【2092】 △ エリック・ウォレット 「クリスティのフレンチ・ミステリー(第5話)/鳩のなかの猫」 (10年/仏) (2011/09 AXNミステリー) ★★★

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ラロジエールに娘が...太すぎるサイドストーリー。面白かったが、改変の一部がやや気に入らない。

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Les Petits Meurtres d'Agatha Christie Épisode 5 : Le chat et les souris(鳩のなかの猫)

鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ3.jpg 森で身元不明の女性の遺体が発見される。遺体に着衣はなく、頭を砕かれていた。時を同じくして、森の近くの女子寄宿学校では、学生達が休みから学校に戻ってきた。新任の教師も集まり、学校は活気を取り戻していた―。

 ポワロやミス・マープルに代わって、ラロジエール警視とランピオン刑事のコンビが事件を解決していく「フレンチ・ミステリー」の2010年の作品(第5話)で、2011年9月に「AXNミステリー」で放映されました(女性の全裸死体をそのまま映すところがフランスのTVっぽい?)。

鳩のなかの猫 クリスティ文庫.png 原作は1959年にアガサ・クリスティ(1890‐1976)が発表した作品で、原題「Cat among the Pigeons」は、女生徒(鳩)達の園である学園に殺人者(猫)が紛れ込んでいるという意。中東の王国で起きた革命騒ぎのさなか、莫大な価値をもつ宝石が消えうせ、一方、ロンドン郊外の名門女子校で新任の体育教師が何者かに射殺されるのですが、ふたつの事件には実は関連があったという話です。

 原作で最後に事件を解決するのはポワロですが、そのポワロは原作を読み始めて3分の2を過ぎないと出てきません。原作に比較的忠実に作られているとされている英国ITVデヴィッド・スーシェ主演の「名探偵ポワロ」シリーズでも、この原作の映像化作品(第59話/2008年製作)では、ポワロを最初から登場させたり、登場人物の一部を端折ったりしていました。

クリスティのフレンチ・ミステリー(第5話)/鳩のなかの猫.jpg "改変の妙"が売りのこの「フレンチ・ミステリー」シリーズですので、この作品も、新学期から学校に転入してきた革命があった国の王女と、国王から宝石を託された男性の姉の娘(同じくこの学校の生徒)を同一人物にしたりしています(原作では王女はニセモノだったけれど、この作品ではホンモノになっている!)。

 更に、事件解決の鍵となる宝石の在り処に辿り着く女子校生ジュリエット(原作ではジュリア)の母親は、原作ではトルコにのんびりバス旅行に行っている有閑マダム(実は昔諜報機関にいた)になっていますが、ここでは学校の寮母と同一人物になっていて、寮母の娘であるジュリエットはその関係で、庶民でありながら上流階級の子女が集うこの学校に入学が許されたことになっています(従って、学校で高慢ちきでイヤミな女子学生からイジメを受けている。但し、寄宿寮で同室の王女とは仲良し)。

鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ1.jpg でも、何よりの改変は、ジュリエットの母親である寮母とラロジエール警視は昔一夜を共にしたことがあり、実は彼女の娘ジュリエットはラロジエールの娘でもあったという―このもの凄い改変が、それまで娘がいることを知らなかったラロジエールと、父親を知らなかった娘の出会いの物語という、太いサイドストーリーを形成しています(太過ぎる!)。

 「テニスラケットの入れ替え」などは原作を踏襲していてそれなりに面白かったですが、原作の犯人は宝石狙いだったのに、ここではそれに加えて、中東国で国王を殺害したことになっていて、最後、王女が剣でブスリと父の仇を討つという、ややぶっ飛び過ぎの結末。「目には目を歯には歯を」はかつてのイスラム圏の話で、フランスだと一応は殺人罪が適用されると思うのですが、何となく目出度し目出度しで終わってしまったような...。

 ラロジエールとジュリエットの父娘の別れは切ないけれど、そんなに裕福ではない母子家庭に対し、ラロジエールには今後しばらくは養育費を送り続ける義務が発生しているのではないかなあ、などと考えてしまいます。

鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ.jpg鳩の中の猫.jpg 原作では、女子校の校長は立派な人物で、彼女の教育観には原作者クリスティの教育観が織り込まれていますが、ここでは、頑なに学校の名誉にこだわる石のような女性にキャラクター改変されていて、全体として面白Flore Bonaventura.jpgかったなりにも、この改変が個人的にはやや気に入らず、評価は「△」としました。

「クリスティのフレンチ・ミステリー(第5話)/鳩のなかの猫」●原題:LES PETITS MEURTRES D'AGATHA CHRISTIE/LE CHAT ET LES SOURIS●制作年:2010年●本国放映:2010/9/8●制作国:フランス●監督:エリック・ウォレット●出演:アントワーヌ・デュレリ/マリウス・ コルッチ/Flore Bonaventura/Stéphane Caillard/Isabelle Candelier/Marilyne Canto●原作:アガサ・ クリスティ●日本放映:2011/09●放映局:AXNミステリー(評価:★★★)

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