【2147】 ○ バスター・キートン/ドナルド・クリスプ 「海底王キートン (The Navigator)」 (24年/米) (1925/11 イリス映画) ★★★★

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「海底」シーンが秀逸。決して「アクション度の低い作品」では無かった。

海底王キートン シネマ2 チラシ.jpg海底王キートン vhs.jpg 海底王キートン dvd.jpg Navigator [DVD] [Import].jpg 
1973(昭和48)年リバイバル時チラシ/「海底王キートン【字幕版】 [VHS]」「キートン「海底王キートン」/「キートンのカメラマン」 [DVD]」「Navigator [DVD] [Import]
海底王キートン(1924) 0.pngTHE NAVIGATOR 02.jpg 親の遺産で暮らす金持ちお坊ちゃまのロッロ(バスター・キートン)は、欲しい物は何でも簡単に手に入ると思っていた。近所のお嬢さまベッツィ(キャサリン・マクガイア)に不用意に求婚するが、愛はそう簡単ではなく、先に予約していた船でハネムーンに行く予定が、失恋の船旅となる。しかし、彼が乗った船は某国のスパイの謀略に巻き込まれて漂流し、彼は船に一人残されてしまったかにみえたが、その船には偶然にもベッツィも乗っていた―。

海底王キートン(1924) 4.jpg 前作「キートンの探偵学入門」(1924年4月米国公開)に続くキートン・プロでの長編第4作(同年10月公開)で、共同監督としてドナルド・クリスプを起用。彼は後にジョン・フォード監督の「わが谷は緑なりき」('41年)の家長役など役者としても知られるようになりますが、この「海底王THE NAVIGATOR(1924) 料理.jpg」では、キートンをぎょっとさせる「写真の男」として登場しています。キャサリン・マクガイアは前作「探偵学入門」に続いての相手役で、キートンと気の合う演技を見せますが、ドナルド・クリスプの方は、キートンの考えにあまりに口出しするため、撮影期間の途中でキートンが共同監督を解任してしまったそうです。
THE NAVIGATOR(1924)  キス.jpg 前半部分は、豪華客船に取り残された2人が最初は互いに行き違ってばかりでなかなか遭遇し得ないなど、細かいコント風の遣り取りを見せますが、従来の一般的なドタバタ喜劇の定番のパイ投げのような場面は無く、あくまで長編であることを意識した作りになっています。
 一旦はベッツィにフラれたロッロではあったものの、2人が意図せずして船内で新婚生活のような暮らしを始めることになるという微笑ましい設定がよく生きているように思います(2人が言い争っている際の影絵がキスしているように見えるスチールが巧み)。

THE NAVIGATOR(1924).jpg 原題になっているこのハワイ行き客船「ナビゲーター号」は、「バフォード号」という大型客船が廃棄処分になるという情報を得たキートンが2万5千ドルで買い上げたそうで、船の備品がギャグに上手く使われており、おそらくキートンは"居抜き"でこの客船を買ったのではないでしょうか。

 やがて船は人食い人種のいる島へ漂着し、ベッツィは原住民にさらわれる―この辺りからぐーんとスケールアップしてきて、何となく「小品」とのイメージがあったのですが、今観直してみると、やはりお金もかかってっているし、キートンのアクションの魅力も十分に発揮されていました。

 「海底王キートン」とのタイトルの通り、キートンが船の修理海底王キートン(1924) キートン.jpgのために潜水服を着て海に潜る「海中シーン」があり、これがよく出来ています。THE NAVIGATOR 海中.jpg実際の撮影はシエラネヴァダ山中にあるタホ湖(かつては世界第3位の透明度を誇った)で行われましたが、水温が低すぎて30分と潜っていられず、水中シーンだけで4週間も要したそうです。加えて、当時の潜水技術からするとかなり危険な撮影でもあったように思われます(「アクション度の低い作品」との見方は間違っていたかも)。しかしながら、大ダコはどうやって撮ったのか?(ある部分では"特撮映画"とも言える作品か)

