【2079】 ○ エドワード・ベネット (原作:コリン・デクスター) 「主任警部モース(第5話)/キドリントンから消えた娘」 (88年/英) (1999/04 日本クラウン 【VHS】) ★★★★

「●TV-M (主任警部モース)」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2080】 「主任警部モース(第7話)/ウッドストック行最終バス
「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●て コリン・デクスター」の インデックッスへ

第一容疑者がどんどん入れ替わる。原作改変に拘泥せず観れば、独立した作品として楽しめた。

INSPECTOR MORSE:LAST SEEN WEARING dvd.jpgキドリントンから消えた娘 01.jpg キドリントンから消えた娘 03.jpg
Inspector Morse: Last Seen Wearing [DVD] [Import]

 2年前に失踪して以来、行方の知れなかった裕福な家庭の女子校生の娘バレリーから両親に無事を知らせる手紙が届いた。彼女は生きているのか、だとしたら今はどこでどうしているのか。だが捜査を引き継いだ テレズ・バレイ警察のモース主任警部(ジョン・ソウ)は、ルイス部長刑事(ケヴィン・ウェイトリー)に「彼女は死んでいる」との自らの直感を述べる―。

LAST SEEN WEARING.jpgキドリントンから消えた娘 文庫.png 原作『キドリントンから消えた娘』(原題:Last Seen Wearing)は、コリン・デクスターが1976年に発表した「モース主任警部」シリーズの長編第2作で、第1作『ウッドストック行最終バス』(1975)と並んで評価の高い作品。1987年から始まった英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第5話として1988年に本国で放映され、日本では2001年5月3日にNHK-BS2で放映、その後ミステリチャンネルでも放映されています(但し、それに先んじて1999年に日本語字幕付きVHSが発売されている)。
キドリントンから消えた娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
"Last Seen Wearing"
 失踪した娘バレリーは既に死んでいるとのモースの直観はあっさり外れ、その後、失踪事件の第一容疑者が次々と入れ替わるのは原作と同じです。モースがバレリーの交友関係を調べていくうちに、彼女の男友達の部屋でマリファナが見つかり、また、彼女が妊娠していたことが判ったりしますが、彼女の男関係が結構"乱脈"気味で、彼女に関わったと思われる疑わしい男が次々現れます。そうした中、女子校の副校長シェリル・ベインズが殺害されますが、こちらの事件も第一容疑者がどんどん入れ替わっていくという展開です。

 原作の重厚感も良かったように思いますが、モースの"妄想的"推理に多くのページを割いており、その点、テレビドラマ版はテンポが良くて楽しめました。原作を読んだのは随分前なので、犯人すら虚(うろ)覚えでしたが、これ、原作と犯人も結末も違えているんじゃないかな。バレリーの両親はこんな瀟洒な家に住んではおらず、彼女が通っていた学校も学費の高い私立のお嬢様学校ではなく、普通の庶民が行く学校だったのでは。殺害された副校長が女性になっているため(原作では男性)、その辺りから若干原作と雰囲気が違ってきた部分もありましたが、これはこれで楽しめました。

キドリントンから消えた娘 02.jpg バレリーは若いフランス語の補助教員ディヴィッド・エイカムとも、女子校の校長ドナルド・フィリップソンとも関係していたということなのでしょう。それを知った女性副校長(彼女は男性には関心が無い。つまりレズビアン?)は、そのことをネタに校長を脅して副校長の座を掴んだということのようです(フランス語教師はクビになって別の学校へ転職した?)。校長はバレリーの母親グレース(フランセス・トーメルティ)とも関係していて、グレースはバレリーがジョージの子供ではないことを仄めかしていますが、どうやらジョージも血の繋がりのない娘バレリーと関係していたみたいで、そのことに頭にきたグレースが校長との不倫に走り、その現場を見てしまった娘バレリーがショックを受けて家を出たというのが、2年前の彼女の失踪の原因だったようです。

