【2151】 ○ ジェームズ・W・ホーン 「キートンのカレッジ・ライフ (大学生/College)」 (27年/米) (1927/09 ユナイテッド・アーチスツ) ★★★★

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ロイドをパクったというより、対抗意識から作ったのでは。終盤の畳み掛けるアクションがいい。

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キートンのカレッジライフ arubaito.jpg カリフォルニアのある高校の卒業式、学業優秀で表彰を受けたロナルド(キートン)は、「スポーツの大害」と題した講演をするが、得意になってスポーツマンを罵倒した彼の話に、同級生メアリー(アン・コーンウォール)は、憤慨する。美人のメアリーにロナルドは、そして、スポーツマンのジェフ(ハロルド・グッドウィン)も密かに恋していた。メアリーとジェフは共に大学へ進学することになっている。ロナルドの家は貧しかったが、恋敵に遅れをとってはならないと、自分College 1927 ハードル.jpgで学費を稼ぐ事を条件に母を説得し、ロナルドも同じ大学に進学した。かくして、ロナルドは給仕のアルバイトをして学費を稼ぎつつ、メアリーのハートを射るため大の苦手なスポーツに挑戦する。野球、砲丸投げ、短距離走と、何をやってもまるでダメ。例えば短距離障害走であkeaton callage.jpgればハードルを全部なぎたおしてしまうといった具合。ところが教授の計らいで、ボート大会にコックスとして出場することになってしまう。他の選手はロナルドが試合に出ては勝ち目が無いと、妨害を試みるが見事に失敗。自信なく出場したロナルドは溺れながらも機転を利かせて、チームに勝利をもたらすのだった。その時、ジェフがメアリーを一室に閉じ込め、結婚を迫っていた。メCollege 1927.jpgアリーから電話で連絡を受けたロナルドは、あらゆるスポーツの方法を駆使して、メアリーの救出に向かうのだった―。

キートンの大学生 牛込館.jpg バスター・キートンの1927 年本国公開作品(キートン・プロの長編9作目)で、日本でも同年(昭和2年)9月に「キートンの大学生」のタイトルで当時の「新宿武蔵野館」「牛込館」他で封切上映されています。前作「キートンの大列車強盗」('26年)が興行的に芳しくなかったため、それまで多くのキートン作品を製作してきたジョゼフ・M・スケンクによって、監督にジェームズ・ホーン、脚本にカール・ハルボウが送り込まれてきたが、キートンの自伝によれば、この二人は監督・脚本家としては全く役に立たなかったとのことです(カール・ハルボウはボートのコーチ役で出演している)。

 個人的には、最初に観た時「セブン・チャンス」('25年)と並んでたいへん面白く感じられた作品です。allcinema onlineのあらすじ紹介では、ボート大会の後に「表彰となって功労者キートンの胴上げとなるが、彼が高く舞い上がると見たくもないのに、女子寮の舎監の入浴シーンを目撃。これをのぞきと間違えた彼女に水をかけられて、傘で防戦したキートン。その傘はパラシュートにもなって...」と続きますが、このシーンは中盤の、キートンが皆にバカにされ続けている状況の中で、仲間からのからかいを受けてのシーンとして出てくるのであって、「功労者としての胴上げ」というのは順番として誤りです。

キートンのカレッジライフ 円盤.jpg この作品に先行するハロルド・ロイドの「ロイドの人気者」('25年)とほぼ同じモチーフであり、実際に巷には"ロイド映画のパクリ"との評価もあるようですが、ロイドに対する対抗意識から敢えて同じモチーフの作品を撮ったのではないかという気がしないでもありません(「ロイドの人気者」の主人公の名は勿論「ハロルド」、一方キートンのこちらは「ロナルド」)。

キートンの大学生 野球.jpg 作中のロナルドことキートンは、自ら学費を稼ぐために、黒人給仕の募集に顔を黒塗りにして応募して仕事に就きますが、その割にはあまり苦学生というイメージはなく、結構長閑なコントのような場面が続きます。一方で様々なスポーツに挑戦してこれがどれもこれもダメで、とりわけ野球のシーンが丹念に描かれていますが、実際のキートンは野球大好き・大得意人間で、このシーンでは他の出演者のプレーを指導したという、ストーリーとは真逆の裏話があるのが面白いです。

キートンのカレッジライフ ボート.jpg ロナルドは、結局は野球でも陸上でも芽が出ず、それがボート大会でコックスとなってやっと花開きますが、ここまでは前半のコント集のようなシーンの比重が大きくて、安心して観られるけれどそれ以上のものではない、単なるギャグ映画という印象だったでしょうか。それが、好きな彼女から、彼の恋敵の不良学生ジェフに監禁されているとの知らせを受け、現場へ駆けつけて恋敵をやっつけて彼女を救出する―そこまでの間に、猛烈なスピードで町を駆け抜け、生け垣をハードルのように飛び越え、不良学生が投げつけてきたものを野球のバッティングのように打ち返すという、これまで全くダメだったスポーツ種目が見違えるようなパフォーマンスとして織り込まれているのが上手かったと思います。

キートンのカレッジライフ 2階飛び移り.jpg 終盤の畳み掛けるアクションの連続は、これぞキートンの真骨頂といったところですが、棒高跳びの応用で彼女が監禁されている建物の2階に飛び移るシーンだけは初めて本格的にスタントを使ったそうで、そのスタントを演じたのは1924年のパリ五輪の棒高跳びの金メダリストだそうです(その他にも、前半の陸上競技シーンなど当時の一流どころのアスリートが出演しているのではないか)。

 ラストで老後のロナルドとメアリーや2人の墓標が並んでいるシーンが出てきて「偕老同穴」を示しているのは、キートンの作品にしては珍しい終わり方のようにも思われますが、ロナルドがメアリーを連れて教会に駆け込んだのが単なる思いつきでなかったことを念押ししたのでしょうか。
College (1927)
College (1927).jpg
キートンのカレッジライフ.jpg「キートンのカレッジ・ライフ(大学生)」●原題:COLLEGE●制作年:1927年●制作国:アメリカ●監督:ジェームズ・W・ホーン●製作:ジョセフ・M・スケンク●脚本:カール・ハルボウ/ブライアン・フォイ●撮影:デブロー・ジェニングス/バート・ヘインズ●時間:66 分●出演:バスター・キートン/フローレンス・ターナー/アン・コーンウォール/フローラ・ブラムリー/ハロルド・グッドウィンキートンの大学生 スチール.jpg/グラント・ウィザース/スニッツ・エドワーズkeaton callage import.jpg/サム・クローフォード/カール・ハルボウ●日本公開:1927/09/15●配給:ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所:渋谷ユーロスペース(84-01-21)(評価:★★★★)●併映:「キートンの大列車強盗 (将軍)」(バスター・キートン)/「キートンの線路工夫」(ジェラルド・ポタートン)

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