【2026】 ○ 池井戸 潤 『オレたちバブル入行組 (2004/12 文藝春秋) ★★★★ (○ 池井戸 潤 『オレたち花のバブル組 (2008/06 文藝春秋) ★★★★)

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原作もわりと劇画調だが、「倍返し」「土下座」は2作を通して1、2度出てくる程度。

オレたちバブル入行組 単行本.jpg オレたちバブル入行組 文庫.jpg  オレたち花のバブル組 単行本.jpg オレたち花のバブル組 文庫.jpg 半沢直樹 -ディレクターズカット版 dvd.jpg
単行本/『オレたちバブル入行組 (文春文庫)』  単行本/『オレたち花のバブル組 (文春文庫)』「半沢直樹 -ディレクターズカット版- DVD-BOX

オレたちバブル入行組s.jpg バブル期に入行し、大阪西支店の融資課長を勤める半沢直樹は、支店長の浅野の強引な指示で無担保でへの5億円の新規融資を実行したが、7ヵ月後に当の相手企業が不渡りを出し倒産、半沢は支店長から融資の責任を一手に負わされ、窮地に立たされる。雲隠れした倒産会社社長の東田を捕まえることはできるのか、果たして5億円を回収できるのか―。(『オレたちバブル入行組』)

オレたち花のバブル組s.jpg ビデオリサーチ速報値での「最終回」の平均視聴率42.2%、瞬間最高視聴率 46.7%(何れも関東)を記録したTBS日曜劇場「半沢直樹」(関西は平均45.5%、瞬間最高50.4%)の原作で、ドラマの第1部の「西大阪スチール」の話が『オレたちバブル入行組』、第2部の「伊勢島ホテル」の話が『オレたち花のバブル組』に対応していますが、原作もドラマも面白かったように思います。

『オレたち花のバブル組』.JPG ドラマがかなり劇画調に脚色されているかのように思われていますが、原作がそもそも池井戸作品の中ではかなり劇画調な方で、カタルシス効果にウェイトを置いたエンタテインメント企業小説となっています。但し、「倍返し」といった言葉や「土下座」シーンは、2作を通して1、2度出てくる程度で、ドラマではそれが頻繁に繰り返され、気持ちは分かるなあという一方で、土下座させれば全て問題が解決したことになるのかという疑問も覚えました。でも、ドラマの場合、ずっと読み進んで最後にカタルシスを覚える小説とは違って、毎回、1話毎の時間内に山場を作る必要があるため(まあ、ここでは意図的にそうしたテレビ時代劇風の手法をとっているのだが)、そうした枠組みの中で「倍返し」などを決め台詞をにした点などは、視聴者心理を掴んで巧みであり、その戦略は見事に功を奏したと言えます。

半沢直樹 黒崎.jpg 原作では主要な登場人物のそれぞれの出自などに踏み込んで描かれていて、但し、ネジ製造工場経営の半沢の父親が自殺したという話は原作にはありません(彼が学生時代に剣道をやっていて今も時々道場に足を運ぶ、という話も)。片岡愛之助(この人、実生活では歌舞伎とは無縁のスクリュー製造工場を営む家庭に生まれ、両親は20代の頃に相次いで他界している)が演じて、そのオネエキャラで話題となった国税庁の黒崎は、原作でもオネエキャラです。但し、本格的に登場するのは、大阪国税局就航中の『オレたちバブル入行組』よりも、金融庁に戻って主任検査官となった『オレたち花のバブル組』に入ってからで、しかもそう頻繁に登場するキャラクターでもなく、人気が出て、ドラマの方での出番が原作より多くなっているようです。

半沢直樹3.jpg半沢直樹 大和田常務.jpg 浅野支店長(石丸幹二)に株取引の失敗で重ねた5千万もの借金があり(原作では3千万円)、大和田常務(香川照之)の妻の会社は1億円以上の借金を抱えているという―2人とも不正を働く動機としては分かり易いけれど、銀行のお偉いさんってこういう人ばかりなのかなあ。バブルの夢よ、もう一度、か。

半沢直樹 吉田鋼太郎.jpg七つの会議 吉田鋼太郎.jpg ドラマとして成功した要因は、「劇画」「現代の時代劇」として割り切って作ったことにあるかと思いますが、そうした中、全体を通して観て振り返ると、後半部分の半沢の直属上司で、半沢の能力・人格を買って常に彼を庇う姿勢を貫く第2営業部長の内藤を演じた吉田鋼太郎が結構渋かったかもしれません。同時期スタートした同原作者のNHK土曜ドラマ「七つの会議」では、反骨精神に富み、最後はj自分の会社の悪事をマスコミに内部告発する"万年係長"という全く異なるタイプのキャラクターを演じていました。

 こうしてドラマで第1部・第2部と観てみると、原作の『オレたちバブル入行組』と『オレたち花のバブル組』が良く似た展開であり、リフレイン構造になってることに気付かされます(続けて読むとお腹いっぱい、という感じになってしまう)。シリーズ第3作『ロスジェネの逆襲』('12年/ダイヤモンド社)が楽しみ、と言いつつ、ドラマ化が決まるまでしばらく読まないかも。
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「半沢直樹」●演出:福澤克雄●脚本:八津弘幸●原作:池井戸潤「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」●出演:堺雅人/上戸彩/及川光博/片岡愛之助/滝藤賢一/山崎直子/北大路欣也/香川照之/赤井英和/笑福亭鶴瓶/りりィ/宇梶半沢直樹 片岡愛之助 壇蜜.jpg半沢直樹 壇蜜 宇梶剛士.jpg剛士/宮川一朗太/森田順平/緋田康人/石丸幹二/中島半沢直樹 倍賞美津子 .jpg裕翔/壇蜜/福田真夕/松本さやか/モロ師岡半沢直樹392.jpg/石丸雅理/大谷みつほ/相築あきこ/志垣太郎//三浦浩一/長谷川公彦/牧田哲也/岡山天音/小須田康人/吉永秀平/井上肇/加藤虎ノ介/松永博史/西沢仁太/山田純大/髙橋洋/倍賞美津子●放映:2013/07/07~09(全10回)●放送局:TBS

『オレたちバブル入行組』...【2007年文庫化[文春文庫]/2019年再文庫化[講談社文庫(『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』)]】/『オレたち花のバブル組』...【2010年文庫化[文春文庫]/2019年再文庫化[講談社文庫(『半沢直樹2 オレたち花のバブル組』)]】

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