・ニューメイヤー 「ロイドの人気者 (The Freshman)」 (25年/米) (1963/11 コロムビア映画) ★★★

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安心して観ていられ、最後はほんわかした気分に。ヒネリが無い分、ややもの足りないか。

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ロイドの人気者 pa-teli.jpg 田舎から出てきて憧れの大学生となったハロルド(ハロルド・ロイド)は、学内の人気者になりたくて皆にアイスクリームを御馳走したりパーティを開いたりする。車中で知り合って意気投合した下宿屋の娘ペギー(ジョウビナ・ラルストン)の気を引こうとしたのだった。恋敵に触発されて今度はフットボール部に入り花形選手を目指すが、監督ロイドの人気者 01.jpgは彼を補欠として在籍させるものの、練習の時は選手のタックルの練習台として、試合の時はウォーターボーイ(水汲み)としてしか扱わない。そんな中、大事な試合でケガ人が続出し、やがてハロルドにも出場の機会が訪れる―。

 1925年公開のハロルド・ロイド(1893~1971)主演作で(原題:The Freshman)、ロイドはチャールズ・チャップリン、バスター・キートン共に"三大喜劇王"と言われる一方で、「The Third Genius(第三の天才)」と呼ばれ、その両者に次ぐ3番目の位置づけとされていますが、3人の中で一番興行的に稼いだのはロイドであるとされるくらい人気があったようです。

ロイドの人気者 04.jpg パントマイム系であるにも関わらず表情豊かでおとぼけぶりも際立つチャップリン、アクロバット系であるにも関わらずピンチでも無表情を崩さないシュールなキートン―個性が強烈で存在そのものがエキセントリックなこの両者に比べると、ロイドはその特徴的な眼鏡を除いてはごく普通の若者といった感じで、逆に眼鏡によって都会的な印象を醸しており、その辺りが当時の観客に親近感を与えたのではないでしょうか。

ロイドの人気者 06.jpg 「ロイドの要心無用」('23年)、「猛進ロイド」('24年)と並ぶ彼の代表作とされるこの作品で、その年の最大のヒット作だったそうですが、自分が人気者になったつもりでいた青二才が、実は皆からおもちゃにされていたことを知って落ち込むものの、恋人に「あるがままの自分になって、本当の人気者になって」と言われ、スポーツで奮起して最後は恋人の真の愛を得るというストーリーは、やや定番といった感じです。安心して観ていられるし、最後はほんわかした気分にさせられるものの、「要心無用」などと比べるとややもの足りないか。

ロイドの人気者 tokaihu.jpg この作品は「キートンのカレッジ・ライフ(大学生)」('27年)などにも影響を与えたとされ、その結果、「カレッジ・ライフ」の方がこの作品のパクリであると見なされてキートンの作品の中でも相対的にやや評価が低くなる傾向があるようですが、この作品でロイドが活躍するスポーツはフットボール、「カレッジ・ライフ」でキートンが活躍するのはボート競技であり(キートンがフットボールで活躍するのは「ロイドの人気者」の前々年公開の「キートンの恋愛三代記」('23年)だった)、キートンの「カレッジ・ライフ」の方が、ラストで苦手だったはずのあらゆるスポーツ競技の技を使って恋人の救出にいくなどヒネリが効いていて、"パクリ"と呼ばれる筋合いのものでもないように思います(個人的好みからのキートン擁護的な見方?)。

ロイドの人気者 05.jpg 但し、この作品も、終盤のフットボールシーンのロイドのアクションは愉しめるし、どちらかと言うとギャグ系のロイドが、ここでは体を張って頑張っています。随所にエスプリも効いていて、恋人の泣かせる励ましの言葉もあり、人によっては「要心無用」よりこちらが好みだという人がいてもおかしくないかもしれません(個人的にはやはり「要心無用」の方が上にきてしまうのだが)。

大学は出たけれど 5.jpg 因みに、ハロルド・ロイドが作品中で「ハロルド・ロイド」として登場した作品は「要心無用」のみで、この作品では「ハロルド・ラム(Harold Lamb)」、通称「スピーディー(Speedy)」となっています。このスピーディーという愛称はその後の作品に引き継がれ、「ロイドのスピーディー」('28年)などは、小津安二郎監督の「大学は出たけれど」('29年)の1シーンにそのポスターが出てくることでも知られています。
「大学は出たけれど」('29年)田中絹代/高田 稔

 チャップリンが下層階級を主に演じ、キートンが主に上流階級を演じたとすれば、ロイドはその中間あたりでしょうか。この作品でも、ちょっと周囲に大盤振る舞いしたばかりに、後のやり繰りが苦しくなってしまう主人公ハロルドであり、まあ、大学に行くということ自体が当時としては恵まれていた方なのかもしれないけれど、特別お金持ちというわけでもなさそう。学生同士のダンスパーティなどは都会的雰囲気に満ちていて、当時の大学生の風ロイドの人気者 siai.jpg俗を描いているという点では、映像的には貴重かも。同じく小津安二郎の「学生ロマンス 若き日」('29年)などと比べてみるもの面白いかもしれません(片やエール大学、片や早稲田大学がモデルか)。

The Freshman (1925).jpg「ロイドの人気者」●原題:THE FRESHMAN(THE FUNNY SIDE OF LIFE)●制作年:1925年●制作国:アメリカ●監督:サム・テイラー/フレッド・ニューメイヤー●製作:ハロルド・ロイド●脚本:ジョン・グレイ/サム・テイラー/フレッド・ニューメイヤー●撮影:ウォルター・ランディン●音楽:ウォルター・シャーフ●時間:100分●出演:ハロルド・ロイド/ジョビナ・ラルストン/ブルックス・ベネディクト/ジェームズ・アンダーソン/パット・ハーモン●日本公開:1963/11●配給:コロムビア映画(評価:★★★)
The Freshman (1925)

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