【2156】 △ エドワード・セジウィック 「キートンの結婚狂 (Spite Marriage)」 (29年/米) (1929/12 MGM映画) ★★★

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キートンのMGM移籍第2作にして最後のサイレント作品。キートンらしさが次第に後退。

キートンの結婚狂 1929年 vhs.jpg Spite Marriage (1929) 輸入盤.jpg キートンの結婚狂 結婚を迫られる.png
キートンの結婚狂 [VHS]」/「Spite Marriage [VHS] [Import]」 Dorothy Sebastian and Buster Keaton

キートンの結婚狂 舞台2.jpg クリーニング店の店主エルマー(バスター・キートン)は舞台女優のトリルビー(ドロシー・セバスチャン)の大ファンで、顧客から預かっているタキシードを着込んで金持ちの風采で彼女の舞台に通い詰め、仕舞には、劇団員の一人に話をつけて代役で彼女の芝居の舞台に立ち、大事な芝居をぶち壊してしまう。そんな折、トリルビーの恋人で同じ劇団のキートンの結婚狂 新婚.jpg花形男優(エドワード・アール)が別の金髪美人(レイラ・ハイアムズ)と婚約したことに憤慨した彼女は、面当てにエルマーと結婚する。しかし、エルマーが実は金持ちでないと判り、彼は離婚を言い渡される。エルマーは船でその地を去ろうとするが、彼が乗ったのは密輸船だった。脅迫されて海に飛び込んだエルマーは航行中の客船に救キートンの結婚狂 船.jpgわれ、そこで水夫として働くことになる。この船は多数の賓客が舟遊び客として乗っていたが、その中にトリルビーと前の恋人男優もいた。突然船は出火して賓客も船員も船を捨てて逃げたが、エルマーとトリルビーは取り残される。エルマーは単身で火を消し止め、トリルビーと助けを待つが、そこへ現れたのは例の密輸船だった―。

キートンの結婚狂 1929年.jpg バスター・キートン主演の1929年4月本国公開作品で、キートンがMGMに移籍してからの第2作目、最後のサイレント作品となります(日本公開は同年12月)。

キートンの結婚狂 舞台.jpg 前半部分はコント風で、キートンがエキストラとして上がった舞台で繰り広げるドタバタが一つのヤマでしょうか(舞台に上がる前のメーキャップを自分でやる場面のギャグがキートンらしくて可笑しい)。キートンはこの作品をトーキーでやりたかったそうですが、MGMがサイレントでの公開を決め、次回作「キートンのエキストラ」('30年)が初のトーキー作品となります。"エキストラ"ネタで次回作と被りますが、以前ほどのキレは無いにしても、こちらの"エキストラ役"の方が「エキストラ」における"エキストラ役"の彼よりもキートンらしいギャグが効いています。

キートンの結婚狂 船で二人きり.jpg 後半部分、海に乗り出してからは、主人公の2人が船にSpite Marriage (1929)1.jpg取り残されるという設定は「海底王キートン」('24年)を彷彿させ、密輸船に再び遭遇してからは、キートン持ち前のアクロバティックなアクションで大立ち回りを見せてくれますが、一方で、明らかにスタントを使ってる場面もあり、ドル箱俳優のキートンにケガでもされたら困るというMGMの思惑が見て取れます。

Spite Marriage (1929)2.jpg 「キートンのカメラマン」の「IMDb」での評価スコアが「8.3」で、この「キートンの結婚狂」が「7.2」、トーキー第1作の「キートンのエキストラ」が「5.6」となっているのは、「カメラマン」がやや高過ぎる評価との印象を受けるものの、まあまあ妥当な線でしょうか。自分の個人的評価(五つ星評価)は「カメラマン」「結婚狂」「エキストラ」の順にそれぞれ★★★☆、★★★、★★ですが、何れにせよMGM移籍後の第1作から第3作にかけて段階的に評価が下がっていく点で同じであり、そのことはまさにかつてのキートンらしさ、キートン映画らしさが徐々に後退していくことによるものと思われます。

キートンの結婚狂 プログラム.jpgキートンの結婚狂 気絶.jpg トリルビー役のドロシー・セバスチャンは当時のキートンの愛人だったそうで、そう思って観ると何となくそんな気もしないでもなく、艶めかしく感じられる場面もあれば、ハードなアクションを容赦なく強いている場面も...。作品全体としては往年の切れ味は相当落ちていますが、恋愛の上でのハッピーエンドは定番ストーリーを維持しており、「キートンのエキストラ」などと見比べれば、キートンはやはりサイレントが似合うと思わせる最後の作品となっています。
Original film program for Spite Marriage, with Dorothy Sebastian and Buster Keaton on the cover, 1929

「キートンの結婚狂」●原題:SPITE MARRIAGE●制作年:1929年●制作国:アメリカ●監督:エドワード・セジウィック●脚本:アーネスト・パガノ/リチャード・スカイヤー●撮影:レギー・ラニング●原作:ルー・リプトン●時間:80分●出演:バスター・キートン/ドロシー・セバスチャン/エドワード・アール/レイラ・ハイアムズ●日本公開:1929/12●配給:MGM映画(評価:★★★)

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