【2035】 ○ ニコラス・ウィンディング・レフン 「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第12話)/復讐の女神」 (07年/英) (2010/03 NHK-BS2) ★★★☆

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脚本家に「ご苦労様」と言いたいぐらいの改変。オリジナル作品として楽しんだ方が良さそう。

復讐の女神 dvd.jpg 「復讐の女神」.jpg 第12話/復讐の女神 00.jpg

第12話/復讐の女神00.jpg 1940年、独軍戦闘機が英国で墜落し、操縦士は英国女性ベリティ(ローラ・ミシェル・ケリー)に助けられた。11年後の1951年、大富豪ラフィールの訃報を新聞で知ったミス・マープル(ジェラルディン・マクイーワン)のもとへ彼の秘書が現れ、ミス・マープルを「ネメシス(復讐の女神)」と呼んでいたラフィールの、事件の解決を依頼する遺言と、「ミステリー・ツァー」のチケットが2枚届き、ミス・マープルは甥で作家レイモンド・ウェスト(リチャード・E・グラント)とツアーに参加す第12話/復讐の女神 04.jpgることに。ツァーのコンダクター兼バス運転手はジョージア(ルース・ウィルソン)で、ツアー参加者はマーガレット(ローラ・ミシェル・ケリー、ベリティと二役)とシドニー(ジョニー・ブリッグズ)の夫婦、元執事レイバン(ジョージ・コール)、派手な赤コートの女アマンダ第12話/復讐の女神 01.jpg(ロニー・アンコーナ)とその弁護士ターンブル(エイドリアン・ローリンズ)、足が不自由で顔中に縫い傷の痕があるワッディ(ウィル・メラー)とその妻ロウィーナ(エミリィ・ウーフ)、アグネス修道院長(アン・リード)とクロチルド修道女(アマンダ・バートン)、ドイツ人のマイケル(ダン・スティーブンズ)らで、全員ラフィール氏に招待されていた―。

第12話/復讐の女神 09.jpg ツアーで訪れたフォレスター卿の邸で、邸の相続続人であるアマンダが癇癪を起こし、そこにあったベリティの写真を踏みつける。宿泊先でコリン・ハーズ(リー・イングルビー)という若者が作家志望だとレイモンドに話しかけてくる。ミス・マープルは孤立しているマイケルに話し掛け、彼がラフィールの息子であることを掴む。夜中に宿の階段から落ちたレイバンは、マーガレットに「ベリティ?」と問いかけるが、彼女は否定する。翌朝、レイバンはベッドで亡くなっており、実は警官だったコリンに、ミス・マープルは毒殺の可能性を示唆する。朝食の席で修道尼らは、ベリティは第12話/復讐の女神 05.jpg男に追われて修道院に逃げ込んできたと言い、その男とはシドニーのようだ。また、ベリティはフォレスター卿の隠し子だったようで、アマンダがメイドをしていた彼女を邸から追い出し、行方不明のまま死亡宣告されため、相続権は無いと彼女は言う。ボナヴェンチュア・ロックッス見物で、ミス・マープルと同じ川縁コースを選んだ修道女らは、マイケル(=ラフィールの息子)がベリティを殺したに違いないと話す。一方、山道コースを選んだロウィーナが何者かに突き落とされ、翌日死体で発見される。コリンとレイモンド、マープルの3人はツアー客らから聞き込みを行う―。

復讐の女神 クリスティ文庫.jpg 2009年1月1日に本国イギリスで放映されたジェラルディン・マクイーワン主演の英国グラナダ版で、2007年に放映されたシーズン3の「バートラム・ホテルにて」「無実はさいなむ」「ゼロ時間へ」に続く第4話(通算第12話)。このシーズン3の4作は、全て英国に先行してカナダで2007年中に放映されています。ジェラルディン・マクイーワンはこの「復讐の女神」を以ってミス・マープル役を降板、同名シリーズのまま、マープル役はジュリア・マッケンジーに交代します。日本ではNHK‐BS2で2010年3月26日に初放映。原作は1971年に刊行されたアガサ・クリスティのミス・マープルシリーズの長編第11作(原題:Nemesis)で、1964年発表の『カリブ海の秘密』の続編乃至は後日談ですが、ジョーン・ヒクソン主演のBBC版と同じく、「カリブ海の秘密」より先に放映されています。

「復讐の女神」レイモンド.jpg 原作ではミス・マープルが単独で「ミステリー・ツァー」に参加するのに対し、BBC版もこのグラナダ版も、甥で作家のレイモンド・ウェストを伴っての参加となっていますが、このグラナダ版の方がBBC版よりもレイモンドの事件解決へ向けてへの関与度はすっと大きくなっています(でも、事件を実質的に解決するのはやはりミス・マープルなのだが)。

第12話/復讐の女神 02.jpg 真犯人は、原作では「魔女の館」っぽい邸にいた3姉妹の1人であり、BBC版ではこれを踏襲していましたが、この映像化作品では、ツアー客の中の独自のキャラクターに置き換えています(犯行動機などから見て、犯人まで変えているとは必ずしも言えないが)。また、原作では、ラフィールの息子マイケルは事件が解決するまで収監されていたのを、BBC版では貧民屈でボランティア活動をしている(自らも浮浪者?)風に置き換えていましたが、この映像化作品では、これもまたツアー客の1人になっています。

 彼らばかりでなく、この映像化作品では、マープル、レイモンド以外の10名の参加者が全員何らかの形でベリティに纏わる過去の出来事に関与しているという(原作ではミス・マープルの外に14名いたツアー参加者の大半が事件には直接絡んでこなかった)―その絡み方につてはオリジナルの脚本になっているわけで、加えて、犯人の案山子を使ったトリックや、死体入れ替えトリック、そのための記憶喪失者への別人の記憶注入と、独自のプロット&トリック満載、もうこれは、半ばオリジナル作品として楽しんだ方が良さそう...。まあ、これはこれで面白かったと見るべきでしょうか。

 コアなクリスティの原作ファンからは大いに叩かれそうな改変ぶりですが、個人的には、原作でツアー客の殆どが事件に絡んでこないことにやや拍子抜けの感があっただけに、10人全員を事件に関与させたことに対して、脚本家に「ご苦労様」といいたいくらいです。結果的に、原作に全く無い話の部分でかなりごちゃごちゃしてしまった面もありますが、一応これでも、クリスティ協会だかクリスティ財団だかのお墨付きは得ているのだろうなあ。

NEMESIS  MARPLE SEASON 2007.jpgローラ・ミシェル・ケリー.jpg「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第12話)/復讐の女神」●原題:NEMESIS, AGATHA CHRISTIE`S MARPLE SEASON 3●制作年:2007年●制作国:イギリス●演出:ニコラス・ウィンディング・レフン●脚本:スティーヴン・チャーチェット●原作:アガサ・クリスティ「バートラム・ホテルにて」●時間:93分●出演:ジェラルディン・マクイーワン/ローラ・ミッシェルローラ・ミシェル・ケリー .jpgLaura Michelle Kelly2.jpg・ケリー/ダン・スティーブンズ/グレイム・ガーデン/リチャード・E・グラント/ルース・ウィルソン/ジョニー・ブリッグズ/ジョージ・コール/ロニ・アンコーナ/エイドリアン・ローリンズ/ エミリー・ウーフ/ウィル・メラー/アン・リード/アマンダ・バートン/リー・イングルビー●日本放送:2010/03/26●放送局:NHK‐BS2(評価:★★★☆)

Laura Michelle Kelly

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