【2149】 △ バスター・キートン 「拳闘屋キートン (キートンのラスト・ラウンド/Battling Butler)」 (26年/米) (1927/12 ヤマニ洋行) ★★★

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やや無理のあるストーリー展開か。「ロッカー・ルーム戦」は気合入っていた。

拳闘屋キートン vhs2.jpg Battling Butler(1926).jpg 拳闘屋キートン 01.jpg
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拳闘屋キートン テント.jpg アルフレッド・バトラー(バスター・キートン)は何不自由なく暮らす大富豪の御曹司だが、父親から大自然の中でキャンプしてもっと逞しくなれと言われ、執事のマーティン(スニッツ・エドワーズ)を連れ田舎のキャンプ場へと出向くも、そこでも執事に何もかもやってもらう生活を続けていた。そんな中、地元の美人の娘(サリー・オニール)と知り合い、早速結婚を申し込むが、こんなひ弱な男に娘はやれないと彼女の父と兄に反対をされてしまう。そこで、新聞でアルフレッド・バトリング・バトラーなる同名の人物が近々ボクシングの世界戦拳闘屋キートン 02.jpgをするという記事を見つけたマーティンが、アルフレッドのことをこの人物こそバトラーなのだと美人の父と兄に告げ、一気に婚約成立となる。本物のバトラーは、試合に負ければ後は何とかなるというマーティンの読みに反して世界戦に勝利してしまい、本物に間違えられたアルフレッドは地元で大変な歓迎を受け、事実を告白する勇気がないまま彼女と結婚してしまうが、バトラーは次は「アラバマの人殺し」というボクサーと試合をすることになっていた。アルフレッドは仕方なくバトラーのキャンプ地へ行くが、そこには本物のバトラーが妻君同伴でいて、さらに娘が追いかけてきたために話はややこしくなり、遂にアルフレッドがリングに立つことになる―。

 バスター・キートンの1926年9月本国公開作品。ヤマニ洋行の配給で1927(昭和2)年12月31日に日本で公開されたときの邦題は「拳闘屋キートン」で、日本での70年代のリバイバル・シリーズの際の邦題は「ラスト・ラウンド」となっていますが(シリーズの途中打切りのため上映されず)、その後、アテネ・フランセなどで自主上映された際は「拳闘屋キートン」に戻っています(VHSタイトルも「拳闘屋キートン」)。

拳闘屋キートン3.jpg キャンプ生活に入っても御曹司風の生活スタイルを続けるキートンが可笑しく、これでは何のためにキャンプに来たのか分からない...そのキート拳闘屋キートン スパ.jpgンにまめまめしく仕えるスニッツ・エドワーズ演じる執事がいい味出していますが(彼は翌年の「キートンのカレッジ・ライフ」('27年)ではカレッジの校長を演じている。但し、この作品の方がよりキーパーソン的役回り)、彼が主(あるじ)のために良かれと思ってついた嘘が、どんどん状況を悪くしていき、とうとうアルフレッドは世界戦のリングに上がる羽目になり、トレーナーの指導を受けることになるといった展開です。

 「キートンのセブン・チャンス」('25年)と「キートンの大列車強盗」('26年)の間の作品だと思うと、それらに比べてやや落ちるでしょうか。やはりちょっと展開に無理があるかなあという感じ(この"無理さ加減"には一応オチがあるのだが)。オリジナルの脚本も、結局アルフレッドは世界戦に臨まなくて済んだというもので、そこでお終いだったのが、それだと映画的には面白くないので、最後のアルフレッドvs.バトラーの「ロッカー・ルーム戦」を入れたようです。

拳闘屋キートン ロッカー.jpg 喜怒哀楽を見せないはずのキートンが、バトラーに打ちのめされて怒り心頭に発して拳闘屋キートン ロッカー2.jpg反攻に出るという、「怒」の部分が顕著に出ているのが、やや一連のキートン作品と異なるように思いましたが、そうでもしないと、アルフレッドの反攻の説明がつきにくかったというのもあったのではないでしょうか。マ-ティン・スコセッシはこのシーンを何度も見直して、「レイジング・ブル」('80年)の参考にしたとかで、それくらい、両者のボクシング・シーンは気合が入っています。

拳闘屋キートン ラスト.jpg このキートンの本気度は、チャップリンが「ノック・アウト」('14年、27分)、「拳闘」('15年、30分)と2本のボクシング映画を撮っているので、それに対する意識もあったのではないかなと個人的には思ったりもしました(ロイドもボクシング映画を撮っている。当時、ボクシングは極めて人気の高いスポーツだったということもあるのか)。脆弱な優男が困難な状況を経て逞しく変身し、最後に女性の心からの愛を得るというという流れは、一応、キートン作品の定番を踏襲しています。

Battling Butler (1926).jpg「拳闘屋キートン(キートンのラスト・ラウンド)」●原題:BATTLING BUTLER●制作年:1926年●制作国:アメリカ●監督:バスター・キートン●製作:バスター・キートン●脚本:アル・ボースバーグ/レックス・ニール/チャールズ・H・スミス/ポール・ジェラルド・スミス●撮影:デブロー・ジェニングス/バート・ヘインズ●原作戯曲:スタンリー・ブライトマン/オーステイン・メルフオード●時間:68分●出演:バスター・キートン/サリー・オニール/スニッツ・エドワーズ/フランシス・マクドナルド/トム・ウィルソン●日本公開:1927/12●配給:ヤマニ洋行(評価:★★★)
Battling Butler (1926)

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