【2120】 ○ 手塚 治虫 『魔神ガロン (1968/03 秋田書店・サンデーコミックス) 《魔神ガロン (1)』 (1960/07 秋田書店)》 ★★★☆

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「マジンガーZ」に先立つ「搭載型(ガンダム型)ロボット」の走りか。

魔人ガロン.JPG  アトム対ガロン.JPG 魔神ガロン 初版 昭和35年 .jpg  
魔神ガロン (サンデー・コミックス)』 『鉄腕アトム 10 (サンコミックス 340)』 『魔神ガロン1』1960(昭和35)年7月5日刊行 秋田書店(A5判)

冒険王「魔神ガロン」.jpg 1959(昭和34)年から1962(昭和37)年まで雑誌「冒険王」('59年7月号~'62年7月号)に連載された手塚治虫の漫画作品で(テレビアニメ化の候補だったが実現しなかった)、作者はこれを自らが初めて描いた「悪魔的なスター」であるとしています。

 ガロンは宇宙からその部品の塊として落ちてきて、それは異星人が、地球人がそれを組み立てることが出来るかどうかを見ることで地球人の知力を試すとともに、それを平和利用することが出来るかどうかも見るために送り込んだもので、異星人は地球人がガロンを悪用すれば地球を攻撃するという考えです。

 ガロンを動かす鍵となる少年ピック(こちらも宇宙から降ってきて、捨て子だと思って拾った田舎の夫婦に育てられる)、ピックと一緒に育ったケン一少年、ガロンの組み立てを行った俵教授の助手・敷島らが地球の滅亡を防ぐため、ガロンの力を狙う悪人らに立ち向かいます。

『魔神ガロン』.JPG 手塚治虫は、1956(昭和31)に月刊誌「少年」で連載が開始された横山光輝の『鉄人28号』('59年にラジオドラマ化)に刺激を受けてこの作品を構想したようですが、「鉄人28号」がリモコンで動くのに対し(操縦型ロボット)、ガロンはピックがその胸の中に入ることによって"正しく"動くという点が大きな違いです。

 「機動戦士ガンダム」('79年)の「ガンダム」のようなロボットを「搭載型ロボット」と呼びますが(「ガンダム型ロボット」と言ってしまった方が分かり良いかも)、ガロンはその走りとも言えます。「ガンダム」以前の「搭載型ロボット」としては「マジンガーZ」('67年/原作:永井豪)、「MASCHINEN KRIEGER」('68年/原作:SFデザイナー・横山宏)などがあり、「機動戦士ガンダム」も「マジンガーZ」の影響を受けていると思われますが、その「マジンガーZ」の8年前に既に手塚治虫は、今で言う「ガンダム型ロボット」を創り上げていたとも言えるかと思います(ピックはいわばガロンの"良心"のような存在であり、「ガンダム」や『PLUTO』('03年/原作:浦沢直樹)に出てくる「モビルスーツ型ロボット」とはやや異なるかもしれないが)。

魔人ガロン 1.jpg ガロンはピックを求めて彷徨い、たまたま温泉旅行に行ったピック一行と初めて合流、浴衣を着て旅館内を歩くという愉快な場面もありますが(身長サイズは結構テキトーに拡縮している?)、一方でピックとはぐれて勝手に暴走することも結構多く、「鉄人28号」の前半部分の、リモコンが敵に渡ったり、正太郎の手に戻ってきたりすることが繰り返される状況と似ています。

 ある意味、「鉄人28号」などよりもずっと頻繁に暴走し、そうしたこともあってか、ラストではピックと共に大渦に巻き込まれて姿を消してしまうのがちょっと気の毒な気もしました。

 サンデーコミックス版はここまでで終わりですが、そうはならないで話が続いていく展開もあって、続きは手塚治虫漫画全集や文庫で読むことができます。但し、筆致がそれまでのものと明らかに異なることから、手塚治虫本人の筆によるものではないと考えられているようです。

 この「ガロン」は、後に『鉄腕アトム』『マグマ大使』にも登場して、主人公たちを窮地に陥れます。

アトム 対 ガロン編 4[.jpg【アトム 対 ガロン編】.jpg 『鉄腕アトム』の「アトム対ガロン」(1962(昭和37)年)では、冒頭で「スパイダー」なる"落書きキャラクター"が「ガロン」の紹介をし、本編ストーリーの方は、宇宙から部品が落ちてくるのは元ストーリーと同じですが、それが異星人同士の戦争の際の何かの間違いで落ちてきてしまったことになっていて、組み立て終わると雷に通電して甦り大暴れするというもので、ピッピは登場せず、ガロンは終始 "怪物"扱いです(その分、ロボットの哀しみを一身に背負っているとも言える)。
鉄腕アトム 《オリジナル版》 復刻大全集【アトム対ガロン編】』['10年]

 ここではガロンは惑星改造用に作られたロボットという設定で、重力の大きさを変える能力を持っており、アトムは手強い "怪物"ガロンを直接的に倒すのではなく、ガロンをけしかけその能力を発揮させてガロンがいる島の引力を小さくさせ、その結果ガロン自身が宇宙空間まで吹き飛ばされてしまうという「物理学的」結末でした。大渦に巻き込まれた次は、宇宙を彷徨うことになったわけで、ガロンがやや気の毒ですが、破壊されなかっただけマシと見るべきか?
 
【1960年単行本化[秋田書店]/1968年コミック版[秋田書店・サンデーコミックス]/1982年文庫化[講談社・手塚治虫漫画全集(1997年完結・全5巻)]/1995年文庫化[秋田文庫]/2000年再文庫化[秋田文庫(全3巻)]】

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This page contains a single entry by wada published on 2014年4月 9日 23:10.

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