【2152】 ○ エドワード・セジウィック 「キートンのカメラマン (The Cameraman)」 (28年/米) (1929/09 MGM) ★★★☆

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アクションは後退、ギャグ&ラブストーリーとしてはまあまあ。MGMに抵抗するキートン。

キートンのカメラマン ポスター.jpgキートンのカメラマン vhs2.jpg キートンのカメラマン サル.jpg
復刻版ポスター(伊)/「キートンのカメラマン [VHS]

キートンのカメラマン1.jpg 旧式カメラを持って町の一角に立つ旧時代の遺物のようなカメラマンのルーク(バスター・キートン)は、ある日街で美しい娘を見初め、後をつけて行くと彼女はMGMのニュース映画部門に勤めているサリー(マーセリン・デイ)という娘だった。サリーからキートンのカメラマン 5.jpg成功するにはもっと良いカメラを買わねば駄目だと言われ、早速彼はカメラを買い求め、以来毎日彼女の事務所に詰め、彼女の好意により重大事件が発生する毎に密かに情報を教えられては現場へ飛んで行き撮影した。中国人街キートンのカメラマン 中華街.jpgでマフィアの抗争があった際の撮影では、ちょっとした事件から買い取ったサルの悪戯のためにフィルムを抜き取られ失敗したが、それでも彼は屈せず、モーターボート競争を撮影中に転覆事故で溺れそうになったサリーを泳いで救う。彼が薬を求めている隙に、サリーと共に海中に投げ出された彼女の彼氏が、自分キートンのカメラマン ラスト.jpgが彼女を救ったように装い彼女を連れ去る。落胆したルークはカメラマンになることを断念、自分が撮ったフィルムを投げ出して事務所を飛び出す。会社で彼のフィルムを試写したところ、中華街の抗争が映っているうえに、ボート転覆事故のサリー救出の殊勲者がバスターであることが判明、彼を呼び戻せとの上司の指示の下、サリーは命の恩人であるルークの行方を探し出す。大西洋横断飛行成功のリンドバーグ歓迎で湧く市中、ルークとサリーを祝福するが如く紙吹雪が舞う―。

キートンのカメラマン 輸入盤dvd.jpg バスター・キートン主演の1928 年9月本国公開作品で、彼がユナイトから古巣のMGMに戻って最初に撮った作品で監督はエドワード・セジウィック(因みに、作中で歓迎パレードの実写フィルムが用いられていると思われるリンドバーグの大西洋横断無着陸飛行の成功は1年以上前の1927年5月)。日本では翌年(昭和4年)9月に公開されました。

キートンのカメラマン サルが撮っていた!.jpg この頃には既にキートンも顔は白塗りではなくなっているし、ストーリーも相棒のサルがカメラを回してボート転覆事故の始終をフィルムに撮っていたというシュールな設定を除いては(どうやってサルに演技をつけた?)意外とリアルで、ドタバタ喜劇からラブストーリーの方へ比重を移している印象がありますが、そうしたことも含め、次第と初期のキートンらしさが失われていく過渡期的作品と言えるかもしれません。但し、この作品については「MGM移籍後で唯一の佳作」などと評されることもあり、MGM移籍当初で、まだそれだけキートンが比較的自由に撮らせてもらっている部分があり、ギャグとラブストーリーとの兼ね合いが程よく楽しめるといった感じ。

キートンのカメラマン ヒロイン.jpg キートンの相手役のヒロインを演じるのはマーセリン・デイ(Marceline Day)で、比較的今風の美人であり、これが個人的には作The Cameraman keaton pool.jpg品への好感度にも繋がり、恋敵役は「キートンのカレッジ・ライフ」でもライバル役だったハロルド・グッドウィン(Harold Goodwin)で、これも相変わらず憎たらしいだけに、最後の逆転劇が効いています。マーセリン・デイは水着美人として売り出しただけに、キートンとデートで市民プールに行くシーンでは水着姿でスタイルの良さ披露キートンのカメラマン(スチール).jpgしています。ただ、マーセリン・デイの水着姿もさることながら、当時のニューヨーク市営プールの意外と現代のスポーツクラブ風な様子が窺えて興味深かったです(右写真はスチールで、作中ではルークがこれほど女性にモテる場面は無い)。

キBuster Keaton, Sidney Bracy, Marceline Day-- The Cameraman.jpg この物語では、ルークことキートンが街頭写真屋から報道カメラマンへの転身を図るわけですが、テレビが無い時代、今のTVニュース報道に当たるものを映画会社のニュース映画部門が担っていたわけです。しかしルークにとって動画を撮るのは初めての経験であり、二重写しをやらかした結果、戦艦がニューヨークの街を進むといったとんでもない映像が出来上がってしまったりし、挙句の果てに、中国人街でのマフィア抗争の撮影でフィルムを入れ忘れたらしく(実はサルがフィルムを抜き取っていた)、これらの失敗でルークはMGMを去ろうとするが、最後はサルが撮っていたフィルムによりボート転覆事故の事の真相が明らかになり、MGMは彼を歓迎する―。

キートンのカメラマン 撮影風景.jpg 表向きはキートンのMGM入社を祝うような結末ですが、そのMGMはキートンをクリエイターというよりは一人の役者としてしか見ていなかったため、彼の作品に及ぼす影響は大幅に制限されるようになり、キートンはこれに対し、無人のヤンキー・スタジアムでの「一人野球」とか、プールの狭い更衣室の中での太った男と揉み合いへし合いなっての「窮屈な着替え」とか、彼自身のアドリブを入れて、彼らしさを出そうと抵抗しています(この辺りがまだ"比較的自由に撮らせてもらっている部分"か)。

「窮屈な着替え」撮影風景

キートンのカメラマン ダッシュ.jpg まだ20年代の作品なので、宙を飛ぶようなキートンの韋駄天ぶりは健在。それでも全体としてはアクションはかなり後退していますが、先にも書いキートンのカメラマン 2.jpgた通りギャグとしてもラブストーリーとしてはまあまあといったところでしょうか。むしろ、キートンの過渡期的作品であるという意味で、初期作品と見比べてみる価値はあるかもしれません。
「キートンのカメラマン」●原題:THE CAMERAMAN●制作年:1928年●制作国:アメリカ●監督:エドワード・セジウィック●製作:ルイス・B・メイヤー●脚本:リチャード・シェイヤー●撮影:エルジン・レスリー●原作:クライド・ブラックマン/リュウ・リプトン●時間:67 分●出演:バスター・キートン/マーセリン・デイ/ハロルド・グッドウィン/シドニー・ブレイシー/ハリー・グリボン●日本公開:1929/09●配給:MGM日本支社(評価:★★★☆)

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