【2125】 △ 清水 宏 「花形選手 (1937/10 松竹大船) ★★★

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男同士の友情を描いた作品だったなあと。あの笠智衆が陸上選手を演じているのが目を引く。

花形選手(1937) A Star Athlete dvd.jpg清水宏 花形選手 1937 1.png 清水宏 花形選手 1937 行軍.jpg 花形選手vhs.JPG
花形選手(DVD) SYK109S」佐野周二/笠智衆 「花形選手 [VHS]

清水宏 花形選手 1937 徒競走.png 大学陸上部の花形選手である関(佐野周二)と谷(笠智衆)は親友ながらライバル。時節を反映して行軍軍事教練が実施され、学生らは軍歌を歌いながら田舎道行く。時に早足で、時に川を渡って行軍の道すがらでは、モガ(モダンガール)一清水宏 花形選手 1937 2.png行とのやり取りがあったり、腹痛起こす学徒が出たりする。関は門付(かどづけ)の女(坪内美子)の連れの子供に柿をあげたりもする。行軍は宿泊する村に到着する。しかし、柿をあげた女の子が病気になったこと清水宏 花形選手 1937 4.pngを知って関は―。

 清水宏監督自身の「大学の若大将」('33年)と同じく大学の運動部が舞台ですが、1937年盧溝橋事件発生の年の作品とあって、陸上部本来の練習よりも軍事教練(陸上部の自発的行事?)の方に比重がかかっている―とは言え、行軍はどことなくハイキング(秋の遠足?)に似た雰囲気もあり、その過程で女学生集団との抜きつ抜かれつや、その中の一人の関に対する想いがあったり、学生達と宿営先の村人達の交流などが淡々と描かれていたり、更には、女の子の病気を治してみせようという偽祈祷師が出てきたりするところはやはりこの監督らしいです(脚本の鯨屋當兵衛は清水宏・荒田正男のペンネーム)。

清水宏 花形選手 1937 坪内.png清水宏 花形選手 1937 3.png 関が女の子にあげたのは渋柿だったようですが、そんなに重い症状になるものかな。女(坪内美子)が治療費を工面するため売春に走るというのは、戦前と戦後の違いはありますが、小津安二郎監督の「風の中の牝雞」('48年)でも、子供が病気になって田中絹代演じる母親が曖昧宿に行くという状況がありました。

 そうした女の動きを関が見とがめ、「芸人がお座敷に行くのになぜ三味線を持っていないのだ」と詰め寄り、二人が沈黙して佇んでいるところを陸上部の連中に見られ、逢引と勘違いされて関は退学・退部勧告をされそうに―そこへ谷が現れ、仲間の前で関に対し何発か鉄拳を喰らわして、"制裁"完了ということで関は許されることに。関は谷に感謝しますが、谷は最初から全てをお見通しだったのか、それとも、関がそんな男ではないという信念からの行動なのか?

笠智衆(谷)/佐野周二(関)
花形選手1.jpg 軍事教練を戯画化して描いているようなところに清水宏の反骨を感じますが、物語としては結局何てことはない、男同士の友情を描いた作品だったなあと。あの笠智衆が陸上選手を演じているというのが見所、と言うより意外性があるかな(400メートル走選手? 時計回りで走っている)。佐野周花形選手   .jpg二24歳に対し、笠智衆はこの時33歳くらいでしょうか。学生を演じるのにはきつい年齢のはずですが、後年の老け役のイメージの反動からか、実年齢より若く見えます(因みに、隊長役の大山健二も笠智衆と同い年。見るからにオッサンだけれども、「大学の若旦那」(1933年)の応援団長と似たような役どころだからいいのか)。アスリートである谷の、セリフのトーンだけがあの"笠智衆"調なので、観ていて奇妙なギャップ感がありました。

花形選手 title.jpg清水 宏 「花形選手」.jpg「花形選手」●制作年:1937年●監督:清水宏●脚本:鯨屋當兵衛(清水宏・荒田正男)/荒田正男●撮影:猪飼助太郎●時間:64 分●出演:佐野周二/日守新一/近衛敏明/笠智衆/大山健二/坪内美子/爆弾小僧/突貫小僧/水戸光子/小牧和子/東山光子/森川まさみ/槇芙佐子●公開:1937/10●配給:松竹大船(評価:★★★)
「花形選手」(1937)スチール写真

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