Buster Keaton and Kathryn McGuire
Buster Keaton and Kathryn McGuire.jpg海底王キートン(1924) 3.jpg 「人食い人種」の描かれ方が今の時代海底王キートン(1924) クルマ.jpgからするとどうかというのはありますが、和暦でいえば大正13年の作品になるわけで、これは仕方ないか。冒頭で向いの家に行くにも運転手付の車を使っていた「お坊ちゃまロッロ」が、最後は一人の頼りがいある男として女性の愛を獲得するという成長物語にもなっていて、観ていて心地よい作品です。加えて"映画史上初の海中シーン"などもあったためか、実際、当時としても大ヒットし、この作THE NAVIGATOR(1924) ボート.jpg品によってキートンはドル箱スターの仲間入りを果たします(因みに、「Wikipedia」によれば、キートン作品の中で興行収入において最も成功した作品であるとのこと)。
 勿論、肩肘張って観るような作品ではないです。「人食い人種」が畏怖した潜水服姿のキートンがむしろ何とも言えず愛らしく、ベッツィがそのキートンを筏代わりにして危機を脱する場面などは、よく考え付いたアイデアだなあと感心させられました。
The Navigator (1924)
The Navigator (1924).jpg
keaton The Navigator.jpg海底王キートン 10.jpg「海底王キートン」●原題:THE NAVIGATOR●制作年:1924年●制作国:アメリカ●監督:バスター・キートン/ドナルド・クリスプ●製作:ジョセフ・M・シェンク●脚本: ジーン・ハヴェッツ/クライド・ブラックマン/ジョセフ・ミッチェル●撮影:エルジン・レスリー/バイロン・フーク●時間:59分●出演:バスター・キートン/キャスリン・マクガイア/フレデリック・ブルーム/ノーブル・ジョンソン/H・M・クラグスト/クラレンス・パートン●米国公開:1924年10月(評価:★★★★)


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keaton The Navigator2.jpg《読書MEMO》
●「爆笑コメディ劇場2」収録作品
1. 海底王キートン ( 59分 / モノクロ・サイレント / 1924年 )
相手もいないのに結婚したくなったので、家の向かいの海運王の娘にプロポーズするもすげなく断られた大富豪の御曹司ロロ。新婚旅行用に予約していた客船に一人さびしく乗るはずが、間違えて娘の父親の船に乗ったのが運の尽き...。
2. マルクス一番乗り ( 109分 / モノクロ / 1937年 )
競馬場近くの診療所は経営難に陥っていた。オーナーのジュディは、富豪夫人の強い希望で名医ハッケンブッシュ博士を招くことになったが、彼は馬専門の獣医だったのだ。診療所の運命やいかに!マルクス兄弟の強烈なギャグが冴えわたる傑作。
3. キートンの鍛冶屋 ( 同時収録「キートンの空中結婚」 : 42分 / モノクロ・サイレント / 1922-3年 )
鍛冶屋で助手として働くキートンはドジの連続。親方のいないある日、蹄鉄を馬に打とうとして失敗したり、車を修理しようとしてポンコツにしてしまったりと、やることなすことヘマばかり...。爆笑必至の「キートン空中結婚」を同時収録。
4. チャップリン醜女の深情 ( 同時収録「チャップリンの夜遊び」 : 106分 / モノクロ・サイレント / 1914-5年 )
詐欺師はある娘を誘惑して家から大金を持ち出させることに成功するが、彼女を捨てた後で、娘が億万長者になったことを知り・・・。酔っ払ったチャップリンが行く先々でトラブルを起こす「チャップリンの夜遊び」を同時収録。
5. マルクス兄弟 珍サーカス ( 87分 / モノクロ / 1939年 )
ジェフが経営するサーカス団は借金まみれ。彼は友人と弁護士に相談し、ジェフの裕福な叔母が主催するパーティーで興行し、負債を返済しようとするが...。ゴリラも登場するクライマックスの空中ブランコの曲芸シーンは圧巻。
6. 天国二人道中 ( 68分 / モノクロ / 1939年 )
ヨーロッパ旅行中、パリで踊り子に恋をしたハーディ。結婚を決意していたハーディだったが、彼女にはすでに夫がいた。心の傷を癒すためローレルとともに外人部隊に入隊したのはいいが、ハチャメチャな大騒動を巻き起こしてしまう。
7. チャップリンのお掃除 ( 同時収録「チャップリンの寄席見物」 : 48分 / モノクロ・サイレント / 1915年 )
とある銀行の掃除係チャップリンは、エドナが自分を愛していると早とちり。しかし、本当に彼女が好きだったのは...。寄席にやってきたチャップリンが舞台裏でハチャメチャな騒動を起こす「チャップリンの寄席見物」を同時収録。
8. キートンの歌劇王 ( 81分 / モノクロ・サイレント / 1932年 )
真面目だが変わり者の大学教授は、遺産相続で大金持ちになったと思い込まされ旅に出る。道中、どさ回りの貧乏劇団と知り合う。気が大きくなった教授は、彼らのスポンサーとなり、ブロードウェイで興行をすることになるが...。
9. チャップリンの海水浴 ( 同時収録「彼の更正」「メーベルの身替り運転」 : 43分 / モノクロ・サイレント / 1914-5年 )
海水浴にやってきたチャップリンが二組の夫婦を巻き込んで繰り広げる、ナンパあり、喧嘩ありのドタバタコメディ。脇役として出演している「彼の更生」、レーサーに嫉妬する男を演じる「メーベルの身替り運転」を同時収録。
10. ユートピア ( 82分 / モノクロ / 1951年 )
遺産を相続したローレル。その中には太平洋の島もあり、さっそくハーディとともに船でその島に向かう。幾多の冒険の末、島に着くが、待っていたのはサバイバル生活だった。そして人が訪れるようになると彼らは島を独立国とするが...。

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