 ラスト近くで、校長の妻が夫と不倫関係にあったバレリーの母親グレースと対峙し、そこで奇妙な連帯感が生まれ、そこへひょっこり現れたのが...と、かなりドロドロしたプロセスだったにも関わらず、最後は過度に後味が悪くならないように纏めた感じで、テレビ版らしい改変でしたが、個人的にはそう悪くないように思えました。

 原作を読んだ直後に観たら「え~っ」という感じだったかもしれないけれど、原作を読んでから年月を置いて映像化作品を観ると、改変に拘泥せず独立した作品として楽しめるというのはあるのかもしれません。
 エリザベス・ハーレー(Elizabeth Hurley)が女学生役で出ていますが、「幻の城/バイロンとシェリー」('88年/英)で劇場映画にデビューする前で、当時は無名だったと思われます。

エリザベス・ハーレイ(Elizabeth Hurley).jpgエリザベス・ハーレー.jpg「主任警部モース(第5話)/キドリントンから消えた娘」●原題:INSPECTOR MORSE:LAST SEEN WEARING●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1988/03/08●監督:エドワード・ベネット●脚本:トーマス・エリス●原作:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/ピーター・マッケリー/フランセス・トーメルティ/メリッサ・シモンズ/フィリップ・フレサートン/スザンヌ・ベルティシュ/グリーン・ヒューストン/ジュリア・サワルハ/エリザベス・ハーレー●VHS発売:1999/04●発売元:日本クラウン●日本放映:2001/05 (NHK-BS2)(評価:★★★★)

1-IMG_0390.JPG●本国個人サイト (Muffy Aldrich The Daily Prep

My Favorite Inspector Morse.jpg◎ Here are some favorite episodes (or characters or scenes or...):
Last Seen Wearing 第5話/キドリントンから消えた娘)- Morse's best line, "We ought to be able to arrest him for his taste", after surveying a suspect's flat. The headmaster gives a nearly-comedic dramatic performance (and in one scene in a very nice Irish Fisherman's sweater).
Last Bus to Woodstock 第7話/ウッドストック行き最終バス)- Oxford politics; pub murder; an old Volvo; and perhaps Morse's best withering glance.
Ghost in the Machine 第8話/ハンベリー・ハウスの殺人)- A supremely snobbish and delightful performance by Patricia Hodge; a discussion of appropriateness of school ties worn as belts; and Morse's commentary on the distastefulness of social envy. This might be a good "first episode" to watch.
Deceived by Flight 第10話/欺かれた過去)- Simply marvelous cricket scenes with equally marvelous cricket clothing.
Driven to Distraction第14話/死を呼ぶドライヴ)- A love of the Mark 2; creepy; Morse on the edge.
Happy Families (第22話/ハッピー・ファミリー)- Two dreadful grown sons (one of whom is played by Martin Clunes, Doc Martin) with the most enviable knitwear. And a moat.
The Day of the Devil (第27話/サタンが巣くう日)- By far the creepiest of all, complete with church pipe organs, vicars and the underground of Oxford.
Twilight of the Gods (第28話/神々の黄昏)- Sir John Gielgud using Oxford England and Oxford Mississippi in the same sentence; and the always wonderful Robert Hardy.
Death Is Now My Neighbour (第31話/死は我が隣人)- Richard Briers (Hector Naismith MacDonald from Monarch of the Glen), Roger Allam (who would later be in Endeavor), and Maggie Steed more than make up for Holley Chant's American accent. Oxford politics and the reveal of Morse's first name.

◎ And my honorable mentions are:
The Last Enemy 第9話/最後の敵)- Good Guernsey in the opening scene; impressive Master's quarters; and bespoke clues.
The Infernal Serpent 第12話/邪悪な蛇)- Terrible topic but stars the wonderful Geoffrey Palmer (Lionel from As Time Goes By).
The Sins of the Fathers 第13話/ラドフォード家の遺産)- Morse solving a crime at a brewery.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1